ちょっとこの章では、
・登場人物のアラサー化。それによるキャラの変化。
・某掲示板ネタの多用。
を注意事項として書いておきます。苦手な方は申し訳が無い。
アラサー、始動
魔王世代の既婚者を纏めるスレ
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
ほな、はじめるで。ついでやけど、二つ上の世代までまとめるわ。サービスやで。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
奇跡の美人揃いやしなぁ。きっと皆イケメン揃えとるんやろうなぁ。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
おーい、はようまとめんか―い。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
楽しみやなぁ。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
立て主寝たんか?
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
まだかね?待ちわびているんやが。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
なお。
なお。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
今年で魔王世代何歳になるんやッけ?
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
↑27か8
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
↑駄目みたいっすね------。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
SKYN 「まだ」
HYRN 「甘い」
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
↑おお、もう------。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
やめて差し上げろ。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
実際、何でこんな事になってるんや?そもそも女雀士は結婚しにくい職業なんやろうけど、それでもちょっと異常やろ。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
あのあたりの女子プロの世代って滅茶苦茶仲がいいからじゃね?男作らんでもいい意味で人生楽しめてるんやろ。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
とよねーちゃんなんか、高校時代のチームメイトと今でもシェアハウスしているらしいし、まあそういう世代なんやろ。外野がとやかく言う事やないわな。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
誰が最初の裏切者になるのかチキンレースみたいになっていて草生える。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
ちなみに、
魔王世代及びその二つ上の世代のアナウンサー勢も全員未婚らしい。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
↑嘘かと思って調べたらホンマやん!
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
あー----竹井アナも新子アナもそういや未婚か。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
加治木実況員もか。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
世界に通用する雀士が生まれると、その世代付近の雀士全員結婚できなくなる呪いが実在する説。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
すこやんの世代も-------。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
↑うん-----。
※
―――ゆみっち、プライベートの間くらいアナの口調じゃなくていいんだぞー。ワハハー。
え、と思った。
自分はプライベートでもあの口調をしていたのかと―――。
思い返せば、様々な事があったように思える。
麻雀の実況をやりたいという目標を立て、放送局に入社した。ラジオ番組から下積みを重ね三年。それからテレビ放送での実況をする事かれこれ今まで。アクの強い解説員が配置される度に隣に座らされ、頭を抱えながら実況する姿に近年地味に人気が高まり、今や加治木アナというよりも加治木実況員とネットで呼ばれるようになっていったのであった。
口下手が過ぎる時には常々フォローを入れながら。感覚的過ぎて理解しにくい時にはしっかりと言葉を言い換えながら。そもそも解説そっちのけで居酒屋語りする時にはツッコミを入れて軌道修正しながら。彼女はとかく真面目な一本気気質な女性であり、更に言えば気配りも出来て肝も座っているときている。それ故局からも“面倒な解説員は加治木アナに押し付けちゃえ”という謎の風潮が出来上がり、テレビ放送の実況として呼ばれてからずっと一貫して奇人変人の介護役という役割を担わされていたのである。
そんな事をずっとやってきて、早十年近く。
もう三十路の壁を超えた彼女はふと振り返って見た。
仕事は楽しかった。忙しかったけれども、自分がやりたい事を今できている。それ以上の喜びはないだろう。
そして、また思う。
