【完結】元オルフェノクとIS学園   作:妖怪もやし

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第十二話 昼食

女子生徒に追い回されるというピンチに見舞われたが、何とか遅刻だけは免れた琢磨たち。

授業が始まり、出席簿を片手に千冬が現れる。

 

「よし、全員集まったな。今日はISの訓練の第二段階に入るわけだが…一つ模範戦闘を見せて貰おう。凰とオルコット。前に出ろ。」

「分かりましたわ。」

「はぁ~…。こーいうのは気が乗らないわね。」

 

ご指名を受けた二人が前に出る。

やる気が無さそうな鈴音だったが、千冬に何かを言われた途端に燃え始めた。

 

「よし、やってやるわ!今の私なら誰が来ても倒せる!」

「うわっ、鈴の奴気合い入ってるな。千冬姉は何を言ったんだろ。」

(おそらくは貴方の事でしょうね。)

 

鈴音の変化に呑気な感想を漏らす一夏を見て声に出さずにツッコミを入れる。

そして、セシリアと鈴音が戦えばどちらが勝つのかを頭の中でシミュレーションする。

 

(これは興味深い戦いになりそうですね。ふむ…。鈴音さんの龍砲も弾が見えない分脅威ではありますが、多彩な遠距離攻撃を持つセシリアさんが有利でしょうか。)

 

琢磨の見立てではセシリアに軍配が上がったようだ。

セシリアと鈴音も火花を散らしはじめる。

そんな彼女たちに、千冬が水をさすように声をかける。

 

「何を勘違いしている。お前たちが戦うべき相手は今から来るところだ。」

「へ?」

「ど、どいてくださーい!」

 

鈴音が間抜けな声をあげた次の瞬間、周囲に悲痛な声が響き渡り、ISを纏った山田が空から落ちてきた。

突然の出来事に誰もが逃げ惑う中で一夏が白式を展開させて受け止めようとする。

派手な落下音と土煙が巻き上がった。

 

「一夏!」

「ちょっと、大丈夫!?」

 

彼の身を案じた箒と鈴音が真っ先に駆け寄る。

土煙が晴れた時、一夏は何故か山田を押し倒しているような体制となっていた。

一夏の手は彼女の胸に乗せられており、顔を赤くした山田がブツブツとうわごとを言っている。

 

「い、いけません織斑君、教師と生徒でそんな…。でも織斑先生が義姉さんってことに…。」

「すいません先生!今どきますか…ら…」

 

背後から尋常でないプレッシャーを感じ、一夏の顔が凍り付く。

恐る恐る振り向くと、そこには怒りの表情を浮かべる箒と鈴音の姿があった。

自分が彼女たちを怒らせたことに気づいた一夏は真っ青になるのであった。

 

(これがラッキースケベってやつでしょうか。少し羨ましい…。はっ!いえ別に私はそういう下品なことがしたいわけではありませんが。あくまで一般論としてですね。)

 

琢磨はこのハプニングを羨望の目で見ていたが、我に返るなり心の中で言い訳を始める。

そんな彼をシャルルがどこか白けた目で見ていた。

 

 

正気を取り戻した山田が恥ずかしそうに立ちあがるのを目で確認し、千冬が話を戻した。

 

「では、オルコットと鳳の二人は山田先生と戦ってもらう。」

「えっ、二対一ですの?」

「それは流石に…。」

「安心しろ。今のお前たちでは勝てん。」

 

二人は少し渋っていたが、煽るような言葉に火が点いたのか戦いを承諾した。

そして、千冬の合図と同時に上空で模擬戦闘が始まった。

 

「デュノア、山田先生のISを説明しろ。」

「はい。山田先生が使用しているISはラファール・リヴァイヴです。これはデュノア社によって開発・量産されたもので、その高い性能と汎用性から世界中で使用されており…。」

 

突然の指名にも動じずにシャルルは完璧な説明をしてのけた。

やがて、激しい戦いの末に決着がつき、敗北したセシリアと鈴音が悔しそうに倒れ伏していた。

元代表候補生の山田の実力を知った生徒達は驚いている。

 

「く、まさか二対一で負けるなんて!」

「…私達の連携が甘かったのもありますが、相手が見事でしたわね。敵ながら素晴らしい攻撃でしたわ。」

「そうね。悔しいけどアタシたちはまだまだってことか。」

「でも、それは私たちにまだ成長する余地があるということですわ。」

「良い事いうじゃない。」

 

二人は敗北を噛みしめて成長に繋げようとしている。

千冬と山田はそんな彼女たちを優しい目で見つめていた。

 

 

模擬戦闘が終了すると訓練タイムに入った。

 

「ではこれより実習を行う。各自グループを作り、リーダーが一人一人に動作を教えてやれ。」

「オルコットさん、射撃を教えて!」

「織斑くーん、接近戦のコツが知りたいんだけど!」

「デュノアくん。私もラファール使ってるんだけどこの動作がよく分からなくて…。」

 

千冬の言葉を聞いた生徒達は自分が学びたいと思える相手の元に集った。

少し前ならば数少ない男子に人気が集中していただろう。

しかし、謎のISの襲撃から彼女たちの意識は少しずつ変わりはじめており、真剣に強くなりたいと思う者が増えたようだ。

その思いを汲んだ琢磨たちも丁寧に指導し、千冬と山田は生徒たちの間を回って補足説明を行う。

多くの生徒にとって有意義な授業となったことだろう。

 

 

 

昼休み。

琢磨たちは屋上に集まって昼食を食べることにした。

その中で箒はどこか不満そうにしている。

彼女は一夏と二人きりで食事がしたかったが、彼が琢磨たちや鈴音も誘ったことで考えが台無しになったのだ。

そんな箒の様子を見て何かを悟ったのか、シャルルが少し気まずそうにした。

 

