雪ノ下陽乃は後輩教師に恋してる。   作:さくたろう

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雪ノ下陽乃は後輩教師と過ごしたい。

 教師になって初めての年末。

 明日から職員も年末休暇ということで、今日は職員室の大掃除だ。

 

「比企谷先生、それじゃこれも頼むよ」

「わかりました」

 

 先輩の教師から大きめのダンボールを渡される。

 

「はぁ……」

 

 ため息を吐き、想像以上に重いダンボールをかかえて焼却炉に向かってゆっくりと歩いていく。

 一応平日ではあるが生徒たちは既に冬休みで登校しておらず、校内はいつもより静かだ。

 

「重い、めんどくさい、早く家に帰って寝正月の準備したい……」

 

 こういった力仕事は、基本一番下っ端の俺に回されるのが縦社会の常だ。

 しかし、生憎俺は力仕事に向いてないししたくもない。そもそも仕事自体したくない家で一生寝ていたい。

 大体さ、先輩の方が俺の数倍ガタイ良いし、間違いなく俺より向いてるんですけど? さり気なくトイレで自分の筋肉みたりしてるの俺知ってるからね? その筋肉何のためにあるのマジ。

 そして俺は思う。仕事には適材適所ってものがあると。こういう力仕事はさっきの先輩。俺は――そうだな、家で寝るとかさ。

 

「ひーきーがーやーくん」

 

 廊下を歩いていると、後ろから陽気な声が聞こえる。

 この学校で俺のことを比企谷くんなんて呼ぶのは一人しかいない。陽乃さんだ。

 

「なんでしょうか」

 

 振り返って答えると、後ろにいた陽乃さんがとたとたと早歩きで俺の横に並ぶ。

 

「まーたそんな顔して。どうしたの?」

「そんな顔ってどんな顔ですかね……」

「んー、死んだ魚のような目をして――あ、これは普段通りか」

 

 言いながらケラケラと笑う陽乃さん。本日も絶好調のようでなによりです、はい。

 つうか、俺っていまだにそんなに死んだ魚のような目してるわけ? 本人的には大分緩和してると思ったんだけど。

 そう思って窓を見ると、確かに言うとおりでございました。

 や、まぁそれはいい。それより、この人なにしに来たの? 確か女性職員は違う場所を掃除してたと思ったんですけど。もしかしてあれですか。サボってまで俺をからかいに来たとかそういうやつですか。

 

「違う違う。たまたま通りかかったら重たそうにダンボール運ぶ比企谷くんの姿が見えたからさ。手伝ってあげようと思ってね」

「手伝うって……。さすがに女の人にこんな重い物持たせられないっすよ」

 

 それも一応というか、先輩の陽乃さんにそんなことをさせるわけにもいかないだろう。

 あともうツッコむのも疲れるんで俺の心読んでることはスルーします。もうこれが当たり前だと諦めようそうしよう。

 

「そっか。やっぱり優しいねぇ比企谷くんは」

「優しいというか……俺が頼まれたことですし……」

 

 無邪気な笑みを浮かべながらそんなことを言われると、直視するのが恥ずかしくなっちゃうわけでして。

 自分の頬が熱くなるのを感じ、陽乃さんから顔を背けてボソッと呟く。

 

「どうかしたの?」

「や、なんでもないですから」

「変なの……。あ、そういえばさ、比企谷くんも今日来るでしょ?」

「はい?」

 

 なに? 今日なにかあるの? だとしたら俺なにも聞かされてないんですけど?

