蒼魂~ブレイブルー銀魂パロ~   作:トッシー00

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第14話です。


二度ある昇竜は三度ある

 猛暑が続くカグツチの夏。

 夏の暑さが肌を伝う毎日に、大人たちは気だるさを感じていた。

 だが子供達は違い、夏の暑さなど楽しい毎日で吹き飛ばしていた。

 そんな子供達が集まるプールに、第七機関の赤鬼ことアイアン・テイガーが監視員をやっていた。

 

「第七機関が所有するプール場とはいえ……赤鬼と恐れられた私にこんな仕事が回されるとはな……」

 

 テイガーの最近は重要性のある任務よりも小さな任務しか与えられていなかった。

 というにも、テイガーの上司にあたるココノエと会う時間がさらに減ったからだ。

 彼女いわく「今は忙しい」とのことだが、いったい私のいないところで何をやっているのだろうか。

 しかしココノエの行うことはテイガーにとっては正義、逆らうことはできない。

 彼女はテイガーの命の恩人なのだから……。

 

「はい子供達、プールに入りすぎると体に悪いからいったん上がりなさい」

 

 テイガーは子供達が長くプールに入り体調を崩さないよう指摘するが、夏真っ盛りの子供達は無視を決め込む。

 武力で言う事をきかせるのは簡単だが、優しいテイガーには気が引ける。

 はぁ……とため息をひとつこぼすと、遠くが何やら騒がしい。テイガーが様子を見に行くと……。

 

「おい大丈夫か!! しっかりしろ!!」

「ん? おい、なんかあったのか!?」

 

 男の叫び声を聞いてテイガーが駆け付けると、そこにはラグナとプールに沈む誰かがそこにいた。

 

「ラグナ・ザ・ブラッドエッジ!? いったいどうしたというんだ?」

「あぁ赤鬼か、連れがプールに漬かりすぎてぐったりしちまったんだよ……」

 

 どうやら恐れていた事態がおこってしまったようだ。

 プールの治安上、ここで大ごとになっては大変だ。

 

「だから言っただろうがお面野郎、プールには入りすぎるなって……見ろよ、顔が真っ白じゃねえか!!」

「こいつ元々真っ白だろーーー!!」

 

 沈んでいたのはハクメンだった。プールに漬かりすぎたせいか顔が真っ白になっている。

 それを見た子供達が気味悪がり大半がプールから逃げ出すように上がり、隅っこでブルブル震えていた。

 その様子を見て、テイガーはため息をつく。

 

「おいラグナ、せっかくの子供客が怖がってしまっただろ……」

「プールは恐ろしいって教訓を教えてやったんだよ、ちなみにハクメンは本当に溺れてるんだがな」

「そりゃあ水の中で仮面なんかつけてたら……」

 

 とりあえずテイガーとラグナはハクメンを抱えプールから上がる。

 しばらくしてハクメンは息を吹き返し、何事もなかったかのように起き上がり。

 

「おぉ黒き者よ、スイカが冷えたぞ~」

「スイカ冷やすのにいちいち溺れてんじゃねぇよ、てか何やってんだよお前……」

「私にはスサノヲユニットがあるから息をしていなくても生きていられる。余計な心配をかけたな、はっはっは」

 

 ハクメンはそう言って、スイカを片手に奥の方へと行ってしまった。

 ラグナは余計な心配をしたとばかりにプールへと戻る。

 

「ったく余計な時間を使っちまった……にしても客減ったな」

「誰のせいだと思ってるんだ……」

 

 先ほどの騒ぎで客の半数以上がどこかへと行ってしまったらしい。

 テイガーは俯く、だがまだ客が少し残っている。これ以上何も起こらぬよう祈るしかない。

 いつも以上に監視を強化し、テイガーはテイガースコープアイを起動するのだった。

 

「それでラグナよ、貴様は何をしに来たのだ? まさか犯罪者が呑気にプール入りに来たとか言わないだろうな?」

「ばっか、そんな子供じみた考えでくるかよ、俺はプリプリデカプリコを監視しに来たんだよ。なのにここは子供のストイックな体しかねぇな、俺はロリコンじゃねぇんだよ、それを証明しに来たんだよ」

