交錯特異点A 氷樹未踏結界   作:タングラム

6 / 20
前回のあらすじ

花騎士の一団と共にリリィウッド中心部へと向かうカルデア一行。

害虫の群れもまた、歴戦の英霊と花騎士たちにとっては敵ではなかった。
だが、樹海の中心部へたどり着いた彼らが見たモノは、白銀の樹氷に覆われた世界花の街並みだった――


3節 白銀の森の 世界花

首都であり世界花でもあるリリィウッドは、湖の中に浮いた浮島のような形をしている。

清らかさを感じさせる名前の通りの巨大な百合の花も、樹氷の森と合わせて見ると冷え切ったような印象を受けた。

 

一行はそれを見下ろせる位置の小高い場所から街道を伝い、放射状に伸びた橋の一つにさしかかった。

 

「一面凍り付いてますね、まるで冬そのものです」

 

そう言うのは赤錆色の髪で目を隠した忍者装束の少年・風魔小太郎。

かつて戦国時代のとある大名に仕えていた忍者集団、その首領である。

 

その声にオトメギキョウが答えた。

 

「コタロウ君だっけ?君もこんな風景って知ってるんだ」

「ええ。『生前』の話になりますが。それにしても、話を聞いていればこの湖はずいぶんと水量が多い。それが凍り付いているとは」

 

思案するかのように彼は声の調子を落とす。

それにつられ、オトメギキョウも周囲を見回す。

 

「話してたら段々と寒くなってきちゃったよ・・・門が遠く感じちゃうなぁ」

 

 

そんな話をしつつ、一行は数あるうちの門の前までやってきた。

 

「止まれ、ここより先は入国審査を受けてもらう」

 

 

「物々しいですね、どうしましたか」

「どう・・・・・・って貴女はプロテア様!」

 

予想外の人物がいたという驚きに門番――陸斗より一回りほど年上ぐらいの男性兵士―が固まる。

だがそれも一時的に、彼は事情を話し始めた。

 

「ええ。ここ最近花騎士のような影や兵士ではまず敵わない影が出没しており、入国検査を厳重にしているのですよ」

 

影、と言う言葉に陸斗の表情が変わる。

 

「門番さん、その影って倒したらチリみたいになるヤツだったか?」

「ん――そうだな、かろうじて倒した仲間からそんな話を聞いた。だからどうした?」

「いや、その答えだけ聞きたかったんだ、ありがとう」

 

 

そう受け答えし、彼は考え込むように押し黙る。

それと入れ替わりにプロテアが進み出た。

 

「彼らは花騎士達と共に私をここまで護衛してくれました、私の名にかけて安全だと言いましょう――それで良いですか?」

 

 

視線をもそらさない言葉に、門番はうぅむと息をつき。

 

「申し訳ない、上長に確認を取らせてもらいたいです」

「・・・分かりました」

 

 

彼女の言葉を聞き、彼はきびすを返すと城塞の中へと早歩きで戻っていった。

 

「プロテアちゃんの威光でも時間がかかるなんてねぇ。休めるならさっさと休みたいわ」

 

そう言いつつ、ヒガンバナがぼんやりと九尾を動かす。

その後ろで思考から戻ってきたのか陸斗がその動きを目で追っていた。

 

「―何よ、気になる?」

「ああ・・・その、すまん。俺のサーヴァントの中にもお前みたいな特徴のヤツがいてさ」

 

 

その話に不機嫌そうだった表情から驚きの表情へと彼女は顔色を変えた――

 

「別世界の九尾の狐って事よね?どんな子よ」

 

その質問に陸斗は少しばつが悪そうに答える。

 

「九尾というか、能力を分割したから一尾になってるんだけどな。本来はアンタと・・・ヒガンバナと同じ魔術師なんだが、俺の知っているヤツは槍兵のクラスに切り替わってる」

「昨日話していたところね、英霊は逸話や得意とした得物によって七つのクラスに大分類され、ごくまれに例外がいるって」

 

「ああ、そうだ。カルデアの召還形式は英霊という情報を最低限まで圧縮し、結果弱体化させちまう。その代わり何名かを同時に使役できるって具合だな。

 んでその圧縮情報が『霊基カード』なんだが――」

 

 

そこまで言い、彼はローブの下からモードレッドの姿が描かれた霊基カードを取り出し、陽にかざす。

 

「どういう原理か分からんが、この霊基カードをハッキング・・・無理矢理書き換えられるヤツがいる。そいつに乗せられた結果、何騎かカード情報が変化したのが見つかってな・・・・・・

 脱線しちまった、カルデアの九尾の狐がどんな子かって話だったな」

 

 

息を整え、もう一度口を開く。

 

「玉藻の前といって、かつての都を大混乱に陥れた九尾の狐そのものだ。けどまぁ表面上こそは丸くなってるみたいだがな」

「ふぅん、それで性格は?趣味とかは?」

 

「性格は――そうだな、あざとくて多少やり過ぎなくらい一途って所かな。今は居ないがお前を目の前にしたらまず間違いなく驚くと思うぞ?」

 

 

そう話が終わるのと入れ替わりに、先ほどの門番が戻ってきた――

 

「確認が取れました、こちらを」

 

 

そう言うと彼は丸められた書簡をプロテアへ渡す。

 

「これは?」

「身分の保証書、及び皆さんの入場許可証となります。受付に話を通しましたので、これを見せれば市街地への入場ができます」

 

「そうですか――お疲れ様」

 

 

は!と敬礼を返し、番兵は持ち場へと戻っていった。

それを一息ついて見やり、彼女は一行に振り返る。

 

 

「皆、お待たせ――行きましょう」

 