自分は仕事以外に何をしてきたのか―――。
「-------」
彼女は局が用意してくれた1LDKマンションを今でも使用している。
一人で住むには十分すぎる部屋であるし、何よりも局が家賃負担7割をしてくれるのだ。出ていく理由が無く、彼女はずっとマンションに住み続けていた。
今や人気の実況員。彼女はプライベートの時間も、可能な限り麻雀の研究に費やした。プロ、アマ問わず、いつどのような仕事が回されてもしっかりと対処できるように。その結果として、時々友人と会う時以外に、プライベートというものはあまり無かった。
「-----しかし、なぁ」
仕事に打ち込み続け、邁進し続け、気が付けばもう三十路を超えた。
両親からも、それとなく見合いの誘いが来るようになり、局の後輩もぽつりぽつりと結婚する様になっていった。
今このタイミングを逃せばきっともういい出会いは無いのだろうと思う。結婚したくないと思っている訳ではない。
だが、今自分は仕事をしていたい。楽しくて楽しくて仕方がないこの仕事を、逃したくない。
どちらかを選べ、と後者を選び続け今の自分がある。
ならば、いつか自分でしっかりと前者を選ばねばならない時が、きっと来るのだと思う。
いつになるのかは、知らないが。
されどそろそろ決断せねば、取り返しがつかなくなるであろうが。
「------出会いが、そもそも、なぁ-----」
ない袖は振れぬ。
出会いもないのに結婚なんざ無理に決まっている。
出会いの場はテレビ局にしかないが、局の男共の彼女の評価はもうマシーンで固まっている。仕事を適正に終わらせる機械のようなものだ。
周囲にも自分にも妥協を許さず徹底した真面目さを持つ彼女は、同性には一種の憧れを、異性には恐怖を、与え続けてきたのだから。
―――まあ、今の所どうにもならんな。
見合いなんて真っ平御免だ。どんな男も判別がつかない猫かぶり共の相手なんざしている余裕なんて今はない。
そう思考を切り替え、今日も今日とて、彼女は送られた牌譜を眺めていた。
※
【悲報】須賀プロ、戦力外。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
20XX年11月16日、男子プロ麻雀リーグの東京ジャイガンズは須賀京太郎(28)に自由契約とする旨を伝えた。
須賀京太郎プロは高校生ドラフト七位で清澄高校から入団。下位入団ながら三年目でチームの次鋒の位置を勝ち取り安定した成績を残していたものの、近年は打ち筋が見破られ攻略されるようになり、調子を落としていた。
須賀選手は「戦力外通告は一言でいえば納得。ジャイガンズは常に勝利を求めるチームですし、中堅になろうとしている大事な時期に調子を落として迷惑をかけたのだから(戦力外は)仕方がない。今後は引退も含めて、身の振り方をしっかり考えようと思います」とコメントを残し、現役続行するかどうかも含め、今後検討していくとの事。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
もう須賀プロじゃなくなるのね------。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
グッバイスッガ。オフの貴方は輝いてたよ。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
まあジャイガンズやし。中堅の年齢まで貢献してくれたなら仕事回してくれるやろ。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
むしろここから稼ぎ出すまである。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
現役にしがみ付くより他の仕事した方が稼げそう。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
お前等の須賀の謎の評価は何なんだよ。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
:魔王の暴露ネタ
:徹底された弄られキャラ
:妙に高い女子力
:トーク、解説いける
これだけ揃えば、まあ。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
こいつがいたから宮永姉妹の人間らしさが多少なりとも一般に伝わったという風潮。一理ある。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
そんな努力もむなしく宮永姉妹は仲良く未婚のままという事実。
・名無しのオカルトさん:20xx/xx/xx
ポンコツで魔王とか、胃が痛くなる要素の二乗だから仕方ないね。責任取って須賀はこの姉妹の面倒を見るべき。
「-----あーあ」
須賀京太郎。
クビになりました。
「まあ、仕方ないんだけどなぁ。落ち目のおっさんなんか契約しても仕方ないしね」
元々麻雀の男子プロは女子程規模が大きくなく、その分給料も安い。須賀京太郎の場合、オフのテレビ出演の仕事での収入の方が多い位であった。
現在、28歳。
どうしたものかと思うばかり。
現役を続けるか、それか放送局のお世話になるか、もう全てを投げ出して長野に帰るか。
「------解説かぁ」
現在、須賀は放送局で解説の仕事の依頼が来ている。
オフに偶然舞い込んだその仕事をやってみると意外にも好評だったようで、彼はオフの度に解説に引っ張り込まれていた。局の人間曰く、「声がいい」らしい。声だけだと滅茶苦茶イケメンに聞こえるらしく、女性の視聴率が高くなるとか。声だけならば。-----畜生。解っていたけど声だけかよ。
とはいえそのおかげで取り敢えず食い扶持分の稼ぎが出来るのならば、ありがたいお話だ。
-----他のチームからも、特に誘いも無かった訳だし。ここで一つ、人生を転換するのもありかもしれない。そう、自然に思えた。
今日、はじめて車校の教官の方の本気の悲鳴を聞いた。ごめんなさい。もう二度としません----。