最弱無敗の神装機竜――四天の竜――   作:パNティー

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 久しぶりの投稿だぜー!

 色々忙しかったり、スランプだったりで二か月(もしくは三か月)の間投稿してなくてどうもすいませんでした!

 頑張って書いたよ!

 ではでは、どうぞ……。


Part13 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》 (1)

 「とりあえず……もう心配はいらないわ」

 

 そう医務室の先生が言うと、ルクスとアイリはほっと息を吐いた。ジークが倒れてすぐにルクスが医務室に運び、先生に事情を説明している間にアイリが学園長を呼びに行った。

 

 「なにが原因でジーク君は倒れたのかしら?」

 

 「そうですね、ルクス君から聞いた話から仮定すると……()()()()()()()()でしょうか」

 

 「フラッシュ……バック?」

 

 レリィ学園長の質問に、病室のベットで寝ているジークを見ながら答えた先生の聞き慣れない言葉に、アイリは首を傾げた。

 

 「心的外傷、つまり強いトラウマ体験をした人がなんかしらの出来事で再びその記憶を思い出すのよ。戦場に出て行った兵士が起こしやすい病よ」

 

 (ベルベットの死で再び心の傷口が開いたのか……)

 

 消したくても消えない《記憶(キズ)》を、今なおジークは背負っている。

 

 「とりあえず、彼は今日ここで寝かせてしまいますね」

 

 「はい。では、私たちは帰らせてもらいます」

 

 そう言って、ルクスたちは帰って行った。

 

 

 ✝

 

 

 ジークが倒れた次の日―――。

 

 今日から五日間、校内選抜戦を行われる大事な日なのに主力メンバーの一人―――ジークがぶっ倒れた事を聞いてクラスはざわついていた。

 

 そうこうしていると、廊下から猛スピードで走って来る音が聞こえる。そして―――

 

 「フォオオオオオオオ↑↑↑」

 

 ハイテンションで教室の中に入って来る何者か―――ジーク(?)。

 

 「久しぶりのシャバの空気は美味いぜぇ!」

 

 かわらずのハイテンションで、クラスの全体を目を輝かせて見渡す。

 

 「うおー! かわいい女子がたくせんいるぜー!」

 

 ジーク(?)の異常な行動を疑問に思った全員を代表するようにクルルシファーが声を上げる。

 

 「なんか今日のジーク君おかしくない?」

 

 「うん……なんか言動が、ジーくんらしくない」

 

 「でも、フローリアってわけじゃなさそうですね」

 

 フローリアはどっちかと言うと落ち着いている。そして、今まで静観していたリーシャが口を開く。

 

 「あれはおそらく……エリックかな?」

 

 リーシャたちが色々と言っているのをおかまないなしに、ジークもといエリックはテンションを上げる。

 

 「よっしゃあああああ↑↑↑ テンション上がって来たぜぇ!」

 

 そして、「とうっ!」と言って飛び上がる。ル○ンのポージングで。

 

 「ではっ! い・た・だ・き・まあ~―――待てやコラァア!」

 

 ル○ンのポージングから急に床にまっかさまに落ちて頭を思いっきり床にぶつけた。ん?今度はジークか?

 

 「てめぇしばくぞ! エリック!」

 

 床から顔を上げたジークは、額から血を流しながらも自分(エリック)に怒りの声をぶつける。

 

 『痛ってぇな! んだよ別にいいじゃねえか!』

 

 「良くねぇに決まってんだろ! 人が寝てる時に身体を乗っ取りやがって!」

 

 『あぁ!? やんのかコラァ!!』

 

 「やってやるよこのバナナヘアー!!」

 

 ジークとエリックは喧嘩をしているが、彼らは一つの肉体に複数の人格を有している。傍から見るとジーク一人で喚いているにしか見えない。まあ、それも慣れたものだが。

 

 「それにしても、お姫様はよく彼がジーク君じゃないってわかったわね」

 

 「ん~何となくだが、前にジークが『エリックは馬鹿な奴なんだぜ(笑)』って言ってたんだ」

 

 ((身内を(けな)した!?))

