蒼魂~ブレイブルー銀魂パロ~   作:トッシー00

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第二話です。


エンターテイメントも月日が経つごとに壮大になっていく

「なにやってんだこの腐れオカマバカーーー!!」

「おほぉ~ん!!」

 

 第十三階層都市カグツチ。

 このカグツチでは、ノエルが知らない間に二年もの月日が流れていた。

 結果その二年でラグナは髪を伸ばし白い胴着を身につけ、ニューはチャイナ服の似合う大人の女性に。

 デッドスパイクはゲージ100を消費する投げ技となり、ライチとバングはまさかの結婚。

 そしてラーメン屋の主人であるバレットは、ラーメンの気持ちを考えるため突貫工事でナニをつけた。

 その行きつく先は、バレットと同時期にBBに参入した新キャラであるアマネ・ニシキが、バレットに対抗し自らの股間についているバベルの塔を切除。

 そんな行きすぎた行いにノエルは呆れを通り越したとてつもない怒りを露わにし、アマネを投げた挙句フェンリルを打ち込んだのであった。

 

「バレットさんもそうですけど、どうしてあんたまで性別を変える必要があったんだよ!? そうまでしてファンを増やしたいのかあんたは!!」

「そ、それもあるが、わたし的にはカルルくんに振り向いてもらいたいと。でもこのままでは一向に振り向いてもらえない、だからわたしは考えたわ。棒を切除してカルルくんのお姉さんになれば」

「なれねぇから! 余計気持ち悪くなっただけだから!! よく考えたらわかることでしょうが!!」

 

 カルルのことに意識を取られ過ぎて、結局はバレットと同じことをやってしまったアマネ。

 しかもノエルの言う通りこれでは更に不気味になってしまっている。カルルは今のアマネにあったら逃げ出すことだろう。

 バレットとの対局を見失った上に、大切な物まで失ったアマネ。どうしてこうなってしまったのか。

 

「バレットよぉ。おめぇさんのラーメンへの愛、そしてわたしのカルルくんへの愛。どこまでも愛の方向性をカブリ倒す運命にあるようねぇ」

「全然カブってねぇだろ、バレットさんの場合は立派な食べ物への探究心だけどあんたの場合は犯罪スレスレの危ない方向性だろうが」

「CP新キャラ最強の座を自らのものにするならばどちらか一方の存在を消すしかない」

 

 ノエルのツッコミを横目に、アマネはバレットへの……新キャラという立場を見据えた上での敵意を向ける。

 女形を意識した美青年と、男らしいかっこいい女性。

 どちらが男女の両方を引きつける要素を持つもの同士、譲れないものは多々ある。

 

「玉と胸があるもの、玉も胸もないもの。どちらが真のバイプレイヤーか……決着をつけようじゃねぇか!!」

 

 そう担架を切り、アマネは布をドリルに変形させる。

 バレットも負けじと自らの周りに術式によるサークルを展開させる。

 スパイラルとロックオン、両者の技が激突する。

 

「「CP新キャラのネタ枠の座は……わたしのものだーーー!!」」

「それは取り合う物なのかーーー!?」

 

 こうしてアマネとバレットの互いの全てをかけた激闘が始まる。

 アマネが飛び道具や布を伸ばして遠距離攻撃、一方バレットはそれを掻い潜って近づき近距離から打撃と投げの二択を責めようとする。

 カグツチポートの空の見える発着場で、なんと途中から空中を飛びながらの打撃戦までこなす勢いだ。

 そんな性別を超越した戦士二人を、ノエルはポートでなんとも言えない表情で見つめていた。

 

「なんということだ。成長どころか性別を変える者まで現れるなんて。ただ全員が共通しているのは、アホなのは変わっていないということ……」

 

 そう冷静に結論を出し、ノエルは改めてこのおかしい二年後に呆れ顔を見せる。

 そんな時、発着場に魔操車が一台ノエルの近くに止まった。

 そして車のクラクションが鳴り、中から誰かがノエルに声をかける。

 

「い~たいた。おい腐れ乳無し女。二年間欠勤しておいて街にエスケープ決め込むとはどういう了見だあぁ~ん?」

「え?」

「死ぬ準備はできたか? あぁ~ん」

 

 そう威嚇するような声色を放ち、車にいる人物がノエルに対して術式波動射砲『オーディン』を構える。

 そして迷うことなく、術式による波動砲をノエルに向かって打ち込んだ。

 

「ぎゃーーーーーーーー!!」

 

 直撃は免れたものの、波動砲の衝撃によりノエルが高く吹っ飛ばされる。

 いったい何が起こったのか。そして誰がこんなひどいことをするのか。

 ノエルは目が点になる。そして車にいるであろう人物に問いただした。

 

「だ、誰ですか!? その武器は階級が少佐以上の者じゃないと使用許可が下りないはず……」

「な~に寝ぼけてんだよぉ。しばらく会わないうちに胸だけでなく脳ミソまでぺったんこになったのかあぁ~ん?」

 

 その耳障りな「あぁ~ん」を、ノエルは聞いたことがない。

 むしろ階級が少佐以上で、そんなちんぴらみたいなしゃべり方をする人物をノエルは知らない。

 じゃあいったい誰なのか、その人物が車から降りてくる。

 髪の色は染めた金髪、そして髪からはリス亜人種の耳が飛び出ている。

 そして黒色の制服を羽織り、尻尾がある。

 口には加え煙草をしている。

 その少女をノエルは良く知っている。だが、ノエルの知っている少女とは全くキャラが異なっていた。

 