「貴様も立派な男ということか、確かにここには子供しかいないが……お、いるところにはいるぞ」

 

 テイガーの視線の先には、デカプリコで尚且つ巨乳の美女がいた。

 ラグナもすぐさま望遠鏡で覗くと……。

 

「お、確かにプリプリデカプリコだ……ってあいつ……」

 

 そのデカプリコはライチであった。

 ライチだとわかった瞬間、ラグナはすぐさま表情を変えて……

 

「違った。アーノルド・酒乱チェネコだった。酒飲むと車輪ループとかやってくるBB界生粋のT-800だったぐはっ!!」

 

 ラグナに色々言われていると悟ったのか、ライチは萬天棒をラグナの顔面に投げつけた。

 ラグナはその衝撃で思いっきり地面に倒れる。

 

「あらテイガー久しぶりね。それとついでにラグナも」

「ライチか、久しぶりだな」

 

 ライチとテイガーは軽く挨拶を交わす。

 この二人、以前までは第七機関の同僚であり、仲間であった存在。

 ライチが第七機関を抜けた後も、ココノエの手まわしによって敵対はしていない。

 

「それで、今日はどうしてプールに……」

「カルルくんが泳ぎを教えてほしいって言うから、水練しに来たのよ」

「あはは、どうも……」

 

 どうやらプライベートのようであった。何か裏があるわけではないらしい。

 カルル・クローバー、データには統制機構士官学校所属の学生とあるが、アークエネミーシリーズのニルヴァーナを所持しているという。

 ニルヴァーナは人の心を宿すと言われる希少価値の高い一品であるが、この少年がどうしてそんなものを手に入れることができたのだろうか……。

 テイガーにとってニルヴァーナは興味があるが、今のところこの少年事態危険度が高いわけではない、ここは逃がしても問題ないとテイガーはカルルの監視を緩めた。

 むしろ、隣で倒れている気楽な犯罪者の方が十分監視する価値がある。

 

「ったくあの姉ちゃんやってくれんな……」

「貴様にはデリカシーがないからな、監視を続ける」

 

 と、テイガーが再び監視を始めると、今度は子供プールで大人が子供に泳ぎを教えているのを発見した。

 赤髪の女性が金髪の子供に泳ぎを教えているようだ。だがそこは子供プール、大人は遊泳禁止なのだ。

 ラグナもテイガーにつられて、その方向へと望遠鏡を向ける。

 

「どうした? デカプリコいたか?」

「いや、デカプリコというより、ポール美乳マン」

「なるほど、見る限りでかくも小さくもなく普通だな」

 

 赤髪の方はポール美乳マンだった。

 今思えばそこで監視している男二人の方が危ない気がする。

 そしてもう一人、金髪の子供のほうを見てみると……

 

「おい、あれ子供か……子供にしてはでかいような……」

「最近のガキは発育がいいから立っ端だけはあるんだよ、ほら見てみろよ、ロバート・絶壁スだろ」

「絶壁というかあれ男じゃないのか?女性の水着着てるけどあれ少年……ナイチチというかなんというか……」

 

 テイガーがそういい終わると、急に二人の視界が真っ暗になった。

 そして直後に聞き覚えのある声が重く二人に圧し掛かる。

 

「誰が……ロバート・絶壁スだぁ?」

 

 その声の主はノエルであった。

 ノエルはラグナの望遠鏡をラグナの顔面に押し当て、テイガーの両目を指で突き刺し望遠鏡共々パキパキ言わせていた。

 ラグナとテイガーがその状況下で、声を震わせこう一言……

 

「ま……間違えました……」

「ノエル・ナイチチリオンさんでしたね……」

「変わってねぇだろうがーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 そのままノエルは二人を片手で持ち上げプールにぶん投げた。

 二人はあまりの衝撃でおぼれそうになり、何かに捕まろうとする。

 とりあえず何かに捕まり覚えるのを回避することに成功したが、捕まったものをよく見てみると……

 

