Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~ 作:アマゾンズ
騎士の見届け
以上
機体のデータをアシュアリー・クロイツェル社へデータを送り、束とテレビ通信していると、束から試作の武装のプログラムが送られてきたのだ。
「暇つぶしに時代劇を観てて、参考に試作を作ったから使ってみて。実物は明日には届くから」
「はぁ・・・分かりました」
「いっつも急だな、束さんは」
翌日の朝、速達でアシュアリー・クロイツェル社から届いたとフー=ルーを通じて連絡が来ていたが、職員室でフー=ルーに渡して欲しいと返事を返した。
平日である今日は授業を受けなければならない、それが学生の本文である。二人は放課後に受け取る事をフー=ルーに連絡し、一夏達には遅れる旨を話した。
春始は鈴を手篭めに出来なかった事に腹を立てており、別のアリーナで八つ当たりにも等しい状態で擬似ターゲットを破壊していた。
「クソッ!アイツ等・・・俺の邪魔ばっかりしやがって!どうやって、あんな化け物みたいな力を身に付けやがったんだ!?!」
力は確かにその身に宿ってはいたが、制御する技量が未熟なのだ。自分は天才故に、人の手を借りるというのが恥なのだと考えているのだろう。
「俺の予定じゃセシリアと鈴は既に喰っていた筈なのに・・・何もかも滅茶苦茶だ!今は機を伺うんだ。そしたらアイツ等を始末する!」
訓練プログラムを終え、邪魔者となっている者を始末する事を思考しながら出て行った。
◇
「はぁ・・はぁ・・!こ、こんなにキツイの・・・」
「お前が望んだんだぞ?向こう側のお前と同じ訓練をしてくれって」
「もっとも、まだ半分も行っていないが?」
放課後、装備を受け取った後に鈴に向こう側の自分と同じ内容の特訓をして欲しいと頼み込まれたのだ。現在、鈴は大の字で倒れている。
「あ、アンタ達がいう向こう側の私って・・・どのくらい・・・強かったの?」
「そうだな・・・ISのフルオートマシンガンの発射された銃弾を素手で全部受け止められる格闘家と互角に稽古するくらい?」
「は?」
「付け加えれば、一番弱いレベルで建物のドアを蹴り一発で壊すくらいだな」
「な・・・なによそれ、そんな化物・・・レベルなの?」
「それくらい強かったが、礼儀はキチンとしてたよ」
自分が見た別世界の自分、遠すぎてまるで追いつく事が出来ない。今の自分では子供を相手にしているようにあしらわれるだろう。
鈴は倒れている自分に喝を入れながら、立ち上がる。だが、身体は正直で軽くつつくだけで倒れてしまいそうな程に身体が震えている。
「再開して・・・少しでも、追いつきた・・・・あっ」
「気絶しちゃったか・・・」
「俺達が居た世界の鈴はシャッフルの方々に鍛えられてたが、こちら側の鈴はIS用の訓練しか、してなさそうだ」
「質も量も桁違いだからなぁ・・・あの人達の特訓」
「俺たちもそれを乗り越えてるんだ。鍛えられるだけ鍛えてやらなきゃな」
「ああ」
鈴を背中におぶると政征と雄輔はアリーナを出て行くが、途中で一夏と合流した。
「あれ?政征に雄輔、それに鈴!?何があったんだよ?」
「ああ、お前と同じ特訓をしてただけだよ」
「うげ・・・あの特訓か・・・道理で鈴が気絶してるはずだ。正直、千冬姉が逃げ出すレベルじゃないか、あれ?」
「そのレベルを平然とこなすレベルまで行かなきゃ、騎士とは名乗れないからな」
「騎士・・・か。なぁ・・・?俺もなれるかな?」
「え?」
「俺さ、シャナ=ミアさんに告白したんだよ。振られちゃったけど」
「・・・そうなのか」
告白と聞いて少しだけ政征は顔を顰めるが、一夏なりのケジメなのだと考え深くは聞かないでいた。自分が居た世界とは違って、この世界の一夏は自分の気持ちを素直に伝えたのだから。
「でもさ、恋人になるだけが愛じゃないだろ?俺さ、シャナ=ミアさんを守る騎士になりたいんだ」
「シャナの騎士・・か」
政征は一瞬迷ったが、この一夏には伝えておかなければならないと思い始めていた。シャナの恋人が自分である事を伝えなければいけないと。
「その覚悟はあるのか?織斑一夏」
「へ?」
「騎士というのは建前だ。騎士は戦士でもあり、シャナさんという綺麗な物を守る為には、自分の手を血に染めなければならない時がある」
「・・・・・・」