「その反応は何も知らされてないんだね……」

 

 その可愛そうな人を見る目で見るのやめてもらえます? 結構傷つくんですけど……。

 

「えっと……、なにかあるんですか?」

「毎年恒例の忘年会だよ。ホントに何も言われてない?」

「はぁ……」

 

 なにそれ初耳なんですが。忘年会のぼの字もなかったんだけど。あれ? もしかしてこれは俗に言うハブとか仲間外れとかいうやつ? やだ、八幡ったら社会人になってもこんな扱いなの? つら……。

 

「んー、比企谷くんがこないなら私もいかないかなぁ」

「や、雪ノ下さんは誘われてるなら行かないと」

「えー、だって比企谷くんがいないなら退屈だし」

「俺で何しようとしてるんですかね……」

「それはもちろん、楽しいこと?」

「怖さしかないんですがそれは」

「あはは、警戒しすぎだよ」

 

 陽乃さんは肩をぽんぽんと叩きながら笑みを浮かべる。この人相手じゃどれだけ警戒してもし足りないまであるわけだが……。

 

「おーい、比企谷先生!」

 

 再び後ろから今度は大きな声で呼ばれる。

 先ほど俺にこのダンボールを運ぶように指示した先輩教師だ。

 

「っと雪ノ下先生もいらっしゃってたんですか」

「あら、楠先生。どうかなさったんですか?」

「い、いえ、比企谷先生に用がありましてね」

 

 陽乃さんに尋ねられた先輩教師はおどおどとした態度で答える。

 なにやら顔を赤らめてるようだが、三十代のガチムチ教師に似合わなさすぎるんだけど。

 

「えっとどうしたんですか?」

「いや、比企谷先生の帰りが遅かったから、手伝おうかと思ってね」

 

 嘘つけ。絶対文句言いに来ただろ。

 

「すみません、楠先生。私が比企谷先生を呼び止めてしまって」

「だ、大丈夫ですよ雪ノ下先生。こちらの方は大体終わりだったので」

 

 え、それホント? もう終わったの? 俺が教室を出たときまだ大分残ってた気がするんだけど。まぁ終わってるならそれに越したことはないけど。

 

「そうでしたか。あ、それと楠先生?」

「はい、なんでしょう?」

「比企谷先生に忘年会のこと伝わってなかったようなんですけど……」

「は、え? あ、そ、そうですね! あとで言おうと思ってたんですよ! ははは、俺としたことが、早めに伝えておくべきでしたね」

 

 あの、この反応完全に忘れてたパターンじゃないですかヤダー。拗ねるぞ俺でも。や、予想はしていたけれど。

 

「というわけで、比企谷先生」

 

 どういうわけでしょうか。

 

「今日は忘年会だから六時に駅前に集合ということでよろしく頼むよ」

「はぁ……」

「よかったですね、比企谷先生。それじゃ、私は先に戻りますね。またあとで」

 

 クスッと笑いながら俺と楠先生を残して陽乃さんはその場を後にした。

 陽乃さんの姿が見えなくなると、さっきまでおどおどとしていた先輩教師である楠先生が表情を変える。

 

「比企谷先生、そのダンボール早く運んでください。まだ大分掃除しなくてはいけないんだから」

 

 あっれれ~~おっかしいぞ~~。さっきほとんど終わったって言ってまなかったこの人? 俺の聞き間違いか? 俺の耳は最近のラノベ主人公並みに悪かったのだろうか。ちょっとショック。

 

「はぁ、わかりました」

「じゃあよろしく頼むよ」

 

 そう言って楠先生は早足で去っていく。去り際に「チッ」と舌打ちが聞こえたのは気のせいだろうか。たぶん気のせいじゃないわ。つうか手伝ってくれる的なこと言ってなかったっけ。女性がいるときだけいい顔する男の人ってどうなのホント。

 

 

   *   *   *

 

 

「疲れた……」

 

 一通り大掃除が終わったので一度解散することになった。

 忘年会まではまだ時間があるので着替えも兼ねて一旦家に帰ることに。

 

「やっと解放された……」

「お疲れさまー、疲れてるね」

 

 通いなれた道を歩いていると、後ろから陽乃さんに声をかけられる。ん、でもなんでいるんだ? 陽乃さんの家はこっちじゃないのに……。

 

「お疲れっす。てかなんでここにいるんですか」

「ん、だって忘年会まで時間あるから暇でしょ?」

 

 俺の問いに、何言ってるのこの子と言いたげに答える陽乃さん。

 えっと何これ? 俺がおかしいの? 違うよね違うと言ってくれ。

 あまりの自然な返しにこっちがおかしいのかと不安になってくる。や、ホントに。

 

