最弱無敗の神装機竜――四天の竜――   作:パNティー

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先週投稿するの忘れてた^お^




コラボ Part2

空気の壁を破壊する勢いで、飛翔してるのは機竜を纏った三人の少年だ。《ワイバーン》を纏ったルクス・アーカディア。《オッドアイズ・ドラゴン》を纏ったジーク。《シン・サタン》を纏ったアルベルト・ デウスマキナ達が目標の島に向かって進んでいる。

 

小隊の先頭にいるジークが竜声で声を送る。

 

『これから失楽園(ロスト・パラダイス)の上空に出る。敵陣地のど真中に突入するため、臨機応変に対応しろ』

 

『『了解』』

 

ルクスとアルベルトが応答を返す。これから行く場所はアルベルトが『超直感』で導いた島である。事前にジークが調べていたため、この島であることは確定だろう。

 

失楽園(ロスト・パラダイス)ーーー昔は一つの大国だったが、突如として王族と貴族達を含め、この大国は滅びた。そして、その島は幻神獣(アビス)の巣窟になってしまい、地図上からその名前すら消えた。

 

学園からこの島までは少しばかり離れているため途中までは陸地を馬車で行き、残りの距離を機竜に乗って目的地へと急いだ。

 

雲の中を切り抜け島の上空に出た瞬間ーーー

 

『……!?来るぞ!』

 

ジークの眼下に広がる島。そこが、幻神獣(アビス)の巣窟となった、荒廃した世界である。島の至るところで赤い点が見えた瞬間、歓迎の挨拶代わりに、対空砲火がジーク達に襲いかかって来た。

 

『散開っ!』

 

ジークの号令で三人は散り散りになって攻撃を避ける。

 

その三人の様子を見つめる黒いローブ姿。三人を分断させる事に成功したローブ姿は、満足そうに体を震わせた。

 

 

✝️

 

 

アルベルトside---

 

「くっ!? なんだこの幻神獣(アビス)の数は……!」

 

島の西端まで来てしまったアルベルトは、次々と襲いかかってくる幻神獣(アビス)を倒しながら進むが、倒しても次から次へと幻神獣(アビス)が湧いてくるためきりがない。

 

十数体倒した時、アルベルトは背筋が凍る程の殺気を感じた。まだ超直感も使ってもいないのに強く感じられるほどの存在に、アルベルトは本気のスイッチを入れた。

 

「……!?」

 

突如、空が激しく光ると雲から一条の雷がアルベルトに飛来して来た。それをアルベルトは《邪神竜剣(グリードスフィア)》で防ぐ。しかし、

 

「っゔ!?」

 

剣で守った筈なのにその上からダメージが流れて来る。しかも、搭乗者を守る装衣さえも無効にされている。機竜に急な電流が流れて幻想機核(フォース・コア)が停止し、《シン・サタン》がシステムダウンした。地面へと落下していくアルベルトだが、思考を巡らせる。

 

(セリスの《リンドヴルム》の特殊武装と、同じ能力か……。だが、こっちの方が射程も威力も上か……)

 

落下したアルベルトは、未だ雷に打たれてる身体に鞭を打ち、急いで立ち上がる。さっきのは自然の雷ではない。誰かの意図した攻撃だ。アルベルトは顔を空へと向ける。すると、暗雲から金色の化け物が現れた。

 

「な、なんだ、ありぁ……」

 

金色の翼を広げたその巨体は、鳥のようにも見えるが、大きな口が覗く頭部に、肋骨が丸見えの体躯は悪魔に見える。終焉神獣(ラグナレク)とほぼ同じかそれ以上の威圧感を出す幻神獣(アビス)をアルベルトは見たことがない。

 

アルベルトが動揺に一瞬だけ身を硬直させていると、目の前の化け物は口を開いた。

 

『■■■■■■■■■■!!!!!』

 

そいつが吠えた瞬間、大地が揺れるのと同時に落雷が辺りに落ちて地形を変えていく。こいつは危ないと思ったアルベルトは《邪神竜剣(グリードスフィア)》を変形させて《激昂竜砲(ラースカノン)》に変えると照準を化け物に向ける。

 

「くたばれっ!」

 

銃口から迸る閃光が、金色の化け物に吸い込まれていく。命中し煙を上げたのを確認し、やったかと思った次の瞬間、アルベルトは目を疑った。

 

「バカ……なっ!?」

 

翼を閉じたそいつはキャノンの一撃を喰らった筈なのに、傷が一つもない。上空に悠然と滞空しているそいつは、再び咆哮を轟かせ大地に雷光を落とした。

 

 

✝️

 

 

ルクスside---

 

アルベルトが苦戦している一方で、島の東側に飛んでったルクスも同じく化け物に襲われていた。

 

「ぐぅ……!」

 

その表情は焦っている。その証拠に化け物と接敵しすぐに《ワイバーン》から神装機竜である《バハムート》に切り替えた。だが、焦っている理由はそれだけではなかった。

 

(なんで……神装が()()()()()!)

