交錯特異点A 氷樹未踏結界   作:タングラム

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12節 闇を照らす 魔の光

ビリーが呆れていた頃、内部突入班の一同は遺跡の奥まった部分まで来ていた。

 

 

いくら地下を下ったのかは分からない、だが周りの構造は明らかに今までと違い空間が広くなっている。

 

そしてその先に―

 

「プロテア様?!」

 

 

印象的な赤紫色の髪とローブ姿が灯りに照らされ、その姿に矢も楯もたまらずオトメギキョウが走り出そうとするが――

 

 

「待って、待ってください!」

 

今まで押し黙っていたホトトギスが突然声を張り上げる。

 

「な、なに?!」

「誰かが、隠れています」

 

 

彼女の声に一度首を向け、磔にされたプロテアの方へ向き直り陸斗が一歩足を踏み出す。

 

「ほう、いい目をしている」

 

静かな感嘆、というような気配の声が空間に響く。

足音を立て―彼女は、現れた。

 

 

 

灯りに照らされ、その姿と顔立ちが明らかになる。

 

艶やかなダークグリーンの髪と、妖しさと色気を兼ね備えたつり目の瞳。

額に銀のティアラを――尖った葉の紋様が透かし彫りされたもの―を嵌めている。

 

服装もまた、いかにも「魔術師」と形容出来るものだった。

 

肩の部分から足下へかけて、暗緑色から鮮やかな緑のグラデーションが施されたドレスローブ。

腰から下の部分にかけて、トゲのように見える銀糸の刺繍が施されている。

 

年の頃は、陸斗より二回りは年上に見える。

その姿に彼は脳裏であだ名を当てはめた。

 

「(仮称つけるなら、棘の葉の魔術師(キャスター)か?)」

 

 

それを一切意に介さず、彼女は口を開いた。

 

 

 

「よくぞ私を見破ったな?私は―――」

 

「聞きたくない!プロテア様を返せぇぇ!!」

「ダメ、オトメギキョウちゃん!」

 

魔術師が名乗りを上げようとしたときと同時に、オトメギキョウが鈴の鉄槌を振り上げながら駆けだす!

ヒガンバナの制止は間に合わない!

 

大上段、真っ向から鈴の鉄槌を振りかざし飛びかかる彼女だが――「棘の葉のキャスター」は呆れたようにため息をつき―

 

「――人の話はおとなしく聞くが良い」

 

その姿を蔑む様な眼で眺め、すぐさま長杖を横一線に振るう。

それだけで突風が巻き起こり、体勢を立て直せずオトメギキョウは吹き飛ばされた―!!

 

 

「うわあああああ?!」

「危ない!」

 

風圧に吹き飛ばされ鉄槌を手放した彼女を小太郎が受け止める。

 

「ご、ごめん――」

 

 

 

二人の姿を見下げ眼で一瞥し、彼女は名乗りを上げる。

 

「私の名はイラクサ。花言葉は「根拠のない噂」「悪意」、そして花騎士にして花騎士でない者」

 

「花騎士じゃ・・・ない?それなら、その魔力は何ですか」

 

 

矢を構え、ホトトギスが問いただす。

それでもなお、魔術師―イラクサは涼しい目でそれを受け止めた。

 

「そう簡単に教えると思うか」

 

膠着状態に、今度は陸斗が一歩前へ踏み込み真っ向から魔術師を睨む。

 

「ホトトギス、今度は俺に言わせてくれ―イラクサだったな。アンタのその奥にいる女性、彼女は俺の恩人でな―返して貰おうか?」

 

 

その言葉に呆れたように息をつくイラクサ。

 

「言ってくれる――それならば私の手駒を退けることだな」

 

 

そう言い、指を鳴らし――空間に音が反響し―

 

 

「これは・・・マスター君、何かが転移してくる!」

「!」

 

ダヴィンチの警告に少し遅れ、陸斗の前を守るようにオジマンディアス、ヒガンバナ、小太郎の三名が前に出る。

転移反応の光が消え、その姿が明らかになると――ヒガンバナが驚きの声を上げた。

 

「これって・・・ネモフィラちゃんが話していた行方不明の哨戒部隊の子たちじゃない?!」

「傀儡にされたか――不甲斐ないぞ花騎士達よ!」

 

オジマンディアスの言葉が切れるのとほぼ同時に三つの人影が得物を構え一行へ襲いかかる!

