蒼魂~ブレイブルー銀魂パロ~   作:トッシー00

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第三話です。


困った時はとりあえず立ちB

 第十三階層都市「カグツチ」

 ここでは様々な人達が住んでいる。

 

 貴族から貧民、軍人から犯罪者まであらゆる人達がそこにいる。

 最上部には今この世界を牛耳っている大組織、「世界虚空情報統制機構」の支部が存在している。上層部には主に貴族や裕福な人達が住んでいる。そして下層部には、貧困な者、元々そこに住んでいた者、そして犯罪者などがいる。

 一種の差別化社会になっており、下層部の者は上層部の者には逆らえないようになっている、そして誰もが、統制機構の人間には逆らえない。

 統制機構によって支配され、力無き者がおびえるこのご時世に、1人の男は自由気ままに過ごしていた。

 

「あぁ~、やべぇそろそろ飯代が無くなるじゃねえか・・・・・・」

 

 男の名は"ラグナ・ザ・ブラッドエッジ"

 銀色のツンツンヘアーに赤色が主体の服、そして死んだ魚のようなオッドアイ。

 彼は下層部で自由に毎日を生きていた。安定した職など無い、その場で適当に金を稼いで1日の飯を食べる。

 住む家もない、ダンボールを拾って家を作るか、地面の上で寝るかのどちらかだ。本当に金に余裕がある時はネカフェで小さな至福を味わう。

 そんなつまらない男であった。

 

「だが今日の昼飯は天玉うどん、1ヶ月に1回の幸せだもんな」

 

 そんな彼の幸せは、大好物の天玉うどんを食べること、いつも通う定食屋の、1杯300円の天玉うどん。

 だが彼には毎日それを食べるほどの金銭は無い、なにせ無職なのだから。ほぼボランティアに近い事をやって、安い給料をもらうという毎日。

 そんなヤツはこの下層部にはごまんといる。そう、その程度ならまだ幸せに生きられるのだ。

 そう、"その程度"なら・・・・・・。

 

「おいなんだこの飯は!!」

「す・・・・・・すいません!!」

 

 なにやら隣が騒がしかった、ちらっと見ると、そこには統制機構の士官が数名ほどいた。

 士官と店員がモメている、そして数秒後に士官がその店員を思いっきり殴り飛ばした。

 

「ったく下層部に派遣されたから仕方なくこんな薄汚れた定食屋に顔を出したが、クソまずい飯を食わされた!!」

「おいわかってるんだろうなぁ? 我々はこの世界のトップに君臨する、世界虚空情報統制機構なんだぞ?」

「統制機構様になんてもん出してやがるんだこの店は!!」

 

 その罵声に他の客達も怯え目をそらす。

 統制機構に逆らうということは、この世界の鼻つまみ者にされるということだ。

 なるべく関わらない方がいい、ほとんどの客がそう思い他人事のようにそれを見ていた。

 だが1人、そんな状況でも怯えることなく、天玉うどんを食べている男がいた。

 

「ったくうるせえな、静かにうどんも食えやしねえ」

 

 と、そんなのんきな事を言っていた時、店員がラグナのテーブルの方へと殴り飛ばされた。

 テーブルはまっぷたつに、ラグナはすぐさま避けるが、天玉うどんは無茶苦茶になってしまった。

 

「ぶっち~ん」

 

 ラグナの中で何かが弾けた。

 だがそんなラグナのことなどお構いなしに、統制機構の士官は店員を指さして笑っていた。

 

「ぶっはっはっは!! 惨めったらありゃしねえ!!」

「大丈夫か~? テーブルの修理費くらいだしてやるよ~、俺達はてめえらと違ってプラチナダラーは結構持ってるしよ~」

「ついでにこんな薄汚れた店、リフォームしてやろうか~? ぎゃはははははははは!!」

 

