Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~   作:アマゾンズ

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トーナメント乱入者。


千冬の試練


一夏が抱えていた物を爆発させる。


以上


表と裏の思い

クラス対抗戦。それは学園のイベントの一つであり、代表となった者はその技量を競い合う場でもある。

 

それが今宵、開催される。優勝賞品が目的な者もいれば、純粋に戦いを観たい者、機体の特性を知りたい者など多数だ。

 

政征、雄輔、シャナの三人はセシリアが確保してくれていたアリーナの観客席に座っていた。

 

「お二人はどう思います?今回の戦いを」

 

「経験値では鈴が上だろうね」

 

「織斑の兄貴の方がどれだけ粘れるかが鍵だろうな」

 

戦士としても試合というものは見ておくべきというのが、二人の持論である。試合の中で自分に立場を置き換えることで己の攻め方、守り方を組み立てる。

 

イメージトレーニングに過ぎないが、実際の戦闘での想定になる為、侮れない。

 

試合会場であるアリーナへ目を向けると春始と鈴が向かい合い、試合開始の合図を待っている。

 

「よう、鈴。まさかこんな形で戦う羽目になるなんてな」

 

「そうね・・・。アンタが相手だと思うと吐き気がするわよ」

 

「てめえ!まぁいいや、俺が勝ったらデートしてもらうぜ?」

 

「勝てるもんならね?」

 

鈴は目の前の相手と会話をしたくないと本気で考えていた。今ほど自分が女である事を忌避したい瞬間はない、女として見られるのはまだいい、しかし、ふしだらな視線を向けられるのは不快でしかない。

 

 

 

【織斑春始、戦闘用BGM【 VIOLENT BATTLE 】スパロボOGsより】

 

 

 

 

試合開始のブザーが鳴り、春始はまっさきに突撃する。その手には雪片弐式が握られていた。

 

「うおおおおおらあ!」

 

鈴は一本で受けようとしたが、嫌な予感を感じ取りすぐに青龍刀を二本手にし受け止めた。

 

「ぐっ!?(何よこれ!?コイツの剣、すごく重たい!!筋肉が付いている訳でもないのに!)」

 

「どうしたんだよ、震えてるぜ?(やはり、喰った分は増大してるな。これなら鈴は楽勝だ!)」

 

「いちいち、うるさいのよ!」

 

力の方向を逸らし、鈴は龍砲と呼ばれる衝撃砲を春始へ向かって放った。不意打ちであった為、その衝撃に直撃してしまう。

 

「ぐあああああ!っ・・今のは」

 

「今のはただのジャブよ(不味い、龍砲があるから良かったけどあんな剣、受け続けていられない!)」

 

鈴は春始の違和感に戦いの中で気づいていた。細腕にあんな剣力がある訳がないと。

 

 

 

 

 

 

 

「よう、みんな。試合はどうなってる?」

 

「一夏か、今は鈴は衝撃砲を使って間合いを取ったところだよ」

 

政征の左にある空席に座ると一夏は試合経過を聞いてきた。政征の右隣にはシャナが座っており、衝撃砲に関しての説明をすると再び試合に視線を戻す。

 

「鈴・・・・」

 

一夏は鈴が追い込まれていくのを見ていたが、自分勝手に飛び出すことはなかった。これはクラス代表戦、代表に選ばれた者以外は踏み込めない戦いの場だ。

 

 

 

 

 

 

「ほらほら、どうしたんだよ!鈴!!」

 

「くっ!」

 

鈴は攻めから回避に専念するようになってしまった。衝撃砲の発射の瞬間を見破られ、力の増した一撃を受ける訳にはいかなくなっていたからだ。

 

「(別世界の私なら簡単に勝てたかもしれない、けど!)」

 

「隙ありィィィ!!」

 

青龍刀を弾かれ、鈴はそのまま春始からの一撃をそのままくらってしまう。

 

「きゃああああああ!!」

 