 

そう、先程から神装である圧縮強化の《暴食(リロード・オン・ファイヤー)》が不発に終わってしまうのだ。

 

「こいつは一体!?」

 

攻撃を避けながら敵を見る。

 

大蛇の様な赤い巨体に、背中に生えている翼。竜の様にも見えるその化け物は口から炎を吐き出しながらルクスに襲いかかってくる。

 

「一体どうすれば……」

 

苦戦するルクスだが、それでも活路を見出そうと奮闘をする。

 

 

✝️

 

 

ジークside---

 

アルベルトとルクスが苦戦している一方でジークは島の真ん中を目指して進んでいた。

 

「こちらジーク。応答しろ……」

 

先程から何回も竜声を飛ばしているが、アルベルトとルクスからは応答をする素振りが見えない。いや、「応答しない」のではなく「応答()()()()()()」なのかもしれない。又は妨害を受けて竜声を飛ばせないか。

 

(あるいは、どっちとも可能性があるわけだが)

 

だが、問題はそれだけでは無かった。

 

「さっきから……。一度も幻神獣(アビス)に会ってないな」

 

戦闘を避けるのは良いことだ。体力の消耗を抑えれるためでもある。しかし、明らかに罠だと感じる程に辺り一帯は静まり返っている。

 

幾度か竜声を飛ばしていると、目の前にひらけた場所が現れた。その真ん中には廃墟となった古城がある。

 

「ここは……」

 

ジークは辺りを見渡す。だが、背後からの視線に気づき振り向いた。そこに居たのは学園でアイリを連れ去った黒いローブ姿。いつの間にか背後に立っていた敵に警戒しながらジークは声を出す。

 

「お前、何者だ?」

 

短い文、そして突き刺すの様な殺意で、ジークは目の前のローブに睨めつける。

 

「我が名は《暗黒の召喚神》。《三幻魔》の殉教者である」

 

「あ、暗黒の召喚神?三幻魔?」

 

「ふん、終焉神獣(ラグナレク)を超える究極の邪神を遂に呼び出す事だ出来るのだ」

 

ジークは知らない単語に首を傾げた。それを見た、《暗黒の召喚神》は嘲笑うかの様に笑ったあと、自らそのローブを脱ぎ捨てた。

 

「なっ……!」

 

ローブの中の姿を見て、ジークは絶句した。ローブの下から現れたのは人ではなく----()()だったのだから。

 

腕が人より倍太く、指が細く爪が鋭い。体は爬虫類を連想させる皮膚と甲殻類に近い鎧を身体の箇所に着けていて、背中には蝙蝠の様な翼が生えている。そして、胴体から伸びた細い首と人の顔を歪ませた様な獣の顔があり胴体と同じく兜を身につけている。

 

幻神獣(アビス)か?」

 

「違う、言った筈だ。我は三幻魔の殉教者である」

 

「……さっきからずっと言ってるが、その《三幻魔》ってなんだ?」

 

相手から更に情報を引き出すためにジークはわざと話を引き延ばした。

 

「この世界に終焉神獣(ラグナレク)を超えれる化け物は存在しないと思うけどな?」

 

あえてジークは挑発の態度を取る。しかし、《暗黒の召喚神》は不敵の笑みのままだった。

 

「---現在、貴様の仲間が《三幻魔》のうちの二体と戦っている」

 

「ッ……!?」

 

《暗黒の召喚神》の放った言葉にジークは目を見開いた。もし、コイツの言葉が本当だったらルクスとアルベルトは現在その化け物と対峙している状態だ。

 

「くっそ……!」

 

ジークはアルベルト達を助けに行こうと振り返る。

 

「他人の心配より自分の心配をしたらどう---」

 

《暗黒の召喚神》は言い終わる前にジークは行動を起こしていた。《時空超過(タキオントランスミグレイション)》の高速移動で一瞬にして《暗黒の召喚神》との距離を縮めるとその胴体に向かって《V・F・D(ザ・ビースト)》を振り落とした。

 

「《三幻魔》とかどうでもいいけど、要はお前が死ねばそれで終わりだろ?」

 

冷静に思考したジークはまず先に召喚者を倒すことにした。化け物を増やさないためである。真っ二つにされた異形の目的は最後まで分からなかったが、これで黒幕は始末した。

 

「後は二人の援護に向かえばおわ---」

 

「もう一度言うが、他人の心配より自分の心配をしたらどうだ?」

 

今度はジークが言い終わる前に止められた。背後から声をかけられ、振り返ると、そこには今切った《暗黒の召喚神》が悠然と立っていた。

 

「お前、なんで---」

 

「生きてる、と言いたげだな」

 

ジークは自分の心の中を言い当てられて動揺が表情に出る。すると、ジークの後方で落雷と火炎が起こった。

 

「《降雷皇ハモン》、《神炎皇ウリア》そして最強の《三幻魔》をここに召喚する!!」

 

《暗黒の召喚神》が高らかに宣言すると、大地が揺れ地響きが鳴り始める。

 

「目覚めよ、最強の三幻魔。《幻魔皇ラビエル》!!」

 

地面を割き、大地から目覚めたその化け物は自分よりも何倍もある巨人だった。

 

「さぁ、存分にその力を振るうがいい《幻魔皇ラビエル》!!」

 

「ッ……!?」

 

《暗黒の召喚神》が巨人に向かって指示を出すと、《幻魔皇ラビエル》はその巨腕をジークに向かって振り落とす。

 

 

✝️

 

 

アルベルトside---

 

「くっそッ!? コイツめっちゃ強過ぎだろ!」

 

戦闘を開始してからおよそ十数分。アルベルトは防戦一方だった。

 

(防御無視の雷と攻撃が通らない翼。最強の矛と盾か!)

