Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~ 作:アマゾンズ
一夏は越えなかった。
大きすぎる借り。
以上
「うああああああああああああああ!がはっ!!」
暴走した春始は放送室へ突撃しようとしたが、一夏がそれを飛び蹴りで阻止した。
「春始兄、この喧嘩で決着つけようじゃねえか・・・俺もあの二人のように背負う覚悟が出来たからな」
その言葉に反応したのか、一夏の背にも何かが浮かび上がってくる。浮かび上がってきたのは霊獣の麒麟であった。
一夏の背に麒麟が浮かび上がったのは、一夏が持つ優しさと必要であれば流血を厭わない戦いをする覚悟を決めた証だろう。
「ほう、一夏チャンも覚悟を決めたらしいなぁ・・・。ぶちのめしたい所やが、譲ったるわ。その代わり相手してもらうで?雄輔!」
「やれやれ、それならとことんやってやるよ!政征!!」
再び喧嘩が始まってしまうが、それ以上に春始の行いを放送している事が観客にとって大事件であった。
『つまり、身体を許してしまったと?』
『はい・・・』
音声加工はしてあるが、立派な証言となっているため隠し通すことはできない。この放送を聞いた千冬は、倒れそうになるくらいのショックを受けてしまっていた。
◇
「い、一夏・・・てめえ!」
「ISなんかじゃケリはつけられねえ、俺は素手でも勝ってやる!」
「上等だあああああ!!」
一夏は春始からのパンチを受けるが、応えた様子は無い。むしろ、あまりの軽さに苛立ちを覚えていた。
「軽ィ・・・軽すぎんだよぉ!オラァ!!」
「がはっ!?」
一夏はアッパーを一発、春始の顎へと命中させた。その重さは昔の一夏からは考えられないほど重い一撃だ。なんとか春始は立ち上がるが、足が震え始める。
「てめえは小さい時から俺の事をなぶり続けてたよなぁ・・・ああ?」
今度は大振りのストレートパンチを浴びせる。春始なら簡単に避けられる動きだが、足に来ていてそのまま殴られてしまう。
「げあっ!」
「都合よく隠して、千冬姉には仲の良いように装い、勝手に引き立て役にしてたよなぁ?なぁ!!」
普段の一夏からは考えられない程のキレっぷりに観客席に座っている箒達も驚いていた。
「うおお!オラぁ!」
今度は髪の毛を掴み、そのまま殴り飛ばす。もはや、若者の喧嘩ではなく筋者の喧嘩のやり方に変わってきている。
「うごっ!て、めえ・・・調子に乗るんじゃねえ!!」
「ぐはっ!」
春始は怨恨の篭ったパンチで一夏を殴ると頭を掴み、膝蹴りで何度も腹部を蹴り続ける。
「ぐっ!ぐう!」
「てめえが!俺以上に!なる事が!あっちゃならねえんだよ!ハーレムを作るのも!主人公なのも!この俺だ!!」
「ぐっ!何を訳の分からない事、言ってんだよォ!」
「ぐはっ!?」
左のフックパンチを食らわせ、追撃を逃れるとフラフラしながらも構えを取った。一夏は根は優しいが、やはり男の本能、闘争心を持っていたのかこの喧嘩を本気で楽しみ始めている。
「どうしたんだよ、ビビってんのか?来いよ」
「う・・ううう」
春始は一夏から溢れる闘気に当てられていた。今まで各下だと思っていた相手が自分を越えようとしている現実を知ってしまった。
その意思は生半可なものではない、本当の信念を持った男に成長した一夏に対して恐怖も抱いた。一歩たじろいだ瞬間、政征とぶつかってしまう。
「ええとこで、喧嘩の邪魔すんなや!ボケがァァァ!!」
「ぐわっ!」
ドスは使わず、勢いのある蹴りだけで政征は春始を一夏の近くへと飛ばした。確認した後、奇声に近い声を上げながら雄輔へと向かっていくが、カウンターで投げ飛ばされていた。
「(な、なんだよ・・・コイツ等、たかが喧嘩に此処までマジになって、頭おかしいだろ!!)」
一歩一歩、一夏が近づいてくる。雄輔と政征が戦っている余波で切りつけられたりはしているが、それすら意に介していない。
「あ・・・ああ・・く、来るんじゃねええ!!!」
「俺はよ、政征が本気で切れた時のレベルで腹が立ってんだ。春始兄、自分が殴るのは良いが殴られるのは嫌だって理屈は通らねえよ」
春始にとって三人は狂人に見えていた。春始にとっての喧嘩とは憂さ晴らしと同様だ。だが、この三人は違う。喧嘩に命をかけ、己の信念をぶつける手段にしている。