「あたしだよぉ。統制機構鬼の諜報――マコト・ナナヤ中佐だよぉあぁ~ん?」

「ま、マコトーーー!?」

 

 その少女の名はマコト・ナナヤ。ノエルとは士官学校の時の同級生で、今でも交友のある人物。

 普段の彼女は、ノエル達のムードメーカーで、種族間の差別を物ともしない明るくて優しい人物。

 だが二年経った今では、髪を金髪に染め煙草まで吹かしているではないか。

 いったい何があってここまで歪んでしまってしまったのか、おまけに階級は中佐と、二年という短い間にあのジン・キサラギすら超えた存在となり果てていた。

 

「おらさっさと来いよあぁ~ん。二年間サボってたんだ。二等兵からやり直しでもおかしくねぇから覚悟しとけあぁ~ん!」

「嘘でしょ!? マコトはもっと優しくて明るい女の子だよ!!」

「いつの話してんだよ、あれはまだあたしがヴァージンの時の話だろうが! 今のあたしは何もかも卒業した、泣く子も黙る鬼の諜報、リスクイーン、マコト・ナナヤ中佐だ。あぁ~ん!!」

 

 そう自分の立場を荒っぽく説明し、マコトは車に乗り込む。

 そして乗りこむや否やビニール袋に入れてある栗あんぱんの匂いを、まるで薬でも吸うかのように嗅ぎ始めた。

 

「ちょっと! いったいなにがあったのマコト! 完全にあんぱん中毒じゃん!! 語尾がもれなく「あぁ~ん」になっちゃってるじゃん!!」

「はぁ~。は~ぁ~。おい早く車出せよあぁ~ん?」

 

 心配するノエルをよそに、あんぱんの香りを嗅ぎ付くし気持ちを落ち着かせるマコト。

 そして運転席にいるドライバーに早く車を出すよう命令する。

 

「いやぁすいませ~ん」

「すいませ~ん、じゃねぇよ! 早く車出せっつってんだろ!! このウスノロあぁ~ん!!」

 

 そう偉そうに命令しては、マコトはドライバーの頭を思いっきりどつく。

 昔はこんなひどいことをする子じゃなかったのにと、ノエルは変わりきったマコトをどうしようもないような目で見つめる。

 一方、殴られたドライバーはというと、相手が中佐ということもあってか逆らえず、ペコペコ謝っていた。

 

「いててて、いやぁ僕も久しぶりなんで、挨拶しようかなって思ってまして……」

「てめぇみたいな印象薄い奴誰も覚えてるわけねぇだろ!! あぁ~ん!!」

「でも、一応元"部下"ですし。まぁ今となっては部下も上司も関係ないんですけどねぇ~。あはははは」

 

 そう言って、ドライバーはノエルの方へ顔を向ける。

 その人物の顔を見て、ノエルは唖然とした表情でただただ、言葉を発せず圧倒された。

 

「久しぶりだねヴァーミリオンくん、"ジン・キサラギ"だけど……覚えてるかい? 覚えてるわけないよねぇ~。あはは」

 

 そう優しく微笑んで見せたのは、ノエルのかつての上官であるジン・キサラギ。

 ノエルの知っているジンは、いつもノエルにセクハラ同然のいじめをしてくる厳しく怖い上官。

 今でこそヴァーミリオンくんなどと呼ばれたものの、かつては"障害"という変なあだ名をつけられ、そう呼ばれていた。

 そんな鬼の上官であったジンが今、自分に向かってほほ笑んでいる。二年間でいったいなにがあったと言うのだろうか。

 

「キサラギ少佐!? キサラギ少佐ですか!? 嘘だ! キサラギ少佐がこんな優しく微笑むわけないでしょ!! マコトにぶたれて笑って許すわけがないでしょ!!」

「おいリスなんかにってどう意味だぁ? リスは森の妖精だろあぁ~ん!!」

 

 そう理不尽な怒りをマコトは容赦なくジンにぶつける。

 いつもなら冷徹な眼差しでマコトを氷漬けにするのだが、二年経った意味ではヘコヘコと、反撃の手すら出しはしない。

 変わり果ててしまったジン、あのカリスマはどこへ行ってしまったのか。

 

「僕も色々あってねぇ。二年間で一時期は大佐まで昇進したんだけど、他の衛士との付き合いが悪いと社内で評判が悪くてねぇ。コネだのなんだのと悪態をつかれるようになってねぇ……」

 

 ノエルが知らぬ二年間で、ジンは統制機構に置いての重鎮まで昇りつめた。

 しかしそれによって目標という目標を失い、統制機構内部での派閥争いもあってかすぐさま大佐から降格されたという。

 今では少佐どころか大尉と元の階級以下まで下がり、第四師団の一衛士にまで落ちてしまったという。

 

「それで色々考えて、自分の好きな氷の術式のように、生き方も態度も氷点下マイナスにしようと思って。その甲斐あって、今ではパシリの英雄ジンさんなんて呼ばれてるんだぁ」