 

 「『あぁあああああ!』」

 

 リーシャたちが話し合っていると、ジークとエリックが一つの身体でジタバタして窓から外に身を放り投げてしまった。二人分の叫び声が混ざった感じだった。そのタイミングに合わせて、ライグリィ先生が教室に入って来た。

 

 「お前ら出席取るから座れ」

 

 「ラ、ライグリィ先生! ジーク君が窓から落ちました!」

 

 「あーきっと生きてるから平気だろ」

 

 ((見捨てるっ!?))

 

 その後、ライグリィ先生は淡々と出席を取った。

 

 「それでは、本日より五日間、校内選抜戦を執り行う! 各自、参加者である武官志望の生徒たちは、演習場の掲示板を見て自分の対戦予定(スケジュール)を把握しろ。時間内に参戦できなければ不戦敗となる。怪我や体調不良などの場合は、早めに名乗り出ておけ。その点は考慮する」

 

 本来ならば、遺跡(ルイン)調査権をかけた他国との模擬戦、校外対抗戦の代表を決める戦いなのだが、今回はジークとルクスの在学と、セリスが行う討伐へのルクスの同行をかけた戦いでもある。

 

 「選抜戦用のルールは、以前解説した通りだ。そして、今回は学園長の提案で、更に特殊な勝負形式となる」

 

 セリスとその支持派である三年生と、ジークとルクスの支持派である一、二年生で対戦を行い、その結果で勝った方の要求を呑まなければならないというものだ。更にその戦いは、一般生徒戦と、『騎士団(シヴァレス)』戦との二つに分けられる。

 

 当人を含む『騎士団(シヴァレス)』のメンバーと自分を支持する一般生徒の勝利数が、それぞれ相手の支持者の勝利数を上回らなければならない。ジークたち男子及び『騎士団(シヴァレス)』内の支持者の戦いで一戦、一般生徒の支持者の戦いで一戦。最低でも、どちらかで一勝を取らなければ、ジークたちは確実に学園から追放されてしまうことになる。

 

 それぞれが持つ、相反する主張。それを通したければ力で示せ。簡潔で一番わかり易いやり方だ。

 

 「説明は以上だ。では各自、全力を出せ」

 

 ライグリィ教官が出て行くと、少女たちのざわめきが、わっと教室の中に広がった。不安の声が、口々に飛びだす。

 

 「え、えっと、すみません。なんか、みんな巻き込んじゃって―――」

 

 ルクスが反射的に、そう言うと、

 

 「ええい、静かにしろ! お前たち!」

 

 大騒ぎするクラスメイトたちを見て、リーシャが立ち上がり、一喝する。そして、クラス全員に伝えるかのように、声を張り上げる。 

 

 「わたしたちのやることはひとつだ! 狼狽える必要はない、そのために全力を尽くせ!」

 

 「―――既にできる限りの手は、打っておいた!」

 

 「……え?」

 

 と、ルクスを含めたクラスメイトの全員が、首を傾げる。それどころか、ジークの声が聞こえてきた。全員が窓を見ると、ガシッ!と手が窓枠を掴んだ。

 

 「俺たちの戦いは既に始まっているのさ!」

  

 そう言って、ジークは窓から這い上がって来た。ここ三階。

 

 「何のために俺とリーシャが徹夜を繰り返して工房(アトリエ)に籠っていたと思う?」

 

 「お姫様と二人っきりになるためじゃないの?」

 

 「う~ん、まあそうだけどそうじゃないから!」

 

 クルルシファーが言った言葉に、ジークは否定を返す。リーシャが「えっ!? おま―――」と何か言いたげだったが、今回は割愛する。

 

 「俺はこの時を見越して、二学年全員の装甲機竜(ドラグライド)全てを、一週間前から調律(チューニング)しておいた。これで君たちの機竜は、以前より全体の出力が強化されているはずだ。これなら三年生にも、一応は対抗できる……たぶんね」

 

