蒼魂~ブレイブルー銀魂パロ~   作:トッシー00

16 / 17
第16話です。

※タグにあるとおり、ブレイブルーと世界観を共有する"XBLAZE"のキャラが出てきますよ。
発売からある程度は経ちますがプレイしていない人にはネタバレになる部分があるかもしれません。注意してください。


蒼にブルーもブレイズも関係なし

 イカルガ連邦にある第八階層都市『ワダツミ』。

 そのワダツミ内の一画にある新横崎市。若者の間では『しんよこ』という愛称で親しまれている。

 そんな新横崎市の外れに佇む一軒家。『姫鶴家』があった。

 姫鶴家には現在、姫鶴由貴とその妹である姫鶴ひなた。そして居候の篝橙八が住んでいる。

 かつて第二次魔道大戦で統制機構とイカルガ連邦が戦争をしていた時、ワダツミの研究者であった橙八の両親は戦争に巻き込まれた。

 唯一生き残り身寄りがなくなった橙八を引き取ったのが、姫鶴家である。

 もう十年と居候をしている橙八は、すっかり姫鶴家の家族となっていたのだ。

 

 現在高校生となった篝橙八。

 両親を無くした不幸な少年の面は全くといっていいほど表には出ておらず、ごく普通の学生として毎日を送っていた。

 そんな彼の姉変わりである由貴も、橙八を大切な弟として大切に見守ってきた。

 大切な弟である橙八。そんな彼がある日、由貴にこんな報告を持ちかけてきたのだ。

 

「由貴ねえ。ちょっと話があるんだけどさ」

「え? なになに、橙くんから話があるなんて珍しいねぇ」

 

 そう興味津々に食いついてくる由貴。

 近くの病院で働いている彼女は、日ごろの疲れを表に出すことはなく、それ以上に毎日が元気。

 その活発な性格と少し男勝りな雰囲気が、いつも橙八とひなたを心から支えていた。

 いつもは仕事で疲れて帰ってくる由貴を気遣う橙八は、必要以上に自分から話を持ちかけたりはしない。

 それだけに、由貴にとって橙八の話は疲れを癒す材料になるものだった。

 

「実は……その。はずかしいんだけどさ……」

 

 なにやらもじもじしている橙八。

 これは思っているより重大なことかもしれないと、由貴は内心ワクワクしだした。

 

「その。僕……彼女ができました!!」

 

 その橙八の報告に、思わず由貴は驚きを隠せなかった。

 女の子と縁があっても、恋沙汰にはこれほどかと言うほど疎かった橙八。

 それだけに、橙八に彼女ができたことを、由貴は自分の事のように喜んだのであった。

 

「ほ……本当に?」

「う、うん。つい最近、知り合ったんだ」

「そ~うなんだ~! 橙くんにも等々春が来たんだねぇ~。お姉ちゃんうれしいな、いや~本当にうれしいよ!!」

 

 心から喜ぶ由貴を見て、橙八は勇気を振り絞ってよかったと心から思った。

 そして自分以上に喜んでいる由貴は、部屋中をせわしなく動き回る。

 

「最近の橙くんなら近々はと思っていたけど。いやぁ、今夜はお赤飯だね。お姉ちゃん料理得意じゃないけど今日ばかりは張り切っちゃうぞ~!!」

「いやいや由貴ねえ。疲れてるんだからそんな張り切らなくていいよ~」

「何言ってんのさ橙くん。弟の門出を祝う時は、お姉ちゃんは限界を超えてでも張り切るもんなのさ!!」

「門出って……。いや料理はいいよ、それよりも……疲れてるところ悪いんだけどさ。その彼女を由貴ねえに紹介したいなって」

 

 なんと橙八は彼女ができたばかりだというのに、さっそく家に招いているのだという。

 

「え!? 来てるの!?」

「うん。すぐ呼んでくるから、ちょっとだけ休んでてよ」

 

 そう言って、橙八は少しの間茶の間から出ていってしまった。

 一人残された由貴は、思わず緊張の色を隠すことができずにいた。

 このあと弟が連れてきた彼女に会うとなると、彼の姉としてどう振舞うべきか、由貴は考えるが纏まることはなかった。

 

「どうしよう~。あ~緊張するなぁ。橙くんの彼女か……」

「あ、お待たせ由貴ねえ!!」

 