「はぁ、暇なのはわかりました。んじゃ行きますか……」

「あれ? 今日はやけに素直じゃない? また病気にでもなっちゃった?」

「違いますよ……。別に、俺も雪ノ下さんと一緒にいるの嫌じゃありませんし……むしろなんていうか、最近じゃ心地いいというか……」

 

 自分で言ってて恥ずかしくなり、最後の方は陽乃さんに聞こえないであろうほどの小声で呟いた。

 呟いたつもりだったのだが、陽乃さんは、満足げに俺の肩をぽんぽんと叩き、

 

「そっかそっか♪」

 

 と、頬を薄く染めにこりと微笑んだ。

 

「もしかして聞こえました……?」

「ん、ばっちりね」

 

 胸元でグーサインをする陽乃さん。

 やだ、もう死にたい。何言っちゃってんの俺。神様仏様どうか時間を少し、一分ほどでいいので戻してくださいお願いしますから……。

 すると、俺の目の前が一瞬光輝き――時間が戻るなんてことはなかった。

 ただ、陽乃さんがスマホでパシャパシャと俺を撮ってただけだった。や、なんで撮ってるのこの人。

 

「忘れてください。ってかなに撮ってるんですか……」

「なんか恥ずかしがってる比企谷くんが可愛かったからつい、ね。」

「ちょ、消してくださいよ……。そして忘れてください頼みますから」

「なんでー? 別にいいじゃない。私嬉しかったし」

 

 ふふっと微笑む陽乃さんに見惚れてしまい、俺はそれ以上言葉が出てこない。

 

「どうかしたの?」

「いえ……もう行きましょ。冷えてきましたし」

「そうだね、比企谷くんの家で暖まろうー!」

 

 言うと、陽乃さんは自分の腕を俺の腕に絡めると再び歩き始める。

 

「えっと、ちなみにこれは」

「冷えて来たんでしょ? こうすればお互い温かくなっていいじゃない?」

 

 確かに陽乃さんの言うとおり、さっきよりも彼女の温もりで温かくなった。なったわけだが……やっぱり恥ずかしいわけで。でもだからと言ってやめてほしいわけでもない。彼女いない歴=年齢のせいで不慣れなだけだ。まぁ最近は陽乃さんのおかげで本当に少しずつではあるが慣れてきたわけだけど。

 いつかこういうことが俺の方から自然とできるようになればいいなと。そんなことを柄にもなく考えていた。

 

 

   *   *   *

 

 

 のんびりと部屋で休みたかったが、陽乃さんと二人きりでそんなこと許されるわけもなく。

 結果、忘年会ぎりぎりまで陽乃さんの遊び相手をしていた俺がいる。や、まぁ俺もなんだかんだ楽しめたからいいんだけど。

 急いで忘年会をする店に向かうと、俺たちが到着する頃には既に他の先生方は集合していた。

 店の前に着いたとき、男性職員の視線が俺に集まっていたのは気のせいだと思いたい。なんか殺気も含まれていた気がするがたぶんそれも気のせい。

 

「遅いぞ、比企谷先生」

「すみません……」

 

 険しい表情で俺に詰め寄る楠先生。

 なんで俺だけ……。大体見当はつくが……。

 

「さ、それでは皆さん集まったことですし、中に入りましょうか」

 

 今回の幹事と思われる教師が先頭で店の中に入り他の教師たちも続いていく。

 宴会用の大部屋に案内されると、幹事の先生が少し大きめの箱を持って佇んでいる。

 

「はい、では皆さん。この箱に席の番号が書かれているので、その番号通りの席に座ってください」

 

 なるほど、席を決めるクジというわけか。

 あんまり俺には意味のないものだが、他の先生にしてみれば飲み会前の余興にはちょうどいいのかもしれない。

 幹事の先生に言われた通り、順番にクジを引いていく先生たち。

 

「お、私は雪ノ下先生の隣みたいです。今日はよろしくお願いしますね」

「ええ、よろしくお願いしますね」

「ささ、どうぞどうぞ!」

 

 どうやら陽乃さんの隣は楠先生になったらしい。あからさまに喜んでるのがわかる。陽乃さんも笑顔で答えているけど、あの笑顔は仮面被ってるときの表情のような気がする。あくまで気がするだけだけど……。というかそうであってほしい的な、ね?