 あるよね、見栄を張ったはいいけど後から不安が来るの。

 

 「だが、不安になることはない。そもそも今から機竜の性能を上げても差は微妙にしか縮まない気がする。――――肝心なのは、君たちの(ハート)

 

 そう言って、ジークは胸をドンッ!と叩く。不思議とクラスの全員がジークに注目した。

 

 「古来より喧嘩でモノを言うのは、いつだって魂の重さ(ウェイト)だ! 勝ちたいと思った方が勝つ! やってやろうじゃねえか! 俺たちの喧嘩がどんなもんかを思い知らせてやれ!」

 

 拳を強く握り、そう高く宣言するジーク。その熱が伝播したのか、クラス全員が熱気に包まれる。

 

 「なんかいけそうな気がしてきた!」「そうよ! ジーク君たちの努力を無駄にしてはいけないわ!」

 

 クラスメイトのやる気を見て、ジークは嬉しそうに頷いた。

 

 「よっしゃー! やってやるぞぉ!」

 

 『おー!』

 

 ジークの号令に、クラスメイトは活気立つ。それを見ていたルクスは安堵した。

 

 (よかった。昨日の事で心配だったけど、ジークの調子はいつも通りみたいだ)

 

 ルクスがそんな事を考えている合間に、ジークを含む神装機竜使いたちは各々タッグを組んだ。

 

 ジーク&リーシャ

 

 ルクス&フィルフィ

 

 クルルシファー&ティルファー

 

 ペアは予め決めて、申請しておかなくてはいけないが、対戦相手の組み合わせは、直前になるまでわからない。そのため、こういった場合もある。

 

 ジーク&リーシャ対セリス&サニア

 

 「いきなり本命か」

 

 控え室の外に、本日の対戦相手が貼り出された。それを見たジークは口を歪めた。セリスのパートナーであるサニアは、神装機竜を持ってない。故に、機体性能のみで判断するならば、こちらが比較的有利だと言えるが、周囲のクラスメイトの表情は、緊張に満ちていた。そのため、ジークは笑みは場から浮いている。

 

 校外対抗戦、校内選抜戦ともに最多数の試合をこなし、無敗を誇るセリスティアの逸話。そして、ジークとの交戦したとの話。今まで味方だった『最強』が敵に回ったことで、口には出さずとも、恐れを抱いているのが見て取れた。

 

 「―――さてと、やりますかね」

 

 「ああ、そうだな」

 

 が、対戦相手を決定した二人は、まるで動じた様子を見せず、微笑んだ。

 

 「おれたちが先に猪突猛進女を倒せば、それで勝ったも同然だからな。というわけで、ちょっくらボコしてくるぜ」

 

 ジークはルクスに向かってサムズアップをすると、演習場に歩いて行った。

 

 「………」

 

 立ち去る二人の背中を、ルクスが見送っていると、

 

 「どうしたのですか? 兄さん」

 

 「うわっ……!」

 

 突然聞こえた声に、ルクスは驚く。いつの間にか妹のアイリと、その親友である三和音(トライアド)のノクトが、隣にいた。

 

 「実の妹が会いに来たのに、とんだご挨拶ですね。酷い兄さんです」

 

 にこりと微笑を浮かべるアイリだが、目は笑っていなかった。

 

 「そ、そんなことないよ。ちょっとただ、考えてただけ―――」

 

 「考え―――何をですか?」

 

 慌ててルクスが弁解すると、ノクトが首をかしげる。

 

 「アイリは昨日僕といたからわかると思うんだけど、倒れたときのジークは異常な状態だったんだ。それが、今日になるとまるで昨日の事が無かったかのようにいるんだ……」

 

 「確かに変ですけど、考え過ぎでは? ジークさんの事ですからわりと吹っ切れてるかもしれませんよ」

 

 「……そうだといいだけど」

 

 既に誰もいない廊下を見て、ルクスは考えぶかしく呟く。

 

 「ルーちゃん。もうすぐ、始まるよ?」

 

 「……うん。わかった」

 