 緊張している間というのは、時間の流れが早いものである。

 由貴は未だ覚悟をできずにいたが、時間は待ってはくれない。

 

「い、いいよ橙くん! お姉ちゃんはどんな女性でも受け止められる自信があるよ~!」

 

 そういつも以上に大声で言うと、いよいよ橙八が……噂の彼女を連れてきた。

 

「紹介するよ由貴ねえ! これが僕の……彼女です!!」

 

 そう連れてきた橙八の彼女は……ゲームのディスプレイに映った美少女キャラクターだった。

 

-----------------------

 

 後日。

 

『このうつけが。もっと私を敬えこのバカ』

「いてっ! 痛いよ冥~」

 

 そうゲーム内の彼女にデレデレする橙八。

 橙八がプレイしているゲームは、最近世間で話題の3ZS(ゼェーエス)のソフト『ラブレイズX』。

 発売以降爆発的な売り上げを飛ばし、世間の男性を虜にしてしまった問題作である。

 そのゲームをある日、橙八の親友である瓶割晃に進められた末、こんな結果になってしまったという。

 結局のところ、橙八が連れてきたのは二次元の女性。要は空想の彼女だったのだ。

 あれほど女性とのフラグを建てておきながらどうして二次元に逃げてしまったのか。

 由貴は姉として悩みに悩んだ末に、カグツチから顔なじみのラグナを家に呼んだ。

 

「ラグナくん。こういうわけなんだよね……」

「いや、こういうわけなんだよねって言われても。まぁ本人が頑張ってるみたいだし、お邪魔みたいだから俺は帰るわ……」

「ビッグバンスマーッシュ!!」

「ぐほっ! それおめぇの技じゃねぇだろ!!」

 

 由貴の助けを放棄し帰ろうとするラグナを、由貴は背中からおもいっきり攻撃。

 今こうしてゲームと現実の間にできた異次元に飲みこまれてしまった橙八を救えるのは、同じ主人公であるラグナしかいない。

 姉妹作の主人公が二次元の美少女と恋に落ちてしまったとなれば、ネット広告で過剰に宣伝までしたXBLAZEの評判にひびが入ってしまう。

 

「彼女を紹介したいって突然あれを持ってきて、以来ずっとあんな感じで……」

 

 弟の霰もない姿を数日見続け、由貴は身体も心も疲れ果ててしまっている。

 そんな由貴を気遣うように、奥から目眼をかけた茶髪の少女、由貴の妹のひなたがやってくる。

 何気ない日常や汚れない平和といった言葉が似合うように、普段から優しさに満ち溢れている少女。

 

「心配ないよお姉ちゃん~。家の近くの野良犬も発情期の時は人形にずっと腰振ってたよ。橙八ちゃんも時期が過ぎればきっと収まるよ」

「駄目だよ! 橙くんは一年中発情期だもん!! ゲーム発売してからハーレム主人公体質が身に染みちゃってるし!!」

「君たち橙八くんのこと一体なんだと思ってんの……」

 

 とても一つ屋根の下で暮らしている家族とは思えない発言に、ラグナは呟くようにツッコミを入れた。

 

「恋愛ゲームって、男の人をあんなにしてしまうものなのラグナくん? 性犯罪者のラグナくんなら詳しいんでしょ?」

「誰が性犯罪者だ!! 性はつかねぇし!! つかしらねぇよそんなもんやったことねぇんだから!!」

 

 理不尽な質問をされた上に余計なことを言われ、ラグナは少しばかり憤慨する。

 その間も、橙八は周りなど目もくれずに恋愛ゲームに夢中になっている。

 あの真面目で女性に目もくれなかった橙八を変えてしまったラブレイズX。

 晃としては女性に疎い橙八の特訓という名目で進めたのだが、特訓どころの騒ぎでは済まなくなってしまった。

 ちなみにそんな晃も、最初はゲームだと舐めてかかった結果。現在では抜け出せなくなっているのだという。

 

「ギャルゲーというのは由貴さん。個性的な美少女達が出てきて、それを落とすゲームですよ」

 

 と、噂をするとこの事態を作った元凶。瓶割晃が姫鶴家の襖からスッと現れた。

 