「本当に騎士になりたいのなら、安っぽい正義感を捨てて、自分が綺麗なままでいられない事を受け入れろ」
「俺は・・・」
雄輔から次々と繰り出される現実の言葉に一夏はたじろいでしまう。だが、拳を握った後、顔を上げて覚悟を口にする。
「それでも、それでも俺は騎士になりたい!俺は自分が守れるなら守らなきゃいけないと思うから!」
「その覚悟、確かに」
「自由と城壁の騎士が見届けた・・・!清浄の騎士よ」
「清浄の・・・騎士?」
「ラフトクランズの名前は知ってるだろう?リベラは自由、モエニアは城壁」
「そして、クラルスは清浄の意味を持ってる。俺達は名前の意味を騎士の称号にしてるのさ」
「清浄の騎士・・・今の俺には重いな」
「強くなりたいか?」
「ああ!もちろんだ!!」
一夏の決意は固い。二人は少し笑みを浮かべた後、鈴を医務室へと運んだ。その医務室で政征は一夏に話をつけていた。
「一夏、大事な話がある。一緒に来てくれ」
「?分かった」
呼び出された場所はアリーナを指定し、すぐに訓練ができるようにしたのだろう。雄輔は通路の壁際で見守っている。
「なんだよ大事な話って?」
「ああ、シャナに告白した時、恋人が居るって言われただろ?」
「ん?ああ、言われたよ」
「その恋人ってのは俺の事なんだよ」
「!!マジなの・・か?」
「ああ、大マジだ」
「・・・・そっか」
一夏は震えている。自分の初恋の相手の恋人が目の前にいて、恋人である事を伝えられたのだから。
「幸せにって言いたい・・・言いたいけどよ!」
たった一発、政征へ拳を浴びせたが政征は避けなかった。自分達が居た世界の一夏ならば避けていただろう。
「っ・・・これがどんなに手を伸ばしても掴めないって事だ。それと、俺が何でお前からの鉄拳を受けたか分かるかい?」
「え?」
「その理由は俺が見せてやる」
そういって見守っていた雄輔が一夏へ近づき、サイトロンを使い、自分が居た世界の一夏の記憶を見せる。自分としても見せたくはないと思いつつも心を鬼にして。
◇
『俺だけの証を刻んでやる!』
『嫌!嫌やあああ!!誰か!誰かあああ!!』
「(なんだよ、これ・・・俺・・・なのか?シャナ=ミアさんを襲って無理やり犯そうとしてるのが)」
『シャナ=ミアさんは俺が・・・オレが守る人だ!お前なんかに相応しくない!俺のモノなんだアアアアア!!』
「(挙句の果てには逆恨みか・・・)」
全てを見せ終わると、一夏はその場に手を付いた。四つん這いの格好になり、汗を大量に流して今にも嘔吐しそうなのを堪えていた。
「っはぁ・・はぁ・・い、今のが・・・?」
「そうだ。俺達のいた世界のお前だ」
「見せたんだな?雄輔・・・俺達の世界の織斑一夏を」
「ああ」
「なんだよ・・・あれ。自分で自分を貶すようで気持ち悪いけど、最低のクズ野郎じゃねえか・・・好きな人が振り向かなかったからって、その横恋慕した相手を強姦しようとするなんて・・・!」
一夏は土を握り締めて歯を鳴らしていた。その顔には嫌悪感を顕にしている。
「この世界のお前は違う。あれは俺達が居た世界の事だ」
「お前ら、本当はどこから来たんだ?」
「並行世界さ、この世界と似てるようで違う世界」
「並行世界・・・」
「俺達の居た世界のお前は独善的だった。姉の力を盲信し、絶対の強者として、更にはシャナさんを自分が守ると言って聞かなかった」
「それで・・・自分のものにならないからって、シャナ=ミアさんを強姦しようとしたのか?別世界の俺は」
「その通り」
自分ではないにしろ別世界の自分に一夏は嫌悪した。だが、それ以上に騎士の二人とシャナから自分が避けられていたのかを理解していた。
「あんな事をしてれば俺じゃなくても警戒されるよな。それに守るといっても俺は何も出来てない・・・さっきだって俺は赤野を殴っちまった・・・」
「今のお前はクラルスに認められているだけだ。知識も技術も力も未熟なままだぞ?」
「うう・・・」
雄輔からの厳しい言葉に一夏は頭を垂れる。二人からの訓練をこなしているとはいえど、未だに基礎でダウンしてしまうのだ。
「だからこそ、必死に食い下がれよ。俺はお前を認めてるんだから、近衛騎士にはなれるかもしれないぞ」
「赤野・・・」
「俺もだ。もしも、俺達の居た世界と同じタイプだったら首を飛ばしていた」
「青葉・・・」
「だから、お前の拳を受け止めたんだ」