 背後のフィルフィからそう急かされても、ルクスは生返事を返す。

 

 「兄さん行きましょう。ここで考えていても仕方ありません―――ジークさんの事ですから負けるはずありませんが、万が一を考えてセリス先輩の情報を、できる限り兄さんに解説します」

 

 「あ、うん。ありがとうアイリ」

 

 ルクスはぎこちなく笑い、やっと四人で演習場の観客席に向かう。大勢の生徒たちや、学園関係者で賑わうその席にルクスたちが着くと、ほぼ同時に、ジークたちが入場した。

 

 

 ✝

 

 

 「それでは、校内選抜戦Aグループ二番ペア対、Bグループ一番ペアの模擬戦を開始する。互いに抜剣し、装甲機竜(ドラグライド)を装着せよ!」

 

 審判(ジャッジ)を務めるライグリィ教官の声で、四人は一斉に機攻殻剣(ソード・デバイス)を抜き払う。そして、それぞれのグリップのボタンを押すと、詠唱符(パスコード)を呟いた。

 

 「―――来たれ、力の象徴たる紋章の翼竜。我が剣に従い飛翔せよ、《ワイバーン》!」

 

 まずはサニアが、汎用機竜である《ワイバーン》を召喚する。光の粒子ととも現れた蒼の機竜は、即座に無数の部品へと展開し、サニアの身を覆う装甲と化した。

 

 「荒事は得意ではないのだけど、今日だけは本気で行かせてもらうわ」 

 

 中型のブレードを構え、サニアが告げる。『騎士団(シヴァレス)』の三年生である少女の宣戦布告に、観客席が微かにどよめいた。

 

 「……ふっ」

 

 対するリーシャは、それを一笑し、機攻殻剣(ソード・デバイス)を高らかに掲げる。

 

 「―――目覚めろ、開闢(かいびゃく)の祖。一個に―――」

 

 「ちょっと待ったリーシャ」

 

 「おわわ!? 急にどうしたんだ!?」

 

 ジークは《ティアマト》の詠唱符(パスコード)を唱えてるリーシャを止めた。その行動に疑問を思ったリーシャはジークを凝視する。

 

 「今回は《ティアマト》じゃなくて、()()()()()()()()()()()()()()》で戦ってくれないか?」

 

 「は? いや別に構わないんだが、何で弱い方を使うんだ?」

 

 「ここで《ティアマト》を使うと機体にダメージを負って後に必要な時に使えなくなる。だから《キメラティック・ワイバーン》でサニアを押さえ込んでくれ」

 

 「じゃあ、あの学園最強はどうするんだ?」

 

 「俺が相手になる」

 

 そう言うと、ジークは《オッドアイズ・ドラゴン》の機攻殻剣(ソード・デバイス)を引き抜く。それを見たリーシャはため息を吐くと。《ティアマト》を納め《キメラティック・ワイバーン》を抜いた。

 

 「降誕せよ。天地の対なる(くさび)穿(うが)たれし混沌の竜。《キメラティック・ワイバーン》!」

 

 「―――《オッドアイズ・ドラゴン》」

 

 二人が詠唱符(パスコード)を宣言すると、周囲の空間が光りに包まれる。

 

 「接続(コネクト)開始(オン)!」

 

 その直後、内側から開き、無数の部品に分かれると、高速で各部位に装着される。神装機竜と異形な機竜の威容に当てられたのか、三年生の女生徒たちが、それぞれ不安を口にする。だが、対峙するセリスティア自身は僅かな動揺も怯みもなく、機攻殻剣(ソード・デバイス)を構えた。

 

 「降臨せよ。為政者(いせいしゃ)の血を継ぎし王族の竜。百雷を纏いて天を舞え、《リンドブルム》」

 

 特徴的な刺突剣(レイピア)型の機攻殻剣(ソード・デバイス)。高く掲げた剣の背後から現れたのは、鋭くも荘厳な形状(フォルム)と、黄金の輝きを纏った大翼の巨竜。

 

 「接続(コネクト)開始(オン)―――」

 