「なにこいつ当たり前のような登場してんの? なんでずっと居たみたいな顔できんの?」

 

 そんな晃を、ラグナは冷めた目で見つめる。

 

「モテない男たちにとっては傷つかずに恋愛を楽しめる、夢のようなコンテンツなんです」

「へぇ~。詳しいね晃くん~」

 

 そう説明する晃を、ひなたは特になんとも思わず褒めた。

 

「ま、橙八は別にモテないわけでもないんだけどよ。テンプレよろしく朴念仁な橙八にお兄さんがどうしても力になってやりたくて。下手なギャルゲーには毒舌レビューを書くことで有名な俺でさえドハマりしたわけで、薦めた結果まさか橙八がここまでのめり込むとは。俺の彼女の久音ちゃんも驚いてます」

「お前のせいで私の大切な弟は汚れてしまったじゃないかどうしてくれんだぁぁぁぁぁ!!」

 

 そう鬼のように叫び、由貴は元凶である晃の3ZSを奪って思いっきり外にぶん投げた。

 

「あ~!! 久音ちゃんがぁぁぁ!!」

 

 投げられた3ZSを必死に外まで取りに行く晃。

 茶番はそこまでにしておき、ラグナは橙八を現実に戻す方法を取ったのかを、由貴に尋ねる。

 

「接触は試みたのか?」

「隙を見てゲームを奪おうとしてみたんだけどさ、そしたら橙くん珍しく怒って、目は真っ赤に染まるし手は黒く染まるしで、気がついたら私気絶してたのよ」

「完全にゲームの魅力に浸食されちまってんなぁ橙八は。奴を救うためにはまず、奴と同じ次元に飛び込むしかねぇようだな」

 

 同じゲームとやっている身として、晃はそう分析をした。

 その晃の意見に対し、ラグナが戸惑ったように問う。

 

「いったいどうやって……」

 

 そのラグナの問いに、晃は立ちあがり、当たり前のようにラグナに告げた。

 

「……決まってるだろ。ラグナ・ザ・ブラッドエッジ」

 

-----------------------

 

『ラブレイズXの世界へようこそ。まずは主人公である、あなたの名前を打ち込んでください』

 

 そうゲームのシステムボイスに従い、ラグナは自分の名前を名前欄に打ち込む。

 橙八を現実世界に呼びもどす方法。それはラグナ自身も、ラブレイズXをプレイすることだった。

 ラグナと晃は新横崎市にあるファミレスに移動し、そこでゲームのイロハを晃から学ぶことに。

 

「なんで俺がこんなゲームやんなきゃいけねぇんだよ! こんなガキのゲームにハマれるか!!」

 

 ラグナはふざけるなとばかり文句を言っている。

 そんなラグナに、もう決まったことだと晃は真剣な眼差しでラグナを諭した。

 

「ハマるかハマれるかの問題じゃない。同じ次元に立てと言ってるんだよ」

「てめぇが橙八を説得すればいいだろうが、親友なんだろ? 俺みたいな赤の他人どころか出演してるゲームが違う奴に説得させてどうすんだよ」

「俺はあいつをこうしてしまった元凶だ。俺の言葉じゃもうあいつは直らないだろうさ」

 

 晃では橙八を説得できないという。

 今の橙八を救えるのは、同じく主人公であるラグナしかいないのである。

 ラグナはしぶしぶゲームを再開する。

 今映し出されている場面は、三人いる彼女候補を選択する場面だ。

 

「ラブレイズXは三人のヒロインから一人を選択し、その子と口説き落とし本当の恋人同士であるかのように甘い毎日を楽しむゲームなんだ」

 

 そう説明を終えた後、晃はこのゲームの核である三人のヒロインの紹介に映った。

 

「一人目は『久音=グラムレッド=シュトルハイム』。イシャナに通う金髪のエリートお嬢様で、瓶割晃くんの彼女だ」

「なんでおめぇが設定の一部に食い込んでんだ。おめぇが勝手にこのキャラ選んだだけだろ」

 

 どこかおかしい部分はあれど、それを無視して晃は二人目の紹介へと移る。

 

「二人目は『天ノ矛坂 冥』。主人公の下級生で副業として陰陽師をやっている少女だ。橙八の落としキャラだな」

「どこぞのウサギに似てやがんな。あんなタイプの女一番男として苦労すんぞ」

 

