Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~   作:アマゾンズ

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春始何者かの力を借り再び逃亡。

一夏、人類の亜種となり、過去の別世界へ。

白騎士、あるべき者の場所へ。


汚れた騎士の抜け殻

気を失った一夏を旅館に預け、政征と雄輔は成層圏ギリギリの場所にいる春始の位置へと飛び上がっていた。

 

「・・・・もう、なり振り構わないようだな?女喰いよ」

 

「!てめえ・・・お前等のせいだ!お前等が、お前等が居なきゃ俺はこの世界で主人公ライフを満喫しながらハーレムを作れたはずなのに!」

 

「色欲という欲望に身を任せ・・・ユニコーンガンダムを知っていた口調、まさか?」

 

「その予想は当たっているだろう、コイツは俺達と同じ世界から来た人間・・・並行世界の一つだと考えられるが」

 

政征と雄輔は春始の正体を自分達が最初の転移をした世界ではなく、本当の世界の並行世界から来た人間だという予測を立てていた。

 

初めは半信半疑であったが、今回の件で確証に変わったのだ。春始はこの世界の人間ではないと。

 

問題は自分達のように次元の転移によって現れた訳ではない。何かしらの要因でこの世界に来たのだとしか考えられない。

 

「転移以外の可能性・・・あるとすれば」

 

「転生・・・か。小説でしか聞いた事は無かったが実在してたなんて」

 

神と呼ばれる存在よって輪廻し、生まれ変わって別世界に現れる。それが転生である、だが・・・それはあくまでも架空の物語での話で実在するはずがないと思っていた。

 

しかし、次元を超えてきた二人とは違って、春始は織斑の性を名乗っていた。自分達はこの世界に来る前の並行世界にあたるISの世界の物語にねじ込まれた存在。

 

だからこそ、自分達も神の存在によって存在を改竄させられ、戸籍などを得る事が出来た。望んだのはフューリーとしての存在とラフトクランズのみ。

 

自分達も春始の事を責める事は出来ない。似た様なもので自分達もそれを持っているのだから。

 

だが、春始と違う点はある。一つは己の努力で実力を手にした事だ、初めから天才でも戦闘力が高い訳でも無かった。

 

アシュアリー・クロイツェル社の社員、禁士長のセルダ、さらには騎士団長であるアルヴァン、その恋人で異名を持つ程のエースパイロットであったカルヴィナ、一般人からしたら化け物といっても過言ではない相手に鍛えられたのだから。

 

それだけ、彼らは幸運に恵まれていたのだ。努力できる環境にあった幸運を。

 

 

「てめえらを殺して、学園の女は全て俺の物にしてやる!シャナ=ミアもフー=ルーも俺のものだ!」

 

その名前を聞いた瞬間、二人の眉がピクリと釣り上がった。

 

「祐輔、俺は自分で感情的になりやすいの自覚してるんだけどよ?怒りってのは通り越すと頭が冷えるんだな」

 

「ああ、分かる。俺も今、物凄い怒髪天だ。だが、不思議な位落ち着いてる」

 

二人が持つオルゴンソードを握る手が強く握られる。たった一人、愛しく守りたい存在、それを別世界で自ら亡き者にしてしまった事がある二人にとって奪われたくないのは通り、ましてやこのような下衆な男に奪われるなど許せる事ではなかった。

 

「騎士としての正々堂々とした戦いは必要ないな」

 

「今はあの機体のコアを救出するとしよう・・」

 

騎士の二人はオルゴンソードを左右対称に構え、春始を完全な敵対者として、情けを捨てることにした。

 

ただの女喰いならば改心する可能性があったあろう。だが、目の前の男はこの世界の流れを知り、すべてを我が物にしようとした。

 

挙句の果てには自分達の恋人をも己の所有物にもしようと。片思いならば許容しようと思った、だが、この男にはそんな情けは不要・・・全力でたたきつぶさねばならない。

 

戦列を一時離れている清浄の騎士の為に、己の愛する異性のために、そして道具として扱われている目の前の白い機体の肉体を救済する為に。

 

「死ねやああああああ!!」

 

春始は瞬間加速を使い、二人へ突撃していく。だが、極限の冷静さ、所謂ゾーンとも呼ばれている状態になっている二人にとって、その加速はまるでスローモーションのように見えている。

 

