最弱無敗の神装機竜――四天の竜――   作:パNティー

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 久しぶりの投稿ですので、リハビリに思いつきのPartです。Part9は(3)で終わりにしたいと思います。

 今回は単なるジークとリーシャの仲直り(イチャイチャ)ですので、二人以外は出てきません。まあ、許して下さい。

 では、どうぞ。


Part9 鍵の少女と秘眼の竜(2)

 「ん……。うう……」

 

 苦悶の呻き声と共に、リーシャは目覚めた。爆心地からは離れていたはずなのに、耳鳴りがする。

 

 「あ、起きたか」

 

 「うわあぁっ!?」

 

 背後からいきなり声をかけられ、リーシャはびくっと身体を震わせてしまった。振り返ると、リーシャと同じ装衣を身につけたジークが、枝を脇に抱え立っていた。その背後には、すでに建てられていたテントがある。

 

 「いやー意識が無かったからちょっと寝る準備を進めていたんだよ」

 

 「そ、そうか」

 

 枝を地面に置いて、焚き火を準備をするジークを見ながらリーシャは体調を整える。耳鳴りも治ってゆっくりと視線を辺りに巡らす。

 

 ごつごつした大岩。木々の隙間から見える湖。そして、柔らかな明かりで地面を照らす天井。ここはおそらく―――第六遺跡『箱庭(ガーデン)』の中だろう。

 

 そうリーシャは心の中で頷くと、視線をジークに戻した。だが、黙々と火を起こすそのぼろぼろになっている右手を見てリーシャは立ち上がった。

 

 「おい、その右手!」

 

 「ん? ああ、これか」

 

 ジークはまるで、今気づいたような調子で自分の右手を見た。

 

 「爆風で腕がちょとステーキになったぐらいさ。気にしなくて平気」

 

 それを示すようにジークは右手を握ったり、開いたりする。

 

 「痛みはちょっと感じるぐらいかな。まあ、痛覚が狂ってるからだけどね」

 

 へらへら笑うジークが逆に、心配になる。幻神獣(アビス)の自爆から『騎士団(シヴァレス)』を守るために身をていしたのだろうが、流石に無茶をし過ぎている。

 

 「バカもの! まずはその傷の手当をしろ!」

 

 「え、いや大した傷じゃないって」

 

 「いいから寄こせ!」

 

 そう言って、リーシャは鞄から応急手当の道具を取り出すと、ジークの右手を手当していく。

 

 「身を呈するのはいいが、無茶はやめてくれ。お前はわたしにとって大切なんだ」

 

 「リーシャ……」

 

 「―――悪い。流石に今のは恥ずかし過ぎた。忘れてくれ」

 

 頬を染めて顔を背けるリーシャ。それを見て、ジークは手当をしているリーシャの手を握った。

 

 「ありがとう、リーシャ。嬉しいよ」

 

 ここまで自分を大切に思ってくれるのが嬉しくて。それに、リーシャが可愛かった。

 

 「う、ああぅ。ええい! これ以上わたしを恥ずかしめるな!」

 

 嫌そうに手を払うも、顔を真っ赤に染めていてとっても可愛らしい。

 

 「そう言えば、みんなは大丈夫か……」

 

 「俺が身をていしてたから大丈夫でしょ。ええと、確か遺跡(ルイン)に入ったときは、行動が決められていたはず」

 

 しかし、メンバーがバラバラになった今の場合は事前の作戦は意味を成さない。

 

 「今日はもう夜になるし、明日に行動を移そう。皆を集めてから攻略にするか―――撤退にするかはリーシャが決めればいい」

 

 「そう、だな……」

 

 巻かれた包帯と、手の調子を確かめながらジークは天上の明かりを見た。『箱庭(ガーデン)』の中は、太陽がない。にもかかわらず、まるで日が落ちるように天井の明かりは消え、自然と辺りは暗くなる。

 

 「まあ、早めに野宿の準備が出来てるから問題はないか」

 

 

 ✝

 

 

 パンッ!と弾ける炭化した薪に、新たな薪をジークは追加していく。綺麗に紅く燃える焚き火を見ながら、携帯食料の干し肉を焼く。

 

 (焼けば少しは美味しくなるかな……アム。うん、変わんない)

 

 残念なほど美味しくない。当たり前か。

 

 「―――なあ……どうした?」

 

 「え、何が?」

 

 「眉間に皺が寄っている。お前にしては珍しい」

 

 きょとんとジークが呆けた表情をした後、眉間に手を当て確かめる。

 