 ラグナは自分の知人とキャラクターを重ねながら、二人目までを見る。

 特にラグナにとっては惹かれるキャラはいない。それだけラグナはこういったものに疎いからだ。

 とすると、残りは三人目ということなのだが。

 

「あいつと同じキャラだと嫉妬を招くから避けた方がいいな。そして俺の久音もお前にはやりたくないし……」

「なんでおめぇが勝手に決めてんだよ」

「となるとお前は必然的に三人目のキャラ」

 

 晃に言われ、ラグナは右矢印ボタンをタッチする。

 すると、問題の三人目のキャラクターが画面に現れた。

 

「これが三人目の、『赤城ピ○檎』さんだな」

「ちょっとまてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 突如現れた三人目があまりにも大物すぎたため、ラグナは瞬間的に待ったをかけた。

 

「なんかこのキャラだけタッチが違うんだけど!! つかこの流れだと三人目は機械系の『Es』とかじゃねぇの!? じゃなくてもなんで『赤城林檎』じゃねぇんだよ!! なんで『ピ○子』なんだよ!?」

 

 マシンガンのように出てくるラグナのツッコミ。

 これはいったいどういうことなのだろうか。

 なぜ三人目だけ思いっきりキャラが外れているのか、それが晃の口から語られた。

 

「最初はまはら~じゃの林檎さんにオファーを出したらしいんだが、本人が「カレーのゲーム以外には出る気がしないな」と頑なに断ったらしく、開発途中だったためやむを得ずこうなったらしいぞ」

「結果的に隅っこの小さなカレー屋より大御所の定食屋オファーする羽目になっちゃってんじゃねぇか! そっちの方がめちゃくちゃギャラ高いだろ!」

「大丈夫ちゃんと上手く誤魔化してるから。街外れの中華屋で働く女将。若くして夫の卓○を無くした未亡人だ」

「完全にピ○子じゃねぇか!! どこ誤魔化してんだよ中華屋を誤魔化せ!!」

 

 ラグナがどう言おうが、三人目はこの『赤城ピ○檎』である。

 流れのままにこのピ○檎にさせられそうになっているが、当然ラグナもこれには反対する。

 

「ふざけんじゃねえよ、こいつだけ完全に世界観別もんじゃねえか! 俺も久音か冥がいい!!」

「といってもだなぁ。その二人は格段に難易度が高いぞ。大丈夫かよ」

「いいよ別に。その方が落とした時スカッとするだろ!!」

 

 少しくらい難易度が高くても、ピ○檎を選ぶくらいならとラグナは別のヒロインをタッチする。

 だがそこで晃は説明不足をしていた。

 難易度が高いというのは、キャラ攻略の話ではなかったのだ。

 

「そういうことじゃなくてな。ヒロインを選択するには飛来してくるヒロインを落とさないといけなくて」

 

 そう言い終わると同時に、ラグナのゲーム画面がシューティングゲームへと移行した。

 

「なんでシューティングゲーム!? 」

「これに中々久音と冥が出てこないんだよ」

「出てこないどころか渡る世間はピ○檎だらけなんだけど!?」

 

 ラグナの戸惑っている通り、今ラグナのゲーム画面には大多数のピ○檎が占めていた。

 結果、ラグナの残機が流れるままにピ○檎の波に飲まれてしまい、ラグナはピ○檎を落とす羽目になってしまった。

 

「あ~あ。これでピ○檎ルート確定だ」

「これピ○檎しか選択肢ねぇだろ! おめぇらよく普通のヒロインに行けたな!!」

 

 この後、さっさと終わらせたいラグナの気持ちなどお構いなしに、様々な設定を決めるためチュートリアルが続く。

 キャラクターからの呼ばれ方や、ピ○檎の連れ子であるえ○りくんの口癖など、どうでもいい設定を決める時間が続き。

 最終的にラグナはやってられなくなり、3ZSを叩きつけ乱暴に電源を切ってしまった。

 

「おいおいラグナ。お前は女の扱い方がまるでわかってねぇな」

 

 そう悪態付いて、晃は自分の3ZSを取り出す。

 

「セーブもしないで電源なんて切ったら、彼女との関係性が悪化しちまうぜ」

「あぁ?」

「例えば俺の、さっき由貴ねえにしばかれて緊急停止しただろ? これを再開するとだな」

 

