【完結】元オルフェノクとIS学園   作:妖怪もやし

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第一話 IS学園

IS学園。

1年1組の教室では、副担当の山田真耶の指示によって生徒達が自己紹介を行っていた。

30人の生徒のうち28人が女性というのは少し異様な光景だ。

 

「おっ、織斑一夏です…以上です!」

「お前はまともに自己紹介もできんのか」

 

場の雰囲気にのまれたのか、緊張気味の自己紹介をする織斑一夏。

遅れて登場した織斑千冬は呆れた様子で彼の頭を出席簿で叩いた。

途端に女子生徒達から歓声が沸き上がる。

この女性がどれ程人気があるのかが良く分かる光景だ。

 

「静かにしろ!…全く。では山田先生、続きを」

「は、はいっ。えっと、次の人は…」

 

自己紹介は進み、いよいよ琢磨の番になった。

 

「琢磨逸郎くん」

「はい」

 

2人目の男子生徒の存在に女子生徒達がざわめき始める。

前世で社会経験がある琢磨は注目の視線にも動じずに話し始める。

 

「琢磨逸郎です。趣味はイェイツの詩集を読むこと。

スマートブレイン社で開発されたISを使用しています。宜しく。」

 

琢磨が席につくと拍手の雨が降りかかる。

どうやら琢磨は彼女たちのお気に召す自己紹介が出来たようだ。

 

「あれが二人目の男子操縦者?」

「結構いけてるじゃん」

「あたし的には織斑くんのが好みかなー」

「趣味が詩集とかお洒落ー!」

 

耳に入ってくる品評の言葉は流石に恥ずかしかったようで、気まずそうに俯く琢磨だった。

 

 

 

「なぁ、琢磨くん」

「ん?」

 

休み時間。

教科書を流し読みしている琢磨の席に男子生徒が近づいて声をかけた。

この学校に琢磨以外の男子は一人しか居ないのですぐに名前は分かった。

 

「何か御用でしょうか?織斑さん」

「あのさ、男子生徒って俺らだけだろ?仲良くしたいなと思って」

「…そうですね。私も同意見です。これからよろしく」

「おう!あ、俺のことは一夏って呼んでくれ。俺も逸郎って呼ぶからさ」

 

握手を求めてくる一夏に、一瞬躊躇しながらも手を握り返す琢磨。

それを待っていたように教室の隅から黄色い声が上がった。

 

「…私たちの会話はそれなりに注目されていたようですね」

「みたいだな。なぁ逸郎、敬語は別に良いぜ?俺たち同級生だしさ」

「これは癖みたいなものでしてね。余り気にしないでください」

 

和やかに話を続ける二人の元に一人の女子生徒が近づいてきた。

長い黒髪をポニーテールにした気の強そうな子だ。

 

「ちょっと良いか?」

「ん…?あ、箒!箒じゃないか?」

「…琢磨と言ったな。すまないが一夏を少し借りるぞ」

「ええ、構いません」

 

箒は少し強引に一夏の腕を引いて教室の外に出ていった。

読書の続きに取り掛かろうとする琢磨の元に、今度はプライドが高そうな金髪の女子生徒が近づいてきた。

琢磨は彼女の名を既に知っていた。

 

「あなた、ちょっと宜しくて?」

「何か用でしょうか?イギリスの代表候補生のセシリア・オルコットさん?」

「あら、私を知っていらっしゃるのね」

「代表候補生の名は大体調べてあります。研究の為にね。まさか同じクラスとは思いませんでしたが…」

 

琢磨は将来ライバルとなるであろう代表候補生の資料を取り寄せていた。

前世では一企業で高い地位に就いていた彼にとって事前の下調べ程度は出来て当然だ。

セシリアは高い射撃能力を持っており、成績も良いので強く印象に残っていたのだ。

 

「そうですか…。ふふ、昨今の男性にしては少しは勉強家ですのね」

 

男性が劣っていることを前提とした誉め言葉に不快そうに眉を動かす琢磨。

上機嫌のセシリアは目前の男の表情の変化に気づいていない。

 

「それで、何か御用でしょうか?」

「ええ。男性がISの操縦者となるのは苦労も多いと思いまして。もし分からないことがあったら私が教えてあげますわ」

 

代表候補生のレッスンを受けられるとは中々有り難い提案だ。

だが、今のところISの知識や操縦で困っていることはないので、失礼のないように丁重の言葉を述べることにした。

 

「それは有り難い。困ることがあれば頼らせて貰いましょう」

「ええ、分かりましたわ。ではご機嫌よう」

 

好感触を得たからか、軽い足取りで自分の机に戻っていくセシリア。

それと入れ替わるように一夏と箒が教室に戻ってきた。

 

 

 

休み時間が終わると、千冬が授業の前にある発表を行った。

 

「これより、クラスの代表となる者を決める。

クラス代表の役目を簡単に説明すると、対抗戦への出場や、生徒会の会議及び委員会への出席といったところだ。

自薦他薦は問わない。誰かいないか?」

 

千冬の言葉にざわめきが漏れるが、面倒なのか自信が無いのか自薦する者は居ない。

やがて、一人の女子生徒が手を上げた。

 