「た……確かに……ポール美乳マンだ……」

 

 捕まっていたのは、ツバキの水着や太ももであった。ツバキは体をワナワナと震わせ……。

 

「輝砕閃!!」

 

 審剣・風ヲ凪グ剣のD版最大タメ状態で二人を吹き飛ばす。

 二人はプールの鉄越しにぶつかり、ラグナは血を、テイガーはオイルを口からぶちまけた。

 

「何よあの人たち! 私だって一人の女なのよ!!」

「ツバキ! ちょっとあなたたち何やってるんですか!? 逮捕しますよ!!」

 

 ノエルの怒号がラグナとテイガーに降りかかる。

 ラグナはすぐさま立ち上がり、誤解を解こうとする。

 

「誤解だ! 俺たちは監視員として見回りをしていただけであって!!」

「黙れ!! 鼻血なんて垂らして変態!!」

「鼻血っていうか、あんたらのせいでもう全身血まみれですが!? ていうかここは子供プール、大人は遊泳禁止だろうが!!」

「仕方ないじゃないですか! 私泳げないんですから!! ツバキに泳ぎを教えてもらってたのに!!」

 

 そういってノエルはラグナとテイガーを捕まえ、逮捕しようとする。

 

「とりあえずこれは立派な犯罪です! おとなしく捕まりなさい!!」

「もう待ちなさいよ、ここは健全なプールよ。子供たちも怖がってるじゃないの……」

 

 もめるノエル達の元へライチがやってきた。

 確かにライチの言うとおり、子供達がおびえきっている。

 ノエルもそれを見て、反省の意を見せる。

 

「すいません、少し騒ぎを大きくしてしまいました」

「気にしないで、みんな仲良く楽しみましょう……」

 

 ライチが優しい笑顔でそう言った、その直後プールから見慣れたムサイ顔がカメラを持って現れた。

 

「そうでござるライチ殿! さぁみんなで一緒にプールを満喫しようでござる。あぁライチ殿、拙者にも泳ぎを教えてくだs」

「こんなところまでストーキングすんじゃねえーーーーー!!」

 

 ライチはバングにドロップキックをかます。

 バングはユラユラとプールに浮いて、そのまましばらく動かなくなった。

 

「あんたさっき自分で言ったこと覚えてますか!?」

「だってああいう暴漢がいたら静かに遊べないじゃないのよぉ」

「みんなで仲良くとか言ってたやつどこ行ったぁぁぁぁぁ!!」

 

 とぼけるライチにノエルはつっこみを入れつつ……

 今度はプールからニューがカメラを持って現れた。

 

「撮れた! 今度こそ撮れたよ!! ラグナの横チ……」

「弾属性を得たシザーーーーーーーーーーー!!」

 

 ラグナはロケテで得た新しいシザーをニューに叩き込んだ。

 もはやプールは世紀末と化しており、子供はほとんどいなくなっていた。

 気がつけばBBメンバーの貸しきり状態となっていた。

 

「おい……上層部になんと報告すれば……」

「第七機関のプールは世界一とでも報告しておけ」

「子供達が恐怖で逃げるプールのどこが世界一だ……」

 

 テイガーが本気で悩む中、ラグナは気楽にプールを満喫している。

 挙句の果てにはこんなことを言い出すつもりだ。

 

「たまにはいいじゃねえか、俺達で貸しきって思いっきり羽を伸ばそうぜ」

「……まぁ私からすればお前達は客だ。もう好きにしてくれ」

「そうと決まれば、思いっきり楽しむとするかーーー! 今日の俺は機嫌がいいぞ~!!」

 

 ラグナはそういってプールにダイビング……。

 するとダイビングした部分は凍っていて、ラグナは思いっきり頭をぶつけ転がりまわった。

 なんだ、と思い前を見ると……。

 

「プールを凍らせてスケートでもしようと思ったのだが、とんだ邪魔が入ったか……」

「ジンてめぇ……」

 