それが春始にとって狂っているように見えるのだ。喧嘩に命を懸けるなど馬鹿げていると。
「どうしたんだよ?今更、泣きごいか?俺の時は聞く耳を持たなかった癖によ・・・」
初めて聞くドスの聞いた一夏の低い声に春始は益々、震え上がった。逃げようとしても膝が笑っていて逃げることができない。
「あの時みたいに言ってみろよ。お前は俺の奴隷なんだからなってよ・・・なぁ、なぁ!」
「う・・・あああ・・」
春始の髪の毛を掴み、引き寄せて凄みを利かせる一夏に怯えたような声しか出せない。
「男なら最後まで意地張ってみせろってんだよ!」
容赦のない一夏のストレートパンチが顔面に入り、春始はうつ伏せに倒れる。それでも、意地があるのか倒れようとしない。
「天才の俺を、舐めるなァァ!」
春始は自信の篭ったパンチを放ったが、それを一夏は頭突きで返すように受け止めた。
「ぐああああ!?こ、拳割り・・・だと?」
「ふん」
拳を砕かれた春始は砕かれた手の手首を押さえながら、膝をついた。
「たった一つの優しさだけは感謝してたさ・・・もう、覚えてないだろうけどよ」
「な、何を。ぐはっ!」
一夏は春始からマウントを取ると重みのあるパンチを一発ずつ繰り出し始めた。
「うあああああ!うらぁ!」
「ぐぶっ!がはっ!」
一発一発、殴る度に一夏の拳に血が付着していく。長年の憎しみと怒りが篭っている拳は振り下ろされるのが止まる事はない。
「はぁ・・・・はぁ・・・!ううあああああ!!」
「あ・・・・が・・・」
本気で殺すつもりで繰り出したパンチが届く前に、二つの影が一夏にタックルをしていた。それは傷だらけになった政征と雄輔であった。
「何をやってんだ、バカ野郎!」
「勝手に、越えようとするな!その一線を越えたら、二度と戻ってこられなくなるぞ・・・!こいつを殺したところで何になるってんだ!!」
「政征、雄輔・・・・」
自分の行動を戒めてくれた二人に一夏は怒りが急速に冷めていった。それと同時に自分が怒りに我を忘れていたのだと自覚していく。
「先走るなよ・・・いつか、最後の一線を越えなきゃならない時が来れば、俺達も一緒に越えてやる!」
「だから、踏み止まれ・・・!」
「ウゼえんだよ・・・お前ら・・・」
三人が振り返るとそこには白式を纏った春始が零落白夜を発動しようと、雪片弐式を手にしていた。
「もう、許さねえ・・・お前ら全員死ねええええええええ!!」
「っ!!」
ボコボコにされた事を恨み、春始は零落白夜を発動させ距離が近い一夏へと振り下ろした。だが、その光の刃が届く前に春始は向かい側の壁に激突し倒れていた。
「ぐべらぁぁ!?」
その理由はアリーナの観客席にあった。エキシビジョンであり、ISを使わず生身で戦っていた事もあってシールドバリアは張られていなかった。
それが功をそうし、アリーナへ侵入した鈴が背後から衝撃砲を春始へ放ったのだ。鈴はすぐにISを解除し一夏へ近づくと、持っていたハンカチで拳を拭い始めた。
「貸し一つね。それにあの二人に感謝しなさいよ?アンタが人殺しになりそうになったのを、止めてくれたんだから」
鈴の指摘は最もだった。一夏が振り返ると二人は背中を向けて座っていた。その背にはハッキリと、天へ昇る応龍と中心に座す黄龍が覚悟を示すかのように浮かび上がったままであった。
「今のあの二人は・・・・・龍騎士か、デカイ借りが出来ちまったなぁ」
そう、つぶやくが一夏の背にも浮かび上がった麒麟も二人と同じく、覚悟を示すかのように背中に浮かび続けていた。
「(応龍に黄龍・・・そして麒麟・・・これは一面トップね)」
◇
その後、トーナメントは滞りなく行われたが、データ収集のための一回戦のみとなってしまった。それでも、戦いは白熱していたが観客はもの当たりなさを感じている。
理由は男性操縦者達が始めた喧嘩にあった。今の時代では犯罪ともいわれるほどの喧嘩を生で観てしまったのだ。映像中継の格闘技でも、何でもない原始的なぶつかり合いを。
女性でありながらも戦闘狂、血を見るのが好きな者などもおり、ISの試合は綺麗すぎて退屈にしか映らなくなってしまっていた。
男は弱者・・・。今の常識を覆す出来事を目撃したIS学園の生徒達は恐怖もあった。もしも、ISを使わず男と戦えと言われたらどうなるか?
