最弱無敗の神装機竜――四天の竜――   作:パNティー

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 ついこの間まで、《芝刈りメタファイズ》を使ってたのにあまり強くことを感じ《召喚獣メタファイズ》に変えた幻影帝督です。

 はい、意味わかんない前書きは無視して本編をどうぞ!


Part6 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

 

 

 光の中から現れた虹竜《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》、そこから出る威圧感にベルベットたちは慄いていた。

 

 《オッドアイズ・ドラゴン》より大きな巨体。追加されたその装甲の厚さは薄かったすらりとした装甲(フレーム)から、頑丈そうな鎧のような物になっている。そして、推進装置から伸びた大きな二つの角。左右非対称の角には緑と赤の珠が埋め込まれている。

 

 だが、最も目を惹くのは、搭乗者のジークの目だ。

 

 左目が赤く変色している。まさしく虹彩異色(オッドアイズ)。機竜の名と同じ、それを自らも体現している。

 

 「八年ぶりだな、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》」

 

 ジークはまるで親友に話しかけるようにそう呟いた。そして、それに答えるように《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は小さく震えた。

 

 (わかっている。お前も怒っているんだな……)

 

 「―――すぅ……」

 

 ジークは思いっきり息を吸い。

 

 

 「行くぞぉぉおおおおおおおおお!」

 

 

 思いっきり開戦の宣言をした。その声はベルベットたちを振るわせるほどの気迫。

 

 ジークは《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の両腕に機竜牙剣(ブレード)と特殊武装《スパイラルフレイム》を構え、ベルベットに向かって突進する。

 

 「くっ――!」

 

 ベルベットは大剣を水平に構え、ジークの一撃を防ぐ。汎用機竜と同じ出力しか出せないこの神装機竜ならば、このまま弾き返しジークの胴体に刃を突き刺す。と、ベルベットは考えた。そう考えた――だが。

 

 「ッ――!?」

 

 弾き返せない。逆に押し返され、大きく距離を取られた。

 

 「馬鹿か。機竜が変わったんだから当然出力も変わるだろ」

 

 まるでジークは見透かしたかのように言う。

 

 「クソ……! 囲んで倒せ!」

 

 命令を送ると、部下の機竜使い(ドラグナイト)三名がジークを三方向から攻撃をした。

 

 「――神速制御(クイックドロウ)

 

 一瞬、ジークが剣を一閃すると襲いかかってきた装甲機竜(ドラグライド)の推進装置を三機同時に破壊した。

 

 「なっ……!?」

 

 ベルベットは驚愕している間にも、ジークは敵を倒していく。肉薄して推進装置を破壊。機竜爪刃(ダガー)を投擲して幻創機核(フォース・コア)を貫く。複数で来た場合は神速制御(クイックドロウ)で一蹴した。いつの間にか、たくさんいた部下は半分以下になっている。

 

 「これ以上の交戦は無意味。今すぐ投降をしてください」

 

 機竜牙剣(ブレード)をベルベットに向けて、ジークは敢えて、諭すように言った。これが最後の警告のように。

 

 「くっ……! 貴様は何故、新王国の味方をする!? 正義の味方にもなったつもりか!?」

 

 「新王国? 正義の味方? いいや、違うぜ」

 

 ジークは首を横に振った。リーシャが驚いたかのようにジークを見つめる。

 

 「俺はいつだって約束のため。『誰もが笑える世界』、そのためならば俺は自分自身も犠牲にするし、誰にでも戦う」

 

 ジークの狂信的な目に、ベルベットは黙らせられた。

 

 「……いいだろう」

 

 ベルベットは剣を構えた。

 

 「私も我が野望のため、ここでお前を打ち砕く! 我が仕えしアーカディア帝国の、大義の下に朽ち果ろ!」

 

 お互い剣を構え、睨みあったまま動かない。相手の出方を窺っているのだ。《バハムート》を纏ったルクスが帝国兵を倒す音が耳に入るが、集中している二人には意識外だ。

 

 だが、それも終わった。ルクスが倒した機竜の破片が目の前を擦過した。

 

 「「――神速制御(クイックドロウ)」」

 