 店員と他の従業員は、そこまで言われても逆らうことなく、頭を下げ続けていた。

 相手は世界のトップ、下層部の定食屋が逆らえる相手な訳がない。

 下層部でなくても、上層部の貴族でさえヘコヘコ言ってる連中だ。そんなやつに逆らうだけでも命知らずなのに、正面からたたきのめせるヤツなどどこにいようか。

 そんなバカは、すぐそばにいた。ラグナはゆっくりと統制機構の士官達へと向かっていく。

 

「あぁん? なんだてめぇ?」

「銀髪にオッドアイだぁ? おいおい今時のチンピラはファッションにも気を使ってんのか?」

「てかこいつただの厨二病だろ? ぎゃははははは!!」

 

 士官はラグナを指さし笑っている。

 だがラグナは怯えることなく、そしてゆっくりと口を開いた。

 

「おいおいてめぇらよぉ、この天玉うどんは、俺の人生にとってとっても大事な楽しみなんだよぉ?」

「あぁん? てめぇなに言ってんだ?」

 

 ラグナは拳を握りしめ、ゆっくりと持ち上げた。

 そして・・・・・・。

 

「その楽しみをよぉ・・・・・・こんなにしやがってーーーーーーーー!!」

 

 ラグナは、その士官を思いっきりぶん殴った。

 士官は店のドアをぶち破り外まで飛ばされた。見たところ意識を失っている。

 

「中佐ーーー!?」

「おいてめぇ何したのかわかってんのか? 統制機構に牙を向いたってことは・・・・・・」

「統制機構だぁ?中佐だぁ?んなもん知ったことか、そんなお偉い様だからってよぉ、人の楽しみ奪っていいと思ってんのかコノヤロー!!」

 

 ラグナは残る二人の士官を殴り飛ばした。

 世界のトップに対しても一切容赦しないこの男に、もはや怖い者はなかった。

 少しして中佐と部下2名は、ラグナに向かって銃、剣などの武器を向けた。

 

「チンピラがぁ・・・・・・統制機構に逆らった罪は重いぞ!!」

「俺達はなぁ、『魔道書』によって『術式』が使えるんだよ! てめぇみたいなチンピラの喧嘩と一緒にするなゴミが!!」

「その体をボロ雑巾のようにして、支部の牢獄でたっぷりとシメてやるぜー!!」

 

 武器を振りかざす統制機構の士官3人、だがラグナはそれでも恐れという言葉を知らなかった。

 ラグナは自分が持っていたセラミック製の剣を取り出し、その士官達に向けた。

 

「き・・・・・・貴様!!」

 

 士官達はラグナを完全な敵と認識し、一斉に襲いかかった。

 そんな状況下の中でも、ラグナは笑みをこぼし、そして呟いた。

 

「かかってこいや、犬ども・・・・・・」

 

 数分後、士官3人は店の外でのびていた。

 ラグナは統制機構の士官3人相手に、一切攻撃を食らうことなく打ちのめしたのだ。

 店の客や周りの通行人達も、その光景を唖然とした顔で見ていた。

 

「じゃあ店員さんよ、天玉うどんの料金、そいつらにつけといてくれ」

 

 そう言ってラグナは、すたこらとその場を去っていった。

 ラグナ自身は、うどんが食えなくてとてもガッカリした様子だった。

 

「あ~あ、でも金はあいつらにつけたし、明日どっか別の店に食いに行けばいいか」

 

-----------------------

 

 翌日・・・・・・。

 ラグナが街の電子掲示板を見ると、とてつもないことが書かれていた。

 

「『昨日オリエントタウンにて、統制機構の士官を襲った容疑をかけられている犯罪者、ラグナ・ザ・ブラッドエッジの行方を捜している。見つけた方はご連絡を・・・・・・』はぁーーーーーーーーーー!?」

 

 なんと昨日の騒ぎのせいで、ラグナに統制機構への反逆罪が課せられたのだ。

 しかもそのニュースは統制機構の都合のいいように書かれている。これだから世界の政治というものはとラグナは呆れて何も言えない。

 ラグナ・ザ・ブラッドエッジは、1日にして犯罪者になってしまったのである。

 