 そこにはジンがいた。しかも氷の上でのうのうと柔軟体操をしている。

 ジンに出会ったことで、機嫌がよかったラグナは急に不機嫌に……。

 この二人相変わらず仲が悪く、会って早々にらみ合う。

 

「てめぇプールに沈めてやろうか……」

「貴様こそプールに沈めた上に厚い氷を張って閉じ込めてやろうかぁ」

 

 小学生並みの喧嘩をしている二人を見て、テイガーはあきれて物も言えない。

 BBメンバーで貸切になってしまったが、こいつらが本気で暴れれば第七機関所有のプール上がひとたまりもない

 注意が必要か、テイガーがそう思い念を入れた時であった。

 プールの入り口から、怪奇なオーラを発した二人の人影が見えた。

 その二人はテイガーとラグナの元へ向かってくる。

 

「あ~、お前がこのプールの監視員か? 赤鬼……」

「貴様は……!?」

 

 男に名前を呼ばれるテイガー

 テイガーはその男を知っていた。

 金色の奇妙な仮面で目を隠し、紫色の装束を待とうなんとも奇怪な男。

 男の名は"レリウス・クローバー"、統制機構の技術大佐という地位にあり、統制機構内部でもかなりの権限を持つ男である。

 その素性は他の衛士も知られておらず、あのジン・キサラギですら直接あったことがないらしい。

 なぜテイガーがそのような男を知っていたかというと、かつてこの男はココノエの元に訪れたことがある。

 その時に少しだけ顔を合わしたことがある程度だが、それだけでもこの男に危険度を感じ取ることができた。

 テイガーは無意識のうちに身構える。それをレリウスは静かになだめた。

 

「心配するな、そういった用事ではない……うちのお偉いさんが水練をしたいと言ってきてだな、しばらくここで遊ばせておいてもらえるか?」

「お偉いさん……?」

「世界虚空情報統制機構最高責任者、"帝"と言ったら伝わるかな?」

「なに!?」

 

 テイガーは驚愕の表情を浮かべる。

 世界で一握りの人間しか拝めないと言われている統制機構の帝……。

 カグツチ四天王の一人でもあり、レイチェルやヴァルケンハイン以上の地位があるとも言われている。

 なぜそのような人物がここに……。

 

「おいテイガー、何がどうなって……」

「あまり声を大きくするなラグナ……」

 

 そう近寄ってきたラグナの口を押さえるテイガー。

 この状況、多数の人たちに知られてはこの先色々と厄介になる。

 

「ブラッドエッジ、赤鬼、これは貴様らだけに明かす極秘機密だ。もし外部に情報を漏らしたり、帝の身に何かあったら……どうなるかな?」

「俺が手を出したとなれば六英雄と……テイガーが手を出したとならば第七機関と……」

「そういうことだ」

 

 レリウスのその圧力にラグナとテイガーが口ごもる。

 何かあればその時点で統制機構との正面衝突、戦争に発展する。

 統制機構もずいぶんと大胆なことをやってのける。六英雄関係者と第七機関の赤鬼がいるこのプールに、帝を預けるというのは……。

 何かの通告、それとも警告か……

 いや、宣戦布告ともとれる行為であった。

 

「レリウスよ、もうよい……下がれ」

「はい……」

 

 そのとてつもないくらいに重く圧し掛かるような声に従い、レリウスが身を引いた。

 帝と呼ばれたのは、スクール水着を着た一人の少女だった。胸のあたりには『みかど』と可愛く書かれている。

 紫色の髪をした年端も行かない少女、この少女が世界のトップに君臨する一人。見た限りそうとは思えない。

 だがそれから発せられる神々しいオーラは、テイガーとラグナでさえ思わずひるむ。

 統制機構は、何を考えているのだろうか……

 

「統制機構帝は代々、庶民の遊びには貪欲なのじゃ……」

「ちっ……上等だ」

 

 果たしてラグナとテイガーは、この危機を乗り越えることができるのだろうか……

 そんな大戦争の火種になりえるだろうこの状況下で、他のメンバーは気楽に遊んでいた。

 

-----------------------

 

