Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~   作:アマゾンズ

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クラルスと一夏が覚醒。

福音よりもオリ兄が厄介な存在。

異世界の二人、またもや海中に。


可能性の獣 覚醒

臨海学校初日の訓練終了後、浴衣に身を包み、夕食に舌鼓を打っている一同はそれぞれ好みの料理を口に運んでいる。

 

政征は赤身の刺身、雄輔はハマチ、一夏も赤身の刺身だ。それ以上に炊きたての白米を既に大盛りで二杯平らげている。

 

女性陣はサラダやフルーツ、などをつまみながら食を進めている。鈴や箒、シャナは和食に慣れており箸使いも上手いがセシリア、シャル、ラウラは和食に驚きを隠せず、箸に慣れていない様子だ。

 

その為にナイフ、フォークなどを用意されていたのだが、なぜか箸を使い続けている。

 

「す、すごい食欲ですわね?お三方」

 

「見てるこっちがお腹いっぱいになりそうだよ」

 

「本当ね」

 

「全くだ・・・軍でもこんな食欲は見んぞ」

 

代表候補生達は驚きながらも、男だからで納得できてしまう。女性は自分の体型を維持したりする事を考える為に、食事は制限気味になる。逆に男は力をつけるためという考えが強いため食事は欠かさないのだ。

 

「そうか?このくらいは普通じゃないのかよ?」

 

「女性ばかり見てきた反動で、男の食事量が珍しく映るんだろうな」

 

「うーん。よく分からないぜ」

 

夕食後は各々が行動し、旅館にある小さなゲームセンターのガンシューティングゲームに夢中になったり、部屋に数人でおしゃべりに夢中になったり、男性操縦者の誰が良いなど話題には事欠かない様子だ。

 

そんな中、食休みを十分にとった男性三人は再び温泉を堪能していた。静かに湯船に浸かりたいと考えていたからだ。今は露天風呂に浸かっている。

 

「なぁ・・・二人共、春始兄の事なんだけどよ」

 

「ああ、わかっているさ」

 

「サイトロンの予知が正しければ、アイツは明日、必ず来る」

 

一夏は割り切れたようで未だ割り切れていないところがあるようだ。兄呼ばわりしたのがその証拠である。

 

兄弟なのだからといえばその通りだが、そんな考えでは騎士を務める事は出来ない。敵であるのならば親兄弟、自分の師であっても手にかけなければならない時が来る。

 

 

 

 

 

 

そんな風に真剣な話をしていると隣の露天風呂から四人はいるのであろう話し声が響いてくる。

 

「え?シャナ=ミアって成長したからそうなったの?」

 

「はい、殿方に愛されてから成長が」

 

「んぎぎぎ・・・羨ましい!」

 

「あらあら、楽しそうですわね?」

 

「私にはそうは見えないが」

 

どうやら鈴、シャナ、フー=ルー、箒の四人のようだ。親睦を深める意味を込めてだろうか?和気藹々としている。

 

「なんでみんな私の周りは大きいのよー!イヤミかーーー!!」

 

そう叫んで、鈴は近くにいたシャナの胸を鷲掴みにして揉み始めた。女の嫉妬というものは恐ろしいものである。

 

「ひゃあ!?ちょっと、鈴さ・・・あんっ!」

 

「私だって、私だって!いずれ成長するんだからぁー!」

 

「おい、やめろ!鈴」

 

「うるさい!うるさい!巨乳三姉妹どもーーー!」

 

鈴の暴走は他の二人にもとばっちりが来てしまい。百合の花が咲き誇るかのような空間になってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

その隣の男三人はのぼせそうになり、湯船から出て涼んでいた。声は出さないよう気をつけている。

 

「鈴のやつ・・・」

 

「はぁ・・・目に毒ならぬ耳に毒だった」

 

「耳だけに(イヤー)になるってか?」

 

「大喜利やってる場合じゃねえだろ!」

 