「おいおい・・・・・・冗談じゃねえよマジで! 面倒くせぇことしてくれやがってよ~、痛い目を味わったいじめっ子ですかコノヤロー」

 

 ラグナはブツブツと文句を垂れていると、遠くから「ラグナ・ザ・ブラッドエッジだ!」という声が聞こえてくる。

 見たところ咎追いだ、どうやら賞金までかけられたらしい。

 ラグナはとりあえず適当に巻いて、話をわかってくれそうな宛てを探すことにした。

 一応1件あるにはあるのだが、ラグナ自身そこへは行きたくなかった。

 何せそこの店主とは、日頃馬が合わないからだ。だがラグナを1番よく知っているやつでもあった。

 とりあえずそこしかないと思い、街を徘徊している統制機構の衛士や咎追いに見られないよう、そのスナックへと向かった。

 

「あらラグナ、なにやら大変なことになってるようね? まさかここまでのバカをやらかすなんて夢にも思ってなかったわ」

「言ってろクソウサギ・・・・・・今はそれどころじゃねえんだっての」

 

 ラグナがクソウサギと呼ぶ相手、ラグナがたまに通うスナック『アルカード城』の店主である"レイチェル・アルカード"。

 見た目は小柄な少女だが、ラグナよりも遥かに長い時を生きている。

 ラグナにとっては天敵で、そして同時に理解者でもあった。

 

「それで犯罪者さんが何の用? 店のイメージも下がるし出来れば出て行ってもらいたいのだけれども、あぁでもあなたを統制機構に差し出して大金をもらって店を改築するのもありね~」

「おいおい・・・・・・マジで言ってんのかよウサギ?」

 

 一瞬びびるラグナに、レイチェルは小さく笑って「冗談よ」と言った。

 こういった部分をラグナはあまりいい目で見ていなかった。いっつも自分をおちょくっておもちゃにするレイチェル。

 だが今日ばかりは、そんなレイチェルに頼るしかなかった。

 

「んで、情報通なあんたならやつらの弱みを握れないかと思ってよ」

「なるほど、統制機構の弱みを握ってやつらと交渉するって魂胆? たぶんハメられて終わると思うけれど」

 

 レイチェルは厳しい意見をラグナに言った。

 だがこのままじゃ犯罪者というレッテルを貼られて生きていくことになる。

 統制機構に襲われようが咎追いに襲われようがラグナにとっては苦ではなかったが、いつもより面倒くさくなると思うとやっぱり枷ははずしたい。

 そう思っているラグナに、レイチェルは一つの情報を与えた。

 

「なんでも統制機構は、巨大地下で"なにか"をやっているそうよ? その実態を掴めれば、もしかしたらね」

 

 レイチェルはそう言って、地図をラグナに渡した。

 統制機構の支部までのルートである。あとは自力でそこまで行けばいい。

 その間には様々な困難があるだろうが、ラグナにはそんなことを考えている暇はなかった。

 犯罪者としてのレッテルをはがしたい、という思いとは違い、こんなことを思っていたからだ。

 

「よくもまぁ人様に犯罪者なんてレッテル貼りやがったな図書館め、その仕返しを10倍にして返してやるから待ってろよクソヤロー」

 

 ラグナはどちらかというと、統制機構に仕返しをしたかったようだ。

 そんなくだらないことで命をかけられる彼は、果たして何者なのだろうか・・・・・・。

 

 その頃、統制機構本部では・・・・・・。

 

「ラグナ・ザ・ブラッドエッジ、所詮は障害にもなり得ないクズか・・・・・・」

 

 統制機構第四師団、師団長である"ジン・キサラギ"が、ラグナの手配書を見てつまらなそうな顔をしていた。

 

-----------------------

 

 ラグナが犯罪者になった日の夜……。

 統制機構カグツチ支部では、とんでも騒ぎが起こっていた。

 

「なに!? 侵入者だと!? あの防御陣を突破したっていうのか!?」

 

 統制機構の士官は驚きを隠せずにいた。

 支部の防御陣は巨大な魔獣1匹すら丸焦げにする威力を持っている。

 それを突破したやつがいると言うのだ。そうその男とは……。

 