 

アルベルトが心の中で叫んでいると黄金の怪鳥、《降雷皇ハモン》は叫び続ける。

 

「チィッ!」

 

アルベルトは舌打ちすると落ちてくる雷を危なげに飛翔して避ける。

 

「……こうなったら一か八かの勝負に出るしかない」

 

そう言うと、アルベルトは天高く飛翔した。それを撃ち墜とすべくハモンは落雷をアルベルト向けて放つ。

 

「地獄までひとっ走り付き合って貰うぜっ!」

 

アルベルトは放たれた雷を避けるのではなく、()()()()()()()()に行った。

 

「うっ、ぐうぅああああああ!!」

 

直撃を食らった体に鋭い痛みと共に電気が流れる。機竜にも同じ様に電気が流れて機能が停止し、真っ逆さまに落ちて行く。

 

「……行くぜ---極限死竜(デッド・ゾーン)》!!

 

アルベルトが《極限死竜(デッド・ゾーン)》を発動すると出力が落ちていたアルベルトの機体に再びエネルギーが取り戻される。

 

「機能停止されるの、()()させて貰ったぜ」

 

極限死竜(デッド・ゾーン)》は機竜の幻想機核(フォース・コア)以外の機能を全て停止させ、エネルギー生成効率を上げる諸刃の技。だが、今回はそれを逆手に取り落雷で機能を止った後に全開で幻想機核(フォース・コア)を動かし落雷の効果を弾いたのだ。

 

雷を纏った《シン・サタン》は《邪神竜剣(グリードスフィア)》を構える。

 

「これで……終わりにしてやる」

 

落下に勢いを乗せてアルベルトはハモンへと突進する。

 

「■■■■■■■■■■ッ!!」

 

ハモンは落雷をアルベルトに放つが、《超直感》でアルベルトは未来予測をし全て避ける。

 

「でいぃ、やっああああああ!!」

 

渾身の斬撃をアルベルトは振った。しかし、ハモンは翼を閉じ守りに入る。鉄壁のガードに剣は弾かれ---()()

 

「てめえの雷で、切り裂かれろ!」

 

アルベルトが振るった剣は、ハモンの翼を()()()()()

 

敵の攻撃を弾く翼をどうやって破ったのか。その方法は、ハモンが放った落雷にある。落雷には相手の防御を上からダメージを与える効果が付与されている。

 

「なら、その雷を利用すればお前の防御も上からダメージを与えられるわけだ」

 

最強の盾よりも矛の方が強かったのだ。

 

「じゃあ、なっ!」

 

防御を失ったハモンをアルベルトはトドメの一撃を見舞った。

 

 

✝️

 

 

ルクスside---

 

 

(なるほど……だんだん相手の能力がわかってきたぞ)

 

目の前の敵、《神炎皇ウリア》の炎を避けながらルクスは冷静に分析をした。ウリアは二つの能力を有している。

 

一つは、『相手の神装と特殊武装を無効化する能力』。これは発動型なので自分が神装を使わなければこの能力は働かない。

 

そして、二つ目。『神装と特殊武装を無効化した回数だけ、()()()()()()()する能力』だ。能力自体はかなり単純でルクスが戦い始めてすぐに気がついた能力でもある。

 

「---《暴食(リロード・オン・ファイヤ)》」

 

しかし、ルクスは先程から神装や特殊武装を何度も発動し続けている。能力を無効化されることも奴が強化されているのも知りながらだ。

 

「……もう充分かな」

 

十回ぐらい神装を発動してルクスは自分の策が進んでいるか確認する。ウリアの炎は地面を溶かすほどまで強化され丁度いい頃合いかと思う。

 

「さてと、後は僕が耐えれるかだけど……」

 

今度はルクスがウリアに向かって突進する。迫り来る炎を避け、懐に飛び込むとウリアはルクスに向かってその大きな口で食い殺そうと迫る。そこにルクスはブレードを横にしてぶつけた。

 

ギィィイイイインンンンンッ!!

 

ぶつかった衝撃で大気が震え甲高い音が鳴り響く。

 

「うぐっ……!?」

 

その衝撃は操縦者のルクスまで響き苦悶の声を上げる。しかし---

 

「■■■■■■■■ッ!?」

 

大きく弾き飛ばされたのは圧倒的な力を持った()()()の方だった。

 

「ふぅ……なんとか耐えれた」

 

ルクスは罅が入ったブレード---《障壁牙剣(スケイルブレード)》を下ろしながら汗を拭う。

 

相手の力を利用してダメージを弾き返す事が可能になるブレード。守りを主体とするルクスの戦法に、攻撃力を入れる為にリーシャが開発した武器だ。

 

先程から守りに徹していたのも、敢えてウリアの力を上げ続けていたのも全てはこの一瞬のためである。敵の攻撃を見切り、弾き返すタイミングを狙っていたのだ。

 

永久連環(エンドアクション)!」

 

精神制御と肉体制御を交互に動かし連続でウリアを切り刻む。紅い閃光が迸った。

 

 

✝️

 

 

ジークside……

 

ラビエルの猛攻から逃れるべく、ジークは岩陰に隠れ作戦を練っていた。

 

