前回のあらすじ。
XBLAZEの主役である篝橙八が、晃の勧めで始めたギャルゲー。ラブレイズXにのめり込んでしまった。
最初は女に対して疎い彼に女心を学ばせる予定だったが、気がつけば洗脳されたようにラブレイズXの中の天ノ矛坂冥に話しかける毎日。
更に言うと、その元凶を作った瓶割晃自身も、ラブレイズXにハマってしまう始末。
このままでは橙八が蒼の物語の主人公としての矜持が危ういと、先輩であるラグナがワダツミへとやってきたのだが。
そこで彼に与えられた試練。それは橙八と同じ舞台に立ち、彼の虚妄を打ち砕けという物。
しかしそこでラグナに与えられた彼女は、渡る世界はなにがしに出てきそうな定食屋の主人、赤城ピ○檎だった。
ゲーム内では一番人気の無い彼女を使い、ラブレイズX俺の嫁コードエンブリオという大会で優勝し、橙八を倒せという無茶もいい所。
はたしてラグナは蒼の物語の主人公として、この騒動に終止符を打てるのか。
そして、真の蒼の継承者はどちらの手に渡るのか……。
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「みなさんお待たせしましたーーー!! これより……ラブレイズX俺の嫁コードエンブリオの予選を始めたいと思いますーーーーーーーー!!」
司会の人物が大会の開始を口にすると、周りの参加者が一斉に雄たけびを上げた。
この大会会場には、蒼の継承者達が己の彼女を具現化させている。
それぞれの魂が蒼炎に燃える中、予選は三グループに分かれる。
冥グループ。久音グループ。そしてピ○檎グループ。
冥と久音には大量の参加者が集まったのに対し、ピ○檎グループにはラグナとニューとドライの三名。
この時点でラグナは勝利の兆しすら見えなかったらしいが、ひとかけらの奇跡を信じて祈ることにした。
そして最初は冥グループから。橙八もそこに属している。
ここで橙八が負けてくれればラグナがわざわざ手を煩わせることはないのだが……。
「テーマは"公園でのデート"です!! それぞれが冥ちゃんとのラブ力を見せつけ、生き残った者が勝利です!!」
そうルールが発表され、最初の予選がスタートした。
するといきなり、上級者のプレイヤーが公然の目の前で冥と顔を近づけ。
そして舐めまわすようなキスをし始めた。
「クフフフフフフハアハハアハハ!! この総プレイ時間5000時間のこの私に勝てるものなどいまい!!」
そう指にタッチペンを加え、ほぼ襲う勢いで冥といちゃつくプレイヤー。
それを見せつけられ、自分の彼女をリッパーに奪われた晃は実況する。
「あれは……。人目0でポイントが最高値に達し、彼女が発情時のみ起こる言われる、不廉恥キス!!」
「なんだそりゃ!! 発情ってほとんどエロゲじゃねぇか!!」
3ZSで一般販売もされているゲームにもかかわらずそのひどい要素にツッコミをいれるラグナ。
だが大会は続き、そのあり様を見せられた他のプレイヤーは次々と幻滅して、彼女の具現化を解いていく。
もはやこのまま冥グループは決まってしまうのか、そう思われた時だった。
「なっ!」
そう驚くプレイヤー。
自らが見せつけた超テクニックの中、それに押されることなく前を歩く男。
そう、篝橙八だ。なにやら彼はもじもじしながら冥と一緒に公園を散歩している。
ここでは彼女との愛を見せる場。だが、その距離感はどこか冷めているようにも見える。
「……おい篝。デートだというのに会話一つすら無しか。貴様はどれだけ不器用なのだ?」
「ご、ごめん……」
不器用な橙八、しかし文句を言う冥も充分不器用である。
なんの会話もなく、手も繋がず公園を歩くだけの二人。これでは周りにラブ力を見せつける話ではない。
こんなちんけなプラトニックでは、このブロックの勝者は先ほどの犯罪ぎりぎりのテクニックを見せたモブプレイヤーとなってしまう。