「ちぃ~っす、死神様のお通りだよ~、てめえらを冥界までご招待しにやってきましたよ~」

 

 そこにいたのはラグナであった。

 ラグナはしょうもないことを言いながら支部の方へと向かっていく。

 そこに立ちふさがるのは何百もの衛士、だがラグナは恐れることを知らず立ち向かってゆく。

 

「ったく人様を犯罪者扱いにしやがってよぉ、しかも死神なんて物騒な名称までつけやがって、じゃあその名称に見合うことをやるしかねぇよな~」

「ぐっ……こいつここまでイカれたやつだったとは……」

 

 衛士達はラグナの行動一つ一つに理解ができなかった。

 相手はただでさえ世界のトップ、上官を殴っただけで犯罪者扱いされるほどのやつらだ。

 なのにもかかわらず、上官を殴り飛ばすだけでは飽きたらず、今度は支部に乗り込むというのだから驚きである。

 これでは、本当の意味で犯罪者になってしまうというのに。

 

「こちとらやられたらやりかえせって、昔から母ちゃんに言われてんだ。ちなみに母ちゃんの職業はシスターさんです。父さんは物心ついた時いませんでした」

「なにをわけのわからないことを!!」

 

 ラグナは面接の受け答えのように聞かれてもいないことをべらべらとしゃべりながら、尚も進むのをやめない。

 そして……。

 

「ちなみに俺の職歴ってピザ屋のアルバイトしかねぇんだけども……まぁ元気は有り余ってるんでどうぞよろしくお願いしま~す!!」

 

 ラグナは叫ぶと同時に衛士達の方に襲いかかった。

 衛士達も様々な魔道書や魔道具、武器を振りかざし、向かってくるラグナに対して構える。

 

「俺達はてめぇの面接やってんじゃねえんだぞーーー!!」

「死ねや厨二病!!」

 

 それぞれの叫びと共に、ラグナと統制機構の衛士達との戦いは始まった。

 銀髪オッドアイのチンピラ犯罪者と、世界のトップである軍隊との対決。

 普通ならどちらが勝つかなど、目に見えているようなものである。のだが……。

 

「ぎ……ぎゃーーーーーーーーーー!!」

「なんだこの厨二病!?」

「無茶苦茶つえぇーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 ラグナはバッタバッタと統制機構の衛士達をなぎ倒していく。

 相手が十人いようが関係ない、圧倒的な力を見せつけどんどん支部の奥へと進んでいく。

 そしてレイチェルに言われたとおり、奥にある小さなエレベーターへと向かう。

 エレベーターについた時には、支部には負傷した衛士達のたまり場となっていた。

 

「殺しちゃいねぇから安心しろよ、人殺しなんてしたら天国の母ちゃんに申し訳ないしな」

 

 そう言ってラグナはエレベーターに乗り、地下深くまで降りていった。

 

-----------------------

 

 結構長い時間降りていくと、そこは暗い場所であった。

 見渡すとゲートみたいなものがある。薄気味悪いというか、正直言って不気味な場所であった。

 だがラグナはどんどん奥へと進んでゆく、彼にとって恐怖の対象になるのは"幽霊"くらいのものである。

 

「さてと、統制機構がこの地下でなにやってやがるのか、調べて街中にばらまいてやらぁ」

 

 ラグナがそんなことを思っていると、なにやら人の気配がした。

 ここに誰かがいる、そんなことを思っていると……。

 

「相変わらずマイペースな男だ」

「誰だ!?」

 

 ラグナが振り向くと、そこには"侍"がいた。

 謎の声の正体である。その男は白い仮面を被っており、現代には珍しい武士のような、侍のような格好をしていた。

 その奇妙な姿の男を見て、ラグナは思い出すように言った。

 

「おめぇ、お面野郎じゃねえか!?」

「お面野郎じゃない、"ハクメン"だ」

 