せっかくの静かな時間が、隣の百合風呂で無くなってしまい三人は仕方なく風呂から上がると明日に備え、それぞれの部屋に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

千冬は一夏のマッサージ受けつつ、代表候補生達と箒を部屋に招き入れ男性三人に関する話を始めた。彼女達が入ってくるのを見て、一夏は空気を読み一人でゲームセンターで時間を潰そうと向かった。

 

「お前達に聞きたいが、春始に襲われたか?」

 

「私は一人で剣道の鍛錬をしている時に話しかけられただけで」

 

「わたくしは食事中でしたわ。でも、絡まれただけです」

 

「私は寮まで来られましたけど・・・中には入れませんでした」

 

「ボクは何も無いですね。というより、義姉さんと義兄さんが来るよって言った時点で来ませんでした」

 

「私は返り討ちにしてしまった。無論、怪我は負わせるようなことはしませんでしたが」

 

学園での春始の行動を知るために聞いたが、五人の言葉に千冬の予想通りであった為に溜息を吐いた。

 

「やはり、お前達は絡まれていたか」

 

「ええ・・・」

 

箒が代表して返事を返し、千冬は座ったままテーブルの横に移動すると正座し、全員へ頭を下げた。

 

「済まない、アイツを私が止めていればお前達に迷惑が・・・」

 

「良いんですよ。でも、千冬さん・・・一言だけ」

 

「何だ?」

 

今度は鈴が代表して話しかけ、千冬は顔を上げ鈴と目を合わせた。

 

「弟が大切なのはわかりますが、時には厳しく止める事も大切だと思いますよ?後手に回ってからじゃ遅いんです」

 

「っ・・・その通りだな。赤野達の影響か?」

 

「そんな所です」

 

千冬は彼女達が、別世界の自分を見せられているのを知らない。政征達が居た世界の彼女達は命というものを学んだ本物の戦士達だ。

 

ある意味では、この世界の千冬以上の戦士と言えるだろう。政征達の世界の彼女達とこの世界の彼女達は実力に大きな差があり、彼女達は近づこうと必死になっている。

 

春始のような男に構っている暇はないというのが本音だ。

 

「お前達、変わったな?一体・・何があったのだ?」

 

千冬の素朴な疑問に今度はラウラが答えた。それは軍人としてではなく一人の生きる存在として。

 

「教官、もしも・・・別世界の自分自身の強さを見る事になってしまったどうします?」

 

「何?」

 

「今の自分よりも遥か先にいる自分を見せられたら・・・です」

 

「そうだな・・・悪いが今の私には答えが出せん」

 

千冬自身、それだけがようやく出せた言葉だった。それを聞いた後、代表候補生達は部屋へ戻ろうと立ち上がり、出て行った。

 

「・・・・私だけが立ち止まっているな」

 

一夏に大声で怒鳴り散らされ、差別されていた事を思い返し千冬はテーブルに肘をついて落ち込んだ。

 

彼女も彼女なりに精一杯やってきたのだ。親は蒸発し残されたたった三人の家族、金銭を得るために賞金が出る大会やアルバイトなどを必死にやってきた。

 

忙しい事を言い訳に出来の良かった春始だけを構い、一夏には一切構わなかった。たった一言の愛情のある言葉すらかけなかった。

 

えらいぞ、すごいなの言葉すらかけなかった結果が、最愛の弟からの罵倒。過去は後悔しても取り戻せない、それだけが千冬を追い詰めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日の朝、アシュアリー・クロイツェル社から連絡があったとフー=ルーが千冬と真耶に伝え、箒と代表候補生、男性三人が到着を待っていた。

 

約束の時間通りに上空から飛行艇が飛んでくる。近くの浜辺に着陸すると中から現れたのは白衣を身に付け、ウサ耳は変わらずメガネをかけた束であった。

 

「お待たせ!ごめんね、予定ではもう少し早く着くはずだったんだけど」

 

「束・・?」

 