 まったく同じタイミングで武器を振った。

 

 『神速制御(クイックドロウ)』。

 肉体操作での制御に加え、精神操作の制御。一連の動作に、異なる二系統からの操作を完璧に重ねることで、ほんの一瞬、一動作(ワンアクション)のみ、目にも止まらぬ攻撃を繰り出す絶技。

 

 機竜使い(ドラグナイト)の三奥義は、新王国設立後も伝説として語り継がれており、そのひとつでも習得した者は、超一流の使いとして称えられる。

 

 同時に抜き放たれた必殺の斬撃――だが、鋼の悲鳴と共に大きく上方に弾かれた。

 

 「ッ!?」

 

 咄嗟に背後に大きく跳躍。双方無事。必殺の一撃が弾かれたことに動揺はあったものの、期せずして仕切り直しの機会を得たのだ。次こそは我が大剣によってズタズタにしてやると思い、ベルベットは再び推進装置を駆動させる。

 

 ジークがそこで、驚愕の表情を浮かべた。

 

 いけると思い、再び剣を突き込もうと駆ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――そしてベルベットは、ジークの驚愕の表情の意味をはき違えたことを知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピシッ!

 

 ベルベットの視界に灰色の機械の腕が見えた。それは宙を舞い地面に落下していく。それが、自身が纏っている《エクス・ワイバーン》だと知ったとき、すでに勝敗は決していた。

 

 「ベルベットさんたっら、腕を切られたのにも気づかずにこっちに踏み込んできたから、驚いて思わず笑っちゃうところでしたよ」

 

 本当に驚いたかのように、ジークは何気なく言った。

 

 「い、一体何が?」

 

 それは見ていたリーシャやルクスですらわからなかった。

 

 「対奥義『超越制御(ビヨンド・スラッシュ)』――これがベルベットさんを斬った技の名前です」

 

 「た、対奥義だと……」

 

 「神速制御(クイックドロウ)永久連環(エンドアクション)の合わせ技。一撃をして二撃。二撃目の速さは神速制御(クイックドロウ)を超えます。きっとベルベットさんの動体視力程度では、剣を弾いた一撃目しか視認できなかったんでしょうね。二撃目でベルベットさんはすでに両腕を斬られていたんですよ」

 

 「な、何故そんな技を?」

 

 「何故? はは可笑しい事を言う」

 

 ジークは首を傾げた。

 

 「対抗策なんて考えるのが当たり前。それが友人が作った技だろうが」

 

 ジークは一瞬、ちらっとルクスを見たがすぐにベルベットに戻した。

 

 「さあ、チェックメイトだ」

 

 《スパイラルフレイム》の銃口をベルベットに向ける。

 

 「ま、守れ!」

 

 ベルベットが号令をすると、生き残っている部下がベルベットを守るように立ちはだかった。ルクスが動いたがジークはそれを手で制した。

 

 「《スパイラルフレイム》!」

 

 迸る赤い閃光。しかし、キャノンと同等の威力しかないこの特殊武装ではこの守りを突き崩せない。

 

 《オッドアイズ・ドラゴン》だった場合は――

 

 「そのふた色の眼でとらえたすべてを焼き払え!」

 

 左右非対称の角に埋め込まれている緑と赤の珠が激しく光る。

 

 「《虹咆哮(リアクション・フォース)》!」

 

 《虹咆哮(リアクション・フォース)》――この《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の内部に搭載されている特殊武装の効果は単純。出力を倍加させる(・・・・・・・・)

 

 「螺旋のストライクバースト!」

 

 放たれた赤の閃光は、黒い渦を纏い大きさも倍以上になった。

 

 「う、うわぁぁああああああ!」

 

 兵士とベルベットは悲鳴と共に赤い閃光に巻き込まれた。機械の竜達は地上に落ちて行く。

 

 「ふぅ……」

 

 ジークは頬を伝う血と汗を拭った。地上に降り、機竜を解除する。それと同時に赤色だった左目が元の深碧色に戻った。リーシャをジークの腕から解放すると――

 

 「うぅ……」

 

 背後から呻き声が聞こえ、振り返る。

 