「結局地位まで氷点下マイナスまでなっちゃってるでしょうが!!」

「でももう一度こうしてヴァーミリオンくんと一緒に働けるなんて、なんか照れるね」

「照れたことなんてないくせに! 気持ち悪いからやめてくれません!?」

 

 もはやノエルの知る英雄、ジン・キサラギは存在しない。

 ここにいるのは底辺にまで成り下がった偽りの英雄、過去の存在でしかない。

 ノエルは二年間の統制機構の内部事情の恐ろしさを痛感しながら、カグツチ支部へと車で向かう。

 

「ま、そういうことだからよろしくね。ヴァーミリオンくん☆」

「戻って! もう一度あの少佐に戻って!! 私ですよ障害のノエルですよ! もう一度障害って言ってください!!」

「障害だなんてそんなぁ。ヴァーミリオンくんは僕も認める立派な衛士じゃないかぁ」

「誰かーーー!! 私のよく知る少佐を返してーーー!!」

 

 ノエルの叫びも空を切り、非常にもその車は逝くべき道を走る。

 そして数時間後、ノエル達三人は世界虚空情報統制機構カグツチ支部へと辿りついた。

 なんでも今日は本部から最高責任者である現帝の人物がわざわざお越しになっているという。

 ノエルはつくなり休む暇もなく、支部の大ホールへと連れて行かれる。

 着くとそこには多数の衛士が一斉に大聖堂の先にある檀上を見つめていた。

 そこで立派な椅子に座っている人物こそが、二年経った現在の帝様である。

 

「それでは、"ツバキ・イザヨイ・ヤヨイ三世閣下"に……敬礼!!」

 

「敬礼!!」

 

 統制機構の現在のトップに君臨する存在を、ノエルは良く知っていた。

 ツバキ・ヤヨイ。マコトと同じく統制機構士官学校の時の同級生だ。

 ノエルとマコトが卒業した後も、ツバキは世の人達を裏で支えていきたいと学校に残り、研修生を続けながら街のお天気アナウンサーなどでも活躍し、ヤヨイ家の発展のために多くの努力をした。

 そんなノエルがずっと尊敬していた友達が今、統制機構の頂点に位置する帝にまで昇りつめた。

 その瞳は赤く染まっており、全てを冷徹に見下ろすその視線に、かつての彼女の優しさは存在しない。

 

「イザヨイ! イザヨイ! イザヨイ! イザヨイ! イザヨイ!」

 

 イザヨイという新たな名を駆り、全ての衛士に言葉を向けた。

 

「静粛に諸君。新生世界統制帝国誕生から二年……」

「帝国!? いつ帝国になったのうちの組織!!」

 

 ノエルの知らない間に世界虚空情報統制機構は、新生世界虚空管理統制帝国へと姿を変えた。

 もはや世界の警察どころか、元から嫌味で言われている世界を牛耳る組織。まさにその名の通りとなってしまった統制機構。

 

「諸君らの活躍により、我が帝国は世界において絶対的な組織になりつつある。今や世界の東西南北はこの統制機構の支配下にある」

「もう言ってること警察じゃないんですけど!!」

 

 ノエルは今ある統制機構の形に疑心を抱くが、二年間欠勤で二等兵にまで成り下がった今のノエルに何が変えられようか。

 相手は大事な友達であるが立場が違いすぎる。もう友情などでは解決しようにないほどにツバキは心を修羅に変えている。

 

「タカマガハラのシステムを制圧し、マスターユニットアマテラスを掌握する日も、そう遠くはないでしょう」

「それやってることがユウキ・テルミとなんら変わりないんだけど!! こいつらテロリスト以外の何者でもねぇよ!!」

 

 原作の悪の元凶、ユウキ・テルミの計画すら今のツバキには手のひらの中であるという。

 だが、そんなツバキ率いる統制帝国にも、まだ阻む敵が存在する。

 

「しかし我らの計画において、元六英雄、特にラグナ・ザ・ブラッドエッジの存在は何よりの障害だ。無論、やつを討つ手立ては今、整ったのだがな……」

 

 そうツバキは笑い、指をパチンと鳴らす。

 すると大聖堂に集まっている衛士の大半が、ノエルに魔道書を向ける。

 その状況を、ノエルは理解できずただただ見渡す。

 

「な、なにこれ!?」

「ご苦労だったわノエル。これまでのラグナの監視、そして彼に取り入る試案……実に見事だったわ。今あなたはラグナ・ザ・ブラッドエッジにとって大切な仲間、そう……あなたを人質に取れば、ラグナは手が出せなくなる」

「ちょ、ちょっとツバキ! まさか……友達を売るつもりなの!?」

「友達? そんなもの世界の全てを手に入れるためなら安い犠牲よ。あなたを餌に我々統制帝国は……六英雄に全面戦争を仕掛けるわ!!」

「なに考えてんだーーー!!」

 

 帝となったツバキには、すでにノエルなど見えていない。

 あとは六英雄さえ葬れば、統制帝国のアマテラス制圧は確実のものとなる。

 戦争は冷静かつ機械的に行われるもの。友情という甘さは必要ないと、ツバキはノエルを利用し圧倒的有利の状況を作るのであった。

 