 ラグナの言葉に否定するように、ハクメンは自分の名前を言った。

 そのやりとりは昔から御用達のような、そんな親近感があった。

 

「んでてめぇこんなところでなにやってんだ? てめぇも図書館になんかされたのか?」

「この地下で統制機構がよからぬ事をしていると聞いたものだからな、かつて"六英雄"として世界を導いたものとしては、伝承した力を好き勝手に使われてはかなわない」

 

 ラグナの問いにハクメンは少しばかり苛立ちを見せながら答えた。

 六英雄、かつて黒き獣と呼ばれる怪物が襲来したときに現れた組織。

 その組織は人々に「魔術」を教え、それが元に現在の「術式」が生まれたとされている。ハクメンもその六英雄の一人であった。

 だが今の世の中では六英雄の功績など昔のことにされており、昔の英雄も今では世界にとっては障害でしかない。

 ハクメンも今では古い存在とされており、半場反逆者扱いされているのだ。

 

「そうか、お前がそれを言うって事はやっぱり図書館はここでなにかをやらかしているということか」

「うむ、だがこの先は行き止まりだ。正直奴らの弱みになるような物は見つからなかった。私は素早く退散させてもらうとしよう、縁があったらまた会おうではないか、"同士"よ」

 

 そう言ってハクメンはその場から去っていった。

 ラグナは少しばかりガッカリしながら、ぼそっと呟いた。

 

「同士ねぇ、つうか骨折り損のくたびれもうけってか、しかもこの騒ぎじゃあよけいに俺犯罪者扱いされるじゃねえか」

 

 ラグナはとりあえず明日からどう生きていこうか考えながら、その場を後にしようとした。

 その時であった。あたり一帯が激しく揺れた。

 ラグナは一瞬びびりながらも、ゲートの方を見た。

 なんと今まで閉じていたゲートが、開いてゆくのだ。そしてどんどん一帯が明るくなってゆく。

 

「な……なんだよこりゃあ……?」

 

 ラグナは唖然とした表情でそれを見ていた。

 そしてゲートから何かが出てくる。"窯"である。それも超巨大な窯。

 窯はゆっくりと開き、中から小柄な少女が出てきた。

 

「もしかして、これがレイチェルの言ってた……?」

 

 驚きを隠せないラグナの前に、真っ白な少女が降り立つ。

 そして少女が一言、機械のように呟きながら……。

 

「起動……起動……ムラクモ起動します」

 

-----------------------

 

「起動……起動……ムラクモ起動します」

 

 統制機構カグツチ支部の地下

 巨大なゲートは開き、そこから出てきた巨大な窯……

 そして生み出されし銀髪の少女が、ラグナの前に降り立った。

 

「な……なんだなんだおい?まさかこいつが……」

 

 ラグナもさすがに驚きを隠せない。

 統制機構が地下でなにかをやっているという噂はあったが、その結果がこれだ。

 巨大兵器の研究や裏の人間による密会などではない、地下にいたのは小柄な少女一人。

 統制機構が、地下でやっていたこと……。

 

「メ……メイドさんの養成……」

「……………………」

 

 ラグナの言葉に少女はピクリと反応した。

 メイドさんという単語がどっから出てきたのは知らないが、ラグナは少女の正体がなんなのか知りたかった。

 

「メイドさん……じゃないのか? 銀髪眼帯萌え狙いのアレじゃないの?」

「ムラクモユニットナンバー13、ニュー」

 

 "ニュー"、それが少女の名前であった。

 銀髪で赤い眼、アルビノ系の肌をしており、水色のレオタードに白いローブを着用している。

 そして右眼には眼帯、メイドさんにしては奇妙な格好をしている。

 ムラクモユニットと少女は名乗ったが、それが何を意味しているのかラグナにはわからなかった。

 

「んだよ図書館のやつら、地下でなにやってるかと思ったら少女を幽閉だと? でもまぁこれも十分やつらの弱みを握れそうだな、なんせ少女誘拐だもんなぁ」

 