 「ベルベットさん……」

 

 そこには、至るところが傷だらけのベルベットが機攻殻剣(ソード・デバイス)を杖に立っていた。

 

 「まだだ。まだ戦いは終わってないぞ」

 

 「もう、終わりです。既に兵は全滅、貴方も戦え――」

 

 「黙れ!」

 

 ベルベットは剣を構えた。背後で《バハムート》を解除したルクスが剣を抜いたが、ジークは手で制した。

 

 「はぁはぁ、うぉおおおおおお!」

 

 ベルベットは地面を蹴り、剣をジークに突き刺した。ジークは《オッドアイズ・ドラゴン》の機攻殻剣(ソード・デバイス)に手を当て――

 

 そして、宙に赤い血飛沫が舞った。

 

 

 ☨

 

 

 「――っ! 何故だ! 何故なんだ! 何故、貴様は剣を抜かない!」

 

 「………」

 

 ベルベットは驚愕に声を荒げた。ジークは剣を抜かずに鞘ごとその場に捨てた。そして、その空いた手でベルベットの剣を受け止めた(・・・・・)。 

 

 受け止めた手は、指は切れていないが皮膚を斬り裂き、血がその刀身に塗り込まれている。穂先(ほさき)も装衣を突き破り血が地面に小さな血だまりを作った。

 

 「貴様は私を恨んでいる筈だ! 貴様の身体を切り刻み、その腹に刻印をやったのも私だ! なのに何故――」

 

 「俺は、貴方を恨んではいません」

 

 ジークは静かに、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

 「旧帝国に裏切られ、仲間を殺された俺はもう用済みだった。捨てられそうだった俺を拾ってくれたのは、ベルベットさん貴方です。貴方のお陰で、俺は生き延びルクスやフィルフィ、リーシャや学園の皆と出会えた」

 

 ぬちゃ、と剣が腹から抜かれる。しかし、ジークの表情は変わらない。

 

 「貴方はここで死ぬ命じゃない。罪を償い、この新王国のためにその腕をどうか振るってください」

 

 「……くっ」

 

 ジークの口から出たその言葉に、ベルベットはその場に泣き崩れた。それを見たジークは、もう言うことは無いだろうと悟り、踵を返す。そして、ジークの後ろにいたリーシャに笑顔で向かう。

 

 「ジーク……」

 

 「終わったぜ、リー、シャ」

 

 「ッ――!?」

 

 急にジークは膝から崩れ落ちた。咄嗟にリーシャが動きその身体を地面に着く前に受け止めた。地面に滴り落ちる血。それが、リーシャの装衣を汚す。

 

 「悪い、リーシャの装衣を汚しちまった……」

 

 「バカもの! わたしの心配をする前に自分の心配をしろ!」

 

 「はは、わりぃ――」

 

 カクン、とジークの首が糸が切れた人形みたいに倒れた。よく見るとジークの表情は血の気が悪い。

 

 「おい! しっかりしろ!」

 

 何度も揺するが、返事どころか身じろぎ一つもしない。

 

 「リーシャ様!」

 

 「ルクス、ジークが!」

 

 リーシャは涙目になって、ジークの腹の傷を手で押さえ血を止めようとする。

 

 「急いで運びましょう!」

 

 ルクスも慌てて、ジークを担ぎ学園へと戻った。

 

 

 ☨

 

 

 『君が……ジークかい?』

 

 黒い、自分と同じ顔をした少年が目の前で話しかけてきた。それは気配が機薄で、実際に透けて見えていた。

 

 『あったりまえだろ、フローリア! こいつが四人目じゃなかったら俺らは見えねえし聞こえねえよ!』

 

 黒い自分の横に今度は、緑色の自分が黒色の自分に捲くし立てるように話しかけていた。

 

 「君達は……」

 

 『僕らは君で、君は僕らだよ、ジーク』

 

 俺が話しかけると、紫色の自分が返してきた。

 

 『俺の名は、フローリア』

 

 『エリックだ!』

 

 『僕はルーカス』

 

 自分と似た彼らは名前を名乗った。

 