「厄介なのはあいつの能力だな……」

 

『ああ…まさか幻神獣(アビス)を召喚できるとはな』

 

側から見たらジークの独り言に見えるが、ちゃんと多重人格の自分と会話をしている。

 

『あのラビエルは自身の力で幻神獣(アビス)を召喚し更に使役が可能。これは終焉神獣(ラグナレク)と同格と思っててもいいな』

 

フローリアが落ち着いた声で言う。時間が経つごとに幻神獣(アビス)を召喚し続けるラビエル。だが、これだけではなかった。

 

『しかも召喚した幻神獣(アビス)を生贄にして瞬間的に火力を出すことが可能。物量でも火力でもこちらを上回れるとキツイぜ』

 

珍しくエリックが緊張した表情で話す。ジークの技の数で無限に沸き続ける幻神獣(アビス)を捌きつつ、ラビエルの火力を上回るのは不可能。かと言って他の神装機竜でこの状況を打開出来るかと言われれば出来なくもないが---。

 

『ここは、僕の出番かな?』

 

ジークの頭の中にフローリアともエリックとも違う声が響く。

 

「ルーカス……お前ならこの状況を突破する事が出来るな?」

 

『任せてよ。沢山いる方が僕の機竜も喰いごたえがあって嬉しいと思うんだ』

 

嬉しそうにルーカスが答える。

 

「よし、この体をお前に貸す」

 

ジークは目を閉じるとぐったりと力が抜けたかの様に岩に背を預ける。だが、すぐにジークの体に異変が起きる。

 

前髪が紫色になり、開いた目も紫色に変わった。

 

「ん〜、久しぶりにこっちまで来たけど……戦いの匂いだぁ」

 

ルーカスは狂気の笑みを浮かべると、《オッドアイズ》と《ドレイク》の機攻殻剣(ソード・デバイス)を抜刀する。

 

「さてと、蹂躙するか」

 

そう言うとルーカスは《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を動かし岩場から飛び出した。

 

それをラビエルが確認すれば召喚した幻神獣(アビス)に命令を下す。数十は超える幻神獣(アビス)の大群に、ルーカスは憶する事なく武器を構える。

 

「---崩撃」

 

V・F・D(ザ・ビースト)》がエネルギーを喰らい、斬撃に変わる。更に、永久連環(エンドアクション)で無数の斬撃が幻神獣(アビス)の最前列へと行く手を阻む。切られた幻神獣(アビス)が後続の幻神獣(アビス)にぶつかり速度を落とす。しかし、それを押し切って無理矢理に幻神獣(アビス)が出てきた。

 

「やるねぇー」

 

だが、ルーカスの表情にはまだ余裕が残っている。迫り来る幻神獣(アビス)を回避しつつ適度に攻撃を加えてちょっかいを出している。

 

「さあ、もっともっと幻神獣(アビス)を出しなよ。そうしないと、僕に勝てないぞ?」

 

ルーカスはラビエルに挑発すると、それに応える様にラビエルは更に幻神獣(アビス)を加えた。

 

「さてと、お前達の運命(さだめ)は僕が決める」

 

《オッドアイズ》と《ドレイク》の機攻殼剣(ソード・デバイス)を重ね合わせる。

 

「神装---《天空の虹彩(スカイ・アイリス)》」

 

ルーカスの背後に虹の輪が出現した。その眩しすぎる光に照らされた幻神獣(アビス)たちは怯んで動きを止める。

 

「魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ! 今一つとなりて、その花弁の奥の地獄から、新たな脅威を生み出せ! ---融合召喚!!」

 

二つの機攻殼剣(ソード・デバイス)が一つになって紫色の刀剣へと変わる。他にも《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の追加装甲がパージして、代わりに紫色の追加装甲が虹の輪から送られる。

 

「現れろ、餓えた牙持つ毒龍!スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!! 」

 

追加装甲が《オッドアイズ》の装甲と融合し形作る。推進翼(スラスター)が食虫植物の様な顎の形をした翼。関節部にある珠が怪しく発光し、その姿は植物を模した竜の様だった。

 

「《捕食植物(プレデター・プランツ)》」

 

翼の口が開き、中から無数の触手が現れた。更にルーカスが命令を送るとその植物は意志があるかの様に迫り来る幻神獣(アビス)に向かって動いた。手、足に絡みつき次々に幻神獣(アビス)を拘束していく。動けなくなった幻神獣(アビス)に向かって、ルーカスは残虐な笑みを浮かべる。

 

「さあ、食事の時間だ。---吸収(アブゾーバ)

 

《スターヴ・ヴェノム》の珠の中が怪しく蠢めくと、幻神獣(アビス)に絡みついていた触手からエネルギーが《スターヴ・ヴェノム》に送られる。

 

捕食植物(プレデター・プランツ)》---触手状の特殊装備は、攻守共に優れた性能を発揮する装備だけでなく、相手に絡みつきその相手からエネルギーを吸収する力も備えられている。

 

みるみると幻神獣(アビス)達は力を奪われ、枯れ果てていく。

 

「ふー、まぁ少ないけど」

 

ルーカスが言い終わった後には、大量にいた幻神獣(アビス)が一匹も居なくなっていた。

 

「さ・て・と---終わりにしようかな?」

 

