だが、カルデアスは誰にも気づかれないまま「新しい世界」を観測しており……?
2017/7/01 特異点タイトル風の演出を追加。
所変わり、視点は別世界へ移る。
その世界――否、その地方は七つの「世界花」によって支えられた土地。
今はその一角が欠け、数を六つに減らしている。
そして、千年前から続く厄災と今もなお続く激しい生存競争のただ中にある世界。
名を、スプリングガーデン。
その極北に当たる地、「ウィンターローズ」の雪原に建つ屋敷、その奥深く――
『願うが良い、この杯は全てをかなえるモノ』
薄い雪明かりに照らされた部屋、その中空に浮く鈍い光を放つ杯――
それこそが、かつて特異点というモノを作り出した聖杯だと言うことは、少女が知るはずもない。
ガーネットレッドのロングヘアに百合のような髪飾りをつけた、豪奢なドレスをまとった彼女はソレを前に考え込む。
そして、視線をあげて口を開いた。
「何でも、そう言ったわね?」
『そうだ――』
「ならば、聖杯よ。私は願います」
そこで彼女は一度セリフを切り、呼吸を整えて願いを声にする。
「【私に自由を、この力に縛られない自由を】」
『―――』
そして、光が全てを飲み込んだ。
視点はその極北の地から常春の国・ブロッサムヒルへと移る。
千年前に誕生し今もなおこの地と五つの地方を苦しめている『人に害をなす虫』…害虫。
それに対抗するための騎士…花の名を得て人外の力に目覚める乙女たち……を養成する育成学校などで知られる土地だ。
そしてそれは抱える騎士団の数にも現れる。
その詰め所のうちの一つ、会議室と思われるところに一人の男と数人の女性達が机を囲んで腰掛けていた。
ホワイトボードの正面の席…上座と思われるところに座る一人の男――年の頃は二十代後半か――が口を開く。
「プロテア、急にどうしたんだ、リリィウッドへ帰るだなんて?」
彼の名はシャーレイ。
中堅どころの実力を持つ騎士団の団長であり、自身もまた前線へ赴くスタイルをとっている人物だ。
アッシュグレイの髪を短く切りそろえ、額には鉢がねを締めている。
体つきは引き締まっており、トレンチコートに近いロングコートのような軍服をまとっていた。
地球の――それも日本の人間が見れば、まるで明治時代の人間だというかも知れない。そんな服装だ。
彼の声に、その場にいる全員の目線が彼と同じ方向へ―赤紫色のロングヘアとリボンが特徴的な白いローブの少女へと向く。
「はい・・予見のようなモノがまた見えてしまって…気がかりで」
その答えを聞き、ふむ…と腕を組むシャーレイ。
「予知、か。貴女はこの団の客員騎士、ただの団長である俺に引き留める理由はない。だが、よかったらどんなビジョンが見えたか話してくれないか」
ええ、と呼吸を整え、彼女は覚えていたビジョンを話し出す。
「凍り付いたリリィウッドの森で、花騎士ではないけれどそれに匹敵する者たちが戦っている、それに凍り付いた屋敷から外を眺めている令嬢の姿――これまでです」
「令嬢?まさかな……それにしても奇妙なもんだな?花騎士でないのに戦える存在がまだいるだなんて。話は分かった、俺の騎士団の第一小隊も回そう…サクラ」
「はい、団長さん」
視線を右へ―ベレー帽そこから覗く桜色の豊かな髪とオッドアイ、それにどこか柔らかい顔立ちの彼と同じ年頃に「見える」女性、花騎士のサクラが答える。
「いつでも準備はできていますわ。けど――私たちの居ない間は大丈夫かしら?」
「大丈夫さ、こういう時のために戦力育成を少しずつでも続けてきたんだ」
通常、花騎士の戦闘単位は五名で一個小隊、それが四部隊集まり一個中隊規模となる。
これ以上の人数だと指揮が行き届かなくなる上、世界花の力で常人を超えた身体能力を持った花騎士達の把握ができなくなるためだという。
そしてその四分の一である一個小隊を派遣すると言うことは、それだけ彼が客員騎士であるプロテアを気にしている、と言うことだった――
それに、と前置きをし、更に彼は一言付け加える。
「カトレアのヤツも屋敷に戻っているんだろう?もしそっちまで行くことがあったら覗いてくるのも良いかもしれないな」
そんな会議があったのが、三日ほど前。