 「俺に何のよう?」

 

 『俺らは君を助けにきた』

 

 「助けに?」

 

 『ああ、これから起きる世界崩壊(ワールド・クライシス)を阻止するため俺らはお前と協力する!』

 

 「なんで、俺なんだ?」

 

 『君じゃなければいけないんだ。僕らと同じ神装機竜を扱える君じゃなければ』

 

 「………」

 

 言ってることは滅茶苦茶だ。しかし、なぜだか彼らは信用できる。

 

 「――わかった」

 

 『よし、これで契約は成立した。次は』

 

 『俺らが知っている技!』

 

 『僕らの機竜の情報を教えよう』

 

 『『『願わくば、平和のために』』』

 

 

 

 

 「ん、んん……っ、く」

 

 小さな呻き声と共に、ジークは瞼を開けた。比較的新しい板張りの天井がまず見え、花と薬草、そして微かなアルコールの香りが、鼻腔をくすぐった。

 

 「懐かしい」

 

 あれが、俺が多重人格となった切っ掛けだった。

 

 「んん……」

 

 「――あ?」

 

 ジークが寝ている横で、小さな寝音が聞こえた。思わず横を向くと、そこには金髪の少女、リーシャが可愛らしい寝顔でこちらに向いて寝ていた。

 

 「―――」

 

 気づけば、ジークはリーシャを抱き寄せていた。

 

 「良かった」

 

 リーシャに目立った外傷がなく、ジークは安堵のため息をした。ゆっくりと、リーシャの背中を撫でた。

 

 「――人が見ている目の前で大胆の事はやめて貰いませんか」

 

 「ちょっとこのままでいいかい、アイリ」

 

 背後で椅子に座っているルクスと同じ銀色の髪をしたアイリが、呆れたように言ってきた。

 

 「はぁ……過労と血が大量に出過ぎで気絶しただけなので大丈夫だそうです。リーシャ様には感謝してくださいね。ここにジークさんが連れてこられてずっと付きっきりで側にいましたから」

 

 「うん、ありがとう」

 

 「……一つ、質問をしていいですか?」

 

 「ああ、いいよ」

 

 アイリは一呼吸置いてから話す。

 

 「ジークさんは、兄さんが『黒き英雄』と知っていたのですか?」

 

 「うん、まあね」

 

 「どこでそれを知ったんですか?」

 

 「………」

 

 「ジークさんは、クーデターには参加しなかった。ならば兄さんが《バハムート》の所有者とは知らない筈です。ということは、ジークさんが『黒き英雄』を知るすべは他人から聞くしか――」

 

 「偶然さ」

 

 ジークはアイリの言葉を遮る。

 

 「ルクスがいつも珍しい機攻殻剣(ソード・デバイス)を持っていたから、と旧帝国の生き残りなのに釈放されているからってところから推測した」

 

 「……本当に偶然なのですか?」

 

 ジークは無言で頷いた。これ以上聞いても同じ回答しか来ないだろう。

 

 「わかりました……学園長から言づてを預かってます。落ち着いたら、学園長室に来て欲しいそうです。兄さんとジークさんの大事な処遇に関わる、大事な話があると――」

 

 「……わかった。ありがとう、アイリ」

 

 「はい、お大事に」

 

 アイリは立ち上がると、そっと歩いて医務室から出て行く。

 

 (……十分ここにいたな)

 

 たった数日。しかし、ジークにはとても長く感じた。旧帝国時代には奴隷として扱われ、余り人と関わってこなかった。新王国になって同年代の子と学べるとは夢にも思わなかった。

 

 とても楽しかった。

 

 しかし、自分はここに居ていいのか?