《スパイラルフレイム》をラビエルに向ける。幻神獣(アビス)から吸収したエネルギーをキャノンへと注ぐ。すると、《スパイラルフレイム》から紫色の光が溢れ出し始めた。

 

「■■■■■■■■ッ!!」

 

ラビエルも握り拳を作って、ルーカスへと振るう。その威力は、能力を使っていた時に比べれば低いが。それでも機竜を一撃で砕く程の威力はある。だが、目の前に迫ってくる攻撃に、ルーカスは悠然と中空でキャノンにエネルギーを貯め終えていた。

 

「戦慄の---」

 

トリガーを引き、充電し終わった力が一気に放出された。

 

「ポイズンサイド!」

 

紫の閃光が拳ごとラビエルを吹き飛ばす。岩などを巻き込みながら古城まで吹き飛ばされたラビエルは、その巨体に大きな風穴が開き動く気配がない。

 

「ま、こんな物かな?」

 

少し物足りなさそうな声音で、ルーカスは融合を解除すると紫色の機攻殼剣(ソード・デバイス)は元の二本に戻った。それに呼応する様に《スターヴ・ヴェノム》も追加装甲が剥がれて元の《オッドアイズ》になった。

 

「おーい!ジーク!」

 

「ん……?」

 

背後の上空から声がしたので振り返るとアルベルトが手を振りながら飛んで来ていた。アルベルトが到着した後すぐにルクスとも合流が出来た。

 

「んん?そういやお前、ジークに似ているけど違えな。誰だお前?」

 

アルベルトはルーカスの姿を見て疑うが、当の本人であるルーカスはまったく聞いていない様だ。

 

「ふーん、この人が異世界から来たアルベルトかぁ」

 

「あのすいません。人の話を聞いてます?」

 

その目はどこか品定めをする様な、あるいはどれぐらいの実力があるかを図っている。

 

「へー強いねぇ、君」

 

「まー俺は強いからな」

 

また、ルーカスの目つきが変わった。今度は獲物を見つけた狩人の様な鋭い目に。

 

「僕ね、まだ食べ足りないんだ?」

 

「……?」

 

ルーカスは再び《オッドアイズ》と《ドレイク》の機攻殼剣(ソード・デバイス)を抜く。

 

「だから、君---僕の機竜の餌にならない?」

 

「ッ……!?」

 

溢れ出たルーカスの殺気に、アルベルトは身構える。それに、ルーカスは嬉しそうに微笑むと唇を舐めた。

 

「融合召喚---うぐっ!?」

 

機攻殼剣(ソード・デバイス)を重ね合わせようとしたルーカスだったが、突然にその身体が動かなくなった。

 

「なんだよ。もう終わり?」

 

悔しそうに唇を噛むルーカスは、ぐったりと力が抜けその場に座り込む。突然に座り込んだルーカスを心配してアルベルトとルクスは駆け寄る。

 

「おい、大丈夫か!ルクス、こいつは何時もこんな感じなのか?」

 

「えっと、それは---」

 

ルクスがどう説明していいかと、悩んでいるとルーカスの姿が変わった。紫色の髪が赤に変わると起き上がった彼はその深碧の瞳を開いた。

 

「まったく。ルーカスは一度暴走すると歯止めが効かなくなるから面倒くさいだよなぉ」

 

やれやれと、呆れたため息を吐いたジークは二本の機攻殼剣(ソード・デバイス)を鞘に納めると立ち上がる。

 

「巻き込んで悪いなアルベルト。ルーカス(こいつ)の暴走に付き合わせて」

 

頭を下げて詫びるジークに、アルベルトはむず痒さを感じる。

 

「あ、いや、怪我とかしてないし平気だぞ。だからそんな謝らないでくれ」

 

「そうだな。まあ、お前を食っても不味そうだしな」

 

「ああん?テメェ俺が親切にしてやったって言うのによぉ!俺の気持ちを返しやがれ!」

 

照れながら言ったアルベルトに、ジークは興味を失った表情でそっぽを向く。それに、青筋を浮かべながらアルベルトは噛み付く。

 

「はいはい、悪かった---バカベルト」

 

「っ!?テメェ人をバカにしやがったな!」

 

「だってバカだろ?」

 

「俺はバカじゃねぇ!このアホーク!」

 

何故か無意味な争いを繰り広げているジークとアルベルトをルクスはなんとか止めようとする。

 

「ちょっと!アイリを早く助けなきゃ」

 

「おっとそうだった。事件の黒幕を見つけたぞ」

 

そう言って、ジークは倒壊した古城の方に視線を向ける。そこには、吹き飛んだラビエルを岩場から眺めている《暗黒の召喚神》がいた。ジークの視線を追ってその異形の姿を見たアルベルトとルクスは驚き目を開いた。

 

「こいつ……幻神獣(アビス)か?」

 

「俺もこんな化け物は初めて見たからな。判断が付かない」

 

「でも、あれを倒せばアイリを助けられてこの事件も解決する」

 

三人はそれぞれの神装機竜の操縦桿を握る。しかし、

 

「礼を言おう。三幻魔を倒してくれて()()()()()

 

《暗黒の召喚神》から放たれたその言葉に、三人は踏み込んだ足を止めた。

 

「何を言っている?」

 

ジークが訝しげに問う。だが、異形は歪な笑みを浮かべたままだ。

 

