あの後、犬が行ったであろう『小学校』へと向かっている。
まだ来たばかりと記憶の薄れで道がよくわからなかったが犬はまるで俺らを待っているかのように所々で止まっていた。
近づけば逃げられるので見失わないように走りながら追いかけた。
追いかけていると車道沿いの、広い歩道に出た。
昼ならばここは車の通りが多いが、ここは学区指定の通学路で、特定の時間は交通量が制限されている。
今は車は走ってはいない。
その代わりというのか車道の真ん中にはあの時石をぶつけたパトランプがいた。
なぜあの時とわかるのかというと石をぶつけたところが傷になっていてわかりやすいからだ。…どうやら俺を探しているらしい。
歩道には黒い影や頭に釘をたくさん刺したキチガイがいた。
黒い影くらいならあまり怖いと思わなくなった。少女も怖がる素振りすらあまりしなくなった。
ただし頭に釘を刺したやつに襲われたときは少女と悲鳴を上げながら逃げた。流石に怖い。
見慣れた街が夜になるだけでこうも変わるとは…俺が子供だったらこの道は通りたくない。
犬は人影を縫うように逃げていく。
そしてそのまま俺の記憶通り『小学校』へと走っていった。
校門の前までたどり着くと、固く閉じられた鉄の格子の、仕切りのその先に犬のお尻が見えた。
少女が俺の手を離し格子の隙間から手を伸ばし、愛犬の名前を叫ぶ
「ポロぉっ!」
犬はその叫びを我関せずというようにそのまま校舎へと走り去ってしまう。
「ポロ…」
少女は格子を握りしめ膝を落とす。
このまま確か抜け道を潜ることになるはずだ。さっき思い出した。
その抜け穴は多分俺では入れない。
格子を見上げて手を握ったり緩めたりする。よし、行ける!
「追いかけるんだろ?」
少女は力なくこちらを見る。それでも諦めてない目をしていた。
少女に背中を向けて片膝をつく。
「格子をよじ登るからつかまれ」
少女は少し悩んだのち決心して背中にしがみつく。
そして格子をよじ登り降りるときはなるべく衝撃を少なくするように降りる。意外と簡単に行けたことに驚きつつ背中にいる少女を降ろす。
「お兄ちゃん…ありがとう」
小さく呟かれた言葉で、けれどしっかりと聞こえたお礼。
お礼を言われることはしていない。
だって俺はお前の姉ちゃんを……
頭をリセットするように上を向き空に息を吐く。
今は憂鬱になる時間じゃない。
今のお礼はあの時とは関係ないはずだ。何でもかんでも悪い方向に考えてはいけない。
少女に向き直り「どういたしまして」と言葉を返す。
本当に言わないと行けないのは『ごめんなさい』のはずなのに。
いくら言い訳をしても心では後悔が波打つ。
あの時こうしていれば、あの時身代わりになれば…
やっぱり俺は情けないようだ。すぐに逃げる。
どんなに覚悟を決めたって、どうしようもなく臆病なのは変わらないようだ。
もやもやする気持ちが募っていく。
【ある何かの恨み】
ただ道の真ん中に立っていたらどこの糞ガキかわからない目が死んだ奴に石を当てられた。
それだけだったらまだ許していたかもしれないがあろうことかその糞ガキは俺のアイデンティティーを傷つけやがった。
そして謝りもせずに逃げ出したのだ。
奴は今は夜の街を彷徨っている。見つけ出したらぶっ殺してやる!!