「さぁ・・次で終わりにしてやるよ!(これで勝てば鈴を喰える!!)」

 

零落白夜ではなく、通常の斬撃であったために絶対防御で緩和されたが、力の増した一撃の衝撃は緩和されていなかった。

 

「うう・・・(ヤバ・・利き腕が痺れて動かない。けど、これで負けたら間違いなく私は・・・こんな奴の慰み物になるなんて絶対に嫌!)」

 

零落白夜を発動し、鈴にトドメを刺そうととした瞬間、アリーナの天井が破壊され何かが現れる。

 

その姿は青に統一され、禍々しく威圧感の伴う物であった。左手に握られた剣、ディバイン・アーム。強固な装甲を表すフレキシブル・アームを搭載した背部ユニット。

 

姿を見れば戦意がないものは萎縮し、戦う気力を奪ってしまうほどのものが現れたのだ。

 

「あれは!まさか・・・!」

 

「きゅ・・・究極ロボの異名を持つ機体!!」

 

政征と雄輔は一瞬だけ我を忘れるが、急いで声を荒らげた。自分達が知っている出来事ならばこの後、間違いなくパニックを起こす為だ。

 

「みんな!落ち着いて扉へ向かうんだ!!」

 

「絶対に走るな!逃げたい気持ちはわかるが、走ったら転んで逆に怪我を負うぞ!」

 

パニックになりかけていた観客の生徒達は一部は落ち着いて避難を始めていたが、我先にと逃げ出す者も少なからずにいた。

 

我先に逃げた生徒は扉が開かないと喚いており、パニックが広がるのも時間の問題であった。

 

「セシリア、避難誘導を頼む。俺と政征は織斑先生達に連絡する!」

 

「は、はい!」

 

雄輔の指示を聞いたセシリアはすぐに行動に移し、政征は連絡を教員がいる部屋に繋げた。

 

「織斑先生!フー=ルー先生!山田先生!緊急事態です!あのアンノウンからのハッキング電波で扉が開きません!!避難経路確保の為に扉の破壊を許可してください!!」

 

政征からの通信を受けた真耶が指示を仰ぐために千冬とフー=ルーを見る。

 

「お、織斑先生・・・」

 

「赤野、破壊は許可できん。迎撃をアリーナの二人に任せる」

 

「!!何を言ってるんだ、アンタは!!唯でさえ、試合でエネルギーが少ないのに迎撃が出来る訳ないだろう!!」

 

「私が決めた事だ、指示に従え。それに春始なら勝てる」

 

「何の根拠があって、勝てると言ってるんだ!?」

 

政征は現状を理解出来ていないこの世界の千冬に噛み付いた。だが、それを制したのがフー=ルーであった。

 

「落ち着いて、扉の破壊は私が責任を取って報告します。ですから、思い切りやりなさい」

 

「フー=ルー先生、余計な指示を出さないでもらいたい!」

 

「貴女こそ何をおっしゃっていますの?生徒を危険な場所に放置しておくなど愚の骨頂。この状況は戦闘よりも避難経路の確保が最優先ですわ!」

 

「む・・・・しかし」

 

「建物は直せても、失った命は戻りませんのよ?それを冷静になって考えてください、織斑先生。政征君!急いで扉を破壊しなさい!」

 

「御意!!」

 

フー=ルーからの指示を改めて受けた政征は一夏と雄輔に通信を繋ぎ、説明する。

 

「一夏、雄輔!扉の破壊許可が出た!思いっきりぶっ壊せ!!」

 

「分かった!」

 

「了解・・・!」

 

一夏と雄輔はそれぞれラフトクランズ・クラルスと量産型シュテルンMk-II改を身に纏い、避難しようとする生徒達が集まっている扉へ向かう。

 

「みんな、退いてくれ!」

 

「俺達が扉を壊す!」

 

「オルゴン・クロー!!」

 

「ステーク・セット!ジェット・マグナム!」

 

