Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~ 作:アマゾンズ
上層部達の裏工作によって女の敵が復帰する
ある女の子が振られる。
以上
薄らと目を開き、白い天井が見える。周りを見渡すと男性三人が誰かに説教を受けている様子が見えた。
彼らの背中が視界に入り、二匹の龍と麒麟が浮かび上がってるように見えた。
「私は・・・」
「目が覚めたか?ラウラ」
「教官?」
三人に説教を終えた千冬は、ラウラが目覚めた事に気づき、近づいてくる。
その目は自分が知っている千冬とは違い、何処か優しげで疲れきっているようにも見える。
起き上がろうとするが、全身に激しい痛みが走り、動くことができない。千冬は起き上がろうとするのを制するように首を横に振った。
「全身疲労に筋肉痛、ISに取り込まれた影響で筋が切れかかっている。無理して動くな」
「取り込まれた?」
「ああ、お前の機体にVTシステムが搭載されていたのだ。巧妙に隠されてはいたが、恐らく・・・破壊されるのを恐れた機体自身が危機回避の為に発動したのだろう」
「そんな事が・・・」
「今現在、調査を依頼しているが大した事にはならないだろう。赤野と青葉がそういった関係の知り合いが居るそうだから頼んでみるとの事だ」
「・・・・」
ラウラは信じられない思いで一杯であった。あんなにも憧れた織斑千冬という存在が小さく、ちっぽけに見える。それでも憧れた事は事実であり、責めるつもりもなかった。
居場所であった軍に裏切られ、憧れた人物は弱い存在であった。力だけが全て、自分の常識であったものが改めて壊された気がした。
だが不思議と悪い気はしていなかった。別世界の自分、仮面をつけて戦う自分に一歩近づくことができたのではないかと思えたのだ。
「教官・・・私は私になりたいです。他の誰でもなく、私が目指す私に」
「成ればいい、私が導けなかった境地へな。それはそれとして貴様等・・・」
「「「は、はい!」」」」
声を出したのは一夏を始めとする男性操縦者達である。さらに言えばこの三人、未だに背中にある龍と麒麟が消えていない。
「背中にそんなものをやりおってぇーーーーー!!」
「わー、待ってください!俺達、刺青なんて彫ってませんよー!!!?」
「そうです!そもそも、彫ったら退学じゃないですかー!!」
「問答無用!一夏もだ!なぜ、そんなものを背中に入れた!?」
「誤解だって!気づいたら浮かび上がってたんだよ!!」
「ほう・・・そうまでして誤魔化すか?」
千冬からはまるで、七つ集めれば願いが叶う龍の玉がある世界の戦闘民族のようなオーラが出ていた。それも金色ではなく青に近い。
「初めてだよ。怒りというものは通り越すと穏やかになるのだな」
「あ、あの・・・織斑先生?」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
殴られそうになり、政征はその拳を受け止めたがあまりにも重く、そして強かった。
「止める元気があったか・・・ん?刺青が消えた?」
三人の背中から覚悟の証である龍と麒麟の彫りが突然消えたのだ。背中は元の肌に戻っており、跡も残っていない。
「どういう事だ?」
「さぁ?俺達にもわかりませんよ」
「刺青の件は解決したが、喧嘩の件は解決しとらんぞ?」
「千冬姉、根に持ちすぎだろー!」
「うるさーーーい!ここでは織斑先生だ!」
三人を追っていく千冬を見ながらラウラは笑っていた。馬鹿にしているのではなく、心から楽しくて笑ったのだ。
これが人の温かみというものか、自分にあった新たな発見をラウラは噛み締めながら眠りに就いた
◇
そうしたドタバタが終わり、特別監獄室から春始は出されていた。白式の方も返却され、元の学生生活に戻れるよう手配が進んでいる。
しかし、実際は女性利権団体に属する一人の教師が手を回し、学園の大半の教師に賄賂を握らせ、大半の教師が賛同したのだ。
無論、学園長は抗議したが、IS委員会からの要望だと言われ、引き下がるしかなかったのだ。これには十蔵自身も情けないと苦虫を噛むような思いである。
「情けないこと限りないですね・・・」
その呟きは誰にも聞かれることはなく、ただ部屋の中で消えていった。
◇
「はは、ようやく監獄から出られたし、外にも出れて気分が良いぜ!!」