 そう晃は、3ZSの電源を入れると。

 

『もう、また乱暴に電源切ったでしょ? あれほど優しくしてっていったのに、もう知らない!』

 

 と、ゲーム内の久音がいじけて、後ろを向いてしまった。

 これにはラグナも少しばかり驚いていた。

 

「え? 何この子? ぷんぷんしてるよ。おこなの?」

「はっはっは。ごめんな久音~」

『ゆるしてほしいの? じゃあ……十回キスしてよ』

 

 そう久音が言うと、晃はゲームだというのに3ZSに十回、キスをし始めた。

 これがラブレイズXのリアルを追求した出来だとでも言うのか。

 しゃべらなければイケメンの晃が今、ゲームのキャラ相手に本気になっている。

 ラグナにはもう何が起きているのか理解できていない。

 

「見たか、ラブレイズXのスペックを。彼女達は画面の中に、本当に生きづいているのさ」

「しょ……所詮二次元だろ。今のおめぇかなりヤバかったぞ~。一回鏡で見て来いよマジ泣けてくるから」

「意地張ってないで。彼女に謝って関係を修復して来いよ」

「い、いいよ。だって俺の彼女ピ○檎だし……」

 

 ラグナは心からこうはなりたくないと必死に抵抗する。

 それが晃と同じく久音のような彼女とならまだ試しようがあるにも、ラグナの現在の彼女はピ○檎である。

 完全に絵面が悪すぎると嫌がるラグナだが、ものは試してみてはわからないと、晃に説得されること数分。

 

「彼女達は接するたびにプレイヤーの好みに変化していくんだ。これがラブレイズXの醍醐味でもある。今はピ○檎でも、いずれはお前の好みの女に変化するかもしれねぇぞ」

「いやいや、二次元だからね。でも……まぁお前がそこまで言うなら、もう少し遊んでみてみるのも悪くねぇかな。で? 電源つけてどうするの?」

 

 晃の巧みな話術に乗せられ、ラグナ自身も満更ではないように電源を付ける。

 

「さっきも見ただろ? 無理やり電源切ると彼女の態度は冷たくなるんだ。まずは機嫌を取らないと始まらない」

 

 晃の言う通り、ラグナのゲーム画面では、ピン檎が後ろを向いていた。

 

『急に電源を切るなんてひどいじゃない』

「本当だ。怒ってそっぽ向いてる。すげぇな」

 

 改めてゲームの出来栄えに感心しているラグナ。

 一方で、怒ったピ○檎はと言うと。

 

『あなたのせいで、あなたのせいで……』

 

 だが何か様子がおかしい。

 そして次の瞬間、画面内にこんな文章が浮かび上がってきた。

 

【彼女のえ○りが冷たくなってしまいました】

「おいぃぃぃ! 態度どころかえ○りが冷たくなってんぞ!! こんなもん機嫌どころか取り返しがつかねぇぞーーー!!」

 

 なんと電源をつけるとそこには、連れ子のえ○りくんが冷たくなっているというまさかの展開が待ち受けていた。

 これにはラグナも焦りを通り越していた。この状況、晃はこう分析する。

 

「どうやら乱暴に電源を切りすぎたらしいな。とりあえず謝れ」

「謝ってすむ問題じゃねぇだろ!!」

 

 だが謝らなければ始まらない。

 ラグナの気持ちの整理ができていない間にも、ゲーム内のピ○檎は言葉を発する。

 

『許してほしい?』

「す、すいません。許してください、悪気はなかったんです~!」

『じゃあ……般若心境百回読経してよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

「違うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 その凄みのあるピ○檎の言葉に、たまらずラグナは3ZSを閉じた。

 

「俺のラブレイズXだけ違う! 恋愛ゲームじゃなくてバイオ○ザード見たいになってるーーー!!」

「息子さんが亡くなったんだ。しばらくはそっとしておくしかないだろうな」

「しばらくっていつくらいだよ! リアルタイムに対応してんだろ!? 二年くらい開けねぇぞ!!」

 

 こうして最悪のスタートを切ったラグナ。

 だが終わりはまだ遠い、これはまだ始まったばかりだ。

 最後に晃は、あるチラシをラグナの前に提示する。

 