その中で政征は突撃の勢いを利用し、オルゴンクローで捕まえると同時に海上にある僅かな孤島の地上へ落下速度を利用して地へと叩きつけた。

 

「ぐああああああ!?」

 

「雄輔!」

 

「おう!」

 

そのまま引きずり続け、岩盤に叩きつけ砕くと同時に上空へと投げ飛ばした。声をかけた先には雄輔がソードライフルをライフルモードにして待機していた。既にバスカーモードを起動させており、それは自分が最も極めたいと願う射手の技。

 

「オルゴナイト・ミラージュ!」

 

オルゴナイトの一撃から始まり、転移を繰り返し放ち続け、結晶の中へと閉じ込めていく。それはまるで、結晶による大木が立ったかのような姿だ。

 

「ふっ!」

 

ソードライフルを上空へと投げつけ、胸部の砲口を展開しそれを目指して上空へ向かっていく。その間にソードライフルは変形していき、狙撃形態に変形した。

 

「これはお前への柩、久遠の安息へと導くもの・・!ヴォーダの闇へと堕ちろ!!」

 

最大出力で放たれたオルゴナイト・バスカーライフルの一撃は、春始の進化した白式へと直撃した。だが、バスカーモードの一撃はライフルに留まらなかった。

 

「があああああ!ラフトクランズの最大技だと!?」

 

「オルゴナイト!」

 

「何!?」

 

「バスカー!ソォォォォド!!」

 

「がああああ!?」

 

自己流にアレンジしたオルゴナイト・バスカーソードの横薙ぎで切り裂かれた結果、白式は片側のバーニアを大破させられ、ギリギリの所で航行できている状態にさせられた。

 

「クソ!クソがァ!!」

 

「貴方を失う訳にはいきませんの」

 

「「!!?」」

 

突如として空間転移で現れたそれは、全身が酸化前の血液のように真っ赤で、まるで怨念そのものを纏っているかのようなISを纏っていた。

 

「な・・・うっ!」

 

春始は気絶させられ、謎のISを纏っている少女は春始を抱えて二人の騎士の前に待機している。

 

「自由、そして城壁・・・守護者によって選ばれた者達」

 

「何を言っているんだ?」

 

「ソイツを渡せ」

 

「そうはいきません、彼は種子ですの」

 

「何!?」

 

「次元の騎士、三騎士は危険なルーツ・・・でも、今はまだ」

 

謎の言葉を残し、春始を連れて紅いISは転移してしまった。その場には騎士の二人しかいない。だが、口調や謎の言葉からこの世界を狙っている勢力のヒントを得ることが出来た。

 

「雄輔、この世界の驚異はまさか?」

 

「そのまさかだろう。破滅も厄介だったが・・・『傍観者』がいるとはな」

 

「・・・旅館へ戻ろう。一夏の容態が気になる」

 

「そうだな」

 

二人は急いでその場を後にし、旅館へと戻った。旅館へ戻った後に聞かされたのは一夏の意識が戻っていない事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅館の一室、そこでは篠ノ之束ことタバ=サ・レメディウムが電子ディスプレイの前でキーボードを叩き続けて何かを解析している。目覚めなくなった一夏の原因だ。

 

あらゆる可能性を示唆し、篠ノ之束としてタバ=サ・レメディウムとして解析を進めても原因を掴む事が出来ないが、一つの可能性を見つける事ができた。

 

「(もしかしたら・・・ユニコーンシステムの影響で意識が別の世界へ行ってるんじゃ?肉体もクラルスも)」

 

「束、解析出来たのか?」

 

「ううん・・・流石の私でも原因が掴めない。ごめんね」

 

「いや・・・。ん?あの二人が戻ってきたようだ」

 

「まーくんとゆーくんだね」

 

代表候補生達は部屋に待機させているために入ってこない。千冬は二人を呼ぶとまるで眠っているように見える一夏を見せた。

 

「一夏・・・」

 

「眠っているみたいですね」

 

政征と雄輔は少しだけ目を伏せながら、意識を失っている一夏を見ている。せっかく友情を育み、お互いにシャナ=ミアへ忠誠を誓い合ったというのにと思わずにはいられなかった。

 

「三人とも聞いて、もしかしたら今のいっくんは別世界に跳んでいるのかもしれないんだよ」

 