そうなっては、橙八は主人公としての立場などあったものではなくなってしまう。
「勝った。あのごぼう男固くなりすぎだクハハハ。これで冥ちゃんは僕一人だけの物なのだ!!」
すっかり勝利を確信してしまったモブプレイヤー。
そんな中で、橙八の妄想はまだ砕かれていない。何か策でもあるのだろうか。
「な、なんか喉が渇いて来ちゃったな」
「しかたないな。私のおごりだ。お茶でも御馳走してやろう」
そうツンな態度で冥は販売機で小さなお茶を一つ買い、橙八に手渡した。
二人いるのに一本だけしか買わない冥に、橙八は疑問を抱く。
「冥、これお茶一本しかないよ?」
「なんだ? 私もお茶が飲みたかったから、飲みたいのが同じならば一本でいいだろうが」
そう強気な口調で言う冥。だがその頬はどこか赤くなっている。
この光景、他のプレイヤーたちはすぐさま察していた。
そう、これは間接キス狙いだ。先ほどのプレイヤーのディープキスに対し、橙八はあえて間接キスで対抗しようというのである。
その橙八の作戦を、晃は律儀にも説明し始めた。
「橙八のやつ考えたな。この会場にいる審査員から参加者にいたるまで間違いなくDTだ。DTにとってディープキスなんてのは異次元ものでいうドラゴンやペガサス、二次元美少女のような想像上の産物と変わらん。だが関節キスならば、青春で一度は経験した好きな子のたて笛を舐めたり、ジャージを履いたりするようなリアルな行為に等しい。あいつそこの共感を狙いやがった!!」
「お前ひなたにそんなことしてたのか?」
解説しているようで自分のやっている最低な行為を次々とばらし続ける晃。それを聞いてすぐに由貴にチクらなければならないなと本気で思うラグナ。
と、プレイヤーたちが湧いている最中でも大会は続いている。
だが肝心の橙八はというと、緊張しすぎていたいのかボトルを持つ手はぶるぶるに震えてしまっているし、口からお茶がごぼごぼこぼれまくっている。こうなってはもう見れた物じゃない。
「どんだけあいつ緊張してんだよ。これたかがゲームだよ。あいつゲームの関節キスにどんだけ興奮してんだよ。よくそんなんでハーレム主人公の領域に足踏みいれられたなおい……」
橙八を見てラグナは本気で呆れる。
そして橙八は、せっかく買ったペットボトルを下に落としてしまった。
そんな橙八のあられもない姿を見て、冥は見下すようなジト目で橙八を見つめた。
「ごごごごめん冥。すぐに新しいの買うから」
「……もういい。貴様という奴は」
完全に冥は引いてしまったようだ。
これではもう橙八の妄想も砕け散るのも時間の問題。
先ほどのディープキスを見せつけたモブプレイヤーも、それを見て勝利を確信する。
「勝った! これで冥ちゃんは僕のも……なっ!?」
その瞬間だった。モブは戦慄する。
勝ちを確信したと思った刹那、とんでもないものを見せつけられたのだ。
なんと橙八の冥は、関節キスを通り越して橙八の唇に優しくキスをしたのだ。
なんという衝撃。会場全体が静まり返った。圧巻、圧倒されたのだ。
そして冥は言う。先ほどのようなツンな態度ではない、それはもう女神の様な笑顔で。
「私はもういらない。……潤ったからな」
その言葉と同時に、会場を包み込む妄想世界は完全に破壊された。
先ほどのモブの冥も、完全なる敗北と共に砕け散る。
そして、会場の参加者たちは急所を射抜かれるがごとく倒れ、砕け散る。
橙八と冥、二人のプラトニックからのインパクトなラブトニックが、同じグループの参加者だけではなく、会場全体の人達さえもノックアウトしたのであった。
審査員の点数は文句なしの百点満点。と、なぜか晃が予選落ちから審査員へ昇格していた。
「皆の者喜べ。ラブレイズXには、無限の可能性が秘められているぞ!! 俺たちの中にもまだ、コードエンブリオは秘められているぞぉぉぉ!!」
「おぉぉぉぉぉ!!」
晃の激で湧く参加者たち。