「心配しないで、あなたは人質よ。ここで殺すようなことはしないわ。これがせめてもの、あなたの友であったツバキ・ヤヨイの最後の優しさと……そう取りなさい」

「何が優しさよ!! てかあんたいつから世界掌握なんてベタな計画考えてたのよこのウザヨイ!!」

「ちょっと、ウザヨイはないでしょ? せめてちゃんとウザいイザヨイと言いなさい。合わせ技は腹立つわ」

 

 ノエルの突然言った侮辱ともとれるあだ名を、ツバキははっきりと拒絶し冷徹な言葉をノエルに浴びせた。

 

「本来なら帝への侮辱罪で死刑にするところだけど、人質だもの……今は生かしておいてあげるわ。キサラギ大尉そいつを連れて行け」

「はい、ウザヨイ~」

「マコト、そいつを殴れ」

「は~いウザヨ~イ」

 

 ノエルだけに飽き足らず部下のジンとマコトまでツバキをウザヨイ呼ばわり。

 これにはツバキも、目に見えない怒りを静かに部下たちに向ける。

 

「なにプチ流行してるのよ、もういいわ人質以外は処刑しろ」

「(衛士全員)はい、ウザヨイ!!」

「よーしわかった。明日以降帝からウザヨイに改名する。但し"ウ"の部分はなるべく"イ"に聞こえるように発言するように……」

 

 そう言い残して、ツバキは壇上を去った。

 その後すぐさまノエルは手錠をかけられマコトとジンに連行される。

 この先ノエルは人質となり、戦争の道具にされる。

 しかもそれを仕組んだのはかつての親友であるツバキであり、同じく友達であるマコトもツバキを止めるどころかツバキの言いなりになってしまっている。

 そしてジンはヘタレて使いものにならない。完全に絶望しか見えなくなったノエル。

 

「どうして……どうしてこんなことに。もう嫌だ。こんな世界……。この世界には私の知っているみんなはいない、こんな世界……いらない」

「あふん!!」

 

 そう、絶望を口にしノエルが諦めかけたその時。

 突如隣にいたマコトが何かにぶたれ気を失った。

 

「また泣いたらどうにかなると思っているのか? この"障害"が……」

 

 その低くも透き通る声色、そして障害という単語。

 それらを聞いて、ノエルの目に生気が戻る。

 

「ようやくまともな奴を見つけたと思ったらそれが貴様だったとは、これじゃあ役に立ちそうもない……」

「き……キサラギ少佐。あなたもしかして……」

 

「あぁ、僕も貴様と同じ……二年後とやらに取り残された人間だ」

 

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 その後統制機構支部を抜け出し、二人はカグツチ市街の中央へ。

 巨大スクリーンが見えるベンチに座り込み、これまでの情報を互いに交換する。

 

「いったいどうなってるんですか?」

「こっちが聞きたいくらいだ。一年空けて統制機構に戻ってみれば全てが変わっていた。まるで僕だけを置いて全員が二年後に行ってしまったように……」

 

 ジンもノエルと同じだった。

 久しぶりに戻ると統制機構は統制帝国へと姿を変え、大切な従妹であるツバキが帝となり、マコトが自分の上司になっていた。

 その変わりようにはジンですら対処しきれず、この数日、悩む日々が続いたという。

 

「どうして、あんな変わった演技をしてたんですか?」

 

 そのノエルの質問に、ジンは空を見上げながらこう答える。

 

「……おかしいのは奴らではなく僕だと思ったからだ。そりゃあそうだろう、なにせ僕以外の全員が変わっているんだ。障害はどう考えても僕だ。この状況、もう笑うしかないだろう」

 

 この数日で、全ての変わりようを受け止めきれずに、自らも変わり周りに合わせていたジン。

 だが、今日で限界が訪れた。だからこそ今、同志であるノエルに全てを打ち明け元のジンに戻っている。

 

「だが無理だったようだ。僕には……」

「き、キサラギ先輩てめぇ……こんなことしてただで済むと思ってんのか? あぁ~ん?」

 

 座っているベンチの後ろで縛られて動けなくなっているマコトが、ジンに恨み事を言う。

 そんなマコトを、ジンは己の武器であるユキアネサを突き刺し黙らせた。

 

「ぐほ!!」

「……キサラギ少佐。私達、タイムスリップでもしたんですかね? 私達だけ、知らない世界に放り出されたんじゃないですかね?」

 

 この状況で、ノエルは一つの仮説を説いた。

 何かの力が作動し、タイムスリップをする。

 現代の術式のシステムならば、強い適正があれば不可能ではない。

 知らないうちに何かの実験台にされ、二年後に飛ばされたのかもしれない。

 

「ならば問うぞ障害、どうして僕たちだけがこんな目に合う?」

「……多分、罰が当たったんじゃないですかね」

 

 ノエルはこの一年、自分を思い返してそう口に出した。

 

「キサラギ少佐。私、自分の人気の高さに溺れてたんです。今はこうしてツッコミをしてますけど、本当は料理でやらかしてボケをした方が、みんな喜んでくれるかもって。そうやって見えない所で、家でネット通販したり、自作のポエム書いたりして。ずっと……楽してたんです」

「……」

「だけど私がサボっている間に、みんなは自分のできることを探して、一生懸命成長しようとしていた。だから……置いてかれちゃったんじゃないかって……」

 

