やっぱり主人公は違う子なんですかね?
とりあえず期待大
オセロ(惨敗)で遊びながらちらりと姉の方を見る。
学校ではぎこちない笑顔だったが今は楽しそうに笑っている。
(ちゃんと笑えるんだな)
口から出かけた言葉を胸にしまい込みとりあえず一勝はしたいと頭を捻らせる。
俺も俺で久しぶりに人と遊ぶのは何年ぶりだろうと思いながら遊んでいたので時間を気にせず遊んでいた。
ただ左目がいつもよりおかしく感じる。
いつもなら少しの間だけ異物が入り込んだような感じだがなぜか今はなかなかその感じが消えない。
流石に気持ち悪くなって洗面台少し借りさせてもらった。
蛇口をひねり水を出す。とめどなくあふれる水を両手ですくって顔にかける。
同じことを何度もしたが結局治らない。
諦めたと同時に玄関が開く音がした。
それに比例するように目の異物感も消えた。
不思議に思い玄関のところに向かうと少女がいた。
手にはポロを繋いでいた外ずのリードが千切れて代わりに赤色の液体がついていた。
姉も妹が帰って来たのを察したのか玄関まで来る。
妹を見た瞬間足を止めるが優しく「おかえり」と妹に言った。
妹は服の裾を力いっぱいぎゅっと掴みながら「ただいまお姉ちゃんとお兄ちゃん」と、顔を俯かせながら言った。
表情は見えないが苦しんでいることはわかる。
話しかけようとするがなんていえばいいのかわからず黙ってしまう。
「ポロはどうしたの?」
優しく姉が妹に尋ねる。
「いなくなっちゃった」
目線を下に向けたまま答える。
姉の顔が少し曇る。
「……逃げちゃったの?」
「……………………」
沈黙が空間を支配していく。側にいるだけでも息苦しく感じてくる。それにこのリードを見ても犬が生きてるとは到底思えない。
「私探してくる」
沈黙を破ったのは少女の姉だった
流石に危ないと声をかけようとするが手で静止をかけられ「お願い…」と、懇願するように言われた。
次の言葉は出てこず押し黙ってしまう。
少女の姉は家を出る前に妹の目線に合わせて座ると
「心配しないで、必ず見つけて帰ってくるから。ご飯の用意はできてるからそこのお兄ちゃんと一緒に食べてね。洗い物は台所に置いてくれればいいから」
そして少女の姉は懐中電灯を手に取るとそのまま外に出ていってしまった。
俯いている少女の頭を軽く撫でる。
「……ご飯、食べよっか」
慰める言葉は見つからず、自分のコミュ力を恨めしく思った。
食事中はとても静かだった。
美味しいはずなのほとんど喉に通らなかった。
少女ももそもそと食べていたが残してしまいもったいなかったのでラッピングをして姉の帰りを待つ。
机の上には三人分の食事が並べてあった。
それを見るたびに後悔が胸を押しつぶそうとしてくる。
言おうとした。もう犬は死んでると。
でも、言えなかった。少女の顔を見たら言えなかった。
きっと真実をいえば壊れてしまうから。
……それにしても帰りが遅い。
もう外は日が沈み空には俺の気持ちを知らずかキラキラ輝く星が空を覆い尽くしている。
「……迎えに行こう!」
何を言ったかは一瞬わからなかった。
そしてその言葉の意味を理解すると説得に入る。
「いま外に出たら危ないよ」
「なら、なおさら早くお姉ちゃんを迎えに行かないと」
ぐっ、と押し黙ってしまう。
何を言ってもきっと聞かないだろう。少女の目は諦めるもんかと睨んでくる。やだ、幼女強い。
でも流石にここで聞くわけにはいかない。
「お姉ちゃんの約束を破るのか?」
「それは…」
顔を俯かせ泣きそうになる。
夜の街には『ナニカ』が徘徊している。
それを考えるととてもじゃないが行かせようとは思えない。
しかしもし姉が帰ってこなかったら……考えるのはよそう。
ため息を吐き優しく頭を撫でてあげながら言う。
「かわりに俺が行くから」
少女が目を見開き俺を見る。
「大丈夫、俺こう見えて
自慢にならないことを自慢げに言う。
ニ、三回頭を撫でてあげ鞄から懐中電灯を取り出しそれだけをもって
少女にとって姉は最後の支えだろう。
ただでさえポロを失って次に姉を失えばきっと心が壊れる。
俺は年上だ。動く理由はそれだけで十分だ。
少しずつ思い出していく記憶を頼りに少女の姉がいるであろう『空き地』に足を向ける。