 あの戦闘集団の中にどうやって帝を溶け込めさせるか、問題はそこから始まっていた。

 

「はいお前らちょっと注目!」

「どうしたんですかラグナさん?」

 

 ラグナの呼びかけにノエルが反応する。それに続き全員がラグナの方を見る。

 全員がこちらを見たところで、ラグナが恐る恐る帝をこちらに招いてノエル達に紹介する。

 

「え~と、この子帝ちゃんっていうんだけども、みんなで仲良くしてやってくれ」

 

 ラグナがそう言うと、帝はもじもじと恥ずかしそうにしている。

 統制機構のトップでいる時は貫禄こそあるが、プライベートでは普通の女の子のようだ。

 こりゃ案外楽勝だな、とラグナは一人心の中でガッツポーズ。

 

「いいですよ、みんなで仲良く遊びましょうよ」

「プールは健全な遊び場だものね」

「ふん、別にかまわないが……」

 

 ノエル、ライチ、ジン、その他全員が帝を快く仲間に入れてくれた。

 ラグナはその光景を見て、奥で鑑賞しているレリウスを一瞥する。

 それを遠くで、「ほぉ……」とレリウスは小さく笑みを浮かべていた。

 

「あとはこのまま遊ばせておけばいいか……」

「とは言うがあの帝、仲間には入れたがいささか距離を置いている。これではすぐに飽きて帰ってしまうぞ」

「帰るのなら帰ってくれてかまわねぇじゃねぇか、無害のまま帰ってくれれば大助かりよ」

「だが、第七機関的には敵のトップが顔を出したのだ。ただ顔見せで帰らせるほど組織は甘くない」

「罠だとしても……か? あのお譲ちゃんが影武者っていう可能性だって……」

「うまくはやる。だからもう少し留めさせておきたい、あそこにいる監視がやっかいか……」

 

 ラグナとテイガーは他の人物に聞かれぬようこそこそと話をしている。

 監視員二人を監視しているとはまた皮肉な話だが。レリウスがあそこで見ている以上でかいことはできない。

 今ここで帝を打ち取るとまではいきたいが、うまいこと情報を組織に送りたいテイガーであった。

 

「はいジン兄さま、パスです」

「ありがとうツバキ、忍者にパス」

「ライチ殿、パスでござる!!」

「カルルくんパスよ~」

「はい、ニューさんにパスです」

「了解、ノエルにパ~ス」

「ありがとう、ツバキパス!」

 

 どうやらジン達はバレーボールで遊んでいるらしい。

 帝も距離を置いてはいるが、楽しそうにしていた。

 

「ジン兄さま~」

「ありがとうツバキ、じゃあ帝に……ギガドリルブレイクゥゥゥ!!」

 

 ゴチーン!

 ジンが思いっきりスマッシュを打ったバレーボールが帝の顔面にぶち当たった。

 

「ジン何してくれてんのーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

 

 ラグナは思わず焦りの表情を見せる。

 まさかジンが帝にバレーボールをぶつけるとは、ここにきてジンのドSが前面に出てしまった。

 しかも、跳ね返ってきたボールをまたもスマッシュ、飛んで行ったボールをすばやく回収してはまたも帝にスマッシュを打ち込んだ。

 

「おいあいつバカなの!? 知らないとはいえ上司にスマッシュ打ち込んでるよ!!」

 

 そしてしばらくして、プール場に重い空気が流れた。

 帝は半分泣いていた。そしてぼそっと「帰りたい」と呟いたのをラグナとテイガーは聞き逃さなかった。

 ジンのドヤ顔にラグナは半分ピキリときていたが、ここで大ごとを起こすとレリウスの思うつぼである。

 

「おい綺羅星十字団、てめぇんとこの部下が帝に危害を加えた場合どうなんだよ?」

「誰が綺羅星だ。その場合は監視員の監視不足ということで手を打たせてもらうが……」

「さすが図書館……やることが汚いな。バニシングエージ技術大佐さんよ」

「誰がバニシングエージだ。スタードライバーから離れろ。この仮面は仕事の都合上でつけているのだ」

 

