【完結】元オルフェノクとIS学園   作:妖怪もやし

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第四話 和解

試合を見届けた千冬の心には琢磨への賞賛の言葉が浮かんでいた。

代表候補生であるセシリアに勝利したことも素晴らしいが、相手を研究した上で策を立てて成功させたことが彼への評価を高めていた。

 

「大した奴だ。」

「ああ。すっげぇぜ琢磨の奴!あんなに追い詰められてたのによ。」

 

無邪気にはしゃぐ一夏。

彼は今の戦いを間近で見ていたのに、琢磨の一つ一つの行動の真意を気づいていないのだ。

 

「今の戦いは録画してある。後で見ておくと良い。参考になるだろう。」

「ああ!」

 

千冬は一夏をそれとなく誘導するだけに留めて具体的な説明は行わなかった。

 

(私が琢磨の行動の意味を教えても意味は無い。 自分で気づいてこそ得るものがあるだろう。)

 

それは彼女の親心だった。

 

 

やがて、琢磨がピットに戻って来た。

 

「逸郎、お帰り!凄かったぜ。」

「短い訓練期間の割には上出来だ。」

「…有難うございます。」

 

織斑姉弟の祝福の言葉にクールな返事を返す琢磨だが、その顔には勝利の喜びの色があった。

それに気づかぬ振りをしながら千冬は話を切り替える。

 

「次は琢磨と一夏の試合が行われる。 少し時間があるので適当に休んでおけ。」

「分かりました。…少し、失礼します。」

 

琢磨はピットの隅にあるソファに座りこむと、スポーツドリンクを片手に詩集を読み始めた。

結構マイペースな男である。

 

 

 

決闘の時間が迫るにつれ、一夏は見るからに焦り始めていた。

 

「まだ来ないのかよ…。」

「このままだと不戦敗、もしくは訓練機での出撃となるな。」

「そ、そんな~…。」

 

情ない声をあげる一夏。

そこに山田と倉持技研のスタッフが登場し、白式を用意してくれた。

一夏にとっては救いの女神といったところだろう。

山田たちが白式の説明を始めたので、空気を読んだ琢磨は一足先に出ていった。

 

(説明を聞いていてもルール違反では無いのだがな…。律儀な男だ。

それとも、一夏との勝負には余り関心が無いのか?)

 

「10分後に決闘が開始される。急げ」

「え? でも、ち…織斑先生。俺はこのISに慣れてないんだぜ?もうちょい時間をくれても…」

「一週間もあったんだから訓練機で特訓出来ただろう。

…待て、そもそもお前は訓練機の申請を行わなかったよな?何をしてたんだ?」

「俺はずっと剣道場で箒に訓練を付けて貰ってたんだ。」

 

千冬は驚きに目を瞬いた。

 

(何故ISの訓練では無くて剣道なんだ?

白式の能力を考えれば悪く無いかもしれないが、いやそれでも訓練機を使ってISに慣れておくべきだろうに…。)

 

一夏は山田たちから性能を教わると、試合時間ギリギリにピットを飛び出した。

 

「この勝負、駄目かもな…。まぁ敗北も良い経験だろう」

 

 

 

同時刻、セシリアは目を覚ました。

白を基調とした部屋や医薬品の数々を見て、今居る場所がどこなのかを悟る。

 

(…ここは、医務室ですの?)

 

ベットから起き上がると、それに気づいた医師が駆け寄ってくる。

年配の優しそうな女性医師だ。

 

「気づいたようね。良かった。完全防御があるとはいえ、やっぱり心配だったのよ」

 

医師はテキパキとセシリアの状態をチェックしていく。

心ここに在らずといった表情でそれを見守るセシリア。

その心は先ほどの戦いに向けられていた。

 

(私は完全に圧倒していた筈なのに…。最大の火力を放ち、華麗にフィニッシュを決めた筈。

でも、敗北したのは私でした。)

 

圧倒的優位から逆転されたことはショックな出来事だった。

しかし、彼女も代表候補生であり、誇り高きオルコット家の当主。

自分に勝利した相手を認める心を持っていた。

 

(琢磨逸郎…見事でしたわ。

普通ならばあの状況からの逆転など不可能。それをやってのけるなんて…。)

 

彼女の心に浮かんだ気持ちは相手へのリスペクトだった。

見下していた男性にこのような気持ちを抱くなど、少し前のセシリアならあり得ない事だった。

彼女の心は敗北によって変わり始めていた。

 

(…そういえば今は何時でしょう? 私はこの後に織斑さんとの試合を控えていた筈です。)

 

医師に聞いてみると、まだ一夏との対戦時間には余裕があるとのことだ。

セシリアが次戦を行うつもりだと知って医師は難色を示したが、本人の決意が固いことと、メディカルチェックで問題が無かったことで渋々承認した。

 