「久しぶり、ちーちゃん。よほど応えてるようだね?」

 

「ああ・・・」

 

束の指摘に千冬は何も言い返せない。子供同然であった束は今や技術者兼科学者といった感じで、雰囲気が違っている。

 

「さてと、先に要件を済ませるね」

 

束は政征と雄輔の近くに来ると、待機状態になっているラフトクランズ・リベラとラフトクランズ・モエニアを差し出した。

 

「お待たせ、オーバーホールは完全だよ。預けていた試作量産機を渡してくれるかな?」

 

「はい」

 

「分かりました」

 

同じく待機状態の量産型シュテルンMk-II改を束に渡し、ラフトクランズを手にすると、それぞれが帰還を待ちわびていたかのように強く輝いた。

 

「ええ!?」

 

「何この輝き・・・?」

 

他のクラスメイト達も驚きを隠せない。これほどまでにISに慕われている人間、ましてや男性操縦者など見たことがなかったからだ。

 

「次はいっくんだね。悪いけどクラルスを貸してくれるかな?」

 

「?わかりました」

 

束はラフトクランズ・クラルスを一夏から受け取ると自分の端末に接続し、コアデータと開発した特殊プログラムをインストールした。

 

「少しだけ、改修するね?大丈夫、数分で終わる簡単なものだから」

 

クラルスを展開状態に移行させ、特殊な駆動式内骨格に移していく。同時にラフトクランズの装甲を展開可能な物に改修してしまった。

 

「はい、おしまい」

 

待機状態に戻すと束はすぐに一夏へクラルスを返還した。一夏は不思議がっていたが、女性には秘密がたくさんあるんだよの一言で片付けられてしまった。

 

「さて、お待たせしたね?箒ちゃん、私から質問があるけどいいかな?」

 

「はい」

 

「箒ちゃんはISで何をしたい?私を納得させられるかな?」

 

言動は子供っぽいが、内面は科学者や技術者の信念らしきものが感じられる。箒自身も納得させられるかは分からないが意を決して話した。

 

「私は今まで一夏の傍にあれば良いと思っていました。でも、今は違う・・・今は正直IS何がやりたいかは分かりません、一つだけ思ったことがあります」

 

「何かな?」

 

「私は海を飛びたいと思います。星の海と雲の海を・・・私も皆と一緒に」

 

箒は自分で考えられる精一杯の言葉を束に伝えた。束は箒の言葉を聞いて目を閉じたまま何も言わない。その様子を不安げに箒は見ている。

 

「なるほどね・・・じゃあ最後の質問、どうして力に固執しなくなったのかな?今までだったら恐らく、私にISを作れみたいな事を言ったはずだよね?」

 

「それは見せられたからです」

 

「見せられた?もしかして」

 

「はい・・・別世界の私です。一夏だけを盲目的に追いかけ、力だけを求め続けた私を見たんです」

 

「それで、新しい目標が出来たわけだね?本当に自分だけの目標が」

 

「はい」

 

束はポンと箒の肩に手を置いて優しい笑みを浮かべた。妹の身ではあったが、こんなに優しい笑みを見たのは初めてであった。

 

「私の名前を使ってないから何かあったのかと思ったけど、そういう事だったんだね。成長したね?箒ちゃん」

 

「あ・・・うう・・・」

 

成長したと言われた瞬間、箒は無意識に涙を流していた。ようやく姉に認められたという感情からかもしれないが、箒にとっては嬉しい事だったのだろう。

 

「今の箒ちゃんになら託せるね、この紅椿を」

 

束は持っていた待機状態の紅椿を箒の手に握らせた。それを見て箒は慌てて紅椿を束に返そうとしたが、束は首を振って受け取らなかった。

 

「ね、姉さん!私はこんな強力そうなISを受け取る訳には!」

 

「ううん、今の箒ちゃんなら・・・きっと紅椿の声が聞こえると思うよ。だから箒ちゃん、その子を雲の海に連れて行ってあげて欲しいんだ。私の娘、箒ちゃんの姪を」

 