そう言って一夏はクラルスのシールドクローを構え、クローモードに切り替えるとオルゴン・クローで扉を引き裂くように破壊し、雄輔はジェット・マグナムを撃ち込み、扉を吹き飛ばした。

 

破壊された扉から生徒達が避難を始め、セシリアとシャナ、そして何故か箒が避難指示を出しながら誘導していた。

 

「こちらですわ、慌てず避難してください!!」

 

「いいか!早足で避難しろ!走るんじゃないぞ!」

 

「大丈夫です、落ち着いてください!」

 

観客全員を避難させると、セシリア、シャナ、箒はアリーナの中心へと視線を向ける。そこでは回避行動を続ける鈴と無謀に向かっていく春始が見えていた。

 

 

 

 

 

 

【推奨BGM【ヴァルシオン】スパロボOGsより】

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・ちくしょう!なんで通用しないんだよ!うおおおおお!!(これ、ヴァルシオンか!?なんでこれが)」

 

「も、もう・・・限界よ(春始の奴!射線上に入って邪魔ばかり、龍砲を撃つ事ができないじゃない!)」

 

鈴は想像以上に消耗していた。無謀な突撃を繰り返す春始のフォロー、敵からの攻撃に対する回避行動、反撃時には射線上に春始が入ってくるので攻撃が出来ない事への苛立ち。

 

そこへ謎の青い特機型のISは鈴に照準を向け、左腕の手の甲から、赤と青のビームが螺旋状にチャージされると同時に発射され向かっていく。

 

「クロスマッシャー・・・発射」

 

「鈴!(ここで鈴を死なせたら、抱けねえじゃねえか!)」

 

肉欲だけを考えている春始は鈴を守り、切っ掛けを作る事で貪ろうと考えていたが、それ以上に早く鈴を守った二人の騎士が居た。

 

「ぐううう!オルゴン・クラウドS!発動!!」

 

「ぬうっ!この武装、クロスマッシャーか!やはりヴァルシオン!!」

 

「一夏、政征!!」

 

鈴を守ったのは清浄の騎士の称号を持つ一夏と自由の騎士である政征であった。量産型シュテルンMk-II改を支えに、クラルスのクローシールドとオルゴン・クラウドSは完全にクロスマッシャーを受けきった。

 

「鈴、無事か!?」

 

「間に合ってよかった・・・!」

 

「ありがとう、二人共!」

 

鈴が礼を言っていると春始が二人に因縁をつけ、声を荒らげて来る。

 

「おい!何、邪魔をしてんだよ!鈴は俺が助けようとしてたのに!」

 

「春始兄、突撃ばかりしてて鈴を助ける余裕なんかあったのかよ?」

 

「んだとぉ!?てめえ!!」

 

「言い争っている場合か!!来るぞ!!」

 

雄輔も合流し、ヴァルシオンである事を予想した二人の騎士は身構える。だが、連携などお構いなしに春始は再びヴァルシオンへ向かっていく。

 

「お前らはそこで見てろ!零落白夜ァ!!」

 

エネルギー状となった刃はヴァルシオンの防御フィールドを切り裂き、届いたかに見えたが僅かに装甲を傷つけただけであった。

 

その筈、白式のエネルギーは限界寸前近くになっていたのだ。ヴァルシオンは反撃体制を取ると四つのモノアイを点滅させ、重力波による竜巻を引き起こし始める。

 

それは春始だけを狙っており、周りは吹き飛ばされないように支えあっている。

 

「・・・・受ケヨ、メガ・グラビトンウェーブ」

 

近くまで引き寄せられた白式は、爆発した時に発生する強力なエネルギー波を叩き込まれた。

 

「うわああああ!ぐぎゃああああああああああ!?」

 

絶対防御によって春始は守られていたが、地面に叩きつけられると同時に白式は解除され、春始は気を失った。

 

「春始兄!!」

 

「無謀が過ぎるぞ!!」

 

「鈴、織斑春始を回収して撤退するのだ!早く!!」

 