春始は監獄から出ると同時に学園の外に出ていた。無論、一般人に紛れた監視は付いている。
「おお?良い女発見!さっそくいただくかね」
「見つけました・・・・転生のルーツ」
「キミ、一緒に遊ばないか?」
「構いませんよ」
その夜、久々に女の柔肌を貪った春始は上機嫌で学園へと帰った。だが、彼は気づいていなかった一人の女学生がホテルに入る瞬間を撮影していたことを。
◇
翌日、春始は復帰した事を千冬の口から告げられたが、女生徒達は歓迎的ではなかった。それどころか軽蔑の眼差しや避けているようにも見える。
その理由は単純であった。撮影した女生徒が交流サイトやグループを通じて、彼が女性とホテルへ入る写真を画像で回されていたのだ。
「(なんで俺が・・・避けられるんだよ!?)」
休み時間、政征達が居る方へ視線を向けるが、何も関与してはいないという態度をしている。それが気に食わなかったのか、春始は政征に近づくと胸ぐらをつかんだ。
「何をする・・・!?」
「るせえよ!お前が変な噂を流したんだろ!?とっとと吐きやがれ!」
「ぐっ!」
締め上げている状態に近い為、政征は息苦しくなってくる。だが、抵抗したら間違いなく荒れるだろう。
見かねて春始の手首を掴んで止めたのは一夏であった。表情は普段通りだが内面では怒りがたぎっている。
「言いがかりはやめろよ。春始兄、政征と雄輔はずっと俺と訓練してたし、噂なんか流す奴じゃない」
「引っ込んでろ!俺はコイツに・・・・ぐあ!?ああああっ!」
一夏は手の握力をかけて春始の手首を強く握り始めた。今までの一夏からは考えられない握力の強さで、春始は痛みに悶えた。
「いい加減にしろよ?何で復帰できたかは知らない、でもな、春始兄の自分勝手な行動で迷惑する奴もいるんだよ」
一夏の変わりように春始は憎しみがせり上がってくる。今まで自分の格下でしかなかった弟が自分に逆らうのかと。
逆らわないのが当然だと身体に教え込んできたはずが、逆に今度は自分が間違いを指摘される立場に立ってしまっている。
こんな事はありえない。何かの間違いだと考えるが痛みが現実であることを教えている。
「これ以上は周りの迷惑にもなるから席に戻ってくれ」
一夏が冷静に意見するとそれを肯定するかのように学園のチャイムが鳴った。去り際に毒づくと春始は乱暴に席へ座った。
その間、ほんの数センチだけ机を女生徒から離されていたのは知られていない。
◇
放課後、春始は姉である千冬に呼び出された。何やら重要な話があるとの事だ。
「なんだよ?千冬姉、話って」
「ああ、話をする前に」
千冬は春始の頬を平手でパンッと殴った。不意打ちであったために春始は床に倒れる。
「ってええ!いきなり何すんだよ!?千冬姉!」
「・・・・そんな事を言えるのか?この大馬鹿が!」
千冬の剣幕は物凄いものになっている。教師でも姉としてでもない、一人の女性として憤りを春始に見せているのだ。平手打ちで殴ったことがその象徴といえる。
「な・・・」
「お前は何人の女に手を出した?」
「そ、それは・・・」
「言え!何人手を出した!!?」
「ク、クラスの人数くらい・・・」
それを聞いて再び千冬は平手打ちをする。
「春始、言いにくいがお前を臨海学校に参加させる訳にはいかん」
「な、なんでだよ!?」
「自分が行ってきた事を少しは考えろ!不純異性交遊をしていた者を露出の多くなる水着を着た異性だらけの場所に連れていけるか!!」
「ぐっ・・・」
正当な言い分に春始は黙るしかない。自分が行ってきた事の結果がこれだ。
「臨海学校時の期間は学園で大人しくしておけ、もし違反すればIS学園から退学処分がくだされることを忘れるな!要件はそれだけだ」
用件を伝えた千冬は去っていったが春始は床を殴りつけていた。だが、そこに道具となるものがある、そう・・・返却された白式だ。
「俺にはまだ、コイツがある・・・コイツであの二人を殺し、一夏を再起不能にしてヒロイン全てを喰ってやる!」
白式に変化は無い。だが、内面・・・意志と言える部分だけが違っていた。自分の手元にある白式が抜け殻になっている事をこの時は知る由もなかった。
◇
臨海学校が一週間後に迫った日、政征は少しだけ不機嫌であった。政征は臨海学校に対して良い思い出がない。