「貴様たちが三幻魔を倒してくれたお陰で混沌の王をここに召喚する事が出来る。これで我が野望が成就するのだ!」

 

大仰に手を挙げた異形。しかし、アルベルトは剣先を異形へと向ける。

 

「テメェが何を召喚しようがどうでもいいが。アイリを返しやがれ!」

 

「いいだろう……この娘の()()()()()()()。貴様らに返すとしよう」

 

異形はいつのまにか手に持っていたアイリをこちらに投げ飛ばす。

 

「アイリ……!」

落ちてくるアイリをルクスは空中で受け止める。怪我をしていないか顔を覗き込むと気絶しているだけで、外傷は何処にもなかった。心配していたが、無事なことにルクスとアルベルトは安堵する。ただ、ジークは違和感を感じていた。

 

「役割ってなんだ?」

 

ジークがそう異形に質問を投げかけると、異形は歪な笑みを作り答える。

 

「混沌の王を呼ぶには三幻魔の魂が必要なのだ」

 

「……つまり三幻魔を倒すことに俺たちの力を利用すために、アイリを人質に取ったわけだな」

 

頭が回るジークはすぐに異形が述べた事がわかった。それ故に---

 

「ルクス……アイリを安全な場所まで連れて行け」

 

「……うん、わかった」

 

何時も以上に警戒心を表情に出しているジークに、ルクスは命令に率直に従う事にした。

 

「行くぞ、アルベルト」

 

「ああ、こいつをぶっ飛ばせばいいだな」

 

ルクスがだいぶ離れたのを確認し、ジークとアルベルトは武器を構える。

 

「さあ、混沌の王の目覚めだ!我が心の闇よ、秘めた思いを今こそ解き放つがいい!出でよ!---混沌幻魔アーミタイル!!」

 

《暗黒の召喚神》がそう叫んだ瞬間、横たわっていた《幻魔皇ラビエル》が青く光り暗雲に向かって光の柱が伸びた。更に別の方角で黄色と赤色の柱も雲に向かって伸びた。

 

「これが、三幻魔の魂!?」

 

アルベルトは驚愕に叫ぶ。だが、異変はまだ続いている。

 

《暗黒の召喚神》の異形の体が煙になって三本の光の柱の中心に飛んでいった。そして、三色の光と異形の煙が一つに混ざり合い形を成していく。

 

ラビエルの頭部、ウリアの顔を模した左腕、ハモンの黄金の翼、そして三体の身体が融合したかの様なその姿はまさしく混沌の名が相応しかった。

 

「■■■■■■■■ッ!!」

 

アーミタイルが吠えただけで、ジークとアルベルトは後ろに押し出された。

 

「《天空の虹彩(スカイ・アイリス)》!!」

 

今までの敵とは比べ物にならないほどの圧力に、ジークは対抗するべく神装を発動し虹の輪の中に突撃する。輪を通過すると《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の追加装甲が転送され《オッドアイズ・ドラゴン》はその身に纏う。

 

「《虹咆哮(リアクション・フォース)》!!」

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の珠が紅く光ると両手で握っている《V(バニッシャー)・スパイラルフレイム》にエネルギーが充電される。

 

ジークの動きを見て、アーミタイルは妨害をしようと動き出すがその前にアルベルトがジークの背後からとびだして先制攻撃をする。

 

「うぉぉおおおおッ!」

 

邪神竜剣(グリードスフィア)》を振るいアーミタイルに斬撃を見舞う。動きが止まったのを見計らってジークは竜声でアルベルトに発射の準備が出来たと飛ばした。

 

「螺旋のストライクバースト!」

 

強化された《スパイラルフレイム》から放たれた黒い螺旋と紅い閃光はアーミタイルへと向かい、直撃しそれを示す黒い煙を上げた。

 

「……やったか?」

 

「いや---まだだ」

 

黒い煙からウリアを模した腕がジークとアルベルトを捕まえようと伸びる。だが、済んでのところでジークとアルベルトは上に跳躍してそれを避けた。

 

「ピンピンしてやがるな」

 

「倒れるとまでは思ってなかったが……まさかの無傷だと少し傷つくなぁ」

 

アーミタイルから少し離れた場所に着地すると、出鱈目な頑丈さにジークとアルベルトは呆れ声を吐いた。

 

「あんな化け物をどうやって倒す? なんか案でもないかジーク」

 

「……あるにはあるぞ」

 

アルベルトの問いに数秒置いてからジークは答え、竜声を使って誰かと簡単な会話を済ます。

 

「よし、いまからルクスがこっちに戻ってくるから少し時間を稼ぐぞ」

 

「なんかわかねぇけど……わかったぜ!」

 

お互いに自身の得物を構える。アーミタイルがウリアの腕を伸ばしたのを合図にジークとアルベルトは飛翔した。二人が立っていた場所をウリアの大顎が地形ごと喰らいついたのを見て、背筋に冷たい物を感じたがそれを振り切る様に《V・F・D(ザ・ビースト)》と《邪心竜剣《グリードスフィア》》を渾身のスピードでアーミタイルに叩きつけた。

 

「っ……!?」

 

しかし、アーミタイルの身体は無傷のままだ。何事も無かった様な顔でアーミタイルはハモンの翼をはためかせて、ジークとアルベルトを暴風で吹き飛ばした。

 