 それからあらかた席が決まったところで俺の番。といっても、残ってるのは二席。俺と幹事の先生が残ってるだけなのだが……。

 空いてる場所は陽乃さんから離れた席と楠先生の隣。

 あれだからね? 陽乃さん基準で席の位置言ってるのに特に意味はないから。別に陽乃さんの近くに座りたいとかそういうの全然ない。そもそもその場合、近くと言っても楠先生を挟むことになるわけだし。そうなると、予想ではあるがこの飲み会が苦痛的なものになる未来しか見えないわけで。となると、俺が狙うべきは遠く離れた位置。

 

 ――ここしかない。

 

 ……なんて思ってその場所になるなら苦労なんてしないわけで、結局俺の席は楠先生の隣ということになった。

 

「それでは今年も一年間お疲れ様でした。乾杯!」

「乾杯!」

 

 幹事の先生の話も終わり乾杯する一同。

 

「比企谷先生、注いでくれないか?」

「はい?」

 

 隣の楠先生に呼ばれグラスを見ると、中身は既に空になっていて。

 や、飲むの早すぎじゃないのこれ?

「んー、比企谷先生はビール注ぎが下手だねぇ」

「はぁ」

「私が手本を見せてやろう」

 

 別にいらないんですけど。ていうかそのドヤ顔ちょっとウザいというか。

 自信満々で俺のグラスにビールを注ぐ楠先生。確かに言うだけのことはあって上手い。が、だ。それがどうしたんですかねぇ。つうか、こういうのにうるさい奴が多いから最近の若い人たちは会社での飲み会とか参加したくないんじゃないの? 飲み会なんて楽しんだ方がいいのに、こんなことばっかぐちぐちと言われていたら参加する気も起きないだろ。俺の場合それ抜きでも参加しないかもしれないけど。

 そもそもあれだ、誘われるか怪しいな。何それ悲しい。

 

「あら、楠先生。ビール注ぐの上手なんですね」

「そ、そうですか? あ、では失礼ながら私が雪ノ下先生に注がせてもらいますよ! どうぞどうぞ!」

「いいんですかー? ありがとうございます」

 

 ウッキウッキで陽乃さんのグラスにビールを注ぐ。酒で酔っているのか、それとも単に陽乃さんと絡めて嬉しいのか顔を真っ赤にして今日一番の笑顔の楠先生。この男本当にわかりやすいな。

 というか、陽乃さんもこんな男に絡む必要ないだろうに……。

 

「……あの、比企谷先生どうかしたんですか?」

「なんすか……?」

 

 隣の女性教師に声をかけられて返事をすると、「ひっ!?」と驚かれ、若干距離を置かれる。あれ、俺なんかした……?

「いえ……何時にも増して顔が、その……卑屈っぽいというかそんな感じだったので……」

 

 マジですかと、自分の顔を触りながら確認し始める。……ていうかその言い方だと俺いつも卑屈っぽいんですけど。オーケー理解した。この人は俺のこと、いつもそういう風に見てるわけだ。

 つうか卑屈っぽい顔ってどんな顔なんだよ。や、確かにさっきは何故かイライラしてたから変な顔をしていたのかもしれないが……。ん? ……なんで俺はイライラしてたんだ?

 

   *   *   *

 

 

 結局、飲み会が終わる今までそのことについて考えていたがわからなかった。というか、楠先生が陽乃さんにめんどくさい絡みばかりしていてまともに考えれる状況じゃなかったせいだ。たぶん今日一日で俺の中のこの人の評価はダダ下がりだ。まぁ元々そんな評価なかったわけだけど。

 

「ではこれで終わりですけど、この後一応二次会も予定しているので参加する方は店の外で待機していてください」

 

 二次会か。まぁ俺は参加しないでいいな。ぶっちゃけ疲れたし。主に楠先生のせいだが。さっさと帰って寝るとしよう。

 

「雪ノ下先生も二次会来ますよね?」

「そうですねー、どうしようかな」

 

 楠先生の問いに答える陽乃さんがチラっとこちらを見た。

 これはあれか。俺の返答次第ってことなんですかね?