「な……『ラフレイズX俺の嫁コードエンブリオ』ってなんだよ……」

「一週間後に開かれるラブレイズXの全国大会だ。当然橙八もそれに参加するだろう。その大会で橙八を倒せ。あいつを現実へ引き戻すにはそれ以外に方法はない」

「そんなこと言ったってよ……」

「打ち砕くんだよ。橙八の虚妄を、ブレイブルーの主人公であるラグナの虚妄を持ってしてな!!」

 

-----------------------

 

 そして大会当日。

 この日までラグナは、言われた通りにラブレイズXを片時も手放さずにプレイし続けた。

 朝から晩まで、ピ○檎との最悪な仲を演じ続けた。

 朝はピ○檎に起こされ、咎追いから逃げながらもピ○檎の機嫌を取りつづけ。

 そして逆らえばえ○りをバックに嫌味を言われ続けられ。

 もうラグナの精神は限界に達していた。相当の気疲れを身体に溜めながら、大会当日の朝を迎えるラグナ。

 

「もうやだよ。何かある度に呪いの言葉かけてくるし。どんな恋愛ゲームだよ。何がXBLAZEの名誉のためだよ。もうしらねぇよ、橙八もコードエンブリオも何もかも知るか!!」

『私だってごめんだよ。なんで息子を手にかけた犯罪者と、恋愛なんてしなきゃいけないんだか』

 

 そして気がつけば、ピ○檎はゲームの画面から飛び出し、いつしかラグナの隣に現れるようになっていた。

 

「どうやらお前にも見えるようになったようだな」

 

 大会会場にて。

 なんとラグナのピ○檎だけでなく、晃の久音まで具現化していた。

 更に周りを見渡せば、それぞれ具現化した彼女だらけ。もはやここは、変人の巣窟であった。

 

「なんでお前の彼女まで具現化してんだよ!?」

「傍から見れば俺らはただゲームをしているだけだ。だが俺たちだけが見える彼女が具現化しているこの世界こそ、ラブレイズXの境地。人それを……蒼の継承者と呼ぶ」

「呼んでたまるか!! それただのイっちゃってる人!!」

「蒼の継承者に至っていない者は、ドライブの使えない一般兵士に等しい」

「そんな大げさなもんなの!? 現実じゃ廃人に等しいけど!!」

 

 この会場で一人場に溶け込めていないラグナは、ただ他の参加者に圧倒されるしかなかった。

 

「この大会はかなりレベルの高い猛者ばかりが集まってるな。それぞれ自分好みの彼女を完璧に作り上げてきている。だが、ラグナの彼女も相当の異彩を放っているぞ」

「異彩どころか異臭放ってんだけど!! あいつだけ魔素に犯されて黒いオーラ醸し出してんだけど!!」

 

 完全に美少女にまぎれ、ピ○檎は違う意味で場の注目を集めていた。

 だがラグナとてなにもしていないわけではない。きちんとステータスは上げてきたのだ。

 

「お前の彼女だって。お前好みにベストポジションに仕上がってんだろ?」

『背中に気をつけな。かならずお前を……闇に葬り去ってやる』

「この通りですけど……」

 

 言葉のチョイスがラグナに似ているだけであって、特にラグナ好みに仕上がっているわけではなかった。

 

「なるほど。今流行のヤンデレというやつか……」

「やめてくれ。ヤンデレのオプションは一人いれば十分だから、これ以上俺にヤンデレ付きまとわせないでくれ。なぁ頼む、おめぇの久音と俺の病んだピ○檎―13交換してくれよ」

 

 そうラグナが晃にお願いをすると、晃より先に久音がラグナを突っぱねた。

 

『嫌よ。私は晃がいいんだもん』

「だよねぇ~」

「なに可愛いこと言ってんだこの女ぁ! お前の彼氏リアルにヤンデレだったからね! 女欲しさにD発症者にまでなった男だからね!!」

「おいてめぇ。なに久音にへんなこと吹き込んでんだよ……」

 

 ラグナの告げ口、これには晃も怒りを露わにする。

 喧嘩に発展しそうになる二人。その瞬間、何者かが二人の間に割って入る。

 

「やめなさいよ。ここはくだらない喧嘩をする所じゃないでしょ」

 