「姉さん・・・分かりました」

 

他のクラスメイト達からも文句は上がらなかった。むしろ、悪態をついているのは女尊男卑に染まりきり、己の実力を分かっていない者達だけだ。

 

不満を言わなかった理由はクラスメイト数人が、政征達との訓練で何度倒されても向かっていく箒の姿を見たからだ。

 

IS適性はC、剣道に関して実力はあるがただそれだけ、束の妹というだけでその名を利用していた時は腹が立っていた。

 

しかし、ある日を境に彼女は人が変わったかの如く勉強や訓練に打ち込むようになり、剣道の指導も行い、己の不備を認めるようになっていった。

 

クラスメイトの一人が不審に思い、後を付けて目撃したのは打鉄を纏い、男性操縦者である政征と雄輔にアリーナで何度も打ちのめされている所であった。

 

何度も何度も向かっていき、倒されるたびに改善の教えを請い、それでまた実戦形式の訓練を繰り返す。

 

機体が無事でも操縦者がボロボロになっているのではないかと思えるくらいの粘りだった。

 

気を失えば水をかけられて、強引に目を覚まさせられてはいたが本人が望んでいるかのようで訓練を再開していた。

 

その噂が広まり、クラスメイト達は一人、また一人と交代で箒の訓練を覗いていた。無論、男性操縦者達は気づいてはいたが、あえて知らないふりをしていたのだ。

 

そのような姿を自ら確認したとあっては文句を言えるわけがない。必死に努力する姿というのは嫉妬の対象にもなるが、改めの対象にもなる。

 

 

 

 

 

 

 

箒が紅椿を受け取っている同時刻、春始は目的の場所の近くにある別の宿から出て、浜辺に来ていた。

 

「あの女を抱いてからすごぶる調子が良いぜ、白式もプロテクト解除とかいう能力を身につけたしな」

 

そういってISを展開し、空へ飛び立った。白式の内部では変化が起こっており、緑色の触手らしき物が一本だけ関節部を覆っていた。

 

その影響かエネルギー切れを起こさないようになっており、零落白夜を常時展開状態にしておけるため春始にとっては都合が良かった。

 

「待ってやがれよ、赤野政征!青葉雄輔!!お前らを始末し一夏も始末して主人公に返り咲き、ハーレムを作るのはこの俺だ!!」

 

野望と欲望によって汚れた白式の抜け殻は少しづつではあったが、歪な形で進化を果たそうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

それと同時刻、アメリカとイスラエルの合同演習が行われている場所で事件が起こっていた。

 

「た、大変です!銀の福音が暴走を開始しました!!」

 

「なんだと!パイロットは!?」

 

「搭乗前でしたので無事ですが、恐らくAIの暴走かと!」

 

銀の福音はAIを搭載する実験の為に搭載されたが、それと同時に暴走してしまったのだ。その影響であちこちを破壊している。

 

「!行けません、福音が空へ離脱しました!!」

 

「急いで、追撃しろ!」

 

「私が行きます!軍用ISをお借りしますわ!」

 

志願したのは福音の正式パイロットに任命されていたナターシャ・フィルスであった。責任者は彼女の静止ができず見送るしか無かった。

 

「一体誰が・・・くそっ!」

 

「予定通り・・・暴走させ向かわせました」

 

整備班の一人がどこかに連絡し、スパイのように誰にも気づかれぬまま姿を消していた。

 

 

 

 

 

戻って臨海学校二日目の訓練では、政征と雄輔が箒を見ており一般生徒はフー=ルーと山田先生の訓練、代表候補生はそれぞれの特性を見直していた。

 

各国から送られてきたユニットパーツをチェックしていたが、長所を潰してしまうものばかりで実用できるのはセシリアとラウラだけであった。

 

箒は紅椿のテストを行っており、今までの成果が出ているのか、飛行に関しては代表候補生と並べるほどであった。

 