 綺羅星十字団、基レリウスはどの方法で帝が傷ついても手を打てるよう策を打っていた。

 ラグナは舌打ちをして、なんとか帝を喜ばせようと策を練る。

 

「おいお前ら、ダメだろ仲良くプール使わないと、罰として今からじゃんけんをして負けたやつ、あそこの50mジャンプ台から飛び込むこと」

「なんでいきなりそんな突拍子もない案を?」

「いいんだよ絶壁ス! 面白ければなんでもいいの!!」

「絶壁ス言うな!!」

 

 怒るノエルはさておき、急に始まったじゃんけんデスマッチに従い全員じゃんけんをする。

 その結果、50mジャンプ台から飛び込んだのは……

 

「と……統制機構帝は代々、高いところが苦手で……」

「帝かよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 運悪く罰ゲームを受けたのは帝だった。

 これではまるで意味がない、むしろ逆効果である。

 ラグナの顔が引きつり、テイガーも半分あきらめ状態であった。

 そして、その状況を見ていたレリウスはニタリと憎たらしい笑みを浮かべていた。

 その顔を見て、さすがのラグナもイラっときたようで……。

 

「おいテイガー、あの綺羅星のおっさんなんなの?マジでカチーンときたんだけど……」

「プレイヤブル化して少しばかり余裕を見せているな……」

「……そんなに帝を楽しませろっていうなら、あいつ自身にもなにかやってもらうか」

 

 ラグナはそうボソリと言って、ニヤリと笑った。

 いったいどうするつもりだ……とテイガーは半分心配そうにラグナを見つめる。

 

「さてと、せっかくみんなプールにいるんだ。やっぱり『アレ』をやらなきゃプールに来た意味がないよなぁ……」

「今度はなんだ?」

 

 ラグナの意味深な言葉にテイガーが質問する。

 

「そりゃおめぇ、騎馬戦に決まってんだろうが」

(ポ……ポロリだぁーーーーーーーーーーーーーーーー!!)

 

 ラグナの言う騎馬戦、それはプールにきた若者が二人一組となってきゃっきゃうふふと相手の鉢巻を取り合う競技である。

 もちろん白熱していくとそれらはエスカレートしていき、鉢巻どころか女子のあんなところやこんなところがチラリポロリとなるのである。

 そんな競技を心から楽しめるのはスケベぇな健全男子、とテイガーがそこで疑問を抱く。

 

「だがラグナ、それは私たち男が楽しめるものであって、帝を楽しませるものではないと思うが……」

「誰が帝を引き入れるって言ったよ? もう帝なんて知るか。俺はあそこで見てるおっさんを引き込みたいんだよ」

 

 そう言ってラグナは、レリウスの元へと向かっていく。

 

「おいレリウス、今から騎馬戦やるんだけど仲間に入らねぇか?」

「ほぉ、私は貴様らに帝を楽しませてほしいとお願いしたはずだが?」

 

 レリウスは余裕の表情で応える。

 だがラグナにとってその反応は想定の範囲内、レリウスを引き込む策はあった。

 

「まぁまぁそういうなよ、確かに統制機構の帝をもてなすのも立派な仕事だろうけどよ、あんただって大物だろ?なぁ『社長』」

 

 そう、ここにいるレリウス・クローバーは統制機構の技術大佐。

 しかしそれは裏の顔であり、表ではあの有名な高級武器ブランド、『アークエネミー社』の社長として有名である。

 設立以来数々のヒット作を生み出してきたアークエネミー社は今や企業のトップに君臨する。ラグナ達庶民にはそれなりにもてなすに値する相手である。

 

「それに帝をもてなすってんならあんたもきちんと遊んで行けや、騎馬戦だぞ? 運が良ければ帝のあんな姿やこんな姿も見れたり……」

 

 ラグナはそう促すが、レリウスは態度を一つ変えずに……

 

「そんなことがあってはこちらの信用問題に関わる。それに私自身そんなものに興味などない。これでも既婚者なのでな」

「って、言ってるけどもあんた自分の顔を鏡で見てみろ? 鼻血垂れてるぞ?」

「これは鼻血ではない、トマトジュースだ」

「ごまかし方が古いんだよ!!」

 