「織斑君がいいと思います!」

「え!? お、俺!?」

「あー、それ良いね!」

「私もそれがいいと思います」

 

突然のことに動揺する一夏を差し置いて女子生徒達が盛り上がり始める。

 

「じゃあ私は琢磨君を推薦します!」

「私も!」

 

やはりこうなったか、と琢磨は静かに空を仰いだ。

好意で推薦されたのならば悪い気はしなかっただろうが、彼女たちが2人に求めているのは客寄せパンダとしての役割だ。

珍しいから使われているだけで実力を認めてなどいない。

それは琢磨にとって少々屈辱だった。

 

「納得いきませんわ!」

 

屈辱を感じたのは琢磨だけでは無いらしく、セシリアが勢いよく立ち上がった。

 

「そのような選出は認められません!男性がクラス代表なんて良い恥さらしですわ!

実力から言えばわたくしがクラス代表になるのは必然。

大体、文化的にも後進的なこの国に居ること自体屈辱だというのに!

それを珍しいからという理由で、ISについて学ぶ気もない極東のさ…」

「セシリア・オルコット。やめなさい。それ以上は問題になる。一国の代表候補生が差別発言をするのは不味いでしょう」

「うっ…」

 

問題発言を未然に防ぐ琢磨。

大企業の幹部クラスだった彼は、一つの発言が破滅を招くことを理解していた。

琢磨の制止でそれに気づいたセシリアは、言おうとした言葉を飲み込む。

しかし、一夏はセシリアの言葉に腹を立てて怒りの声をあげた。

 

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

「なっ…。美味しい料理はたくさんあります。私の祖国を侮辱するとは許せませんわ!」

「先に侮辱しようとしたのはそっちだろ!」

「こうなったら決闘ですわ!正々堂々と勝負をつけましょう!」

「ああいいぜ。その方がわかりやすくていい」

 

(…どうにも不味い流れになってきましたね。

この展開だと候補者の1人である私も戦うことになりそうだ。

ならば自分から言った方が恰好がつくでしょう)

 

琢磨はやむを得ず話に割って入ることにした。

 

「その決闘、私も混ぜて貰いますよ」

「良く言ったぜ逸郎!それでこそ男だ!」

「ふんっ。宜しいですわ。二人纏めて返り討ちです!」

「ハンデはどうする?」

「あら? あれだけ啖呵を切っておいて早速お願いかしら?」

「いや、俺がどのくらいハンデを付けたらいいのかな―と」

 

琢磨が味方になったことで強気な事を言いだした一夏に、女子生徒達から嘲笑が漏れる。

 

「織斑君、それ本気で言っているの?」

「男が女より強いなんて大昔の話だよ」

「男と女が戦争したら一日も持たないって説があるのを知らないの?」

 

一連の流れを見ていた琢磨は、腹が立つよりもむしろ彼女たちを哀れに思った。

それは彼女たちと過去の自分がダブったからだ。

オルフェノクこそが最高の生命体だと考え、人間を見下していた頃の自分を。

故に琢磨は、諭すような口調で男性軽視発言をした女子生徒たちに語りかける。

 

「…生きている限り、どちらが優れている、劣っているというのは比較され続けるものです。

ですが、これから同じクラスになるというのに、男子は劣ると考えて相手を見下すのは、少し虚しい考え方では無いでしょうか?

誰かを見下し続けていると性格が歪んでいくだけですよ」

「それは…」

 

彼の言葉には不思議な説得力があったので、先ほど一夏の発言を馬鹿にした生徒たちは口を閉じて気まずそうに目線を逸らした。

そんな空気の中、セシリアは琢磨を静かに見つめていた。

 

(なんでしょう、彼の言葉から感じられる自嘲のような雰囲気は。

弱者の戯言と簡単に切り捨てることが出来ないような気がしますわ。でも…)

 

セシリアの脳裏に浮かぶのは情ない父の姿。

それが一種のトラウマとなっている彼女は男を簡単に認めることが出来ない。

 

(…口では何とでも言えますわ。そんな綺麗事が言えないよう、叩きのめしてさしあげます!)

 

セシリアは心の中に浮かんだ不思議な感情を追い出し、琢磨を睨みつける。

一方で琢磨もセシリアを強い意思の籠った瞳で見つめていた。

 

先ほどの琢磨の言葉で教室に気まずい沈黙が流れていたが、担任の織斑千冬がそれを破る。

 

「話がずれたので本題に戻す。ハンデの話が出たが、結局どうするつもりだ?」

「千冬姉…じゃない、織斑先生。やっぱり俺はハンデなしで戦いたい」

「私も同意見です。フェアであった方が良い」

「良し、分かった。セシリアもそれで良いな」

「異存はありません。二人まとめて返り討ちですわ!」

 

3人の意思を確認した千冬は満足そうに頷く。

 

「よし。決闘は今日から一週間後、総当たりで行うものとする」

「え?俺と逸郎も戦うのか?」

「候補者が3人いるのだから、総当たりで決めた方が良いという判断でしょう」

 

一夏の疑問に琢磨が代わりに答える。

かくして琢磨、一夏、セシリアの3人はクラス代表の座をかけて戦うことになった。

果たして琢磨はイギリスの代表候補生に勝つことが出来るのだろうか。

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