 二人に付きつけられる鋭くとがった氷の爪。

 氷を操る女性、そして金髪でサングラスをかけている。その姿に二人は見覚えがあった。

 その女は、イシャナの魔道協会の十聖、その8番に属する優秀な魔術師。

 

「まさか……十聖の"アハト"」

 

 そうラグナが、そいつの顔を見た瞬間。

 

「誰これぇぇぇぇ!!」

 

 その女はアハトではなかった。

 正確には、アハトをベースにしたピ○檎であった。

 そんな偽アハトは、この会場にいるであろうご主人の元へと帰っていく。

 行く先を見ると、そこにいたのは同じく魔道協会の十聖である、3番目に属する屈強な男性。

 肉体強化のスペシャリストであるドライであった。

 

「アハト!!」

『も~う。どこに行ってたのよ~』

「だって~。アハトが私のそばから離れるからわるいんだy」

 

 そう偽アハトに甘え始めた瞬間、その光景をラグナと晃に見られる。

 するといつもの紳士的な態度に早代わりして、誤解を解こうとするドライ。

 

「な、なにをやっておられるのですか!! あなたたちは!!」

「いや、それこっちの台詞」

 

 動揺するドライ。

 そしてそれを追い詰めるように、冷めた口調で話すラグナ。

 

「つかそれ。ひょっとしてアハト?」

「違いますよ!! そんなわけないでしょ!!」

『違うわよ。わたしはドラちゃんの彼女じゃないよ、ドラちゃんのママですよ~』

「あぁ! 勝手にしゃべらないで!!」

 

 十聖ともあろう者の醜態を見て、かなり引いた様子のラグナ。

 完全に失脚したドライを見て、ラグナはなおも冷めた様子で見つめた。

 

「そっかぁ。普段はチームの常識人気取ってるけど。内心ではアハトに甘えたかったんだ……」

「違うと言っているでしょ!!」

 

 違うと叫びながらも、大衆の前でドライとアハトは霰もない姿を晒してしまった。

 この一部始終を見て、ラグナは内心焦りまくる。

 これでは女の好みどころか性癖までばれてしまう。

 そして今、ピ○檎を彼女にしているラグナはどういう風に見られているのだろうか。

 

「なぁあれ。お前にいつもくっついてる女じゃね?」

 

 そう晃に言われて、ラグナが今とは反対方向に目を向ける。

 そこには、銀髪を後ろに結えた眼帯を付けた赤い目の少女が立っていた。

 明らかにラグナが見たことのある奴であった。

 

「あれ……ニューじゃねぇのか?」

「良く似てるが。また誰かが作った彼女じゃないのか?」

「いやいや、あんな怖い女好きな奴なんていねぇだろ。どこの命知らずだよ」

「でも、彼氏のところへ向かったぞ」

 

 その一部始終を見ていると。

 ニューに似ている彼女が向かった先には、銀髪で尖った男がいた。

 ラグナが一番よく知っている人物の風貌。そしてその顔は……ピ○檎であった。

 

「もうどこいってたのラグナピ○檎~。もうあそこもピンピンしちゃうよ~」

「ラグナピ○檎って誰だぁぁぁ!!」

 

 ラグナは後ろからニューを思いっきり蹴り飛ばした。

 これは完全に逆の発想で、ニューに似せて作られた彼女ではなく、ニュー自身がピ○檎をベースにラグナを作成していたのだった。

 

「なんでおめぇがいんだよ! ここは彼女自慢する大会だぞ! おめぇ女だろ! なんで無理やり彼氏を作成してんの!?」

「う~ん。何を言っているのかチンプンカンプン。私はラグナが作り上げた理想の彼女。それ以外のデータは与えられていない。エラーエラー」

「なんで最後だけ素体っぽくなってんだよ腹立つ!!」

「いい加減にしてくれないかな。ニューの彼氏はこのラグナピ○檎なの。今更ニューが欲しいって嘆いたって……もう遅いんだからね! あはははははははは!!」

 

 そう宣戦布告して、ニューはその場を去って行った。

 

「何しに来たんだあの女。幻覚の上にさらに幻覚被せてきたぞ……」

 

 イカれたニューはさておき、このままではピ○檎使っているやつは完全に異質だと思われてしまう。

 ラグナは再度、彼女の交換を晃にお願いして見ることに。

 