だが、彼女はISを手に入れ、どこか浮かれていたため雄輔が喝を入れる意味で撃墜していた。撃墜された場所が海上であり、機体の損傷も機械いじりが出来るのであれば完璧に治せる程度の損傷しか与えていない。

 

「うう・・・撃墜するとはひどいぞ!」

 

「浮かれていたからだ。反省の意味もある」

 

「う・・・」

 

そうしているうち、軍用に改修されたであろう一機のラファールがこちらへ向かってきていた。ボロボロの状態で飛行が出来ているのが不思議なくらいだ。

 

それを見た箒は急いでラファールを回収するが、それと同時にパイロットが気を失ってしまい、千冬とフー=ルーを呼ぶよう声を出した。

 

パイロットであるナターシャが目を覚ますと、どこかの一室に寝かされているのに気がついた。周りを見渡すと千冬とフー=ルーが目覚めるのを待っていたかのように座っていた。

 

「あ、貴女は織斑千冬!?」

 

「ああ、そうだが?」

 

「私はアメリカのナターシャ・フィルス、助けてくれて助かったわ」

 

「ところで一体、何がありましたの?機体をボロボロにされていたようでしたが?」

 

「・・・・」

 

「安心していい。フー=ルー教諭は私の親友で、信頼のおける人物だ」

 

ナターシャが警戒していたのを察し、自分が最も信頼を置いている事を伝えるとナターシャが話し始めた。

 

「なるほどな・・・軍用ISが暴走」

 

「そろそろ、ここに連絡が入ると思うわ。おそらく撃墜命令が出るかと思うの」

 

ナターシャの話によるとパイロットを乗せる前にAIによる機体制御による実験が先行され、搭載した結果、暴走となってしまったらしい。

 

軍用機がこの旅館の制空権に入りやすい位置に来ると予想し、追撃したが逆に撃退されてしまったそうだ。

 

「しかし、軍であるのならば自分達で追撃するはずではなくて?」

 

「AI1・・・私の機体になる予定だったはずの銀の福音には、軍の極秘プロジェクトで開発された戦闘用AIが積まれているのよ。追撃したくてもデータを優先してるから動くつもりなんてないわ」

 

「織斑先生!」

 

真耶が部入ってきたが、話をナターシャから聞いていた千冬とフー=ルーは頷くとナターシャに声をかけた。

 

「解決するまでこの部屋から出ないで欲しい」

 

「わかったわ・・・極力、あの子を撃墜しないで」

 

「善処しますわ」

 

 

 

 

 

 

一時間後、作戦会議室となった大広間に男性操縦者の三名、専用機持ちとなった箒、代表候補生の五人、シャナと束もいる。

 

「つい、二時間前・・・軍の演習場所から軍用ISが暴走し、脱走。専用機を数多く備える我々に止めて欲しいと通達があった」

 

千冬の言葉に全員驚きを隠せない。誰もが束を見るが、今の彼女はアシュアリー・クロイツェル社の社員であり、技術研究部長でもある為ありえない。

 

「現在は海面上で静止状態だそうだ。さらに機体はAI制御されていてパイロットはいない」

 

「戦闘用AIプロジェクトだね、軍では研究されてるって噂はあったけど本当だったんだ」

 

「よって、撃退メンバーを編成しなければなりません。ほかにご質問は?」

 

「はい」

 

フー=ルーの言葉に挙手したのはセシリアだ。それを見た千冬は発言を許可する頷きをフー=ルーに見せる。

 

「どうぞ、セシリアさん」

 

「ターゲットの詳細データを希望します」

 

「良いだろう。だが、機体に関しては極秘扱いだ。口外すれば監視と罰則がつく事となる、良いな?」

 

全員が頷き、銀の福音に関するデータが表示される。それを見た代表候補生達は意見を述べ始めた。

 

「広範囲の特殊射撃型・・・ブルー・ティアーズと似てますわね」

 