 「いつから?」

 

 「箱庭(ここ)に来てずっとだ。何かあったのか?」

 

 「あったと言えばある、かなぁ」

 

 ジークは曖昧な回答をしつつ、薪を追加する。

 

 「―――明日の決闘の事で悩んでいた」

 

 「機竜が壊れたのか?」

 

 「いいや。《オッドアイズ》の方は平気だ。あの爆発で弾けたのは外装だけで本体の方は無事」

 

 「じゃあ、一体……?」

 

 数度、ジークは言うのを躊躇った後、溜息を吐いて言う決心をした。

 

 「()()()()()()()()で悩んだ」

 

 「なにを……言ってるんだ?」

 

 リーシャは理解できないと、言いたげな表情で返してきた。まあ、概ね予想通りと言える。

 

 「そうだね。簡単に話すと、いつも通りの戦い方で挑もうと思っている」

 

 いつも通りの戦い方とは、わざと戦いに負ける『道化師』のスタイルだ。

 

 「なっ!? お前は本気で言っているのか……?」

 

 「当然。リーシャ、これは君達を守るためでもあるんだ」

 

 そう言った、ジークの瞳には後悔と迷いがあった。

 

 「なんで、俺は旧帝国の連中に裏切られたと思う?」

 

 「なんでって……それは、なんでだ?」

 

 リーシャはふと疑問に思った。ジークは旧帝国に裏切られ、仲間を一人失い、生き残った仲間とは離れ離れになってしまった。しかし、裏切られるに至るまでの理由をまだ、リーシャは知らない。

 

 「俺はな、傲慢に力を使ったのさ」

 

 そう、あれは全て俺が招いた。

 

 

 ✝

 

 

 あの頃の俺は、ただ戦うのが好きだった。機竜の声が聞こえる特性のおかげで、性能を最大限まで引き出せる俺にとっては、歳が六つに関わらず大人相手でも負けはしなかった。(まさ)しく、無敗。ただ純粋に、勝利を求めた。

 

 だが、本当の勝利と言うモノをはき違えていた。

 

 「面子(メンツ)という問題だったんだろう。年端もいかない餓鬼一人に、旧帝国の精鋭が敗北した。その噂が広まる前に消してしまうのは、必然の行動であっただろう」

 

 逆恨みで仲間を殺された。それは、この時代には良くある事で、仕方の無い事だ。

 

 「勝って(殺して)負けて(殺されて)勝って(殺して)負けて(殺されて)―――その繰り返しのなかで俺はある結果に辿り着いた」

 

 「………」

 

 リーシャは感づいたしまったが、言えなかった。いや、言いたくなかった。何故なら―――

 

 「―――自分から、負ける(殺される)事だ」

 

 誰かに勝って、負けるぐらいなら、最初から自分が負けて被害を最小に納める。戦う時は、常に半歩後ろに下がって武器を構え、引き金を引く時は僅かに遅れて引いてきた。

 

 「わかったかい? 勝つってことは、負けるってことの表裏一体なんだよ」

 

 「……違う」

 

 ジークの話を聞いて、リーシャは悔しいが納得するしかなかった。仲間を殺されたことがあるジークだからこそ見えるものがあって、失いたくない物があるから、そこに行き着くしかなかった。

 

 たが―――絶対にリーシャは肯定だけは出来なかった。

 

 「お前は確かに負けることで仲間を守ってきたかもしれないけど、それは違う。現に、ジークはわたしをベルベットに勝つことで守ってくれた。勝ってくれなかったら、わたしはここにはいない」

 

 「あの時は、ああすることでしかリーシャを助けることができなかったから……」

 

 「臨時教官の時だって、さっきの幻神獣(アビス)だってお前は―――」

 

 「違う! 違うんだ、リーシャ!」

 

 ジークはリーシャの言葉を遮る様に、声を上げた。

 

 「あの時は運が良かったかもしれない。けど、次はそうはならないかもしれないんだ!」

 

 ジークは手を顔に当て俯いた。リーシャの見てる角度からはわからないが、ジークはきっと辛そうな表情をしているに違いない。

 

 ジークだってクルルシファーを守りたい。けど、守れば今度はリーシャ達が危ない目に合うかもしれない、そんなことが頭をよぎるのだ。

 

 「ばかもの……」

 

 そっと、リーシャはジークを抱きしめた。

 

 「なにもお前一人で抱え込む必用はないんだぞ? ただ、後のことはわたしに任せてくれればいいんだ」

 

