「……よし、アルベルト」
座学の授業が終わって、次の授業の機竜の実演授業に女生徒が向かっている中、ジークはアルベルト―――こことは違う世界から来た
「な、なんだよジーク」
どこか警戒を含んだ声でアルベルトは答える。しかし、まぁ警戒するのはこちらの方なんだが。
「―――決闘だ」
「……は?」
ジークから発せられた言葉に、アルベルトは間抜けた声を発した。やれやれ、間抜けな顔が更に間抜けに見えるぞ?
「理由を……聞いても?」
「これは失敬。なに、簡単なことだ―――面白そうだから」
「面白そう、からだと?」
彼は傲慢に、しかも爽やかに微笑んだ。その異常性に、アルベルトは少し怯んだ。
「あー……ジークはそう言う性格なので気にしないでください」
「そうよ。相手には情けや慈悲は与えない、傲慢で気高き姫君の剣よ」
いつの間に横にいたルクスとクルルシファーが、苦笑いでアルベルトに言った。
「そう、なのか……。それは難儀だな」
「まぁ、ここ最近身体の傷がやっと治って、少し訛っている身体を動かしたいんだけどな。それに―――」
そう言って、ジークはちらっと今から演習場に向かう女生徒たちを見た。
「異世界から来た
「そう言うことなら、まあ……」
ジーク=ザン・フローリア・エリック・ルーカス。不思議な男だが、どこか憎めない性格だ。
「だがまあ、ただ戦って『はい終わり』じゃつまらない」
「何か罰ゲームでもやるのか?」
「そうだなぁ……確かバカベルト。ケーキ作れるんだったよな」
先程、学園長室で話していたのを思い出す。俺も料理は人並み以上は作れる。
「おおう、ナチュラルに人の名前で貶して来たよこの人。まあ、ケーキとは言わずデザート全般ならば」
「よし、じゃあ負けた方が勝った方にメシを振る舞うってどうだ?」
「まあ、それならば」
OKとジークは頷き、両者の間に決闘が受託された。
「ルールの方はっと、そろそろ移動しないと先生にどやされるな」
時計を見たジークは次の授業の準備をするべく部屋を出て行く。そのまるで自己中心的な行動に、アルベルトは目を丸くしていると、
「ほら、私たちも行きましょ」
「お、ああ、悪いクルルシファー」
クスッと笑って、呆気に取られているアルベルトに話しかけるクルルシファー。
「ふふ、不思議ね」
「何が不思議なんだ?」
「アルベルト君とは初めて会った筈なのに、これが最初じゃない気がするの」
(そうか、俺の世界とこっちの世界は違うのか)
アルベルトの世界では、クルルシファーとは恋人(仮)の関係だったが、ジークの世界では誰が―――
「なあ、クルルシファーはアホークとどういう関係なんだ?」
「あら唐突ね?」
「いや、言いたくなかったら言わなくても―――」
「ふふ、安心して彼とは別にそう言う関係ではないわ。ただ、ちょっとだけ恨みがあるの」
「恨み?」
ええそうよ、と言ったクルルシファーの顔には影が差していた。
「アルベルト君の料理も食べてみたいけど、どちらかと言うと勝ってほしいから教えてあげるわ。ジーク君の技と戦術を―――」
そう言ったクルルシファーの表情は、小悪魔ぽかった。
✝
ルールは以下の二つ(授業内容と同じにするために、今回はタッグ戦とする)。
一、機竜は汎用機竜のみの使用とする。
二、降参及び戦闘不能となった場合負けとする。
「んなもんでいいか?」
「ああ、いいぜ」
円型の演出場に、ジークとアルベルトは対峙している。お互いの腰には神装機竜の
「よし! 今回はパートナーとしてどんっとわたしに任せろ」
「ああ、頼りにしているぜ」
胸を張って言うリーシャのチーム。ジーク&リーシャのペア、そして―――
「後衛は私に任せて頂戴、アルベルト君」
「おっしゃ任せた! だけどクルルシファーのことも絶対守るぜ!」
別の世界から来たアルベルトとクルルシファーのペア。
『
『―――来たれ、力の象徴たる紋章の翼竜。我が剣に従い飛翔せよ、《ワイバーン》』
四人同時に飛翔型機竜《ワイバーン》の
『
合図と同時に、その場の四機が一斉に飛翔する。作戦は事前に決めていたのか、お互いが迷いなく動き出していた。
「うぉぉおおおおお!」
初めに、
「んじゃあ、プランAで」
ジークの言葉に、リーシャは頷き
ジークは一発、アルベルトの速度を遅めるべく撃つ。
「うおりゃあああああ!」