 そう自責の念を反省した後、ノエルはジンを見つめる。

 

「キサラギ少佐も心当たり、ありますよね?」

「ぐっ……」

「原作とは違いブラコン属性の無くなったジン・キサラギ。当然そのキサラギ少佐は、かっこよさだけを集めた統制機構の常識人。だけどそれに耐えきれずブラコンヤンデレ属性を復活させたり……」

「あれは『妖刀ゆきあねちゃ』のせいで……」

「かき氷で奇抜なことをやりだしたり……」

「あれはただ好きなだけだ」

 

 ノエルに指摘されたことの数々を、ジンは澄ました顔で否定し続ける。

 だったらと、ノエルは最後の一押しをジンにぶつけた。

 

「だったら、今回の演技はどう説明するんですか? 本当はあれ、ボケたかっただけなんじゃないですか?」

「……やめろ」

「おいしい思いをしたいという感情が、全くなかったと……胸を張って言えますか?」

「やめろと言っているんだこの障害!!」

 

 これ以上、ノエルに指摘され続けるのが耐えきれなかった。

 だからこそジンはらしくない叫びでノエルの言葉を遮る。

 それはまるで、己の欲望から逃げ出すかのように。

 

「……すいません。言葉が過ぎました」

「……僕も、らしくないな」

 

 そう言って、二人はベンチを立つ。

 お互いに後ろを振り向かなかった。そして目を合わせず、会話をする。

 

「統制帝国と六英雄の戦争か、僕には……まったくもって興味もない話だ」

「そうですか……。だけど私にとってラグナさん達は大切な人です。だからこそ私は戦争を止めるために抗いますよ。例え……キサラギ少佐やマコト、ツバキと相対することになっても」

 

 そう覚悟をジンに伝え、互いに別れを告げる。

 

「頑張ってくださいね、キサラギ少佐」

「ふん……貴様もな」

 

 この時ばかりは珍しく、ジンは素の優しさを見せた気がした。

 互いに進む道は決まった。後は、この変化した二年後に迫る最大の戦争に、互いの全てを賭けるだけ。

 ジンとノエル、両者の道が交わらずとも……時は非情にも、進んで行くのだから。

 

『え~、臨時ニュースです』

 

 そう二人が歩み出した時、大型スクリーンに臨時のニュースが流れ込んだ。

 

『カグツチに蔓延し始めた謎の"イボ"による被害が拡大しております。医療機関によって、その正体がつかめてきました』

「「…………」」

『生物に寄生し、宿主の養分を吸い取り、やがては体を乗っ取ってしまうというこのイボは、新型のターターさんであることが判明しました』

「「…………」」

『ターターさんはまず、殺意の波動に目覚めたような姿になり、宿主の情報を読み取り、その後宿主と全く同じ姿に変体。独自に進化し、その後"二年"に相当する成長を遂げます』

 

 ……そう。

 これで、ノエルとジンを襲った世界への違和感の謎が、全て解けたのである。

 

『突出すべきところは、ターターさんが好むもの。それは宿主の向上心というところです。あなたの身近な人に急に"二年後"という発言をする人はいませんか、それはイボです。見かけたら技でもなんでもいいので強い衝撃を与えてください。そうすれば、ターターさんは消滅するはずです!』

 

 それだけ聞けば、もう充分だった。

 ノエルとジンは無言で、険しい表情を浮かべ、元座っていたベンチへと戻る。

 そして後ろの方で倒れているマコトに目をやる。

 その髪の毛の毛先、一本だけやたら伸びている髪の毛。

 そこにぶら下がっていたのは、小さな小さなマコトであった。

 

「――ってことはなに? 要するに……」

 

 今まで自分で見た景色と、先ほどのニュースの情報を思い返し、ノエルは結論を叫んだ。

 

「全部殺意の波動に目覚めたターターさんじゃねぇかーーー!!」

 

 今まで二年間成長してきた人々は皆、イボに乗っ取られていただけだった。

 ラグナも、ニューも、バングとライチも。性別の変わった二人も、統制帝国も。

 全てはイボが織りなす世界であった。二年など経ってすらいなかったというのが結果である。

 

「向上心か、皮肉な物だ。確かに僕も障害も、統制機構においては昇進する気もトップに立つ気も更々なかったわけだし。そのおかげで寄生を免れていたというわけだ」

 

 己の統制機構への忠誠心の無さが、二人をこの場に呼び寄せた。

 ジンとノエルは決意する。今、この世界を救えるのは……。

 

「この世界を救えるのは、僕らだけだ!!」

「今なら分かります。自分の成すべきことが……!」

「この腐った世界に僕らの術式を叩きこみ!!」

「私達の世界を取り戻すんだーーー!!」

 

 こうして統制機構第四師団、ジンとノエルが地をかける。

 と、全てを救う決心をした矢先、最初の刺客がノエルを襲う。

 

「ノエルちゃ~ん!!」

 

 向こうからノエルの名を呼び走ってくる少女。

 二年の間に成長したニューである。

 だが思い返せばこのニューはニューではなくただのイボ。

 ノエルの術式を叩きこめば元に戻る。だが……。

 

「ニューさん!?」

「バカバカ! 心配したんだよ!! 今までどこをほっつき歩いてたの!?」

 