 やはりレリウスも男であった。仮面をかぶっていても心の中は立派な男。

 レリウスは鼻血を拭いて、意気揚々とプールへと向かっていく。

 

「お~い、もう一人仲間に入りたいってやつがいるんだけども~」

「またですか?ラグナさんも顔が広いんですね」

 

 ノエルはそう言った後、全員はレリウスのほうを見る。

 仮面をかぶってブリーフ一丁の男が準備体操をしている。その姿を見てみんなの表情が曇るのがわかった。

 

「なんだあの男は? いかにも犯罪を起こす気満々という出で立ちではないか?」

「警察に通報した方がいいんじゃないの?ねぇカルルくん」

「あ……あははははは……」

「あの男、とてつもなく奇怪なものを発しているでござるな」

「しかもあの人なんでブリーフ? しかもなんか先の方が蒸れてませんか?」

「ちょっとあの人、どれだけ性欲を持て余してるのよ……」

「なんかきも~い」

「おいおめぇら言いたいこと言いすぎだろ!! つうか聞こえてっぞおいーーー!!」

 

 ジン、ライチ、カルル、バング、ノエル、ツバキ、ニューはレリウスを見て容赦なく罵倒する。

 ラグナはそんな無礼なみんなを見て思わず焦る。ちなみにレリウスの方を見てみると、仮面の下から液体が流れているのが見えた気がした。というか流れていた。

 レリウスはゆっくりとその場から去り、そして数分後、別のブリーフをはき替えてやってきた。

 しかしやっぱり先っちょが蒸れていたために、大きいマットの上に座ってプールに入ることに。

 全員が(帝も含め)レリウスをプールの中に入れるなと言ってきた。ラグナはひどいものを見た気になった。

 

「じ……じゃあ全員そろったので、みんなで騎馬戦をやろうと思う。二人一組のチームを組め。上に乗ったやつの頭に巻いた鉢巻が取られたら負けだ。まぁ……奪い取るのは鉢巻じゃなくてもいいけど……」

 

 ラグナのその言葉を聞いて、真っ先に反応したのは男共であった。なぜか遠くにいたハクメンもかけつけた。やつも男ということか……

 男達はダッシュで大きいマットを取りに行き、戻ってくるなり二人一組でチームを組む。

 チーム分けはそこまで時間がかからず、最終的にはこうなった。

 

 

 ジン(上)ツバキ(下)チーム

 バング(上)ライチ(下)チーム

 ノエル(上)ハクメン(下)チーム

 カルル(上)ニュー(下)チーム

 レリウス(上)ラグナ(下)チーム

 

 テイガーと帝はお休み。

 

「ってなんで男ばっかり上なんだよ!! 普通逆だろうが!!」

 

 なんと、全員がポロリを意識しすぎて自分たちが上になっているという状況に気づいていない模様。

 これではただのマニアックな騎馬戦になってしまう。

 と、その中で唯一男ではないやつがラグナの反論した。

 

「……なんで私だけ男たちに交じって上に乗ってるんですか? まさかみんなで私の水着を!?」

「おめぇのなんか興味ねぇよ、俺たちはロッククライマーじゃねぇんだよ」

「仮に障害、貴様のポロリを見てしまった時には、僕自身で自らの目を潰すつもりだから安心しろ」

「どういう意味じゃごらぁ!!」

 

 唯一の女だというのに、ラグナとジンは逆に見たくないものとしてノエルを扱う。

 もうここまで胸が小さいと女としても意識されないらしい、ノエルはひどく悲しんだ。

 そんなノエルはさておき、ラグナはどうにも納得していない様子。そんなラグナを見てニューはこう提案した。

 

「じゃあこうしようよ、素直にポロリをした方が負け。そのためにはどんな手段もいとわないってことで」

「なんでそんな男どもが上の騎馬戦でそんな危険なルールが適応されるんだよ!! てかそのルールだったらノエルが圧倒的有利じゃねえか!!」

「わああああああああああああん!!もういいもん! こうなったらてめぇらの水着全部奪い取ってやるんだもん!!」

 