「なぁ。やっぱり彼女交換してくれねぇか?」

『いやよ! 私は晃がいいのよ!!』

 

 ラグナが交換を申請すると、それ以前に彼女が拒否反応を示す。

 これでは晃の了承などお構いなしに、彼女がラグナに付くことはないだろう。

 

「そういうことだ。諦めてピ○檎と一緒に優勝を目指せ。この久音は俺に一途、"絶対に"鞍替えはしない!!」

 

 晃が自信たっぷりに宣言し、久音を抱きしめる。

 するとそこに、また新たな参加者がラグナ達のところへやってくる。

 

「あれ~。巷で噂のラグナ・ザ・ブラッドエッジじゃね? やっべ本物に会っちまったよ~。一回会ってみたかったんだよね最強の死神に~」

 

 そう軽い口調でこちらにやってくる人物。

 紫色のパーカーを着て、右目に眼帯をつけている人物。

 そしてその特徴的な爪は、鋭い切っ先がギラリと光っている。

 その男の名はリッパー。このワダツミの新横崎市に潜む最悪の殺人者である。

 

「つかようやく見つけたじゃん。マジ探すの苦労したんだって手間とらせんなやボケがよぉ」

「てめぇ……リッパー!!」

 

 新横崎市に住まう住人として、晃がリッパーに敵意を向ける。

 

「あれ? 橙八ちゃんのおまけもいんじゃんよ」

「おいおい、てめぇも大会に出んのか? なにか変なこと考えてねぇだろうな」

「そうカッカすんなや殺すぞ~? もちろんに決まってんじゃんよ、つかあんたらも?」

 

 どうやらリッパーは純粋に大会に出るためだけに来たようだ。

 

「あぁそうだ。ここにいる久音と……」

 

 と、晃がリッパーに久音を見せびらかそうとした時。

 ラグナは愚か晃自身すら予想できない、とんでもない事態が発生した。

 なんと久音は、リッパーに向かって膝をつき、忠誠の態度を取ったのだ。

 

『お帰りなさいませ。ご主人様……』

「……え?」

 

 その久音の言葉に唖然とする晃。

 一方で、リッパーはニヤリと笑って久音を見下す。

 

「どうだった? 好きでもない男に仕えた気分はよぉ? ヒャハハハハハハハ!!」

『とても切のうございました。でもこれもご主人様への忠誠の証と思うと、不思議と子宮から喜びが湧いてまいりました』

「ふん! つまんねぇこと言うんじゃねぇよこの※※豚がよ。マジつまんねえんだよ切り刻むぞマジで」

『もう離さないでください。ご主人様~』

「どうだかな~。つまらなかったらデータごと切り刻むまでだしな~」

 

 その光景を、ラグナと晃は呆然と見ているしかできなかった。

 そして意気消沈した晃は、ラグナに屈指のお願いを試みる。

 

「……ラグナさん」

「彼女なら交換しねぇぞ」

「お願いだぁ! え○りくんだけでもわけてくれぇぇぇ!!」

『いやです』

「「しょうがないじゃないか」じゃないんだそこは!!」

 

 と、一悶着があったその時。

 突如入り口ゲートから、人の波を割って現れる男と女が一人。

 それはとてつもなくまぶしい光を放ち、人々の視線を集める。

 そこにいたのは、スーツで決め込んだ橙八と、白く輝くワンピースを着た冥の姿が。

 その二人が放つ圧倒的空間に、人々は心底圧倒されていた。

 そんな二人に、はたしてラグナは勝てるのだろうか。

 

「俺は……勝てるのか。俺のこの貧相な虚妄で、奴のあの巨大な虚妄に!!」

 

 BLAZBLUE主人公のラグナ。そしてXBLAZE主人公の橙八。

 舞台は違えど、同じく蒼の物語の主役を飾る二人の対決。

 果たしてラグナは勝つことができるのだろうか。元祖蒼の継承者の意地を見せることができるのか。

 そして、ラブレイズXに囚われた橙八は、無事に現実に戻ってくることができるのか……。




リッパーの部分はジンにするかでけっこう悩みました。
が、リッパーの中の人がけんいちくん(38)さんだったので、これは使うしかないだろうと思いリッパーでいくことにしました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。