「うん!頼んだわよ!三人共!!」

 

鈴は荷物でも抱えるかのように春始を回収すると急いでピットの中へと撤退していった。ヴァルシオンはクロスマッシャーを連発で放ってきており、時折体当たりも仕掛けてくるが三人はそれを回避し、一箇所に固まる。

 

「さて、どうする?政征。相手は究極ロボ、ヴァルシオンだぞ?」

 

「せめてもの救いはあれが量産タイプだという事、それならば倒せるはず」

 

「ま、待ってくれ!ヴァルシオンって名前なのは分かったけど、あんな奴倒せるのかよ!?それと二人だけで納得しないでくれ!!」

 

一夏の疑問は最もだ。二人は知識がある故に対策も出来るが一夏とっては未知の相手なのだから。

 

「すまなかった。あのヴァルシオンと呼んだ機体の色が青いだろう?あれは量産機なんだよ、メガ・グラビトンウェーブが使えるように改修されてるみたいだが」

 

「あんな化物が量産機なのかよ!?」

 

「当然の反応だな。だが、赤い方だと生半可な攻撃を無効化するフィールドがある。しかし、量産機なら光学兵器を無効化する事しかできない」

 

「つまり、俺達の攻撃は通用するって事か?」

 

「その通り、行くぞ!」

 

ラフトクランズ・クラルスと二機の量産型シュテルンMk-II改はヴァルシオンを翻弄しながら、オルゴンソードやシシオウ・ブレードでダメージを与えていく。ヴァルシオンからすれば大した攻撃ではないが、蓄積されていくダメージには抗えない。

 

「いやに機械的だ・・・もしかしたら!?政征、雄輔!もしかしたらこのヴァルシオンって機体、無人機じゃないか?」

 

「そのようだな、動きが単調すぎる。遠慮なく破壊するぞ!」

 

「ああ!」

 

「わ、分かった!」

 

無人機と知った瞬間、政征と雄輔は情け容赦のない攻撃を連携で加えていく。政征は本来、得意とする剣を使い、シシオウ・ブレードで連撃にて何度も切り刻み、雄輔はフー=ルーに鍛え上げられた射撃の腕を活かし、ツイン・マグナライフルを連発で発射していた。

 

「一夏、今だ!」

 

「仕上げはお前に任せる!」

 

「おう!!オルゴンキャノン展開!ヴォーダの闇に抱かれろ!!」

 

クラルスの胸部砲口と肩にあるユニットが砲台となり、巨大なオルゴンエネルギーがヴァルシオンへと向かい、飲み込んだ。

 

AIの中枢を破壊されたのか、ヴァルシオンはその場で動かなくなり、機体だけが残った。

 

「三人共、よくやりました。機体回収は教員部隊に任せて報告に来てください」

 

「「「御意」」」

 

フー=ルーからの通信を受けた三人の騎士はアリーナから出て行き、観客席に居たセシリアと箒も出ていく。

 

 

 

 

 

回収されたヴァルシオンは解析に回され、過去のデータを照らし合わせても何もなく。またISコアは未知のものであると判明した。

 

「織斑先生、フー=ルー先生、撃墜した機体の解析は完了しました。ですが該当データは無いそうです」

 

「そうか・・・(この機体のデータで白式を強化できるか、束に聞いてみるか?)」

 

「・・・・・」

 

この世界の千冬に対する予想が当たっていた事にフー=ルーは肩を落としていた。やはり、一方の弟しか見ていなく、気にかけていても必要最低限だ。

 

このままでは良くないと解析が進む機体を横目に裏から千冬を変えていこうとフー=ルーは思った。

 

 

 

 

 

 

【推奨BGM【戦火の狭間で】スパロボOGsより】

 

 

 

その頃、アリーナで避難誘導や戦いをしていたメンバーは保健室にて手当をしていた。春始は保健の教諭が担当した為、鈴の手当ては騎士達が行っている。

 