 そうノエルに抱きついて思いっきり甘えるニュー。

 この様子では、数時間前にいじけて走り去ったノエルを、本気で心配して探していたのだろう。

 その優しさに、ノエルは術式を叩きこむことをつい忘れる。

 

「おい! 早く術式を叩き込め! そいつはイボだぞ!!」

 

 そんなノエルに、ジンはそう指摘するのだが……。

 

「ニュ……ニューちゃん力強い……。そんな成長したダイナマイトボディで私を抱きしめないで……」

「私心配したんだからね、私達からノエルちゃんが消えるなんて、ノエルちゃんの無い胸が更に無くなるのと同じことなんだよ?」

「それもうほとんど無乳に近いじゃん!!」

 

 これじゃあ心配されてるのか馬鹿にされているのかわかったものではない。

 だがニューは涙ながらに、ノエルに甘える。それも怪力で。

 

「うぅ~。私こんな趣味無いのに……。キサラギ先輩助けてくださ~い」

「ったくこの障害が、動くなよ。この女を今すぐ葬る」

「や、やめてーーー!!」

 

 ジンはユキアネサをニューに振りかざす。

 ニューは怯えたように腕を前に構える。このままではジンに切られてしまう。

 そんな刹那の瞬間、何者かの刃がジンのユキアネサを受け止めた。

 

「はっ!? ツバキ・イザヨイ・ヤヨイ三世!?」

「うっ……ジン兄様。あなたが女の子に手をかける姿なんて……見たくありま……せんよ」

 

 ユキアネサを受け止めた余波の影響か、突然力を失い倒れるツバキ。

 そんなツバキに、ニューは心配するようにすぐさまかけよる。

 

「し、しっかりしてよウザヨイ!!」

「……え? なんで?」

 

 そう呆けたように言ったあと、ツバキはこれまでの二年の、統制帝国になるまでの辛いいきさつをジンに語り始めた。

 

「じ、ジン兄様が消えた後。私は組織をより良きものにするために生きてきた。統制機構を守るためなら、非情な圧政を強いることもいとわなかった。でもジン兄様、あなたまで汚れてしまったら……統制機構は本当に、ただの権力者の集団になってしまう。私はずっと考えていたのです。十二宗家を変えられるのは私でもカグラ大佐でもない、ジン兄様……あなただけだ……って」

「ツ……ツバキ……」

「惑わされないでくださいキサラギ少佐! それイボですよイボ!!」

 

 今度はジンが己の手を止めた瞬間だった。

 逆にノエルが指摘するが、ジンの手は震えていた。もうユキアネサをツバキに振るうことはできない。

 

「ノ……ノエル。ごめんなさいね。あんなひどいことして……。もう一度、ノエルの手料理……食べたかっ……た」

「食べたことねぇだろ! デスディナーとか言って馬鹿にしてただろおめぇは!!」

 

 最後にとんだ出まかせを言って、統制帝国の帝であるツバキは地に倒れる。

 どれだけ歪み堕ちようと、ジンにとってはツバキは大切な従妹。

 ジンは迷うことなく駆け寄った。そしてツバキを介抱する。

 

「ツバキ……すまない。僕が変えてみせるよ、お前のその努力を無駄にはしない。十二宗家も、この世界も。全て僕が……破壊する!!」

「なんでだ!? どうしてそんな考えに至るんだおめぇは!!」

 

 もはや惑わされて完全に我を見失ったジン。

 

「どいてください! ツバキは私が……」

「やめて少尉さん!!」

 

 と、イボをやっつけようとしたその時、ライチの声が聞こえてきた。

 その腕には赤ちゃんを抱えている。

 

「ライチさん!? もう出産してる!!」

「少尉さん、瀕死の重傷を襲うなんてそれでも統制機構の衛士なの!? そんな社会の見本を、この子に見せることなんてできないわ……」

「障害、騙されるな! こいつはイボだ!!」

「お前に言われたくないんだよ!!」

 

 先ほどイボの従妹を必死に介抱したあげく世界を壊すまで言い放った上司の言葉などもはや意味を成さない。

 この先はノエル自身が必死に決意し、攻撃する選択を決める必要があった。

 ライチはノエルにとっても大切な守るべき市民。だが正体はイボ。

 それをわかっていながらも、ノエルは攻撃をしなければならない。

 悩み苦しむノエル。だがそれでも決意は変わらない。

 

「わかってる。これ以上ライチさんの顔であのむさい忍者の嫁を演じさせは……しない!!」

 

 そう己に言い聞かし、ノエルはベルヴェルクをライチに振りかざす。

 

「やめてーーー! 違うの! この子の本当の父親は……。見て、この"金髪"を!!」

 

 そう言ってライチはその抱えている赤ちゃんを二人に見せる。

 その赤ちゃんの髪の色は、綺麗な金髪だった。

 それを目撃したジンの表情は潔白し、すぐさまライチの元へ駆け寄る。

 そして、ノエルのベルヴェルクをジンはユキアネサで受け止めた。

 

「なにしてるんですか少佐!?」

「そ、その金髪は……。その線の細い金髪は……まさか!?」

「なんでだよ!! なんで全く接点のない二人に子供ができるんですか!?」

 