 仕方ないなと口を開こうとしたとき、楠先生もこちらを見て先に話し始める。

 

「比企谷先生はもうお疲れだろ? 今日はゆっくり休みたまえ」

 

 おっと、俺が帰るのは決定事項みたいだな。や、まあ帰る予定なんだけどさ。しかし、こうも威圧的に言われると逆に行ってやりたくなるのも人間なわけで。

 

「あー……」

「私、今日はこれで失礼しますね」

 

 俺が答えるよりも早く、陽乃さんがはっきりとした口調で言い放った。

 

「え、ど、どうしてですか? 二次会に行きましょうよ!」

 

 これには楠先生も慌てて説得に試みる。どんだけこの先生今回に賭けてるん? というかこんだけ詰め寄っちゃうのって八幡的に逆効果だと思うんだけど俺だけ? こういうの陽乃さん的にポイント低いと思うんだけど。

 

「こ・れ・で・し・つ・れ・い・し・ま・す」

「ひっ……!?」

 

 どうやら俺の思った通りらしく。陽乃さんはさっきよりも強くはっきりと拒絶した。にこにこと笑みを浮かべてはいるが、その奥で沸々と沸き立つ怒りのようなものを感じる。端的に言って怖いちょー怖い。

 たぶんそれを楠先生も感じたのだろう。陽乃さんの言葉に動揺して後ずさる。

 

「わ、わかりました……」

「はい♪ それじゃ失礼します。いこ、比企谷くん」

「はい…………え?」

 

 今なんて? と、聞き返すよりも早く、陽乃さんが俺の手を取る。

 それを見た楠先生はハトが豆鉄砲をくらったような顔をして立ち尽くす。多分だけど俺もおんなじような顔してる気がするわ。

 どういうことなのこれってば……。

 状況が読み込めてない俺をお構いなしに陽乃さんはそのまま歩き出す。

 

「え、え?」

「あの二人ってやっぱりそうなの……?」

「さぁ……」

 

 振り向くと、陽乃さんの行動に困惑している先生方。ってかやっぱりってなんだよ。なに俺ら二人ってどうなってるの。凄い気になるんですけど――。

 

 

   *   *   *

 

 

「あ、あのー……」

「ん、どうしたの?」

 

 先生たちの姿が見えなくなったところで声をかける。

 

「や、いいんすか? さっきの――」

「別にいいんじゃない? 若い男女が二人で抜け出しただけだし」

「その言い方だとめちゃくちゃまずい気がするんですけど」

「あはは、確かにね。まぁ実際そうなんだけどねー?」

 

 ふふふっとからかい気味に笑いながら顔を近づけてくる。

 近い照れるめちゃくちゃ綺麗だから恥ずかしい。そして酒の香のせいだと思うけどいつもより自分の胸の鼓動が早まっている感覚に襲われる。

 

「……これからどうするつもりなんですか」

「んーそうだね。二次会しよっか」

「はい?」

「あっちとは別に。二人だけの二次会。だめ?」

「や、別にいいですけど……。というか駄目と言ってもやりますよね?」

 

 陽乃さんがこう言った時点で俺に拒否権なんてないに等しいからな。

 

「よくわかってるじゃない。じゃいこっか」

「どこにっすか?」

 

 尋ねると、陽乃さんは掴んでいた俺の手を離す。そして二三歩前に出ると、くるっと振り向いて満面の笑みで、

 

「もちろん比企谷くんの家に決まってるじゃない」

 

 と答えた。

 

 やれやれ……どうやら今日はあまり休めそうにないな……。

 そんなことを思いながらも、この後のことを想像すると自然と笑みがこぼれた。

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