 その美しさと底知れぬ迫力に、観客の生徒たちは、思わず歓声も忘れて見入ってしまう。右手には、特大の突撃槍(ランス)、左肩には特殊な形状の機竜息砲(キャノン)が連結されていた。

 

 「……リーシャ」

 

 「なんだ?」 

 

 「始まった瞬間に、《ティアマト》の機攻殻剣(ソード・デバイス)をかしてくれ」

 

 「……わかった。壊すなよ」

 

 短い会話を済ませた瞬間、ライグリィ教官の声が、リングに響いた。

 

 

 「模擬戦(バトル)開始(スタート)!」

 

 

 合図と同時に、リーシャはジークに《ティアマト》の機攻殻剣(ソード・デバイス)を投げ渡す。それを受け取ったジークは素早く抜剣する。

 

 

 「―――神装、《天空の虹彩(スカイ・アイリス)》!」

 

 

 瞬時に神装を発動。空に虹色の螺旋が重なり合って複雑な円を創る。交叉した《オッドアイズ》と《ティアマト》の剣が眩く光る。

 

 「いでよ、絶望の暗闇に差し込む、眩き救いの光! 《オッドアイズ・セイバー・ドラゴン》!」

 

 虹色の円から輝く追加装甲が送られると、《オッドアイズ・ドラゴン》と合体した。そして、完成したのは白銀に輝く鋭利な装甲を持つ竜。

 

 「まだだ! 来い、《V(バ二ッシャー)》、《F(フューラー)》、《D(ディザスター)》!」

 

 ジークは更に三種の武器を呼び寄せた。赤い機竜息砲(キャノン)、青い機竜息銃(ブレスガン)、そして黒い機竜牙剣(ブレード)

 

 「合体(ユニオン)―――《V・F・D(ザ・ビースト)》!」 

 

 それぞれが分裂し、複雑に絡み合う。そして、一本の白銀の大剣が完成した。右手に《V・F・D(ザ・ビースト)》、左手に《スパイルフレイム》を構えジークはその深碧色の目をセリスティアに向けた。

 

 「行くぞぉおおお!」

 

 「来なさいっ!」

 

 こうして、戦いの幕が切って下ろされた。

 

 

 ✝

 

 

 ジークとセリス。この二人だけでも一軍隊並の戦力を誇る程の実力の持ち主たち。それらがぶつかり合う時、想像を絶する戦いになる。誰もがそう思った―――

 

 だが、

 

 「だからあれは俺のせいじゃなかったんだって!」

 

 「嘘です! あれは完璧あなたのせいです!」

 

 白銀の大剣と黄金の突撃槍(ランス)がぶつかり合いながら、ジークとセリスは口喧嘩を繰り広げる。しかし、そこに加減など一切なく少しもの油断で命取りになるだろう。

 

 「私の食べ物を勝手に食べたのは重罪です!」

 

 「テーブルの上に置いてあったから誰なのかわかんなかったんだよ!」

 

 「誰なのかわかんなくても、少しは躊躇うものでしょう!?」

 

 「バーカ! よく言うだろう、お前の物は俺の物、俺の物は俺の物ってなぁ(煽り)!」

 

 「それってつまり少なからずは私のだって知っていましたよね!?」

 

 高速の攻撃を繰り出しながらも、口喧嘩を続けるジークとセリス。それを見ていた観客席の アイリは呆れたようにため息を吐く。

 

 「……はぁ。ジークさんはこんな時に何を?」

 

 「まぁ……ジークらしいと言えばらしいけど」

 

 「Yes.ですが、あれが強者の戦いだと思います」

 

 同じ力量の持ち主が目の前にいて、全力をぶつけられる頑丈な装甲機竜(ドラグライド)。滅多に相対することが出来ない偶然(あいて)に二人は今、歓喜に身を震わせている。

 

 「神装―――《支配者の神域(ディバイン・ゲート)》」

 

 セリスが呟いた瞬間、《リンドヴルム》を中心に七色の光輪に包まれる。

 