「痛たた・・・」

 

「よし、消毒は終わった。後は包帯を巻いておけば大丈夫だろう」

 

「ありがとう」

 

過酸化水素水、所謂オキシドールで消毒を済ませ、傷薬となる軟膏を塗りガーゼを当てて包帯を巻き終える。

 

「春始はどうするのだ?」

 

「絶対防御があったとはいえど、メガ・グラビトンウェーブの直撃を受けたんだ。しばらくは起きないだろう」

 

「絶対防御がある故に危険はない・・・その考えを見事に打ち砕かれましたわ」

 

セシリアの言葉に鈴と箒も頷く。絶対防御の安全性、それによって死ぬ事はないという考えが何処かにあったのだろう。

 

だが、今回の戦いで絶対防御が必ずしも操縦者を完全に守る訳ではないと目撃してしまった事によりISに対する考えを改めるようになった。

 

「やはり、わたくし達自身が強くなる他はありませんわね」

 

「そうだな、皮肉だが春始のおかげで絶対防御に関する考えを改められたという事か・・・」

 

「そうね・・・」

 

セシリア、箒、鈴の三人がしんみりとする中、政征が声をかける。

 

「しんみりしている所で悪いけど、傷の手当てが終わったならばすぐに会議室に来てくれだってさ」

 

「大方、アリーナの事でしょうね」

 

「行きましょう」

 

「ああ」

 

保健室に残された春始以外のメンバーは会議室へと向かう。あまり乗り気でないのが一夏であった。

 

 

 

 

【推奨BGM【静寂と動乱】スパロボOGsより】

 

 

会議室へ入ると担任である織斑千冬、副担任の山田真耶、そして三組の副担任であり、臨時指揮官を務めたフー=ルー、そして学園長である轡木十蔵が中心に座っている。

 

「揃いましたね、一人は怪我のために仕方ありませんが。それでは本題にあの機体に関してです」

 

「はい。学園を襲撃してきたアンノウンは解析の結果、特機型、つまり重装甲、重火力に重きを置いているISだとわかりました」

 

「コアの方は所属不明であり、何も手がかりは出ませんでした」

 

「ふむ、不明機に関して何か意見はありますか?」

 

十蔵が周りを見渡すと政征と雄輔が挙手していた。それを見た轡木十蔵はどうぞといった仕草をし、それを見た二人は立ち上がると発言する。

 

「あくまで仮説があるという事を前提でお聞き願います。あの特機の名前はヴァルシオン、別名・・・究極ロボとも言われる機体をモデルにした物かと」

 

「究極ロボだと?そんな事は聞いた事がないぞ?」

 

「ですから仮説ですよ。この時世、違法研究所や違法工場があっても不思議ではありませんからね」

 

「そこで開発された可能性があるとおっしゃりたいのですか?」

 

「確証がある訳ではありませんので・・・なんとも」

 

二人が発言を終えると同時に千冬がある疑問を二人にぶつける。

 

「では、お前達は何故あのISの名称を知っていた?事と次第によれば・・・」

 

「アシュアリー・クロイツェル社での機体の勉学時に見せてもらったんですよ、あまりに鈍重なので見送られたそうですが、クラッキングの可能性も無いとは言えません」

 

「なるほどな・・・(上手く躱されたか)」

 

雄輔の発言で自分達には何もないという実証を出されてしまった。この世界のアシュアリー・クロイツェル社も世界的に有名であるために問い合わせれば直ぐに答えは来てしまうだろう。

 

「機体の方はよろしいとして・・・。避難誘導をセシリアさん、篠ノ之さん、シャナ=ミアさん、そして惹きつけ役を担当した凰さんには私からお礼を申し上げます。」

 

学園長直々に頭を下げられ、三人は困惑するがセシリアが代表して冷静に返答した。

 

「わたくし達が出来る事を最大限に行っただけですので」

 

「セシリアさんの言うとおりです。学園長」

 

「二人と同じです、やれる事を」

 