「速度も桁違いだわ。甲龍でも追いつけない・・・おまけに軍用だから私達の機体以上の力があると見ていいわね」

 

「それだけじゃない」

 

「え?」

 

雄輔の発言に政征とシャナ以外の全員が驚く、渋っていたようだが二人は銀の福音に関して説明を始めた。

 

「銀の福音は広範囲の射撃型・・・それもレーザーによるものだ」

 

「パイロットが乗っていないのが幸いだな・・・でも、危険性はなくなった訳じゃない」

 

「危険性?」

 

「二次移行・・・」

 

政征の言葉にハッとしたのは束だ。もしも、危険値に入ればAIは逃走と戦闘続行のために機体を進化させようとする可能性があると。

 

「でも、二次移行だなんて」

 

「有りないだろう」

 

シャルとラウラは否定的であったが、そこへシャナが口を開く。彼女も自分の世界での戦いの一部を見ていたからだ。

 

「いえ、あらゆる可能性を想定しておくべきかと」

 

「シャナ=ミア姉様・・・」

 

「それでは各員、出撃準備をしておけ」

 

千冬の号令の下、箒を含む専用機持ちと男性操縦者の三名が出撃することになった。それぞれが機体を展開していく。三機のラフトクランズが揃った姿はまさに圧巻である。

 

「出撃開始!良いか、深追いするな!必ず生きてもどれ!!」

 

「「「「「「「了解!」」」」」」」

 

出撃していった男性操縦者のうち政征と雄輔の恋人である二人は、得体の知れない不安に襲われながらも見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

旅館から離れた場所に位置する海上にそれはいた。相手となるモノを探していたようで、出撃者達を見つけると襲いかかってきた。

 

展開されるレーザーの雨はさながらアートのように美しく、また驚異的であった。それを散開して回避し、三騎士はオルゴンライフルの単発モードで牽制を仕掛ける。

 

「・・・!」

 

「こいつ、学習能力が高いようだな」

 

ラウラの指摘で学習される前に倒すべきだと考え、接近戦と遠距離からの波状攻撃で福音を止めようとしたその時だった。

 

「ぐああああ!?がはっ・・・!」

 

「ごふっ・・・!?こ、これ・・・は」

 

素早い何かが政征と雄輔が斬られ、出血していた。だが、攻撃が止むことはない。ハイパーセンサーで追いかけるが一向に正体が掴めない。

 

福音の方はその余波を受け、機能が停止してしまっていた。だが、そこいる全員がその攻撃に覚えがあった。青く光る光の刃を・・・。

 

「ギャハハハハハハ!死ね死ね!!テメエらさえ死ねば俺は主人公に戻れるんだよおおお!!!」

 

声がした瞬間、女性全員に悪寒が走る。その声の正体は女を自分のモノとしてしか考えない最低の男であった。

 

「春始兄!」

 

「久しぶりじゃねえか、一夏!それに箒達も・・・俺に抱かれるために来てくれたのか?」

 

その言動は滅茶苦茶だ。完全に女性陣を性処理の道具としてしか見ておらず、目の前に現れただけで、自分に抱かれるために来たのだと思い込んでいる。

 

「ふざけた事、言ってんじゃないわよ!あんたに身を捧げるくらいなら、死んだほうがマシよ!!」

 

「そうか、ならば仕方ねえな・・・!強引にでも抱かせてもらうが・・・その前に」

 

春始の刃は政征と雄輔に襲い掛かり、二人は気づかないまま武器を手放して墜落していってしまった。それほどまでのスピードで動いているということである。

 

「これがソードライフルとシールドクローか、オレが使ってやるから感謝しろよ・・・ヒャッハハハ!」

 

「馬鹿な・・・このはや・・・」

 

「アイ・・・ン・・・ス・・ト」

 

「政征さあああああん!」

 

「雄輔ーーーッ!」

 