普段から軍事レベルの訓練や格闘技、護身術などを嗜んでいれば勝てるかも知れない。だが、生徒の全てが嗜んでいる訳ではない。
ISという武器がなくなれば生身で勝負するしかない。体格、筋力、スタミナ、速さ、どれもが男に及ばないとなればどうなってしまうか。
それを考えるだけでも恐怖でしかなかった。
◇
「くそっ!出せよ!ここから出せええええ!」
春始はVTシステムの事件とエキシビジョンが終了したと同時に特別監禁独房へと移されていた。自分の行ってきた不祥事が放送によって明るみにされ、白式は没収。処遇が決まるまでは出ることは許されない。
苛立ちを隠せず、鉄格子をガタガタと揺らす。自分の計画が完璧ならば原作通りのハーレムができるはずだと思っていたが、結果は独房という現実。
更には狙っていたヒロイン全員と姦通する事が出来ずじまい。予定では全員が自分の子供を宿しているはずだった。
全員が自分の物になった時を見計らって一夏を完全に抹消するはずが、全ての計画を達成する前に潰された。原因はあの二人だった。
「俺のハーレム計画を邪魔したあいつら殺してやる・・・!必ずぶっ殺してやる!待ってろよ!!赤野政征!青葉雄輔!!」
恨みの声は誰にも届くことはなく、響き渡るだけであった。
◇
その頃、アシュアリー・クロイツェル社に買い取られた白式はコアのみを取り替えられ、返却するための作業を行っていた。
「お帰り、白騎士・・・辛かったよね」
束は丁寧に取り出された白式のコアに触れながら謝罪していた。まるでDVをする男を見抜けずに娘を嫁がせてしまった母親のようだ。
「コアの取り付けは慎重にね~?」
白式に搭載することになったコアは束が新たに作り上げた
零落白夜に関しては使用できるよう、コピーデータをインプットしておき、最後の情けとして
「白式は返却されるよ・・・君の元にね・・・安心しなよ?」
束の両頬にはまるでフューリーの顔にあるような紋様が怒りと共に、明確な怒りが宿っていた。手には白式のコアを握ったまま・・・。
「白式のコア・・・君には馬を手懐けてもらうよ?角を持った一頭の馬をね・・・・そろそろ、二機のラフトクランズのオーバーホールも終わるし」
2体のラフトクランズは早く主人のもとへ、行きたいと内部にある意思は訴えかけていた。ラフトクランズ達は内部にあるシステムが新たに変化させており、それは騎士として更に上へ行く進化の前触れだろう。
主人達が得た龍の力を受け入れようと器を用意しために一秒でも二秒でも早く、会いたいと気持ちだけはよく分かるつもりではある。
今はまだ、その時ではないと束は優しく説得して、二人を安堵させたのであった。
背中にあるのは刺青じゃありません。
もう学園にはいられない春始、
次回・・揺れる心の錬金術師。
春始がスパロボに出てくるアインストの女と接触?
次回で!
篠ノ之箒(白の地球)の強化における能力覚醒(参考意見用)
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SEED因子
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イノベイター(純粋種)
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Xラウンダー
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念動力