 リーシャはそう言いながら、ジークの頭を撫でる。優しく、まるで母親が泣く子供をあやすように。

 

 「わたしだって弱いわけではないんだ。自分の身は自分で守れるし、むしろ頼ってくれてもいいだぞ?」

 

 だから―――

 

 「わたしを信用してくれ。ジークがわたしに言ったように、わたしもお前を必ず守る」

 

 強く、まだ幼い少女はそう宣言した。それはジークに心に、強く響く一言だっただろう。ジークは一言も話さなかったが、強くリーシャを抱き返した。それを、ただ黙ってリーシャは受け入れ続けた。

 

 

 

 

 ✝

 

 

 

 

 「………」

 

 「………」

 

 燃える焚き火の目の前で、ジークとリーシャは一つの毛布に包まれながら座っていた。

 

 ((き、気まずい……))

 

 先程あんなに言ってしまったのもなんだが、お互いとても気恥ずかしい状態になっている。たぶん、顔が仄かに赤いのは焚火のせいだけではないだろう。

 

 「……あ、あの」

 

 「……な、なあ」

 

 「「……そっちからどうぞ」」

 

 あーもう何でここまで重なるかなっ!?

 

 「んじゃあ俺から。―――やっぱりこの状態でいるのか?」

 

 この状態、と言うのは一つの毛布に二人で包まっていることだ。

 

 「いや、これはジークが言いだしたことだろう……」

 

 「けど一緒に見張りをやろうって言ったのはリーシャだけど」

 

 「それは……そうだけど」

 

 遡るほど数十分前。ジークが落ち着いてリーシャから手を離したときの話し。

 

 「ごめん……かっこ悪いところを見せた」

 

 頬を赤く染めながら、ジークは謝罪をする。

 

 「い、いや平気だ。ジークの役に立てたなら良かったんだが……」

 

 リーシャも頬を赤く染めて恥ずかしそうに微笑んだ。

 

 「ああ、これで迷いなく勝てる」

 

 そう言って、不敵に笑うジークはいつもの飄々としている雰囲気のものだ。

 

 「さて、明日のこともあるし今日はもう寝よう。見張りは俺がやっているから―――」

 

 「見張りならわたしもやるぞ」

 

 「え、でも疲れているだろう?」

 

 「それを言うならジークの方が疲れているだろう」

 

 確かに、幻神獣(アビス)の爆発をまじかに受けたのだ。痛覚は狂っていても、疲れが無いというわけではない。

 

 「わたしにいい案があるぞ。一つの毛布をわたしとジークで共有すれば同時に見張りが―――」

 

 と、言うことがあった訳ですよ。

 

 「誰も居なくて良かったよ。こんなの見られたら恥ずかし過ぎる」

 

 「わたしもよくあんなの言えたなと思うよ」

 

 お互い恥ずかしいそうに言い合ってるが、内心はとても嬉しかった。それから何刻か経ったころ、リーシャが可愛らしく欠伸をした。

 

 「……ねむい?」

 

 「ううん、平気……いや、ちょっとだけ眠いかな」

 

 前のリーシャなら見栄を張って強く出てたが、今はお互いに信頼し合っているため、弱い部分も見せられる。

 

 「よっこいしょ……」

 

 「うえっ!?」

 

 ジークはリーシャを抱きかかえると、自分の両足の間にリーシャを移動させた。 

 

 「寝てていいぜ。なんかあったら起こすから」

 

 「うん……。ありがとう……」

 

 身体をジークに預け、リーシャは重たい瞼を閉じていく。しかし、ジークの心の中にはちょっとした悪戯心が芽生えていた。

 

 そっとジークは手を、リーシャの綺麗な金色の髪を結わいている黒いリボンに伸ばした。

 

 「……ごめん」

 

 「あ……」

 

 しゅるり、とリボンで留められていた金色の髪が解けて背中に垂れる。そこに、ジークは顔を埋めた。髪から香る、心を穏やかにしてくれる優しい匂い。

 

 「髪を括っているリーシャもいいけど。解いてるときの方が、俺は好きだな」

 

 「そう、か……」

 

 リーシャは手を、ジークの頬にそっと添える。そして、静かにリーシャは呟く―――

 

 

 

 

 「好き」

 

 瞼を閉じ、眠りについた。

 

 「……俺もさ」

 

 ぎゅっ、とジークはリーシャを抱きしめた。





 今年中には2章を終わらせたらと思います。

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 では、次回まで……。
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