「私もです」

 

「それでも、私からの感謝です。ありがとうございます」

 

ここまで言われては受け取るしかない。それと同時に問題点に関して論点に当てられる。

 

「本来、織斑教諭が持つ、命令系統を無視してでのフー=ルー教諭の独断に関してですが」

 

室内に緊張が走る。だが、フー=ルーは仕方のない事だと受け入れている様子だ。

 

「生徒の安全性、避難経路の確保、破壊命令を考慮に入れて二ヶ月間の減俸処置とします」

 

「え?」

 

それは思っていたよりも軽い罰であった。本来、指揮系統の権限を持つ者からの命令を無視してでの独断は非常に重く、解雇、軽くても謹慎処分が下されてもおかしくはないのである。

 

「生徒に誰一人として怪我人を出していない、生徒の避難経路確保の為の大局を見る冷静な判断力を考慮に入れてでの私の判断です。不服ですかな?」

 

「いえ、寛大な処置をありがとうございます」

 

「では、これにて会議を終わります」

 

 

 

 

 

「一夏」

 

会議室から全員が出て行く寸前に千冬が一夏を呼び止めた。何か話をしたい様子でこちらを見ている。

 

「なんですか?織斑先生」

 

「お前と話がしたいのだが、いいか?」

 

「良いですけど、政征と雄輔を連れてなら」

 

一夏からの条件に千冬は仕方なく条件を飲み、応接室の方へ移動する。

 

「それで、話とは?」

 

「単刀直入言おう、お前の機体を預かりたい」

 

「はぁ?」

 

「白式を強化するためにだ、兄弟として力を貸してくれないか?ラフトクランズのデータを」

 

逸早く異変に気づいた二人の騎士が一夏を止めた。殴りかかりそうになるのを左右から押さえ込んだのだ。それでも感情的になり、怒りを抑えられない一夏は二人を振り解こうともがき続ける。

 

 

 

「ふざけんじゃねえ!!この、クソ姉貴がァ!!」

 

 

 

それは、今まで生きてきた中で初めて姉に対する反抗と鬱憤が入り混じった本当の一夏の感情であった。

 

「一夏、落ち着くんだ!」

 

「落ち着け!織斑!!」

 

「いつもいつも調子良い時だけ、姉貴面しやがって!相談した時はお前なら出来るの一言で片付けてきた癖によ!!」

 

「そ、それは・・・お前なら乗り越えられると信じたからで」

 

「俺はアンタじゃねえんだよ!近所ではアンタや兄貴の腰巾着扱い!勉学でも運動でも剣道でも、良い成績を残せば[出来て当たり前]で片付けられる!」

 

本心を叫び続ける一夏の言葉は一言一言がまるで矢の雨のように千冬へ降りかかり、心へと刺さっていく。

 

「両親が居なくなったから忙しかったのも理解していた!だがな、アンタは兄貴だけにしか「良くやったな、偉いぞ」と褒めてなかったんだよ!」

 

「あっ!!」

 

それは二人が幼少期の頃まで遡る。一夏は会心の出来だと思い千冬の似顔絵を見せに行った。だが、千冬から返ってきた返答は「このくらい春始は出来るぞ」という幼少の子供にとっては突き放しにも似た言葉だった。

 

春始は工作で本入れを作って持ってきた時には、一夏が言った「良くやったな、偉いぞ」と褒めていたのだ。

 

「あ・・・ああ、あれは・・・お前を」

 

「言い訳なんか聞きたくねえよ!あの時、助けて貰った事は感謝してる!だが、ラフトクランズ・クラルスは渡さない!これは俺が初めて手にした俺だけの宝だ!初めて俺自身を見てくれた人達との絆だからだ!!!」

 

「それにな、俺が不良にならずに済んだのは鈴や箒、束さん。そして弾や厳さん達のおかげなんだよ!」

 

「あ・・あああっ」

 