 ここにきてまさかの展開。

 なんとライチのお腹にいた子供がバングの子ではなく、ジンとの間に生まれた子供だった。

 いつそんな種を作ったのか、これもイボが作った幻だとでも言うのだろうか。

 

「ごめんなさいジンさん! 私やっぱり隠しきれなかった。あなたへの気持ちを押し殺して、あのむさい忍者と仮面夫婦を続けるだなんて」

「ちょっと! ライチさんがものすごいビッチに成り下がってるんですけど!!」

 

 ライチはバングを、そしてジンを騙していたことを自ら告白。

 そんなライチを見てノエルは汚いものを見るかのようにツッコミを入れる。

 

「お願い、私とこの子を連れて逃げて! 赤フンの無い世界へ連れて行って!!」

「キサラギ少佐騙されないでください!! あなたに子供なんていませんよ!!」

 

 ライチの決死の頼み、しかしこれも全てはイボであるターターさんのせい。

 ノエルはジンに忠告する。その結果、ジンはライチの肩に両手を置き、冷徹な瞳でこう答える。

 

「そんな安い手に僕が騙されると? ふざけるな……。さっさとそのガキを残して消え失せるがいい。僕が面倒をみる!!」

「思いっきり惑わされてるし!!」

 

 ノエルの忠告も意味をなさず、ジンは子供とライチを庇いノエルに交渉する。

 

「おい障害、この子だけは見逃してくれないか!? 刃ノ介だけは僕の手で育てさせてくれないか!?」

「落ちつけぇぇぇ!! 刃ノ介って誰よ!!」

 

 ジンはいつのまにか我が子に名前までつけていた始末。

 ここまでいけばもうジンはだめだろう。ノエルは貴重な仲間を失ってしまった。

 そんな矢先、なにやらこちらに一人ベビーカーを漕いだ娼婦らしき人物が近づいてくる。

 

「まぁ可愛いお子さんだこと……。ちょっと抱かせてもらってもよいでござるかしら?」

「あ、まだ首据わってないんで気を付けてください」

 

 そうジンは優しく赤ちゃんをその娼婦に渡す。

 娼婦は子供を抱きかかえて、その顔をマジマジと見る。

 

「本当に可愛いでござるわねぇ。両親ともに美系でござる……ものね」

 

 どこかで聞いたことのある語尾。

 そして徐々に声色が低くなっていき、娼婦は自らその正体を明かした。

 その娼婦はライチに捨てられたバングであった。その表情は憎しみで歪んでおり、かつて正義のために鉄槌を振るっていた忍者の顔ではない。

 

「でもうちの子には負けるかしら? ねぇ? バン子ちゃん?」

 

 そう名前を言ってベビーカーの中にいた子供を見せる。

 それは赤ちゃんなのではなく五十五寸釘。釘を赤ちゃんだと錯覚するまでにバングは乱心してしまっていた。

 

「バングさん!? 完全に病んでる!!」

「おほほほほ!! お主たちだけ幸せになんてさせない!! みんな……みんな! 不幸のどん底に叩き落としてやるでござるぅぅぅ!!」

 

 そう叫び、バングは刃ノ介をさらってベビーカーで逃走。

 心のダメージを多大に受けていたため、オーバードライブの風林火山の持続力は長くとてつもないスピードで逃亡する。

 その逃げるバングを、ジンは今までにないくらいの焦りを浮かべて追いかける。

 

「じ……刃ノ介ーーー!!」

「もうあんた無理! 惑わされ過ぎ!!」

 

 完全にジンはイボの術中にハマってしまい、冷静になれなくなっていた。

 全員はバングを追い、近くのビルの屋上へ。

 屋上につくと、バングが赤ちゃんもろとも自殺しようと端に足をかけていた。

 

「来ないで!! これ以上来たら子供もろとも飛び降りるでござるよ!!」

「落ちつけシシガミ・バング!!」

「少佐が落ちつけ!! 私達はイボ退治しに来たんですよ!? なんでイボの自殺止めんの!?」

 

 ノエルは本来の目的をジンに言うのだが、取り乱しているジンには何を言っても無駄のよう。

 完全にバングを止めようと焦りを前面に出し、ノエルの言葉など耳に入っていない。

 

「その子に罪はない、悪いのは……僕とライチだ」

「悪いのはあんたの頭だけだ!!」

「殺すなら僕を殺せ!! 刃ノ介だけは……見逃してくれ!!」

「なんでイボの身代わりになろうとしてんの!?」

 

 必死に請うジン、ノエルのツッコミは空を切るばかり。

 そんな潔白した状況下で、一人ビルの奥の方からこちらへやってくる人物が……。

 

「子供を身を張って守る。それが親の姿というものじゃない? だのにあんたはなに? この子とわたしを残して一人死んで逝くというの?」

「お……お主は?」

「薄情な男ね。奥さんに逃げられて、ショーバーで一人荒れていたあなたを慰めたのは……いったいどこの誰かしら?」

「お、お主は……お主はあの時の……アマネ子さん!!」

「なんでだぁぁぁ!!」

 

 その人物とは性別を超越したアマネ。

 なんとこの男、性別が変わってすぐにライチに逃げられたバングと出会い、一夜を共にしていたという。

 そして知らぬうちに二人の間には、子供ができていた。

 

「なんであんたが子供産んでるんだよ!!」

「あなたはもう立派なお父さんなのよ? だからこの子のためにも私のためにも、生きてお父さん……」

 