セシリアと箒の叫びが響き、そんな中、春始は墜落する寸前のラフトクランズから武器を奪い、零落白夜のエネルギーをオルゴンの代わりにして、それをソードライフルの単発モードで撃ち込んでくる。一夏はそれを回避しつつ、許せない事を指摘した。

 

「!てめえ!!政征のシールドクローと雄輔のソードライフルを!?」

 

「強力な武器は俺にこそ、相応しいんだよ!!」

 

「うあああ!」

 

シールドクローを掲げて強力な突進をくらい、一夏も吹き飛んでいってしまった。自分の勝利を確信した春始は、舐め回すように代表候補生達を見ている。

 

「さぁ・・・みんな抱いてやるぜ!来いよ!!」

 

「ふざけるなァァァ!!」

 

「おう、箒・・・お前からか!」

 

剣での勝負なら、負けないと思っていた箒であったが誤算があった。それは零落白夜が常時発動している点、自分の中に違和感を感じた箒はそれが確信に変わり、距離を取った。

 

「く・・・近づくのが難しい!」

 

「抵抗すんなよ、抱けないだろ?」

 

代表候補生達も一人、また一人と常時発動している零落白夜に追い込まれていく。全員を捕獲し楽しもうとしていた春始にオルゴンのエネルギー波が襲いかかった。

 

それは吹き飛ばされた一夏が放ったオルゴンキャノンであった。それを回避し向き直るが春始に慌てた様子はない。

 

「やはり耐えるかよ、だがな?耐えるだけじゃ意味ねえぜ?今度こそ始末してやる・・・」

 

「ふざけんな・・・!俺の全身から吹き出している怒りの炎が見えねえのか?」

 

「怒りの炎だぁ?お前に怒りなんか怖くもなんともねえんだよ!」

 

一夏の表情は隠れているが、内側ではハッキリと怒りを顕にしており震えている。

 

「てめえは・・・幾つも許せない事をした。俺の心を踏みにじり、千冬姉の名誉を侮辱し、束さんの発明を悪用し続けた!」

 

「はぁ?」

 

「だがな・・・今一番許せねえのは、俺の!俺の親友の命を奪った事だ!行くぜ!クラルス、政征、雄輔!俺と一緒に戦ってくれ!」

 

その怒りの声に共鳴したラフトクランズ・クラルスの全身にある、装甲という装甲が開いていく。それはまるで別世界において一角獣の名を関する白い機体が変身していく姿に似ている。

 

人類の亜種を駆逐してしまう危険な可能性を持つ一方、あらゆる可能性を拾い上げ、想いを力に変える白き一角獣の機体。一夏はあらゆる並行世界の可能性の中から人の亜種の存在に近いものになっていたのだ。

 

フューリーではなく、地球人として一歩先へと進んだ存在として覚醒し、それにクラルスが反応している。二人は死にかけており、助からないのか?という自問自答にそれでも!と一夏が叫んだ、海中にいる二人の騎士は光に包まれ守られ始める。

 

クラルスは可能性という力を体現したかのように、装甲を展開した全身が赤く輝いている。

 

その姿に春始は苛立ちを覚えた。自分より先へ行くことなど許さないと、言わんばかりに睨みをきかせ突撃した。

 

「やっぱりお前は殺す!お前が居なくなれば、俺が主人公だァァァ!!」

 

「何を訳の分からない事を!!俺が倒して止めてやる!それが俺の決めたことだ!」

 

春始の零落白夜と一夏のオルゴンソードがぶつかり合い、最大級の兄弟喧嘩が今ここに始まった。




かなり急ぎ足でした。

一夏のセリフは元ネタがあります。作者の私は熱いセリフの中で三本の指に入るのではないかと思っています。

クラルスも覚醒です。まぁ・・・タイトルでバレバレですがね。

クラルスはラフトクランズでありながら、純粋なフューリー製ではないので変身が追加可能になりました。

篠ノ之箒(白の地球)の強化における能力覚醒(参考意見用)

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