「そんなに春始兄の白式を強化したいなら、何処かの研究所とかに頼めばいいだろ!俺に縋り付くな!!」

 

言いたい事を言い終えて一夏は大人しくなった。だが、千冬はショックのあまり言葉を発せずにいる。

 

「行こうぜ、政征!雄輔!」

 

「お、おい!織斑!?」

 

雄輔は出て行った一夏を追いかけ、政征は千冬に声をかける。それは第三者からの鋭い意見で・・・・。

 

「織斑先生、幼少時代に突き放して、兄の方を優遇していたのですか?」

 

「否定・・出来ん。私は一夏が這い上がってくると信じた故に言ったのだが・・・」

 

「それは年端も行かない三歳児に、富士山山頂まで一人で登って来いと家族から言われたようなものですよ?」

 

「な・・・!」

 

「叱咤激励はある程度の年齢にならないと効果はありません。そう、自意識が芽生えて年月が経たないと」

 

千冬は床に手を着け、今にも泣きそうな表情で政征を見ている。まるで迷子の子犬のように。

 

「私は・・・どうすればいいのだ!?」

 

「ヒントは、一から一夏との関係をやり直す事。それと、俺よりもフー=ルー先生に頼ってみたらどうですか?きっと助けてくれますよ」

 

そういって政征も部屋を出て行って一夏達を追いかける。一人残された千冬は後悔の涙を流し、何度も「すまない・・・すまない一夏」と泣きながらつぶやいていた。

 

 

 

 

 

 

一夏は屋上で風景を眺めていた。感情的になり、つい思っていたこと全てを吐き出してしまった後悔があったからだ。

 

「何やってんだよ・・・俺」

 

「ここにいたのか?」

 

「探したんだぞ?」

 

「雄輔・・・政征・・・」

 

二人は左右に並ぶように屋上の手摺に手をかけ、話しかける。

 

「怒りに任せて本音を吐き出した事を後悔してるのか?」

 

「ああ、俺さ、褒めてもらいたかったんだよ・・・・千冬姉に。でも、いっつも褒められるのは春始兄だけでさ」

 

怒りが冷めた一夏は二人にポツリポツリと話し始める。話す事で一夏自身も気が楽になると思ったからだ。

 

「だから、許せなくなってたんだよ・・・誰も俺自身を見てくれないって・・・お前達と出会う前に俺自身を見てくれてたのは友人とその両親だったんだ」

 

「そうか、良い人と出会えてたんだんだな?」

 

「でも、やっぱり何処か一歩引かれてたんだ。そんな時だったよお前達に会えたのは」

 

そう言いながら待機状態となっているラフトクランズ・クラルスに視線を落とす。

 

「これは・・・これだけは春始兄だけには渡さない。俺自身を見てくれた人との思い出が詰まってるから。悪い、愚痴っちまって」

 

「良いんじゃないのか?たまには本音をぶつけなきゃ、いつまで経っても人形みたくなるんだからな」

 

「そうだな、気持ちの押しつけだけをされてたんだ。物事をハッキリ言えただけでも儲け物だろう?」

 

「・・・・そうだな」

 

「よし、教室へ戻ろうぜ?授業が終われば昼飯だからな!」

 

「今日は三人でステーキなんかどうだ?」

 

「良いな!あ、でも俺・・・お金が・・・」

 

「俺達が出しといてやるよ」

 

「祝い品だと思ってくれ」

 

「!ありがとな!!」

 

三人は屋上のから教室へと戻り、授業を受けた。その日の昼食は全員楽しく学生らしい食事風景であった。




今回は千冬へのアンチが強まってしまった回になってしまいました(猛省)

でも、この世界の一夏はこれだけ比べられて育ってきたのだと伝われば幸いです。

今まで手の掛からなかった春始ばかりを僅かに優遇していた千冬にとっては試練です。

ですが、アンチにはしません、関係修復も行います。


では!また、次回!!

篠ノ之箒(白の地球)の強化における能力覚醒(参考意見用)

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