 

 旧帝国の生き残り、それも奴隷の自分がこの学園に残ってしまったら彼女らに迷惑をかけてしまうのでは。

 

 居るべきではない。それが正答だ。しかし――

 

 「―――」

 

 ゆっくりと、ジークはベットから起き上がった。毛布をリーシャにかけて、制服に着替えジークは保健室をあとにした。

 

 

 ☨

 

 

 「レリィ学園長、失礼します」

 

 ジークは学園長室のドアを軽く三回叩きドアノブを捻った。 

 

 「あら、ジーク君じゃないちょうど良かったは、君の処遇についてなんだけ――」

 

 「はい。俺もその事で話しに来ました」

 

 いつになく真剣なジークの表情に、レリィは興味を持ったらしく聞く姿勢を取った。

 

 

 「俺をこの学園に残らさせて下さい」

 

 

 頭を下げ、ジークはそうレリィに懇願した。

 

 「理由を、聞いていいかしら?」

 

 「俺にはまだ。ここでやるべきことが残されているんです」

 

 ジークは頭を上げ、真剣な眼差しで学園長を見据える。

 

 「この学園にいるリーシャ。いえ、彼女たちの笑顔を守って行きたいんです」

 

 「……ふふそうね。あなたならそう言うと思っていたわ」

 

 レリィは優しく微笑むと、背後の扉に視線を向けた。

 

 「という事で、正式入学おめでとう!」

 

 『おめでとう!』

 

 バン!と、レリィの言葉が合図なのか学園長室の大扉が開き数名の見慣れた少女たちとクルルシファー、フィルフィ、アイリ、三和音(トライアド)の三人。そして、最後にルクスが入ってきた。

 

 「え……?」

 

 てっきり学園長だけがいると思っていたジークは、意表を突かれて固まってしまう。

 

 「やあ、元気そうで何よりだ。ジーク君」

 

 「おー! よかった起きて! どうジクっち? 私のこと覚えてる?」

 

 「Yes.ただの疲労だそうですので、大丈夫かと思われます」

 

 「シャリス先輩、ティルファー、ノクト……」

 

 まず先に、三和音(トライアド)の三人が。

 

 「思ったより、平気そうね」

 

 「おはよ、ジーくん」

 

 「クルルシファーさん、フィーちゃん」

 

 次に、クールな印象の細身の少女と、ふわふわした感じの胸の大きな少女。クルルシファー・エインフォルクとフィルフィ・アイングラム。

 

 後ほど知ったことだが、ジークが気絶した後にクルルシファーが旧帝国の兵士を縛って王国兵士に引き渡してくれたらしい。ルクスがもしものためにクルルシファーを城塞付近に配備させていたらしい。

 

 「元気そうだね、ジーク」

 

 「ちょっとな、ルクス」

 

 最後に親友のルクスが、ジークに挨拶をした。

 

 「ちなみに、ルクス君もこの学園に残ることに決定しているわよ」

 

 「ええ、ちょっと無理やり感がありましたけど」

 

 レリィがそう言うとルクスは苦笑いした。

 

 「という訳で、貴方たちをこの王立士官学園(アカデミー)に正式に入学することを許可します」

 

 そして、小さな歓声と共に、ぱちぱちと割れんばかりの拍手が巻き起こる。しかし、それだけではこの騒動は終わらなかった――

 

 「ジークッ!」

 

 息を荒げて、制服を乱したリーシャが学園長室のドアを荒く開けて入ってきた。 

 

 「お前、学園を去って行く気じゃないだろうな!?」

 

 リーシャ以外は既に知っているのだが、何故か皆はにやけ顔で黙っている。お前らひでぇな!

 

 「もしかして、出て行けって言われたのか!? ま、待て! 学園長、第一王女の権限でそれはさせないぞ! ジークは我々を守るために傷ついてくれたのだ、ならばここを追い出す理由は――」

 

 「あのー」 

 

 噛みつくように言うリーシャに、流石にかわいそうだと感じたジークはおずおずと声をかけた。

 

 「別に俺は出て行かないよ」

 

 「……本当か?」

 

 信じられないのか、リーシャは疑わしげな眼差しでジークを見る。

 

 「ああ、本当だ」

 

 「本当の本当か?」

 

 「本当の本当だ」

 

 「はぁ……良かったー」

 

 学園を去らずに済んだを聞けたリーシャは、安堵のため息と共にその場にへたりこんだ。それを見ていた皆はにやにやした顔でジークとリーシャを見ていた。本当にひでぇな!