しかし、アルベルトはブレードを振るい弾丸を斬り落すと、
「そう上手くいかないか」
それに対し、ジークは空中に飛翔する。飛翔型の特性を活かし、中空から狙撃する狙いだろう。リーシャはクルルシファーに近づき、接近戦を挑む。
「逃がすか!」
ジークを追い、アルベルトも飛翔した。小回りが利かないライフルでは、近距離のブレードに対応出来ない。現に、ジークはアルベルトから逃げるように飛翔する。
「どうした!? お前の力はその程度か!」
アルベルトの挑発に乗るように、ジークは急に止まりこちらに銃口を向けてきた。
「まぁまぁ、そう焦るなって。それに―――余りクルルシファーから離れすぎてもいいのか?」
そう言って、ジークは引き金を引く。
「来る!!」
アルベルトはライフルの銃口から弾道を読み取り、回避した。
「噂ほどじゃないな」
「狙いはおまえじゃないよ、アルベルト・デウスマキナ」
「キャアアア!」
「ッ―――! なんだっ!?」
アルベルトが悲鳴した方を見る。そこには、ライフルの弾丸をくらい態勢を崩したクルルシファーの姿があった。
「この距離で……! 豆粒しか見えないぞ……」
ジークの遠距離視もさることながら、その作戦にアルベルトは舌打ちする。
(上空で逃げ続けたのは、俺をクルルシファーから離すため。クルルシファーはリーシャと戦闘しているからこちらに援護ができない。そして―――)
「らぁあっ!」
アルベルトはブレードを振るう。しかし、ジークは回避しまたクルルシファーに向けて撃った。
(こいつは機竜の機動性を活かしてショット&ウェイの戦法をとってやがる)
しかも、ライフルの
このままだと、クルルシファーに負担が来る。
「勝負は後回しだ、ジーク!」
アルベルトは歯ぎしりし、ジークから離れるとクルルシファーに加勢する。その背を見ながら、ジークはそっと呟く。
「まんまと引き離された時点で
そう言うと、ジークは目を細めブレードを取り出した。
「んじゃあ、プランBで行きましょか……」
✝
「クルルシファー、大丈夫か!?」
「ええ、なんとか平気よ」
アルベルトは急いでクルルシファーと合流する。クルルシファーの《ワイバーン》は至る所が傷だらけだが、戦闘は続けられるようだ。
「さて、どうする? クルルシファー」
「そうね、数的優位には立っているけど」
確かに合流したことで、リーシャと二対一の状況。ジークは遠い所からこちらの状況を窺っている。
「ふん! 都合よく纏まってくれて助かる!」
リーシャはそう言うと、キャノンを二人に向かって撃った。
(また見えすいた攻撃……)
先程のこともあったため、今度は警戒しながらアルベルトは避ける。しかし、この
(俺の世界で、ルクスとリーシャ様の模擬戦で見せた―――《
リーシャの神装機竜《ティアマト》の自律して動く特殊武装、《
(なんで、あんな易々と俺をクルルシファーに向かわせた? 先程と同じようにジークが俺を引き付けて囮になった方が……
その時、アルベルトの頭の中に稲妻が走った。
(いや、これがもし……そう言うことか!
「しまった……!! クルルシファー……」
「プランAが不発の場合、俺をノーマークにさせるのがプランBだ。今さら気付いても遅い」
いつの間にそこにいたのか、ジークがブレードを振りかぶっていた。
対奥義『
「う、おらぁあああ!」
ジークは、リーシャが放った砲撃に合わすようにブレードをぶつける。そして、砲撃はブレードの表面を滑り弾道が変わる。
「くそぉっ!?」
そして、砲撃はアルベルトたちに殺到する。
✝
ジークは黒い煙をまじかで見ながら、赤く熱せられたブレードを捨てた。
「少しは、期待したんだ―――ッ!?」
黒い煙を切り裂いて、弾丸がジーク目掛けて飛んでくる。ジークはそれを首だけで避けるが、頬に一筋の赤い線が入る。
「まだ……終わっちゃいねえぞ!」
ジークの眼前で、アルベルトが
(クルルシファーが庇ったか……)
「すまねえ、クルルシファー!」
「ふふ……大丈夫よ。後は……任せたわ」
そう言い終わると、クルルシファーは
「さあ、続けようか」
ジークはクルルシファーが外に出て行くのを確認すると、ライフルを構える。
「舐めるなよ―――《
そう呟いた瞬間、アルベルトの髪が黒と青に変わり、右目が金色に変わった。
(……なんだ、洗礼か?)