 「《スパイラルフレイム》!!」

 

 ジークは即座に砲撃を行う。しかし、弾丸が当たる前にセリスはその場から消えた。

 

 (これが、この神装の能力)

 

 「―――空間転移です」

 「しまッ―――!?」

 

 ジークは目の前で消えたセリスを目視で探していると、いつの間にジークの背後にセリスが現れた。セリスは無防備の《オッドアイズ・セイバー・ドラゴン》の背中に向けて、特殊武装《雷光穿槍(ライト二ングランス)》を振るう。黄金の槍が《オッドアイズ》を貫くと思えた。

 

 だが、

 

 「機竜咆哮(ハウリングロア)!」

 

 ジークは渦状の波を発生させる。相手に向かって放ち、攻撃を防ぐために行う機竜使い(ドラグナイト)の基本技術。それを―――

 

 「ぐぅ……!!」

 

 ジークは()()に向かって放った。衝撃をジークはその身に受け、弾き飛ばされる。しかし、《雷光穿槍(ライト二ングランス)》の攻撃を回避することが出来た。それを間近で見たセリスは感嘆の言葉を言う。

 

 「背後からの奇襲にも、冷静に対応し避け切りましたか」

 

 「ばーか……()()()()()()

 

 セリスの賞賛の声を、ジークは苦笑い、震える右手を抑えて否定した。

 

 

 ✝

 

 

 「機竜ごと姿を消した!? あれは、一体―――?」

 

 観客席でルクスが呟くと、アイリは静かに顔を上げた。

 

 「あれが、《リンドヴルム》の神装―――《支配者の神域(ディバイン・ゲート)》です。あの最初に広げた光の範囲内にあるものを、同じ範囲内のあらゆる場所へ、高速転移させることが可能です」

 

 「そんな、まさか―――」

 

 ルクスは絶句する。もし、あの光の領域がこの演習場を覆っていたとすれば―――。

 

 「Yes.彼女が最強たる所以は、まさにその点にあります。単純な戦闘技術、機竜操作の腕も群を抜いてますが、ああも自在に間合いを支配されては、勝ち目がありません」

 

 ちらりとルクスに視線を向け、ノクトが補足する。その意味を、ルクスは瞬時に把握する。

 

 戦いおいて、間合いを制するものは勝つ。自身に有利な、相手には不利な間合いを取ればそれだけで半分以上はこちらの勝ちである。しかし、この技術は難しい。なにせ相手も自身の有利な間合いを取るべく動くからだ。だが、あの神装は―――。

 

 「離れていても、一瞬で距離を詰められ。接近して追い詰めても背後を奪われる。しかも、あの神装は私の《ファフニール》の神装、《財禍の叡智(ワイズ・ブラッド)》を無効化できるのよ」

 

 背後に座っているクルルシファーの説明に、ルクスは改めて理解する。クルルシファーが操る《ファフニール》の神装、《財禍の叡智(ワイズ・ブラッド)》を駆使しても、瞬時に自らの背後へ回られれば、反撃の手段がない。そもそも装甲機竜(ドラグライド)は、基本的に背後を攻撃するようにできてない。その場での急な方向転換は機竜使い(ドラグナイト)に負担が掛る。

 

 しかも――

 

 「あの特殊武装、《雷光穿槍(ライトニングランス)》は雷撃を放つことが出来る武器です。電撃は幻玉鉄鋼(ミスリルダイト)にも影響を与えるので、当たれば装甲を通して使い手もダメージを受けますし、攻撃を受けた箇所の装甲や武装は十数秒もの間、動作を鈍らせます」

 

 しかし、あの槍がジークに直接当たる前にジークは回避したはず。なのにジークは片手を抑えてる。

 

 「Yes.ですが、それだけではありません。電撃を穂先から放ち、中距離攻撃も可能です。もちろんそれを受ければ、触れたときと同様に数秒間、装甲機竜(ドラグライド)の機能が低下してしまいます」

 

 ルクスが疑問を発するより早く、ノクトが補足する。

 