それはかつて、自分のいた世界で政征は私怨に駆られた一夏に零落白夜によって斬りつけられ、死にかけた事があったからだ。
無論、それは自分の世界で起こった事ではあるが、それでも政征自身も一人の人間。死にかけた出来事はなかなか払拭できない。
「嫌な予感がするな・・・」
「あの時のことか」
雄輔もあの事を未だに払拭出来た訳ではない。やはり二人にとってはそれほどまでに根付いているのだ。物思いに耽る中、シャナが付帯に声をかける。
「あの、政征?鈴さん達から買い物行かないかと誘いが来てるのですが・・・」
「行くしかないよな」
「そうだな」
◇
そして三日後と迫った日の日曜日、ショッピングモールへとメンバーで赴き、水着などを購入する事にした。その途中・・。
「一夏!」
「一夏さん!」
「ん?おお、弾じゃねーか!それに蘭ちゃんまで」
「は、はい」
一夏は中学生時の親友である五反田弾、その妹である蘭と偶然にも鉢合わせたのだ。
「元気そうだな?相変わらずハーレムフラグ立て・・・って・・・その身体付きどうしたんだ!?ガッシリしてて、全くの別人じゃねーか!」
一夏の肉体の変化に弾はいち早く気づいた。毎日見ている者と稀に顔を合わせる者とでは印象は当然違って見える。
「毎日、訓練と勉強づけだしな。それと、弾・・・お前に殴られる覚悟でケリをつけなきゃならない事がある」
「なんだよ?」
一夏は弾に断りを入れた後、ポーッとしている蘭に声をかけた。
「蘭ちゃん」
「は、はい!」
「前から言おうと思っていたんだ。君の好意は嬉しいけど・・・君とは恋人同士になれない」
「え?・・・ど、どうしてですか?私が年下だからですか!?」
「違うよ。俺には好きな人がいるんだ、だから君とは付き合えない。ごめんね」
「そんな・・・そんな、うわあああん!!」
交際を断られた蘭は泣きながら走っていってしまった。一夏は断った事に胸が痛んだが、ハッキリさせておかなければ蘭はずっと自分を追いかけるだろうと考え、心を鬼にしたのだ。
「一夏」
「ぐっ!」
弾の拳が一夏を捉えた。だが、痛みはなく兄として妹を泣かした男に対する制裁の意味がこもっていた。
「お前、本当に変わったな?鈍感じゃなくなってるし、お前のクソ兄貴より断然だ」
「ありがとよ。でも、蘭ちゃんには悪い事をしたな」
「いいさ、蘭はお前のクソ兄貴に狙われてたからな・・・アイツもこれで成長するだろ」
弾の目は妹の成長を喜んでいるように見え、一夏を見直していた。
「じゃあな、たまには食いに来いよ?」
「ああ、またな」
弾は急ぐように蘭の後を追って、すぐに居なくなってしまった。一夏は一つ、自分の中で決着がつけられたのに胸をなでおろした。
自分に好意を持ってくれていた女の子を一人、間違いなく傷つけた。それでも自分には心に決めようとしてる人が居る。
中途半端にさせるよりは先に進めるようにした方がいい。自分で考えて出した結論であった。
見送った後、一夏は政征達と合流し、買い物の続きを楽しんだ。
この臨海学校が織斑兄弟、二人の道を分かつことになる。一人は可能性を、もう一人は欲望へと走る。
そして、悲劇が繰り返されるのは避けられない事実と兄弟の戦いの狼煙が既に上がっている事をこの時の一夏は知ることはなかった。
はい、振られたのは蘭ちゃんでした。
この世界の一夏は鈍感でしたが、それは良くないと改めています。
一夏は鍛えられてから自分に好意を寄せてくれた女性に対し具体的に付き合えない理由を話した上で全員、振っています。
ヒロインズは一夏に対して恋愛というより接しやすい男性という感じです、なにせフラグは立ててませんから。
現在、一夏の心は箒か鈴の間で揺れています。
春始は実験体フラグがビンビンです。どうなるかな?
篠ノ之箒(白の地球)の強化における能力覚醒(参考意見用)
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SEED因子
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イノベイター(純粋種)
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Xラウンダー
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念動力