地面に叩きつけられた二人は大岩にぶつかるまで埃の様に転がされた。立ち上がった二人の鼓膜に叩きつける雄叫びに、ジークとアルベルトは顔を上げその瞳に映り込んだモノに絶句しかけた。

 

アーミタイルの大顎に濃密度のエネルギーが集中していた。ジークの演算とアルベルトの直感で見えた数秒後の未来に、回避不能な熱線が飛んでくる事に気がつく。

 

「《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》!!」

 

ジークが自分とアルベルトの目の前に霧を発生させたのと同時に、アーミタイルは熱線を放った。

 

 

✝️

 

 

島の一部分を()()()()()威力を持った熱線がジークとアルベルトを襲う前に、ジークは自身とアルベルトを守った。

 

幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》---内と外を霧の剣で分け、相手の攻撃から守る特殊武装。無論、こちらからの攻撃も相手には届かない。良し悪いはあれど危機的状況を回避出来る事には変わらない。

 

「ハァ……ハァ……」

 

「避け……れたのか?」

 

額から大粒の汗を流すジークと、更地になった辺りを見てアルベルトは呆けた言葉しか出なかった。《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》の維持に力を使い過ぎたジークは満身創痍である。それでも、アーミタイルは御構い無しに攻撃態勢に入る。

 

(くっ……!?次の砲撃を回避するにはどうすれば)

 

アルベルトが最後の切り札で《極限死竜(デッド・ゾーン)》を使うか悩んでいると、背後に一機の機竜が飛んでくるのが見えた。

 

「ジークッ……!!」

 

満身創痍の親友の姿を見て、ルクスは悲痛な表情で降り立った。

 

「ル……クス?」

 

顔を上げることも精一杯のジークは、ルクスの顔を見ると白銀の大剣《V・F・D(ザ・ビースト)》を渡す。

 

「アイリはどうした?」

 

「アイリなら大丈夫だよ。ここから離れた場所に漁船があったから預けて来た」

 

「そうか……なら、巻き込む心配は要らなさそうだな」

 

ジークが立ち上がろうとしたが、フラフラの状態なのでアルベルトが支える。

 

「ここなら禁技を使っても大丈夫だ……全力でやってしまって問題ない」

 

「……わかった」

 

ルクスが頷いたのを見て、ジークはアルベルトに離脱を言う。

 

「待てよ、ルクスをここに置いて行くのか?」

 

「逆だ---俺らがここに居たら巻き添えで死ぬ。……後は頼んだぞルクス」

 

アルベルトの力を借りて離脱するジークの言葉を背中で受け止めたルクスは静かに呟く。

 

「《V・F・D(ザ・ビースト)》---合体(ユニオン)

 

《バハムート》の特殊武装《烙印剣(カオスブランド)》にジークが造った《V・F・D(ザ・ビースト)》が分裂して一つの極大な剣に変わる。

 

「■■■■■■■■■ッ!!」

 

アーミタイルは再びウリアの大顎にエネルギーを溜める。アルベルトがそれを見て焦り出す。

 

「おいジーク!本当に大丈夫かよ!?」

 

「大丈夫だ……あれはな---」

 

ジークの口調と上段に大剣を構えたルクスの口調が自然に合わさる。

 

「「神々の威光を断罪する究極の魔剣---」」

 

剣が《バハムート》のエネルギーを喰らい、神装《暴食(リロード・オン・ファイア)》によって先の五秒で伸ばし、五秒後の解放に合わせて三大奥義『強制超過(リコイルバースト)』で限界まで力を引き上げる。これら全てを完璧に合わせて繰り出せる一撃---

 

終炎の剣(レーヴァテイン)ッッッッ!!」

 

アーミタイルが放った熱線を両断しながら、光の斬撃波がアーミタイルの身体を切断した。その余波は()()()()()、島の端まで届き()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。数秒遅れて斬撃波が通った各所が爆発した。

 

「うぐっ……!?」

 

究極の一撃を振り抜いたルクスは片膝を着く。それと同時に《バハムート》が粒子となって強制解除された。《バハムート》が創り出せる全エネルギーを喰らった一撃だったため、それも致し方無しである。

 

だが---

 

「おい……」

 

「そん、な」

 

「………くっそ」

 

三人の視線の先、《終炎の剣(レーヴァテイン)》で切断した爆心地の中心、そこから立ち込める煙の中で()()()()()()()()()()()()()()

 

しかし、流石に無傷とはいかずアーミタイルの身体は縦に両断されており現在進行形で再生をしている。

 

「ジークよどうする……もう策が」

 

絶望の中、縋るようにアルベルトはジークに打開策がないか聞く。

 

「僕とジークはもう戦う力が残ってない。アルベルトだけでも逃げれるなら」

 

「バカを言うな!俺はまだ戦うぞ。おい、聞いてんのかジーク。なんか策とか無いのか?おい!」

 

「………」

 

「ジーク……?」

 

耳元で大声で呼ばれているのにも関わらず、ジークが反応しない事に訝しむアルベルトとルクスはジークの表情を見る。ジークの目は諦めた色をしておらず、何かを考える色をしている。

 

「そうか……わかったぞ」

 

カチリッ---

 

ジークの頭の中の歯車が噛み合う。絡み合った紐が一本の線になった。

 