 あまりにもひどい扱いに自暴自棄になるノエル。

 そして危険な騎馬戦に焦りを見せるラグナ。

 

「それじゃあ、せーの!!」

 

 だがそんなラグナの考えなどまるで聞く耳持たず、そのまま騎馬戦は始まってしまった。

 ツバキ、ライチ、ニューの目が戦の目へと変わる。

 そしてノエルを乗せたハクメンがおいてきぼりとなり、レリウスを乗せたラグナはみんなを止めに行く。

 

「さて、どうするノエルよ?」

「やつらの全員を壊滅させる!!」

「……はい」

 

 ハクメンはノエルの気迫に負けてしぶしぶ男たちの中に入っていった。

 

「このままじゃ帝を楽しませるどころでは……って、よく考えるとこっちのほうが帝が楽しめるのか……?」

 

 帝がいい男が好きなのかは知らないが、逆に考えればこっちの方が帝のウケがいい気がしないでもない。

 ラグナが色々考えると、さっそくラグナ側に異変があった。

 なんとレリウスのブリーフが、ジンに引っ張られていた。

 

「おいぃーーー! なにやってんだよ!?」

「まずは貴様から消えるがいい!!」

 

 一歩も譲らないジン、すると今度はバングがレリウスのブリーフを引っ張る。

 それに続くようにカルルとノエルもレリウスのブリーフに食らいついた。

 

「なんでお前らこのおっさんに集中攻撃するんだよ!?」

 

 なぜかみんながレリウスばかりを狙う。

 しかも狙うその目は全員真剣そのものであり、それぞれの思いを口走る。

 

「うるさい! この海パンは僕のものだ!!」

「拙者がもらうでござる! これは男と男の戦いでござる!!」

「負けられない!! 僕にも意地があります!!」

「私だって負けるわけにはいきません! 私こそがこの騎馬戦を制します!!」

 

 ジン、バング、カルル、ノエルが引っ張り合うそのブリーフは、もうブリーフの原型を留めていないほどに伸びきっている。

 そんな中でもこのレリウス、なんの表情も変えずに意気揚々としていた。

 あげくのはてには、ブリーフを引っ張られたまま缶コーヒーを買いに行くほどである。

 

「おい! あんたのブリーフはいったいどうなってるんだよ!?」

「あぁ言っていなかったか? これは我が社が開発した新作のブリーフ、『アークエネミー084 伸縮・ゴムゴムのブリーフ』だ」

「なんだそれ!? てかその表現はまずい!! 某有名な海賊アニメを連想させるからやめたほうがいいぞ!!」

 

 麦わら帽子をかぶった何かを連想させるブリーフを穿きこなすレリウス。

 そしてブリーフが完全に伸びきったところで、レリウスはプールの方向を見る。

 そして、プールにいるラグナ達の元へとジャンプし、ノエルとラグナ以外の水着を全て奪い取った。

 

「ば……ばかな!?」

「拙者の赤フンが!」

「僕の海パンが!」

 

 水着を奪われ唖然としている3人に、レリウスはこう締めくくった。

 

「クローバー家は代々、パッツリ後……もっさりブリーフ派だ」

 

 その姿は神々しく、他の3人は拝むようにレリウスを見た。

 そしてレリウスは帝を連れ出して、立ち去る前にラグナ達を一瞥する。

 

「ラグナ・ザ・ブラッドエッジ、縁があればまた会おう」

 

 レリウスはそう言い残し去って行った。

 あいつらははたして何をしたかったのか、何をしにここまでやってきたのか……。

 

「んだよあの野郎……わけわかんねぇ」

「レリウス・クローバー、やつも相当手ごわい相手と見た」

 

 ラグナとテイガーは再度レリウスの、帝の、統制機構の認識を改める。

 このプールにやってきたのは、果して何かの警告だったのか……。

 それを知るのは、先に手を打ってきた彼らだけなのであった。

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