 ラグナはこれはこれでいい物が見れたと思い、ウッシッシと笑っていた。

 肝心のニューは尚もしゃべることはない、なにか複雑な事情があるようだ。

 

「まさか図書館のやつら、こんなガキ1人を調教して遊んでんじゃねえだろうな? かわいそうにな……」

「調教? ちがうよ、ニューは"造られた"んだよ? 人工生命体って言えばいいのかな?」

「……は?」

 

 少女ニューは突如としてしゃべりだした。

 本調子を取り戻したのだろうか、顔にも生気が出てきている。

 

「造られた? どういうことだ? 図書館が寡黙系少女型のダッチ○イフでも作ってたって事か?」

「……………………」

 

 ラグナはなんというか、複雑な気持ちになった。

 確かにこいつは統制機構の商品なのかもしれないが、実際にこいつは生きている。

 だからこそラグナは、この少女のことが可愛そうに思えてきた。

 

「なんつうかおめぇ、本当にかわいそうだな。あぁかわいそうだよ」

「かわいそう? ニューがかわいそう……本当にそう思ってくれる?」

 

 ニューのすがるようなその言葉に、ラグナは本心から答えた。

 

「あぁ、色々あるだろうががんばれよ、俺はもう行くわ」

「ぽ~」

 

 ラグナが優しく言葉をかけたとたん、ニューの顔はどんどん赤くなっていった。

 あれ? なんか初期のイメージとは違うような……。

 ラグナは半分いやな予感を抱きながら、ニューに声をかけると……。

 

「お~いニューさん?」

「ラグナはニューのことを心配してくれるんだ、初めてニューをこんなに思ってくれた。なんだろうこの気持ちって……ひょっとして愛ってやつ? あれこの思いが頭から離れない、愛したい愛したい、愛して愛して"殺して"愛して愛して……」

「なんか今とんでもない単語一個混じってたぞーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 急にキャラが変わったニューに、ラグナは驚きを隠せない。しかもなんで俺の名前知ってんのこの子?

 ラグナは「あれこの子こんなキャラだったっけ?」とか思いながら、これはやばいとラグナの中で危険信号がビービー鳴っている。

 とりあえず逃げようとする物の、ニューの視線がラグナから離れない、そしてニューは空から巨大な剣を召喚して、なんとその剣を体に装着した。

 

「ラグナ~!! 私決めた! ラグナと一緒に行く!!」

「冗談じゃねえ!! なんだこいつ!? なになんだよ急にキャラ代わりやがって……」

 

 逃げようとするラグナに、ニューは剣を飛ばした。

 

「剣!? 剣を飛ばしたよこの子!? ホル○ースの名言を一瞬にして否定したよこの子!!」

 

 銃は剣より強し、ンッン~名言だなこれは……という名言がある。

 理由は銃は遠くから攻撃できるから剣より強いという意味なのだろう。

 だがこの少女は、剣を銃のように飛ばすのだからこの言葉がまるで成り立っていない。

 ラグナはとりあえず逃げ回った。

 

「ちくしょーやるしかねぇよこりゃあ、恨むなよダッ○ワイフ!!」

「溶け会おうよラグナ~!! そして一緒に死んでよ~!!」

 

 ラグナは耐えられず剣を抜いてしまった。

 女子供を傷つけるには乗り気ではなかったが、やらなければこっちが殺られる。

 そう思うとラグナの手はとっさに剣を取った。

 

「おりゃーーーーー!!」

 

 ラグナはニューを思いっきり吹っ飛ばした。

 このまま倒れていてくれれば、そう思ったがニューはむくりと起きあがった。

 

「なんだこいつ……冗談は顔だけにしとけや、なんで起きあがるのん!?」

「ラグナ~、もう私にはあなたしか見えないよぉ」

 

 ラグナは生半可な攻撃では倒せないことを理解した。

 覚悟を決めろ、そう自分に言い聞かして……。

 いざ、全力でニューに向かい襲いかかった。そして……。

 

「ぎゃーーー! ごめんなさ~い許してーーーー!!」

 