「俺が《暗黒の召喚神》を攻撃してもあいつは死ななかった。だが、ここで言えるのはあいつ自身が()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ」

 

「うん……?つまり何が言いたいんだ?」

 

掻い摘んで説明したため、アルベルトはジークが何を言っているのか理解できなかった。

 

「いいか、俺とルクスが《暗黒の召喚神》を攻撃してもあいつはまったくの無傷だった。それは何故か---そもそもあの異形は実体を持ってないんだ。だから俺達が攻撃してもすぐに戻った。アーミタイルもまた同じで、三幻魔を媒体としあの異形が核となることで形を成している。実体はあるが、核にダメージが無かったら何度でも再生をする事が出来る」

 

「じゃあ、どうやって倒せる。攻撃は効かなくて向こうから一方的に攻撃されるぞ」

 

「身体を再生する時には多くの力を使う筈だ。その時に核が実体化すると思う」

 

再生をしているアーミタイルの何処かしこに核が存在する。だが、目視で見てもそれは確認出来ない。

 

「……アルベルト」

 

ジークはアーミタイルの核を砕く方法を考えた末に、唯一この状況で可能な人物に託す事にした。

 

「お前がアーミタイルの核を砕け」

 

「………」

 

予想が出来ていたのか、アルベルトは黙ってジークの言葉を待った。

 

「俺とルクスはもう戦う力が無い。お前の超直感なら核も割り出せるし、その《シン・サタン》ならアーミタイルの硬い外皮も貫けるかもしれない----やってくれるか、アルベルト?」

 

「………」

 

ジークの言葉に、俯き続けるアルベルト。そもそも、アルベルトは異世界から来た向こう側の住人だ。こちらの世界の問題に首を突っ込んだとは言え、やり遂げる必要性は無い。

 

ただ、ジークとルクスはアルベルトの行く末を見守る事しか---

 

「ふふ、ふははははっ!!」

 

突然に俯いていたアルベルトが高らかに笑い出した。

 

「この『魔王』に頼み事か?ふんっ、いいだろうこの俺様があのバケモノを退治してくれる!」

 

「おう、『魔王(笑)』頑張れ」

 

めっちゃ元気なアルベルトと、冷静なジークのやり取りをルクスはなんも言えない顔で見つめる。

 

「さぁ、行くぜ!」

 

アルベルトが洗礼を発動すると、一部の髪の色が黒から青へと変わり。右目の瞳が、黄金へと変化した。

 

「《極限死竜(デッド・ゾーン)》全開!!」

 

一度停止してからエネルギー生成以外の全ての機能をシャットアウトしそこからフルパワーで幻想機核(フォースコア)を動かす。《シン・サタン》の性能の限界を突破させる。それに合わせてX型ブースターも変形して四枚羽が八枚羽に変わる。

 

「翔べ!」

 

アルベルトが《シン・サタン》に命令を送ると圧倒的な速度で飛翔した。

 

「《暴竜牙撃(グラトニーファング)》!!」

 

七罪武神(セブンザード)》が変形して右脚に装着し、竜の顎門を模したグリーブになった。

 

「超直感!」

 

少し先の未来を予測する。そこから、自分が必要な要素を手繰り寄せ一つの未来を視る。

 

「見つけたぞ。核はそこだな」

 

暴竜牙撃(グラトニーファング)》にエネルギーを充填すると共に、強化された神装を展開。アーミタイルの眼前に紫色の魔法陣が描かれる。まだ再生途中のアーミタイルは回避行動を取れない。

 

「暴食しろ!!《シン・サタン》!!」

 

八枚の羽が最大に加速し、亜音速で落下する。

 

終焉罪竜(シン・エンドワールド)ッッッッ!!」

 

《シン・サタン》が紫色の魔法陣を潜ると《暴竜牙撃(グラトニーファング)》に神装の力が付与された。

 

「でいやああああああ!!」

 

邪竜の力を纏った蹴りがアーミタイルの中心にめり込む。

 

「終わり、だぁああああああ!!!!」

 

竜の顎門がアーミタイルの身体を貫く。脚の先には禍々しい核をちゃんと捉えていた。

 

「ば、馬鹿な……なぜ、なぜ我が負けた---」

 

徐々に亀裂が入る核から《暗黒の召喚神》の声が聞こえる。最後にアルベルトは異形に告げる---。

 

「お前は恐ろしく強い。正直、俺一人でお前を倒せる自身は無かった----だが、俺には仲間がいる

 

ここまで粘れたのは、ジークとルクスの協力があってこそ。確実な隙を作るためにルクスが決死の一撃を振るった事も、アーミタイルからの攻撃を満身創痍になるまでジークがアルベルトを守った事も全てこの瞬間のためである。

 

繋げた希望にアルベルトは全力で応えた。

 

「テメェは一人だが、俺は仲間と戦ってるんだ。それが、お前と俺の差だ!!」

 

パキィッ!!

 

バラバラにアーミタイルの核が砕け散った。散り際に断末魔を響き渡らせながら。

 

「あの世で、自分の罪を償え」

 

こうして、三人の長い戦いが終わり。《失楽園(ロスト・パラダイス)》での任務も遂行した。




貯めてた分が無くなっちまった
また失踪するかも
時たまに生存確認で投稿するかも

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