 「電撃を帯びた彼女の攻撃は、『雷閃(らいせん)』と呼ばれています。あれを使用されると、いくら兄さんといえども、防ぎ続けるのは不可能です。機竜の動き自体が、封じられてしまいますから」

 

 セリスの攻撃を、連続して受け続けることは不可能。対策として当たらないようにするしかないが、瞬時に違う場所に飛べる神装がある限りそれも不可能だろう。

 

 想像以上の難敵。戦局の挽回は、もう望めなかった。だが―――

 

 「いいねぇ! 面白くなってきたよ!!」

 

 そう中空に佇むセリスに向かって叫ぶのは、儜猛に笑みを作るジークだった。

 

 

 ✝

 

 

 「ふっ……戦局が不利なのに何が面白いと思うのですか?」

 

 「面白いに決まってんだろ! 観客が大いに盛り上がってるじゃないか!」

 

 そう言い、ジークは右手の調子を整える。

 

 (よし、攻略法が見えてきた!)

 

 右手で操縦桿を強く握ると、《スパイラルフレイム》の銃口をセリスへと向ける。

 

 「発射(ファイヤー)!」

 

 引き金を引いて攻撃をするが、セリスは難なく避ける。

 

 「おぉぉぉおおおおおお!」

 

 避けるタイミングに合わせてジークはスラスターを全開に噴かせる。接近して《V・F・E(ザ・ビースト)》を振るうが、セリスは神装でまたもや避ける。

 

 (当たり(ビンゴ)……!)

 

 ジークはセリスを迎撃するわけでもなく、演習場の上―――障壁が貼ってある限界高度まで辿り着く。そして、振り返ると。

 

 「疾く早く―――斬り裂け!」

 

 手に持っている《V・F・E(ザ・ビースト)》が激しく光る。大剣を真下に向かって薙ぐと、大気を裂いて斬撃がセリスに向かった。

 

 これがこの剣の能力。幻創機格(フォースコア)から送られて来るエネルギーを喰らい、斬撃として放出する。

 

 「ッ―――!」

 

 咄嗟に《雷光穿槍(ライト二ングランス)》で攻撃を防ぐセリス。しかし―――

 

 「崩撃(ほうげき)!」

 

 まるで、雨を見てるようだった。ジークは三大奥義の一つ、『永久連環(エンドアクション)』で連続的に斬撃を飛ばしているのだ。

 

 まさしく字に書いてある如し、城を崩落させるような攻撃。

 

 これに―――学園最強(セリス)は、

 

 「《星光爆破(スターライト・ゼロ)》!」

 

 肩に連結されていた砲身が唸りを上げて起動し、球状の光弾を発射した。

 

 「……ッ!?」

 

 眩しさに目を細めながら、ジークとリーシャ、サニアは同時に息を呑む。斬撃の雨に、黄色に明滅する光弾が衝突する。

 

 ドウッ!

 

 網膜を焼く閃光と、息もできないほどの爆風が演習内に激しく渦巻き、観客席の生徒たちが悲鳴をあげる。ほぼ演習場の八割の広さが、光と爆炎で埋め尽くされた。

 

 《星光爆破(スターライト・ゼロ)》は、《リンドヴルム》が持つ、もうひとつの特殊武装だ。溜め込んだエネルギーを極限まで圧縮した『星』という光弾を撃ちだし、数秒後、そこを中心とした半径三百ml(メル)内の空間を爆撃する、広範囲超威力の殲滅(せんめつ)兵器。

 

 その砲撃をセリスは完璧に計算し、観客席に被害がでないよう、調整して放っていた。

 

 「セリス姉様が、本気を出すなんて―――」

 

 砲撃前に、セリスから回避の指示を受け、サニアは攻撃範囲から一足先に逃れていた。それでも驚きを隠せぬ表情で呟き、中空で佇むジークに視線を移す。

 

 

 ✝

 

 

 「……さぁ、どっから来る?」

 

 ジークは砂塵舞う演習場を上空から眺め武器を構える。背後は障壁で守っている、つまり―――

 