警戒にジークがライフルを構えた瞬間、始まった―――
「行くぞっ!」
アルベルトが叫んだ瞬間、ジークの視界からアルベルトが消えた。そして、ジークの目の前に現れた。
「なにっ!?」
すでにアルベルトはブレードを振りかぶっている。反撃は不可能と感じたジークは、ライフルを盾にする。
「まだだっ!」
「ぐっ……!」
ライフルを両断され、ジークは腹を蹴られ演習場の壁に吹き飛ばされる。
「リーシャ……気を付けろ!」
また、先ほどと同じようにアルベルトが視界から消えた。そして、次の瞬間にはリーシャの目の前に現れる。
「
ジークも対奥義でアルベルトの横に瞬間移動する。そして、肩の
「なっ……!?」
弾丸が命中したかに見えたその刹那、アルベルトは横も見ずに、それを回避した。気配を察知してとっさに動いたにしては、あまりに無駄のない最小限の動き。
「ハアッ!」
「ぐぅ……!」
アルベルトはブレードを振るい、リーシャの《ワイバーン》の
「これで一対一だな」
「……なんだ? そのインチキ手品」
ジークは警戒しながらアルベルトに問う。
「教えてやるよ、機竜のエネルギー生成率を上げる《
「直感……だとっ!?」
『超直感』――五感を越えた第六感を極限まで高めることで、直感だけで起こしたことを百%成功させることができる。
「なるほど……未来予知と同じもんか」
摩訶不思議な手品に、ジークは納得したかのように頷く。そう、わかってしまえば手品は単なる遊びだ。
「お喋りしたいのはやまやまだが、こいつにも時間制限があってね―――行くぞ!」
先程と同じように、アルベルトは視界から消える。
「ふっ、安心しな。こちらにも策はある―――《
ジークがそう言った時、アルベルトは警戒したが、一見ジークの見た目には変化はない。はったりか?とアルベルトは後ろから奇襲をかける。
だが、次の瞬間アルベルトの目に信じられないことが起こった。ジークが背後を振り向いたのだ。偶然、いや、それにしてはあまりにも迷いがない。
「読めていたよ、そこから来ることは」
そう言って、ジークはアルベルトが振るったブレードを《ワイバーン》の右腕で掴む。そして、次の瞬間には音を立ててブレードが粉砕された。
「なっ……!?」
アルベルトが呆気にとられた瞬間を、ジークは見逃さずにブレスガンで右肩の
「びっくりしたろ?
ブレードを破壊した右腕は、その衝撃に耐え切れず崩壊していく。
「ちっ……!」
アルベルトは舌打ちをしたが、気持ちを改めて距離を取ると新たなブレードを取り出す。
(そうだ、あいつはまだ俺の速さに―――)
「
今度はジークの《ワイバーン》に異変が起こった。《ワイバーン》を中心に周りの空気が放出されて行く。いや、これは違う、
対奥義『
「さあ、これで
ジークは目にも止まらない速さでアルベルトに突撃する。そして、アルベルトはブレード、ジークはダガーを振るう。刃同士が触れ合った瞬間、衝撃が辺りに走った。
『キャァアアア!』
二人から生じる衝撃と突風が観客席まで届く。両方とも右腕が消え武器はあと僅か。しかし―――
ジークもアルベルトも、
✝
「くぅ……! 遠慮ってものを知らないな、あの二人は!」
衝撃で吹く突風に顔を手で覆いながら、ルクスは文句を叫ぶ。まるで周りの事なんて関係ないような戦いかた。そして、お互いの死力を尽くすぶつかり合い。
「ルクっち! 何が起こってるの!?」
隣に座っていた
「ジークとアルベルトの二人の間で、無数のかけ引きが行われているんだ。アルベルトの『超直感』をジークは《
そして、今現在は零距離の肉弾戦へと移行した。技の見栄えも、美しい剣戟もないただただ力任せの醜い剣のぶつかり合い。しかし、それ故に一撃が必殺。
「体力の消費も激しいはず。そろそろ決着がつくよ」
まるでルクスの言葉が合図かのように、二人は一度大きく距離をとった。
✝
「はぁ……はぁ……」
「ふー…ふー」
肩かで息を吸い、大きく吐く。頬に汗が伝いあごの先端から水滴が落ちる。
(俺以上の技の引き出しと戦略。これが神算鬼謀の異名を持つジークの実力!)