 そう言って、なにやら奥の方から背の大きいがたいの良い男がアマネに連れられ出てきた。

 

「ほら、あなたのお父さんよ。アズにゃん」

「ここは最高の餌場ではないか!!」

「絶対そいつ違うよね? 二人の赤ん坊どころか成長しきってるよね? 赤ちゃんが生まれてすぐに最高の餌場とか口にしないよね!?」

 

 アズにゃん、もといアズラエルはおしゃぶりを加えて出てきては相変わらず荒っぽいことを言い出す始末。

 完全によそから連れてこられたアズラエル。そんな彼をノエルが指摘した後、またも誰かがベビーカーを漕いでこちらへとやってきた。

 そしてアマネの元へ近づき、赤ちゃんを抱かせてもらえるようお願いをするその人物。

 

「アズにゃんというんですか? ごっついお子さんですね? ちょっと抱かせてもらってもよろしいですか?」

「あ、まだバナナ剥けてないんで気を付けてください」

「何言ってんだあんたは。そんなんだからまたあらぬ誤解が生まれるんだって!!」

「アフターバーナー!! よっこらせっと!!」

「投げたぁぁぁ!!」

 

 ベビーカーを漕いで現れた主婦らしき人は、アズラエルをサークルに補足してぶん投げた。

 呆気にとられるノエル達をよそに、その主婦は自らの顔を明かす。

 それは先ほど男に転身したバレットだった。

 

「でも残念ながら、うちの子には負けるかしら!!」

「バレットさん!?」

「ねぇ、チ○コちゃん」

「なに育ててんだぁぁぁぁぁ!!」

 

 ノエルが見たそれは、明らかにアマネが切除したおいなりさんだった。

 いったいどこから手に入れたのか。そしてどうしてそれをバレットが育てているんだ。

 

「私はお嫁さんも旦那さんもいらぬ! たった一人で母と父を兼ねる究極の生命体になったんだ!! この子たちは私が面倒をみる!! さらばだ!!」

 

 そう全員に告げた後、バレットは刃ノ介とアズラエル、そしてチ○コを全て一人占めにして走り去った。

 そのバレットに泣きながら必死に手を伸ばすジンとバングとアマネ。

 

「刃ノ介ーーー!!」

「アズにゃんーーー!!」

「チ○コーーー!!」

「あんたらいい加減にしろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ノエルは全ての力を使い、超巨大なフェンリルでその場にいる全員を殲滅。

 大きく吹き飛ばされた他のみんなは、地上に落ちるなり気絶。

 そしてそれぞれの身体からイボがぽろぽろ落ち、二年前の……ノエルの知る元の姿へと戻った。

 

「キサラギ少佐まで……やっぱりイボに取りつかれていたのか」

 

 途中から様子がおかしいと思っていた通り、ジンもイボの被害者だった。

 気絶したみんなを見渡し、ノエルは改めて今回の事件を振り返る。

 

「向上心に取りつくイボ、とんでもない悪夢を見せてくれたけど……そのおかげか大切な物も見れたかもしれない」

 

 そう小さいイボのターターさんを取り、そして投げ捨てる。

 ビルから見渡せるカグツチの街、明日からいつも通り、この街で生きていかねばならない。

 これから先、本当の成長を目指して、ノエルは今この時……改めて自分が成長しなければならないと自覚したのだった。

 

「さて、蒼魂も再スタート。気持ちを入れ替えて……がんばるぞ!!」

 

 何かにそいう聞かせるように、ノエルが気持ちを声に出した時。

 すっかり忘れていた。最後の一人が後ろからノエルの元へやってくる。

 そしてその人物は、ノエルの頭を己の剣でぽんっと叩いた。

 

「まだ終わってないんだよ」

「……え?」

「お前もイボだぞ、ノエル」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 剣で叩かれたノエルは皆と同じように気絶。

 そしてノエルを叩いたのはラグナ。その後ラグナは長髪のかつらを取り、頬についていた傷のシールを剥がす。

 そう、イボに取りつかれていなかったのは主人公のラグナ一人だけだったのだ。あとはみんな無自覚に二年後を満喫していただけ。

 ラグナはそれに上手く合わせていただけだった。

 

「ったく勘弁してくれよ。連載再会したらみんな二年後とか言うんだもんなぁ。なんで俺だけイボできないんだよ、空気読めよマジ」

 

 そう考えると、ラグナが一番向上心がなかったのかもしれない。

 一人仲間外れ感を味わったラグナは、まいったなぁと頭をぼりぼり掻く。

 

「でも今度もし連載してる所が閉鎖されて移転とかなったら、こいつら本当に成長してそうだなぁ」

 

 そう後ろを見渡し、ラグナはため息を吐いた。

 

「ま、その時は……」

 

 そう言うと、ラグナの周りに邪悪なオーラが包み込む。

 するとラグナには黒い羽が生え、鋭い牙のようなものが生える。

 

「デビルラグナと、こんな感じでいいだろう……」

 

 こうして、二年後事件は幕を閉じた。

 そして……蒼の魂は再び……燃え盛る。

 

 

 蒼魂、連載再会!!

 




以上二年後編でした。次話からにじファン時代に戻ります!!
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