 「後は前しか現れないと言う事ですか? ですが、それがあなたの敗因です!」

 

 セリスは《支配者の領域(ディバイン・ゲート)》で、大剣の刃渡りから外れた中距離に瞬間移動すると、槍を振るい『雷閃』を見舞う。中距離攻撃が可能なこの武器ならば、神装と合わせてあらゆるリーチで有利に立ち回れる。

 

 「終わりです!」

 

 剣は届かない、斬撃を飛ばそうにも間に合わない。電撃を喰らって機体がダウンして槍で突かれて終わり。そんな誰にも予想が着く結末に、ジークは―――

 

 「フッ―――」

 

 笑った。

 

 「―――ッ!? 何故、雷が!?」

 

 セリスが放った『雷閃』は、ジークに当たる前に()()()

 

 「()()()()()()()()()()()

 

 電気は川を流れる水流と同じで、低所へと落ちる仕組みになっている。それによって、セリスより高い位置にいるジークには届かないのだ。しかも、空気中に舞っている砂塵が自然と電気の勢いを削いでいる。

 

 ここまでが、ジークの計算内。

 

 「終わりだ!」

 

 「くっ―――!?」

 

 唖然としているセリスに止めを刺すべく大剣を振り下ろすジーク。セリスは咄嗟に槍を振るう。だが、剣の間合いに入られた今は最良の反撃をしても、ジークの斬撃の方が早く届く。それはもう避けようがない。この瞬間、セリスは確かに自分の敗北を覚悟し、

 

 だからこそ、

 

 次の瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 

 

 「ガッァ!?」

 

 「ジーク!?」

 

 そして、ジークは《雷光穿槍(ライト二ングランス)》に吹き飛ばされ、演習場の地面に叩き落とされた。慌ててリーシャはジークに駆け寄ろうとするが、サニアに阻まれ救助に向かえなかった。

 

 「なんですか、今の軽い攻撃は!?」

 

 「おれ、が……聞きてえよ」

 

 口端から血を垂れ流しながら、ジークはなんとか立ち上がった。

 

 (なんだ……今の感覚は?)

 

 身体が突然思うように動かなくなったこの事態に、ジークは困惑する。それは、観客席にいるルクスたちも同じだった。

 

 

 ✝

  

 

 「はぁ…はぁ……」

 

 額から大きな汗を垂れ流しながら、ジークはセリスの攻撃を辛くも避ける。明らかにジークは失速している。まるで、見えない重りが身体に圧し掛かっているかのように。

 

 「やはり……まだ、ジークは立ち直れていないんだ」

 

 観客席で見ていたルクスは、確信めいた言葉を言う。

 

 「立ち直れていないって。つまり、ジークさんは昨日ことをまだ引きずっているのですか?」

 

 「いや、ジークは心では振り切っているはずだ。ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「無意識、がですか?」

 

 アイリの問いに、ルクスは頷く。

 

 「自分では治しようが無い心の奥、『無意識』が自然とトラウマを蘇らしているんだ。それが身体に刻み込まれていた記憶が、筋肉に制限を掛けているんだと思う」

 

 「そんな……では、もうジークさんに勝機はないのですか?」

 

 「……わからないけど、ジークに秘策がないと多分勝てないと思う」

 

 そう言った、ルクスの悪い予感は―――()()()()()()

 

 

 ✝

 

 

 「やべぇなー……このままじゃ勝てそうにないわ」

 

 中空にいるセリスを見据えながら、独り言を言うジーク。いや、正確には二人だが―――。

 

 『やれやれ、どうするよジーク?』

 

 「どうするもこうも、解決策は一つでしょエリック」

 

 ジークは、《オッドアイズ》と《ティマト》の機攻殻剣(ソード・デバイス)を引き抜くとそれぞれを交叉させる。

 

 

 

 「『さぁ……嵐を巻き起こそうぜ!!』」

 

 

  





 どうでしたかね?スランプから抜け出して書いたのでまだ粗い部分があると思いますが。

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