「別世界だと!?」

 

「まさか・・・?」

 

「そんなはずは・・・!」

 

別世界に飛んでいるという意味は何かしらの原因をつきとめ無ければ戻ってこれないという事だ。覚醒した一夏は何かを掴まなかればならない試練があるのだ。

 

「ちょうど良い機会かもしれない」

 

「確かにな」

 

「二人とも何を言っている?」

 

「!まさか・・・!?」

 

束が驚いている間、二人はラフトクランズのサイトロンを起動させ、千冬に近づく、千冬は意味が分からないといった様子だ。

 

「そのまま」

 

「視線をそらさないで」

 

二人はサイトロンを発動させると自分達が居た世界の千冬を見せる。そう、あらゆる事を乗り越えた千冬を。

 

「な・・なんだこれは!?」

 

『私の為?勘違いするなよ、小娘共が・・・。私はフー=ルーと正々堂々戦い、敗れた。それをお前達が認められずに倒そうとするなど、私の戦いを侮辱している事に他ならん!』

 

これが別世界の自分。迷いもなく、しがらみからも解放された自分なのか?

 

『一夏、戻る事の出来ない道を歩ませてしまったのは私のせいだ。少しでも私が向き合っていれば破滅などに・・・』

 

「やめろ・・・やめろぉ!」

 

場面が切り替わり、片腕を無くしボロボロで血まみれになっている弟らしき男に刃を向け、その首に当てている自分。

 

『さらばだ、弟よ』

 

己が弟の首を刎ねた瞬間を見たと同時に千冬は自分の世界へと戻ってくる事が出来た。大量の汗をかき、吐き気をがあるのか、こらえるように口を押さえている。

 

「う・・うううっ!・・・・すまん!っうええええ!げええええっ!」

 

備え付けのトイレへ駆け込むと千冬は思い切り嘔吐した。時間にして5分程だが、千冬はトイレから出てくると洗面台で手を洗い、口も濯ぎ、顔を洗ってタオルで顔を拭きつつ戻ってきた。

 

「すまない・・・見苦しい所を見せた」

 

「いえ・・・見ましたか?」

 

「俺達の世界の織斑先生を・・・」

 

騎士の二人は真剣な目つきで視線を逸らさない。それを見て千冬は答え始める。口にするのを怖がっている様子だが、答えない訳にはいかないと自分を戒めながら。

 

「ああ・・・。ひとつだけ教えてくれ、お前達の世界の私は・・・もしや?」

 

「はい、見た通りです」

 

「自分の弟を自分の手で介錯しています」

 

「やはり・・・か」

 

別世界の自分が唯一の肉親をその手にかけていた。別世界とはいっても己であることは変わらない、そう思わずにはいられなかった。

 

「お前達の世界の一夏に関してはフー=ルー教諭から聞いている。まさか、私が介錯していたとは」

 

「腕を飛ばしたのは俺ですけどね」

 

「気にするな、お前はお前の守りたいモノのために戦ったのだろう・・・?」

 

千冬は珍しく悲しい目をしながら二人を見て言葉を紡ぐ。

 

「本音を言えば破滅という力に飲まれたアイツなど、見たくはなかった・・・だが、まだ私は間に合うのだろう?春始は手遅れだが」

 

「ええ、アイツの今まで受けてきた仕打ちを受け止めなければいけませんがね。罵倒はするでしょうが」

 

「構わん、そうなったのは私の責任だ。それにな・・・篠ノ之達が言っていた事が理解できたよ。アイツ等が変わった理由もな」

 

「え?」

 

「こんなものを見せられては今までの自分の行いが恥ずかしくなる。まだまだ私も未熟で成長できるのだと自覚できた。感謝するぞ」

 

「いえ・・・」

 

「ちーちゃんも見せられたんだ。ねぇ?私は見せてくれないの?」

 

そう話しかけてきたのは束だった。自分だけが見せてもらえないのが不満なのだろう。

 

「構いませんけど・・・きっと辛いですよ?」

 

「構わないよ、だから見せて?別世界の私を」

 

束の勢いに押され、二人は千冬にしたように自分達が居た世界の束を見せ始める。

 

『箒ちゃん、これが姉としてみせる最後の愛情だよ』

 

『何を!誰も、姉さんでも、私に勝てるはずがない!』

 