親衛隊と花騎士一個小隊という人数の一行は街道を南下、リリィウッド国境へさしかかろうとしていた。
だが。
「はわ…何ですか、あれ――?!」
藤紫色の髪に黒い和服の少女―花騎士・ホトトギスが異常に気づく。
その横に並んだ、銀髪狐耳に巫女服をまとった女性……同じく花騎士のヒガンバナがそれを怪訝そうに見ていた。
その表情は普段の楽観的なモノとはまるで違う。
「嘘でしょ…プロテアちゃんの予見通りだなんて!それに…」
言葉を継ぐように、自身の使い魔である麒麟「イブキ」に騎乗したキリンソウが頷く。
「あの霧、何か『良くない』が…だがリリィウッドへ帰るためにはこの道を行くしかないか――プロテア様、いかがなさいますか」
そう後ろへ振り向き、自身の主であるプロテアに確認をとる。
その彼女の目はまっすぐに霧の中を見据えていた。
「――行きましょう、親衛隊の皆、小隊の皆さん、護衛をよろしくお願いします」
そして九人の騎士が樹氷の森へと踏み入っていった。
視点は再びカルデアへ戻る。
「今日は育成素材集めだったな、また目標は遠いけど気張ろうか」
そう一人呟き、俺――藤丸陸斗はコフィン――人体を霊子化し、指定した時間軸へ送り込むことでタイムスリップを可能とした魔術と科学の融合したモノ―に入り込む。
最初来たときには数十個は同じ物があったが、今はこれ一つしかない。
死屍累々、火の海と化したかつての風景を―始まりの風景を一時思いだし、それを頭を振って追いやる。
調整に時間がかかるのだろう、目をつぶった脳裏にぶっきらぼうに聞こえる少女の声が響く。
『んにしてもよマスター、人理とやらを直したのは良いけどさ、ここに来てた他のマスター候補って連中はどうしたんだよ』
【それがな、下手に解凍して死なれたらまずいらしくてな…だから俺がここの最後のマスターだって事は変わりないぞ、モードレッド】
『へぇ…面倒なもんだな』
そう言い、思念声の一つ――かつてブリテンを二つに割った反乱を引き起こした張本人であり、俺のサーヴァント部隊の中でも古参英霊であるモードレッドは沈黙する。
その代わりに声をかけてきたのは、中性的な声の少年――ビリー・ザ・キッド。
『それにしてもさ、今までの特異点にいくにしちゃあなんか時間かかってない?』
【あ?まだレイシフト工程が始まってないのか?何が――】
妙だ、と思った直後。
もはや耳馴染みとなった電子音声がコフィンの外から聞こえてくる。
《アンサモンプログラム スタート ――――……》
ザザ、と言う砂嵐の音が聞こえる。
いや待て、今までレイシフトは数百回と行ったが、特異点Fの時以来砂嵐なんて聞いていない――あってはならない!
『管制室、なんかレイシフトに異常が――』
だが、その声を出すにはもう遅すぎた。
機械音声が俺の…いや、『俺たち』の行く先を告げる。
《交錯特異点 氷樹未踏結界 クリスタルフォレスト》
それは全く知らない地名だった。
異常に気づいた管制室が緊急停止をしようとしているが、それよりも先に身体が軽くなっていく感覚に染まっていく―――!
《アザーオーダー 界離記述実証を 開始します》
「先輩っ?!そんな―」
「っくそ、なんて事だ!!マシュ、陸斗君の存在証明に集中を!何人か補助についてやってくれ!」
「ダ・ヴィンチちゃん?!」
妙齢の美女にしてカルデアの大黒柱たる「レオナルド・ダ・ヴィンチ」が即座に指示を飛ばす。
はい!!と言う声が数人分鋭く答え、まだ呆け気味のマシュの席の左右に陣取り、端末を操作する。
「うっ…先輩、皆さん、どうかご無事で――私も加わります!」
それを見て頷き、だが彼女の表情は硬いままだ。
あってはならないはずの事故、同じ星の時代どころか別世界へ被験者が飛ばされると、誰が予想しただろうか。
「完全に不意打ちだったな、こっちが体制整えるまで無事で居てくれよ、陸斗クン――!」
年代不明 界離定礎値 C+ 氷樹未踏結界 クリスタルフォレスト
-万花の騎士団-
(!)NOTICE(!)
・フラワーナイト一同にサーヴァント属性が追加されました。
・この特異点のシナリオ攻略中はフレンドサーヴァントは使用できません、代わりに花騎士メンバーが参戦します。
(!)NOTICE(!)