ある日の昼下がり。幻想郷は雲ひとつない快晴、空気もうららかだ。そんな陽気の中昼食を終えた人間達は、太陽の魔力により判断力が鈍ってしまう。さらに睡魔に襲われ、いつになく無防備な状態だ。そんな人間をカモにする種族――妖精が二匹、湖のほとりで遊んでいた。
「最近この湖に、人と魚とを半分半分にした変なのがいたんだよ」
そう話すのはこの湖に何年も住みついている、湖上の氷精――チルノであった。その辺の妖精とは一線を画す実力の持ち主で、甘く見ていると痛い目を見るだろう。そうは言っても、妖精は妖精。つまり、頭の方は強くない。
「ここにも新しいのがいたんだ……最近多いよね」
そんなチルノの話し相手は、これまた主に湖を住処にしている大妖精――通称大ちゃん。チルノほどではないにしろ、そこら辺の妖精より強い。とはいっても特筆することは無い。名前も無い。スペカも無い。
「そういえば最近"とよさとみみのみこ"が何かすごいみたいだよ」
「トヨサトミミノミコ?」
無い無い尽くしの大ちゃんでも、しっかり話題は持ち合わせている。"豊聡耳神子"とは、最近幻想郷で復活した仙人の名前だ。守矢神社、命蓮寺に次いで現れた新たな宗教一派ともいえる。
「何その人、強いの?」
自分が住んでいた湖事情も知らないのだから、興味が無いであろう宗教事情なんて知るよしもないだろう。しかしひとたび話を聞いてしまえば、自称妖精界最強の血が騒いでしまうのだ。
「強いんじゃないのかな。里で噂になってるし」
その言葉を聞くと、チルノは文字通り奮い立った。そのまま自分のやる気だけで、たちまち溶けてしまいそうだ。運がよければ妖怪に勝ったこともあるチルノ、新しく入ってきた者たちと戦ってみたくて仕方がないのだろう。
「よーし、今すぐ"トヨサトミミ神社"に果たし状渡しに行くよ!」
「え。と……とよさとみみ神社?」
幻想郷を知っていれば、その地名を知るものはいない。無論、豊聡耳神社なんてものは無いからだ。幻想郷は、妖精でも覚え切れるくらいしか地名が無い。故に新しい名所ができれば、人間から妖怪まで幻想郷中に広まる。大ちゃんは早速その地名について、チルノに問いかけた。
「だって、トヨサトミミの巫女って言ったじゃん」
チルノは何の疑問も無く言い放つ。その態度があまりにも堂々としていたので、大ちゃんは思わず「そっか、巫女だもんね」と口走ってしまった。
架空の世界で生まれた架空の神社を目指して、チルノと大ちゃんの大冒険が始まる。――本日も幻想郷は平和です。
みじけぇw