話に聞いていた破滅に飲まれ、一夏への狂った偏屈的な愛情の思考しか持たなくなった自分の妹と戦っている別世界の自分。

 

「(これが・・・別世界の私?思考がものすごく成長してる。私と同じようにあの人に助けられたのかな?)」

 

考え事をしているその間にも妹と戦っている別世界の自分は相手を追い込んでいく、そして。

 

『どうか、地獄で閻魔に聞いたらどうかな?』

 

堕ちていった妹を殺した。自らの手で悲しみも哀れみもその心の奥に隠した上で。それと同時に束が本来の世界へと戻ってくる。

 

「見ましたね?」

 

「うん・・・・あそこまで堕ちてたんだ。あっちの箒ちゃんは・・・でも、私は」

 

雄輔に見せられた別世界の自分は冷徹だったが、どこか成長しているようにも見えた。今の自分のように化学者として最高峰ではあるが、向こう側の方が遥かに考えが大人だ。

 

「私も・・・成長しなきゃ・・ね」

 

 

 

 

 

千冬と束が別世界の自分を見せられている頃、一夏はどこか別の世界に来ていた。姿を確認するために、近くにあった学園のガラスに自分を映すと髪が伸びており、IS学園の制服を身につけていた。

 

「ここって・・・?」

 

IS学園であることに間違いはないが、何かが違う。念の為、学生証を確認すると名前が違っていた。イチカ・フォーリア・シオンとなっている。

 

「別人として此処にいるのか・・・・クラルスは・・?あるな」

 

「あ、イチカ君!何やってるの!?三組の代表なんだから早く!一夏君と同じ名前だってみんな騒いでるけど、試合には関係ないんだから!」

 

「え?ああ・・わかった。直ぐに行くから!」

 

呼びに来たクラスメートを先に行かせ、状況を推理する。恐らくはトーナメントが開催しているのだろう。三組の代表とクラスメートが言っていた所から三組の所属らしい。

 

「アリーナに行ってみるか・・・・」

 

アリーナへ向かい、観客席に入るとそこでは鈴と己自身と同質の存在である織斑一夏の試合が始まる直前であった。

 

「一夏・・本気でぶん殴るから覚悟しなさい!!」

 

「なんでだ!?鈴が怒るような事をしたか?」

 

「アンタ・・自分で何をしようとしていたのか解ってないの!?そこまで最低だったなんて、もういい!問答無用よ!!」

 

鈴の言動を聞く限りでは、こちら側の織斑一夏は何か問題を起こしたのだろう。アリーナを見渡せば政征と雄輔も居る。さらに状況を考えた結果、此処は確かに政征やシャナ=ミア。雄輔、フー=ルー先生が居た世界であり、その過去の世界であるようだ。

 

「もしかして、こちら側の俺と戦えってことなのかな?」

 

別世界における己自身を倒せという試練なのだろうか?考えても答えはたどり着かず、試合を見ることにした。

 

だが、試合を見ていて落胆してしまった。試合を観戦していると別世界の自分の動きが手を取るように分かってしまう。覚醒の際に身に付いた能力を使わずともただ見るだけで事足りるレベルだ。

 

「(何だよあれ・・・この世界の俺は・・・あれが本当に強いって言えるのか!?まるでなっていない!)」

 

これはイチカ自身が自分の世界で皆と訓練してきた成果だ。シャナ=ミアの騎士となる誓い、親友となった二人に負けないという思い。それらが原動力となって自分を騎士にまで引き上げてくれていた。

 

その為の特訓によって培われた観察眼が、この世界の織斑一夏の実力を見抜いてしまった。それでも、油断はしない。

 

実力が下という事はまだ成長してくる可能性があるという事・・・それを踏まえ、イチカは試合を観戦し続けていた。




ようやくだ・・・。

並行している作品が多いのでなかなか浮かびませんでした。

さて、此処からはイチカ一人の戦いとなります。

過去の並行世界ですが、Mがいるのでタイムパラドックスは起きません。

二人の一夏がいる訳ですが、カタカナ表記の方がRabbit Furyの一夏になります。

漢字表記は政征達の世界の一夏になります。

篠ノ之箒(白の地球)の強化における能力覚醒(参考意見用)

  • SEED因子
  • イノベイター(純粋種)
  • Xラウンダー
  • 念動力
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