そんな可哀そうな連中を見て、ラグナは等々言葉も出なくなってしまった。
しかし大会はまだまだ終わらない。次はリッパーが参加している久音グループの映像が映し出された。
さきほどの冥グループでの影響からか、むやみにキスをするカップルが減ってしまっているようだ。
どうやらただいちゃつけば勝てる大会ではないと思い知った模様。
そんな中、注目は230番のプレイヤーに視点が映る。そう、先ほど晃から久音を奪い取った(正確に言えば元々リッパーの所有物だったわけだが)リッパーだった。
なにやら縮こまって動こうとしない、いったいなにがあったのか。
「は、恥ずかしいですご主人様……」
「恥ずかしいぃ? ヒャハハなにそれ超ウケんだけど。だったらもっと見てもらおうぜその餌に飢えた豚っぷりをよぉ~お?」
なんとも物騒な会話と共に映し出されたのは、久音を豚小屋の檻に閉じ込めて視姦しているリッパーだった。
「「どんな遊び方してんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
これにはラグナと晃も物申さずにはいられなかった。
確かにゲームだから色々な遊び方はあるとは言え、ここまでSMプレイを極めた遊び方など常人には考えられない物であった。
「リッパーてめぇ!! これ以上俺の久音を汚すんじゃねぇよぉぉぉ!!」
晃は嘆き悲しむが、もう晃の久音ではないので何を言っても無駄。
リッパーは容赦なくSMプレイを続ける。
「い、息ができなくて苦しいですご主人様~」
「あぁん? したらその喉ナイフで掻っ切ってやろうか? 色んなとこから汚ねぇ空気が入り込むようになんぜぇ?」
「で、できれば水をくださいご主人様~」
久音は必死に御主人であるリッパーに水を恵んでもらうよう要求する。
そんな彼女の必死のお願いに対し、リッパーは蔑みの表情で水を一本だけ用意し。
「水? あぁやっべ小遣い無くて一本しかねぇわ。てか俺様も喉乾いてんだけどそれでも飲みたいとかほざくわけ?」
「その高貴なる水を恵んでくださいご主人様。その水がいいです、それがいいです。あと……できれば一緒に飲みたいな……なんて」
と、ここで久音が一緒に水を飲みたいと請う。
どうやら先ほどの橙八と一緒で、このまま関節キスでいくみたいである。
それを聞いたリッパーは、仕方ないなと言わんばかりに、そのペットボトルを下にして。
ペットボトルの水を、豚の水皿に流しいれた。
「そうかいそうかい。"二匹"一緒に飲みたいのかよ」
そう言ってリッパーは、久音と檻の中の豚二匹に水を与え始めた。
「誰と飲んでんだぁぁぁぁぁ!!」
その光景を見てラグナは激しくツッコミ。
一緒に飲みたいとはけしてそういう意味ではなかったはずである。
「ご、ご主人様は?」
「いらねぇよバーカ。俺様はもう潤った」
「何が潤ったんだよ!?」
二人のやり取りに、ラグナの続けざまのツッコミは空を切る。
先ほどと結構似たようなシチュエーションなのに、方向はまるで違うところへ着地するリッパーと久音。
こんなんで果たして皆が満足する萌えが生まれるだろうか。
当然そんなわけもなく、他の参加者からの止まない罵声がリッパーに襲いかかる。
「おいてめぇふざけんじゃねえぞ!!」
「こんなこと許されるわけねぇだろ!!」
リッパーの鬼畜の所業に対し怒号を撒き散らす久音グループの参加者たち。
そんな奴らの声に対し、リッパーは平然と馬鹿にしたような態度で返す。
「俺らの付き合いに口出すんじゃねぇぞ殺すぞこら。良く見てみろよ久音は喜んでんだろおい?」
そうは言うが本当に久音は喜んでいるのだろうか。
当然そんなわけないと、他の参加者たちは物申すが。
次の瞬間、事態は一気に動き始めた。
なんと、他の参加者の久音達が一斉にリッパーの前にひれ伏せ。
「ただいま戻りました、ご主人様!!」
そう、リッパーの手篭めにされてしまった。