「有難うございます。ところで、確か今は琢磨さんと織斑さんの戦いの最中の筈。

宜しければ映像を見せて貰えませんこと?」

「そうだね。研究の為にも必要だろうし、許可しましょう」

 

医師の許可を得て、備え付けられたモニターのスイッチを入れる。

 

 

 

戦いは既に中盤だった。

射撃武器が無い一夏は懸命に接近しようとしているが、ファイズは距離を取りながら射撃と鞭を巧みに使い分けて着実にダメージを与え続ける。

最早ここまでか、というところで白式の性能に気づいた一夏。

急加速をかけてダメージを与えようとするが…。

 

「その動きは既に知っていますよ。」

 

ファイズは白式の攻撃を華麗に回避すると、カウンターのグランインパクトを叩きこんだ。

この一撃で白式のシールドエネルギーはゼロとなり、琢磨の勝利が決定した。

琢磨は前世で急に速度を上げたファイズの前に敗れた経験がある。

そのため、白式の急加速にも動揺することなく対処できたのだ。

 

 

 

そして、医務室で観戦するセシリアは。

 

(私との闘いはマグレでは無かったのでわね。凄い人ですわ。…思えば、あの時もそうだった。)

 

思い返すのは、教室での出来事。

頭に血が上っていたセシリアは差別発言を言いそうになったが、それを止めたのは琢磨だった。

自分の国が侮辱されたというのに、相手の立場を思いやって咎めることが出来る。

それは中々できることでは無い。

少なくても、当時のセシリアには無理だっただろう。

 

(…琢磨さん。私は貴方に感謝しなければなりませんわね。そして、謝らなければならない…。

それが貴族として…いいえ、人として私がすべき事ですわ。

そして、もし彼が私を許してくれたのならば…。)

 

ピットに戻っていく琢磨を真剣なまなざしで見つめる。

 

(その時は、私のライバル…。いえ、友と呼ばせてほしいものです。)

 

 

 

その後、セシリアと一夏の戦いが行われた。

 

「よし、今度こそ!」

 

喝を入れるように自分の頬を叩く一夏だったが、彼は二度目の敗北を知ることとなる。

白式に射撃武器が無い事を知っているセシリアは徹底した射撃戦を挑んだ。

元より経験と技量で勝るセシリアが男性への軽視や油断を捨て去れば、一夏は近づくことすら出来ない。

それでも、躍起になって近づこうとする一夏だが…。

 

『試合終了。勝者、セシリア・オルコット。試合時間12分27秒』

「えぇっ!? う、嘘だろ!」

 

白式がエネルギー切れを起こしたので敗北となった。

ブルーティアーズの攻撃を受け続けたこともあるが、膨大なエネルギーを喰う雪欠をずっと使用していたのが敗因となったのだ。

余りに呆気ない結末に、勝利したセシリアも戸惑いの表情を浮かべていた。

 

 

 

 

その日の夜、セシリアは琢磨の部屋を訪れた。

 

「…何か御用でしょうか。オルコットさん。」

 

身構えていた琢磨だったが、セシリアがいきなり頭を下げたことで驚いた表情を浮かべる。

 

「琢磨さん…。教室での事、謝罪させて下さい。申し訳ありませんでした。」

「えっ…ちょ、ちょっと、オルコットさん?」

「あの時、私は貴方の祖国を侮辱し、差別発言をしそうになりました。しかし、貴方はそれを止めてくださいました。

そして、貴方は私と戦って堂々と勝利しました。

私は男性というだけで貴方を見下していましたが、それは間違いだったと気づいたのです。

性別や国で誰かを差別して見下すことは愚かだったと痛感しました。だから…ごめんなさい。」

 

思いのたけを告げるセシリア。

突然のことに慌てていた琢磨だったが、彼女が真剣に話をしていると気づいてそれに聞き入る。

 

(…強い方ですね。私はそれに気づくのに、とても長い時間がかかってしまったというのに。

そして、気づいた時には仲間も上司も失っていた…。でも、彼女は違う。)

 

セシリアを内心で賞賛し、静かに言葉を返した。

 

「頭を上げて下さい、オルコットさん。」

「琢磨さん…。」

「貴方の謝罪は確かに受け入れました。貴方がそれを悔いていることも。それで十分です。

自らの間違いを認めて謝罪することはとても勇気がいる行為です。

それを行った貴方を私は尊敬します。」

「有難うございます、琢磨さん。…その、少し図々しい頼みごとをしても宜しいかしら?」

 

不思議そうな顔をする琢磨に、セシリアは魅力的な笑顔を浮かべて口を開いた。

 

「貴方を下の名前で呼ぶことと、貴方を友と思うことを、お許し頂きたいのです。」

「…ええ、喜んで。オル…セシリアさん。」

 

互いを認め合った2人は、熱い握手を交わした。

 

 

 

セシリア・オルコット…1勝1敗。

織斑一夏…2敗。

琢磨逸郎…2勝。

以上の結果により、クラス代表は琢磨逸郎に決定した。

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