 剣を飛ばすニューは予想以上に強く、あのラグナでさえ太刀打ちできなかった。

 統制機構はなんてもんを作ったんだ!? そう心の中で叫びながら逃げまくるラグナ。

 

「ラグナ~☆」

「おいぃやめろ……頼むから寡黙系に戻ってくれよ、俺はヤンデレ趣味じゃねえって、どっちかって言うと年上系だし、俺幼女に手を出すような大人じゃねえから、そんなに飢えてないから~」

「ニューは立派な大人だよラグナ~」

「まだおめぇ子供だろうがーーーーーー!!」

 

 ラグナは等々追いつめられた。

 このままこのヤンデレ少女に殺されるのだろうか、なんとか後ろ後ろに逃げるが、気がつけば後ろは断崖絶壁。

 しかも下をのぞけばなんかやばそうな空間が広がってるし、あれ?これってマジでやばくね? 走馬燈まで見え始めたラグナ。

 

「なんで……なんで犯罪者になった途端にこんな目に……」

「さてと、じゃあラグナ、一緒に落ちよっか☆」

 

 ニューは笑顔でそう言いながらこっちに来る。

 ラグナはついにめんどくさくなったのか、ぼそっと一言こう漏らした。

 

「もう好きにしてください……」

 

 こうして、ラグナは境界へと落ちた。

 ヤンデレダッ○ワイフと一緒にどこまでもどこまでも落ちた。

 もうすぐ死ぬのだろうか……そう思いながらラグナはゆっくりと目を閉じた……。

 そして少しの時間がたち、天国か地獄についただろうと思いラグナは閉じた目をゆっくりと開いた。

 

「……あれ?」

 

 ラグナの目の先に写ったのは青空。

 周りを見渡すと、路地裏のようであった。

 ひょっとして犯罪者になった辺りからの記憶は、夢だったのかもしれない。

 ラグナは安堵の表情を浮かべた。

 

「よ……よかったぁ……俺はまだ生きてる。よし、景気付けに天玉うどんでも……」

 

 むにゅ……。

 ラグナが立ち上がると、何かを踏んだようだった。

 なんか変な感触だと思い、足の先を見てみると……

 

「にゅ~にゅ~」

 

 あれ?これって夢の中に出てきた、確かニューとか言う……。

 いやいや待て待て!あれは夢だったはずだ。とラグナは目をこらしてもう一度見ると、そこには確かにニューがいた。

 どういうこと?とラグナは路地の外に出て電子掲示板を見ると、現実がラグナを襲った。

 

「『ラグナ・ザ・ブラッドエッジ容疑者、統制機構の支部で大暴れ、史上最高額の賞金をかける。その額は9億pd』……え?」

 

 ラグナはただの犯罪者から、世界の大反逆者となった。

 そして下には自分を殺したはずのニューもいる、はたしてラグナの運命は……。

 

-----------------------

 

 統制機構カグツチ支部にて。

 

「カグツチ支部に召集というから来てみれば、なんという有様だこれは?」

 

 綺麗な金髪、そして鋭い緑眼の男、青を主体とした制服を着た男……。

 統制機構少佐のジン・キサラギは、支部の現状を厳しい目で見ていた。

 

「もうしわけありません少佐! 今すぐに支部を復旧させます!!」

「くそ! ラグナ・ザ・ブラッドエッジめ! よくも我々に対しここまでの被害を与えてくれたな!!」

 

 統制機構の士官達は苛立ちを募らせていた。世界のトップである統制機構が、たった一人の男にしてやられたのだから。

 しかも地下の重要物資まで持ち出したのだから笑えない。

 

「地下のアレについてはどうでもいい、あんなものは実験材料だ。それよりも……」

 

 ジンは冷静な目で、ラグナの手配書を見ていた。

 そして苛立ちの表情を浮かべ、その手配書を握りつぶす。

 

「ラグナ・ザ・ブラッドエッジ……世界のゴミにしてはよくここまでやったものだ。褒美にこの僕が直々に葬ってやろう」

 

 ジンはそう呟いて、その場から去っていった。

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