それを三名それぞれが食い止め、なし崩しに至近距離の乱戦と化した。

 

 

 

つい先日の光景が陸斗の脳裏へよみがえる。

即座に彼は念話のチャンネルを開いた。

 

【先生、前のネモフィラを解析したときの記録はあるか?】

『勿論。やっぱりそうするよね――』

 

【時間はどれくらいかかる?】

『私だけなら10分は要るかな、補助があればもっと短くなる』

 

 

その念話に彼は悔し顔で乱戦を睨んでいるオリヴィアの方へ首と目線を向ける。

 

「オリヴィア、聞こえてたか?もう一度力を貸して欲しいんだ」

「汝に言われるまでもない――」

 

 

静かに、怒る。

その声音のまま、彼女はダヴィンチの帽子に乗り移った。

 

 

一人と一体が距離を取ったことを確認し、陸斗は再び念話のチャンネルを開く。

その相手は――

 

 

【陽動部隊、聞こえるか!外の戦況はどうなっている?】

 

【―――・・・】

 

一斉に呼びかけた故に、混線する。

さながら脳内に直接砂嵐の音が響くような感覚にめまいすら覚える。

 

それが、数秒。

長い数秒間は、突然終わりを告げる。

 

【はいよ、こちらカルデアのガンナー!呼んだって事は何かあったね?】

【ビリーか、今プロテアを攫ったと思われる敵を目の前にしているが明らかに人手が足りない、こっちに来れそうか?!】

 

彼の問いに数呼吸の間、間が空く。

そして答えが返ってきた。

 

【ああ、大丈夫さ。外の安全は確保済み!モーさんやアルも行けるって言ってる!】

【分かった、花騎士に後を任せてこっちの援軍に加わってくれ、令呪で召喚する!】

【はいよ!】

 

 

チャンネルを切り、陸斗は「わざと目立つように」声を張り上げた。

 

 

 

「赤の令呪三画をもって命じる、我が前に来たれ、カルデアの英霊たちよ!!」

 

 

 

鮮やかな真紅。

令呪というカタチに押し込められていた魔力が彼自身の言葉でプログラムを刻まれ、機械的にその望みを実行する!

 

光がほどけると、そこには遺跡の地上にいたはずの三名――つまり、モードレッド、アルジュナ、ビリーの姿。

 

「呼び出しを受けたから何かと思えば、実にまがまがしい」

「これが今回の大一番って?」

 

ガーンデーヴァを構えるアルジュナと、普段の軽口のままリボルバーを抜きはなつビリー。

 

モードレッドもまた、クラレントを構え直していた。

 

「なるほどなるほど、実に反逆しがいのある相手って訳だ!――マスター、やっちまっていいか?!」

 

 

「全力をたたき込め!そのまま小太郎達はプロテアの救助を!」

 

 

 

指示一下、即座にモードレッドが前衛を、アルジュナとビリーが後衛と言う陣形を組み突撃する。

 

「邪魔、だぁぁ!!!」

 

跳び蹴り一撃で斬り込み、残った片腕で手近な水の影を切り伏せる。

その近くには小太郎の姿。

 

「コタロウ、聞こえてたろ?!行け!!」

「了解―!、オトメギキョウ、ハゼラン、行こう!」

 

 

 

 

 

 

 

三人体制を組み直し、水の壁をくぐり抜けた小太郎たちがプロテアの側へと近づく。

いつの間にか、イラクサの姿はかき消えていた。

 

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