(異世界の
お互い、相手の実力を認めあう。それ故に目の前の敵に勝ちたい。
(―――体力が消耗し過ぎたか)
(次の一振で)
((終わらせる!!))
ジークが踏み込むとアルベルトは腰を低くして正眼でブレードを構える。そして、ジークはダガーをアルベルトに向かって投擲した。
「虚を突いた攻撃か!?」
真っ直ぐ突っ込んでくるかと思いきや遠距離攻撃。しかし、アルベルトはブレードで
「なっ!?」
いつの間にかアルベルトの目の前に二投目のダガーが迫っていた。
「―――影撃」
これぞジークの十八番。一投目の後に瞬時に二投目を
「クソッ!」
アルベルトは障壁を張ってこれを防ぐ。しかし、大きく仰け反ってしまった。そこに、黒い影が中空に現れた。上に弾き飛ばされたダガーを、ジークは手に取り上から強襲をしかける。
「終わりだ!」
「勝ってに、終わりにしてんじゃねぇえ!」
アルベルトは真下に向かって
『くたばれっ!』
上と下から攻撃を同時に放ち合い、ついに決着がつく瞬間。
「ギィイェェェェェエエ!」
鋭い雄叫びと共に、大きな爆発が演習場に響く。
「なんだ!? この叫びは、
「校舎の方からだよ! 私は演習場の皆を避難させるからルクっちは校舎の―――」
ドスッ!
低い音と共に、演習場の中心にいたジークとアルベルトは同時に
「ルクっちあれ!」
「―――ッ!?」
背後でティルファーが呼ぶ声に引かれ、視線をティルファーが指している上空に移す。そこには、黒いローブを被った者が誰かを抱えて《ワイバーン》で飛んでいるところだった。そして、黒いローブが抱えている人物は―――
「アイリッ!?」
ルクスの唯一の肉親にして、妹が連れ去られているのを脳が理解した瞬間、身体が勝手に
「アイリをかえせぇえええええええ!」
怒号にも近い叫びを上げながらルクスは接近するが、その行く手を
「くそっ! どけ!」
行く手を阻む
「止まるな!」
「突き進め!」
背後からのジークとアルベルトの声に、ルクスは振り返ることなく剣を振る速度を速める。それぞれの神装機竜を纏ったジークとアルベルトによる背後からの援護射撃により、一度っきりのチャンスが生まれた。
「うおぉおおおおお!」
ついにルクスは
しかし、その手に感じる感触が来なかった。
「な……っ!?」
おかしい。絶対に避けられる距離ではなかった。なのに―――。
「―――これがあの『黒き英雄』か」
「ッ……!?」
背後からの声に、咄嗟に振り返るルクス。だが、その目の前にブレードが迫っていた。
「予想していたより、大したことがないな」
「ぐあっ!」
ブレードに叩きつけられ、ルクスは真下に落下していく。意識が飛びそうになるのをギリギリまで保ちながら、ルクスは腕を縋るようにアイリへと伸ばした。
✝
「くそっ! ルクスが失敗したぞ!」
「わあとる! それよりも今はこの大量の
ジークとアルベルトは口で喧嘩しながらも的確に
「おいアルベルト! その武器いいな俺も使わせてくれよ!」
ジークは三つの武器を合体させ《
「注意して使えよ!」
アルベルトも《
「俺が雑魚を倒す! お前は奥の上級を相手しろ!」
右手に《スパイラルフレイム》、左手に《ラストカノン》を持つと、
「
無限に装塡と発射を瞬時に繰り返す殲滅用攻撃。それが一瞬の内に大勢いた
「うおらぁああああああ!!」
高速でアルベルトは《
いつの間にか、演習場で立っていたのはジークとアルベルトのみになっていた。
「さてと、ややっこしい事になっちまったなー」
ため息と共にジークは荒れに荒れまくった演習場を眺めた。
コラボ告知からどんぐらい待たせるねんって思った皆様。
申し訳ございませんでした!
今回コラボさせて貰ったのは、「最弱無敗の神装機竜 黒竜と雷竜の創世記」を執筆しているザウル金剛九尾様です!
来週もコラボを一本出します!