唇を少し切ったのか、政征は軽く流れていた血をハンカチを取り出し拭った。
「改めて俺を鍛えてくれ・・・俺を、俺を騎士にしてくれ!」
「わかった」
「改めてよろしくな」
◇
三人が改めて和解すると同時に、セシリア、鈴、箒の三人がアリーナへ入ってきた。三人はどこか眉間に皺を寄せかねない表情をしている。
「少しいい?って、政征!アンタ血が!!」
「何でもない、ところで用はなんだい?」
「え、ええ・・・春始の事なの」
鈴が話し始めたのは春始が最近になって、頻繁に絡んでくるようになったのだという。それはセシリア、箒も同じようだった。
「わたくしは食事の時が多いですわ」
「私は部活後に自主鍛錬している時だな」
「二人はまだマシじゃない、私なんか寮にまで来られたんだから。ドアのチェーン掛けてから出たけど」
話を聞いて政征、雄輔、一夏は最初に何故、この三人を狙うのかと考えた。政征と雄輔は春始が女喰いだと知っているが、方向性が分からないのだ。
「なるべく、団体で行動したほうがいいかも知れない・・・狙いは恐らく君達を手込めにする事かもしれないから」
「っ!?わたくし達を手篭めに・・・ですの!?」
「あくまで可能性の話だ。まだわからない」
「そのような事をアイツが?」
「ありえない話じゃないかもしれないわね・・・」
他の二人と違い、鈴は性的な目で春始に見られていた経験が有るために疑いが深くなっていた。
「まだ、決定的な証拠がある訳でもない。ひとまず団体で行動しよう。もしも一人になる場合はアリーナへ逃げ込むことだ」
「何故、アリーナなんだ?」
「アリーナなら広いし、大抵は俺達が鍛錬してるからな」
「なるほどな・・・」
「しかし、部活の時は?」
「まっすぐ来れば問題ないが念の為に危険を知らせられる物は持っておこう」
「そうね、それが一番」
全員が納得し、警戒を強めるよう促した後、解散となり二人だけが残った。
「女喰いは形振り構わなくなってきたようだな・・・」
「ああ、箒、セシリア、鈴、まだこの学園には来ていないが・・・シャルとラウラも間違いなく狙われる」
「ラウラは軍人だから、あまり問題ないが・・・もしも、他で力を蓄えてるとしたら」
「危ないな・・・俺達も今日から特訓の密度と量を上げよう。完全には無理だが、少しでも双首領に実力を近づけないと」
「そうだな」
二人は戦闘データ収集も含めて訓練を始めた。力を蓄えている間に春始に追い抜かれては本末転倒になる為であった。
◇
その頃、一夏は自室で並行世界の自分を思い返していた。別世界の自分とはいえど、間男紛いの事をしたうえ、強姦しようとしていたのが頭をよぎる。
「俺も・・・下手をすればやりそうになったのか?」
自問自答を繰り返しても答えは出ない。自分があのような卑劣で最低な事を起こすのではないかという恐怖に支配されている。
「俺は・・俺は違う!騎士になるって・・・アイツ等と一緒にシャナ=ミアさんを守るって決めたんだ!でも・・・」
一夏の中で引っかかっていたのは幼馴染の二人とそのうちの一人の姉の存在であった。幼い時共にいた存在と異国の人物でありながら仲良くしてくれた存在。
「俺も決めないといけない・・・ハッキリさせなきゃ傷つけるだけだ」
どちらが大切なのか、一夏は学園生活の中で自分が本当に守りたいと思える人を探そうと決心した。
自分が騎士となる、その第一歩のために。
騎士への第一歩を踏み出しました。
※騎士二人や一夏と鈴達が行っている特訓の詳細。
アップ&ストレッチ(二時間)
筋トレ各部700回×2(腹筋・背筋・腕立て伏せ)
ランニング(アリーナ内部を40週)
接近格闘訓練(実戦形式でIS無し)
遠距離射撃訓練(擬似ターゲットを10秒以内に最低200命中)
etc
篠ノ之箒(白の地球)の強化における能力覚醒(参考意見用)
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SEED因子
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イノベイター(純粋種)
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Xラウンダー
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念動力