 

 

 

 

手続きを済ませ、一行は市街地へと足を進める―

 

 

 

「――すげえ」

 

市街地へ一歩足を踏み入れた第一声。

それは陸斗からだった。

 

ごく自然に樹と生活が一体となった、まさに森で生きるというこの国を表すような町並みが並ぶ。

だが、道行く人はどこか凍えているかのように身を震わせ、足早に歩いて行く。

 

「・・・結構見られてるな、そんな珍しいもんか?」

「モードレッドならまだいいよ、僕は結構ココにそぐわない格好だとおもうけどさ」

 

「――気まずかったりしたら霊体化しとくか?」

 

「そうだね―何かあったら呼んでよ」

 

そう流れるようにやりとりをし、ビリーを始めとした英霊達の姿が風に吹かれる塵のように消える。

英霊の特徴の一つである霊体化だ。

 

 

「分かっていたが、目の前で人が消えるって言うのもなかなか怖い物だな」

 

肩をすくめ、キリンソウがそう感想を漏らす。

それを横目に、プロテアが何か思い立ったように陸斗の方へ振り向いた。

 

「ところで陸斗君、サーヴァントの使役ってずいぶん魔力を使うみたいだけど、今は大丈夫?」

「ん?ああ――」

 

 

そう返事を返し、魔力を確認しようと黙想する。

だが、ここで異常なことに気づいた。

 

「・・・・・・おかしい、魔力を感じ取れねぇ」

「マスター君のパスから流れてくる魔力がないけど、現に私は現界できている?・・・まさか」

 

「訳知り顔で頷かれても困るぜ、どういう事だよ先生」

 

 

ふむふむと頷くダヴィンチに陸斗が問いかける。

それに対し、彼女はこう答えた。

 

「バビロニア並の魔力が空気中にあるからこそ私達はこうやって動けるって事だよ。けどこのままだといつ電池切れを起こすか分からない」

「は?!じゃあどうすれば」

 

「―どうすれば良いかは知っているんでしょ、プロテアちゃん」

 

「はい・・・ダヴィンチさんの予想通りです、今の陸斗君はスプリングガーデンの魔力を『知らない』上に、拠点であるカルデアからのバックアップもない。だから魔力がなくなりかけている」

 

「言われてみれば――確かに。ってか周波数の違う機械を無理矢理使おうとしてるって事か?」

「しゅうはすう?・・・は分からないですが、色合いの違う魔力を使えていないというのは事実です」

 

「なるほどな―それなら、どうすりゃあいい?」

「ええ。もう少し付き添って貰います、親衛隊の皆も」

 

向けられた目線と言葉に、たたずんでいた親衛隊の一同が頷く。

 

「んで、俺はどこに行けば良い?」

「それは――」

 

 

プロテアが指さした先は青空を突き抜けて伸びる大樹だった。

すなわち、国の名と同じ名を持つ世界花―リリィウッド。

 

 

- * - *- *-

 

 

 

視点を変えよう。

 

陸斗の消失に蜂の巣をつついたような騒ぎになっているカルデア管制室。

そのうちの一つの端末を叩いていた職員が上座に振り向き、声を上げた。

 

「こいつか!技術主任、陸斗君のレイシフト先と思われる反応を確認しました!!」

「出たか!見せてくれ!」

 

その声の方へ、「もう一人の方の」ダ・ヴィンチが駆け寄る。

そしてその瞳がせわしなく動き、情報を読み上げ始めた。

 

「――ちょっと待て、この反応は――聖杯、だって?!」

「と言うことは、今までの特異点のように人理を歪めようとしているモノの仕業だと?」

「ああ。それに、数打ちとはいえ聖杯なんて代物を早々簡単に作れるヤツがいてたまるか。それこそ、ソロモン七十二柱の魔神でもなければ」

 

そこまで言い、彼女は一度目を閉じる。

そして黙想し頷くともう一度目を開けた。

 

「よし、キミはこの座標になんとか通信ができないか試してみてくれ。手段は何を執っても構わない」

「了解!」

 

 

 

 

- * - *- *-

 

 

そして、視点は戻る。

カルデア管制室の修羅場を陸斗は知るはずもなく・・・

 

彼は花騎士一同に連れられ、市街地の陰にある小さいほこらの前に来ていた。

 

「それで、俺は何をするんだ?」

「ええ――この祠のご神体に触れてみてください。世界花が貴方の害意がないことを読み取れば、力を貸し与えてくれるはず」

 

 

その『ご神体』と指し示されたモノは、鉱石を削って作られたような感触の百合の花束だ。

蒼銀色と言えば良いのだろうか、不可思議な色合いと光を放っている。

 

 

「――立ち止まってても仕方ねぇ」

 

そう一言呟き、彼は花束を――令呪の刻まれた左手で触れる。

瞬間。

 

 

『――――?!』

 

 

一瞬だけ意識が飛んだ。

だがそれも一瞬で治り、恐る恐る銀百合から手を離し、手を握り込んでみる。

 

問題なく動く――

 

「待って、陸斗君その令呪は?!」

 

ダヴィンチの声に、彼は左手甲をよく見る。

 

すると、そこには見知った存在である赤い令呪に書き足されるように銀色の葉っぱを模した『四画目』で『蒼銀色』の礼呪が刻まれていた。

 

 

「――マジかよ、四画目の令呪なんて」

 

 

そう漏らした声は、あまりの展開の早さについて行けていないという陸斗の心情そのままの唖然とした声だった・・・・・・




(!)NOTICE(!)

このシナリオ中のみ、令呪が四画となり、凍結状態から解放されました。


※結構無理矢理展開だったかも知れない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。