「ぼ、僕も来て良かったのかな。」

「なに言ってんだよ、みんなで食べた方が美味しいって!なぁ逸郎。」

「ソウデスネ。」

「何で片言なんだよ…。」

 

棒読みの琢磨に一夏が首を傾げる。

何時までも凹んでられないと思ったのか、箒が緊張した様子でお弁当箱を取り出した。

 

「な、なあ一夏。その…今日は少し早く起きてしまったので、たまたまお弁当を作って来たんだ。良かったら食べないか?」

「あ、箒、抜け駆けはズルイわよ! 一夏、あたしも酢豚作ったから食べて!」

「おー、二人共ありがとな!…まずは箒のから食べよっと…。うん、美味い!」

「そうか、それは良かった!」

「むぅ…私のも食べてよ一夏!」

「分かってるって。」

 

一夏は箒と鈴音に両側からお弁当箱を差し出されていた。

男子にとっては嬉しいシチュエーションだが、彼はいつも通り普通に対応している。

 

(これがモテる男の余裕でしょうか…。)

 

両手に花の一夏を見て琢磨はそんな感想を抱いた。

そんな彼の心中など知らず、一夏は箒の料理を褒め始める。

 

「このから揚げとか絶品だぜ!箒も食べてみろよ。」

「えっ、いや私は散々味見したから…。」

「良いから良いから。な、美味いだろ?」

「そ、そうだな…。うん…。」

 

半ば強引にから揚げを食べさせられ、箒は顔を赤くする。

大胆な行動に皆の視線が集まるが、彼は恐らく天然でやっているのだろう。

 

「わっ、これって日本で言う『あ~ん』だよね!?本物が見れちゃったよ。」

「…味な真似を。ぐぬぬ箒めぇぇ。」」

 

一夏の行動にシャルルは呑気な感想を漏らしたが、鈴音は悔しそうに二人を睨んでいる。

そして、少し恥ずかしそうにしながらも一夏に迫り始める。

 

「ね、ねぇ一夏、私の酢豚も食べさせてくれない?」

「自分で食べられるだろ?…まぁ良いか。それ。」

 

一夏は鈴音の要求に答えて酢豚を口に運んでやる。

静かに悶絶する鈴音を見て対抗心を抱いたのか、箒が一夏に再び『あ~ん』を要求し、それに気づいた鈴音が…とどうしようもない状況に陥っていく。

 

一連の様子を見ていた琢磨とセシリアは疲れ切った顔でため息をついた。

 

「何でしょう…。私たちすっかり忘れられてますわね。」

「もうコレって三人で交際すればいいんじゃないでしょうか。国によってはOKだそうですし。」

「二股なんて最低ですわ!それに、あの二人が承諾しそうにないかと。」

「確かにそうだね。」

 

三人は顔を見合わせて苦笑し、自分たちも食事を味わうことにした。

琢磨とシャルルは学食のパンで、セシリアはお手製の料理をバスケットに詰めて持ってきたようだ。

 

「私は今日はサンドウィッチを作ってみましたの。」

「へぇ、オルコットさんって料理とかするんだね。」

「同じクラスなのだからセシリアで結構ですわ、シャルルさん。今日は料理日和なので、少し手をかけてみたのです。見て下さい、この色と艶を。」

 

セシリアが得意げにバスケットを開ける。

そこには美味しそうなサンドウィッチが詰められており、素材も一級品のようでパンやレタスの色がとても鮮やかだった。

 

「これは美味しそうですね。」

「でしょう?…でも、少し作りすぎてしまったようですわね。折角なのでお二人にも分けて差し上げますわ。」

「良いの?ありがとう。」

「では遠慮なく。」

 

一切れずつ差し出され、二人はお礼を言いながらほぼ同時に口に付ける。

その表情は口を動かしていくうちに青白いものになっていく。

 

「あら、どうしたのかしら…?さぁ、気を取り直して私もいただくとしましょうか。」

 

セシリアもまた自分のサンドウィッチを食べ始め…表情が凍り付いた。

 

「こ、これは一体…。どうしてこんな味に。」

「えっとさ、セシリアはこれに何かトッピングした?」

「ええ、臭いを良くする為に香水を少し振りかけて、さらに色と艶を良くする為に…。」

 

セシリアの言葉に琢磨とシャルルは絶句した。

料理にはこだわりがあるのか、シャルルが少し語気を強めながらアドバイスを始める。

 

「まずは試食することだよ、セシリア。自分で食べて見ないと味が分からないでしょ。あと香水は使わないように。」

「た、確かにそうですわね。試食はするべきでしたわ…。でもやはり匂いを良くするには香水は欠かせないのでは。」

「それはダメー!いや、世界中を探せばそういう料理もあるかもしれないけど、サンドウィッチには必要ないから!」

「は、はいっ…。」

 

セシリアはシャルルの勢いに少し引いていたが、不味い料理を食べさせた負い目か真面目にメモを取り始める。

一方の琢磨はセシリアのサンドウィッチを何とか平らげていた。

可愛い女の子が作った食べ物は味が多少アレでも食べておきたいものだ。

 

(ふぅ…。何というか個性的な味でした。でも、セシリアさんには自分の料理を見直す良いきっかけになったかもしれませんね。…それにしても。)

 

未だに『あ~ん』合戦をしている一夏たちに目をやり、少しやるせない気分になった。

 

(はぁ…。自分の為に料理を作ってくれる女の子が二人も居る上に、『あ~ん』ですか。本当に良いご身分で羨ましいです。私にもそういう女性が居ればなぁ…。)

 

やけ食いするかのようにパンを勢いよく口に運ぶ琢磨であった。

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