その瞬間、妄想世界は完全に破壊され、他の参加者は全員地に倒れた。
そんな中でも、悠々と久音達を調教するリッパー。果たして誰が彼を止められるのだろうか。
ちなみに点数はやっぱり百点満点。もはや女なら誰でもいいのだろう。
「あの強気な久音ちゃんがあそこまで骨抜きにされるなんて!! NTR属性を刺激する完璧な作戦……。神が! 神が降臨成されたぞぉぉぉ!!」
「お前らん中の神は何体存在すんだよ!!」
参加者はこの大会で次々と神を作り上げる始末。そんな中割とどうでもいいラグナが吠える。
こうして久音グループもリッパーの勝利で予選終了。
冥グループからは橙八が、そして久音グループからはリッパーが。
次はいよいよ決勝戦という段階まで行き、会場は大盛り上がり。
といったところで、当然の如くクレームを入れる連中がいた。そう、ピ○檎グループのラグナ、ニュー、ドライである。
「待てやこらぁ!! まだピ○檎が残ってんだろうが!!」
「そうだよ! 何無視しようとしてんの!?」
「アハトの可愛さを見ずに終わるつもりかお前たちはぁぁぁ!!」
そう三人が反論するが、点数は見る間もなく0点である。審査すらしてくれない不人気のピ○檎。
だがこれで帰ってしまっては、こんなめんどくさいことまでやらされたラグナ自身が報われない。
何度も反論するが、そこで審査員の一人が、決定的なことをラグナに問う。
「じゃああなた。本気でピ○檎さんを愛せるってことですね?」
「……へ? いやその、それはなんか違うというか」
その問いに対しラグナは戸惑う。
そもそもピ○檎なんてタイプじゃないし、ゲームの女の子にも興味がない。
だがそこで決断しなければ、この大会に参加する資格すら得られない状態。
ラグナは口ごもる。だが言わねばならない。悩んだ末にラグナは。
「あ……あ……。愛しているに決まってるだろこの野郎!!」
ドヤ顔でそう愛を叫んだ。
当然帰ってくるのは賞賛だと思っただろう。
しかし、そこで会場はまさかの沈黙と化した。ラグナのまさかの発言に、皆がフリーズしたのである。
「……え? なにこの反応?」
これにはラグナ自身も凍りついた。
一方で隣にいたピ○檎も、頬を赤らめ。
「……べ、べつに嬉しくなんか……ないんだからね」
「え……? えぇぇぇ! ちょっとやめてぇぇぇ!! こんな雰囲気醸し出さないんでぇぇぇ!!」
まさかのツンデレ。しかしラグナが欲しいのはこんな汚いツンデレなどではない。
困惑するラグナ。そんなラグナの男気溢れる魂の叫びに、審査員は心折れたのか。
「……いいでしょう。ならばそんなあなた達グループのステージは!!」
審査員によって発表されたピ○檎ステージ。
それは、もう目に見たってはっきりとわかる。あっち方面のホテルだった。
どう例えれば健全か。言ってしまえば赤ちゃんを作る場所である。
それを目にしたラグナは、真っ白に沈黙した。
「では、はじめてください!!」
「何始めろってんだよ!? なんで遊園地動物園と来て、なんで俺たちだけ総合体育館!?」
ラグナは当然怒り新党で文句を言う。
しかし周りはもうラグナ達がどうピ○檎とラブラブするかが楽しみで仕方がない。
リッパーと橙八も、勝者の眼差しでラグナを見つめる。
「さぁて死神ラグナくん、お手並み拝見といかせてもらおうかねぇ」
「登って来い……。ここまで」
もはやなんの勝負だろうか、登って来いって何を登ればいいのか。
こうして橙八の虚妄を打ち砕くラブレイズX俺の嫁コードエンブリオは終盤に差し掛かった。
この背水の陣とも言える状況で、はたしてラグナは橙八に、リッパーに勝てるのだろうか。
そしてピ○檎は、どうなってしまうのだろうか……。
XBLAZE最新作も発売とのことで、こちらの方を復帰いたしました。
本当に長い間待たせてしまったうえ、まだ続きます。
すいませんが、もうすこしだけお付き合いください。