 

 「さて、話は済んだし。今日はこれでお開きよ」

 

 レリィがそう言って、この騒動は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 のではなく、まだ続きがあった。

 

 「リーシャ、呼ばれたから来たぞ」

 

 ジークは工房(アトリエ)の扉を開け、工房(アトリエ)の社長を呼んだ。しかし、返事が返ってこない。

 

 「おーい! 約束通り来たぞー!」

 

 学園長室でジークとルクスの処遇が決定し終わった後、リーシャに、

 

 『今晩、もし用事とかなかったらなんだが……本当になかったらだぞ! あの、工房(アトリエ)に来てくれ!』

 

 そう言い残すと、リーシャは走り去ってしまった。

 

 その後は別段やる事も無く、まだ病み上がりということもあり今日は依頼をやらないことにした。夜になったので、まっすぐ約束通り工房(アトリエ)に来た。

 

 「いないのかな?」

 

 「き、来たか!」

 

 首を捻ってジークは工房(アトリエ)の中を見回していると、奥の小さな部屋から制服姿のリーシャが現れた。

 

 「で、何のようだ?」

 

 「ああ、その。こほん」

 

 目を泳がせているリーシャは、一回気持ちを落ち着かせるべく咳き込むと。真新しい鞘に納められた、《オッドアイズ・ドラゴン》の機攻殻剣(ソード・デバイス)を手に、ジークの前に歩いてくる。

 

 「ジーク=ザン・フローリア・エリック・ルーカス。貴公の協力でこの城塞都市と、ひいては我が国を守ることができた。貴公の身に、確かな力と正義があることを、このわたしが認め、称えよう」

 

 そう告げて、リーシャはそっと微笑みかける。

 

 「というわけで、なんていうかな。まだ《オッドアイズ・ドラゴン》の剣も修理の途中だったんだが――、受け取ってくれるか? わたしの剣を」

 

 リーシャは頬を赤く染め、目を少しだけ逸らしながら、剣を差し出す。それを見た瞬間、ジークはふっと息を漏らして、跪いた。

 

 「仰せのままに、我が姫君(プリンセス)よ」

 

 ジークは剣を受け取る。

 

 「それと、ジーク。あの時……そのぉ」

 

 「あの時?」

 

 「ああもう! お前がわたしを守るために庇ってベルベットに言った言葉だ!」

 

 『俺をいくら侮辱したり罵ったりするのは構わない。だけど、リーシャを。俺の憧れのひとを――俺の好きな人を侮辱するなァッッ!!』 

 

 ああ言った。あんな恥ずかしいセリフを言うとかどうゆう神経しているかって疑うよね。

 

 「あ、ありがとう。嬉しかったぞ」

 

 「まあ、守りたかったからね」

 

 朗らかに、ジークは笑う。それを見たリーシャは頬を赤く染め、視線を逸らした。

 

 「好き……なのか?」

 

 「え?」

 

 「わたしのことが、好きなのか!」

 

 スカートの裾を摘まんで、上目遣いでジークに言う。一瞬、ジークはドキッと来たが、この時のジークはまだこの気持ちがわからなかった。

 

 「ああ、好きだよ。仲間(・・)として」

 

 「――え?」

 

 ジークが言った瞬間、リーシャの表情は凍った。

 

 「え、だから仲間――っておわ! あぶね!」

 

 ジークの首に、《ティアマト》の機攻殻剣(ソード・デバイス)が振るわれた。ジークは咄嗟に首を曲げ避けた。

 

 「うるさい! だいたい、お前が悪い! 何が『俺の好き』だよ!」

 

 「だから仲間として好きなんだよ!」

 

 「うるさいうるさい!」

 

 「あ、あぶね! うわぁああああ!」

 

 その日、夜空にジークの叫びとリーシャの怒声が響いた。リーシャを宥めるのにルクスを含んだ数人が必要だったとか。

 

 




ジーク「学園に残ることになったジークとルクス。しかし、学園長の策略で奇妙なイベントをやることに。

 次回、ランディング&ランアウェイ」

 
 一話の前に設定集を出したのでそちらもどうぞ。

 では、次回から二巻目。

 次回も、デュエルスタンバイ! 
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