Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~ 作:アマゾンズ
別世界の己に嫌気と吐き気を覚える。
イチカは場所を変え、一組に所属している政征、雄輔、シャナ、セシリアがいる観客席の入り口付近へと趣いていた。姿を見るなり、すぐに警戒されてしまう。
「誰だ・・・?」
「何故ここに?」
睨んでくるのは政征と雄輔の二人だ。この世界が過去ならば今の二人は俺の事を知らないはず、だとしたら名前を名乗っておいた方が良いだろう。そう考え、生徒手帳にあった仮の名前を名乗る。
「俺はイチカ・フォーリア・シオン。今、戦ってる織斑一夏と同じイチカの名前を持っているが、全く関係ない別人だ。紛らわしいなら、そうだな・・・シオンとでも呼んでくれ」
「そうか、君が・・・」
「済まなかったな。えっと・・・シオン、で良いのか?俺達もピリピリしていて気を張っていてな」
「ああ、それでいい。ところで一体、何があったんだ?俺は別のクラスだし、現場にいなかったから知らなくて」
二人は少し困った顔をしたが、すぐに持ち直すと話し始めた。訓練中にシャナが襲われかけて強引なキスをされそうになった事、政征が切れてしまった事、今現在は織斑一夏はシャナとの接触を禁止されている事などを伝えた。
それを聞いたシオンは顔を真っ赤にしていた。恥ずかしさもあるが何よりもこの世界の織斑一夏に対する怒りが恥ずかしさを上回っている。
「(あの時より以前からシャナさんにそんな事を・・!どこまで愚かなんだよ!?この世界の俺は!)」
強く拳を握り締めて怒りをこらえるシオン、その様子を見て騎士の二人は首を傾げている。握り拳を解いてシオンは二人に声をかける。
「・・・俺もここで見てて良いかな?」
「ああ、構わないさ」
「ただし、俺達の隣でな?」
シオンは雄輔の隣で試合を観戦し始め、政征と雄輔はISの機密通信モードを使い、会話を始める。二人以外は試合に夢中で全く二人の会話を気にしない。
「(雄輔、このシオンって奴からサイトロンの波動を感じるぞ?)」
「(ああ、待機状態にしてあるISも気になるな。サイトロンを搭載しているとしたら)」
「(警戒はしておこう)」
シオンはこの二人が自分を警戒している事に気づいていた。それをあえて口にしない、口にしてしまえば益々、警戒を深めてしまうだろうから。
「(このニュータイプの感性?知覚?って言うのかな・・・便利なんだけど嫌にもなるな。真意を知っちゃうから気持ち悪いって思われやすいし)」
人類の亜種として覚醒したシオン自身、真意を見抜く感受性が嫌であった。真意を知ったとしてもあまり口に出さないように心がけよう、そんな風に考えている。
試合は鈴の方が押しているが、衝撃砲の片方を使用不能にしてしまったようだ。そのまま、青竜刀による接近戦を仕掛けているが、ハンデを負っている鈴が不利な状況になっている。それでも一夏を追い込んでいるのは鈴自身の技量が高いからだろう。
「負けるかよ!俺は・・・千冬姉の名前だけでも守る!」
「今のアンタがそんな言葉を口にするな!口にした言葉の重みを少しは理解しなさいよ!!」
鈴から聞こえた言葉をシオンは耳に入り、胸に響いていた。別世界で高尾まで響く言葉を聞いたことがなかったのだ。
「口にした言葉の重みを理解しろ・・・か、確かにな」
◇
試合を見つつ、シオンは己自身と同質である織斑一夏を見ていた。悪い所だけではなく良い部分、つまりは長所を見つけるために。だが、そうしているときであった。
「(なるほどな、確かにこちら側の俺はセンスだけはあるな・・・ん!?)伏せろ!!」
「何!?」
シオンの一言で皆が伏せるとアリーナ全体が揺れ、更にはアリーナのシールドが破壊されると同時に、そこから三機のISらしき機体が侵入してきた。
「(あれは・・・二人から聞いた事がある。確か、アシュアリー・クロイツェル社のテスト機!)」
シオンは自分の世界において聞いていた知識を思い出していた。リュンピー、ドナ・リュンピー、ガンジャールという名の機体。ただ、知識として知っているだけに過ぎず、実物を見るのは初めてだった。
「おい、あれって・・!!」
「ああ、間違いない!真っ黒に塗装されてISになってるがリュンピーとドナ・リュンピー、それにガンジャールだ!」
「嘘だろ!?あれはアシュアリー・クロイツェル社にしか無いはずだ!」
二人の様子からして、これは想定外の事だったのだろう。シオンは冷静に周りを見渡し、扉がロックされている事を見抜き、更には騎士の二人に話しかける。
「政征、雄輔!俺は避難誘導をした後、アリーナの二人を援護する!早く、シャナさんを安全な場所へ!」
「え?」
「な!?」
「早くしろ!ここは危険なんだぞ!」
いきなり名前を呼ばれた事に驚く二人だったが、シオンからの一言で持ち直し、二人は行動に移った。
「そう・・だな。と、とにかく!政征、お前はシオンが言った通りシャナさんを連れてフー=ルー先生の所へ行け!」
「あ、ああ。わかった!セシリアさん!シオンと一緒に生徒みんなの避難誘導を頼む!!」
「え、ええ!分かりましたわ!って、シオンさん!?」
シオンは既に行動しており、パニックになりかけている生徒たちに大声で叱りつけながら誘導していた。
「慌てるな!走ろうとするんじゃないぞ!!早歩きで避難するんだ!」
「皆さん、怖い気持ちは分かりますが、落ち着いて避難してくださいませ!」
二人の誘導によって生徒達は徐々に避難を完了させていく。そんな中で政征はフー=ルーのところへ向かい、シャナを預けた。
「フー=ルー先生、シャナを頼みます!」
「ええ、任せておきなさい。それよりも早くアリーナへ」
「はい!」
「政征、武運を・・・」
二人を確認すると政征は急いでアリーナへと戻るが心中で、間に合ってくれという思いもあった。
◇
アリーナでは鈴と一夏が三機相手に時間を稼いでいた。むしろ機体を損傷している鈴が一夏を補助しながら戦っているために決定打がない状態だ。
「もう!あの砲台みたいな奴!厄介だわ!」
「(シャナ=ミアさんは避難したみたいだな)」
連携してなんとかガンジャールは撃破したが、ドナ・リュンピーとリュンピーの連携に苦戦している。そんな中、一発のオルゴナイトのエネルギーがリュンピーに直撃した。
「大丈夫か!?」
「え・・・?し、白いラフトクランズ!?誰よアンタ!」
「俺はイチカ・フォーリア・シオン。そこに居る織斑一夏と同じ名前の生徒さ。紛らわしいからシオンって呼んでくれ」
「え?ああ、そう言えば居たわね!はっ!?」
「ふっ!」
シールドクローを掲げた状態でリュンピーからの刃を受け止め、鈴を援護するシオン。荒削りながらもその後ろ姿は正に騎士というのが相応しい。
「鈴、俺が大きめの一撃を加える。少しの間、遊撃を頼めるか?」
「ええ、任せなさい!(コイツなら、信用しても良いかもね)」
「(シャナ=ミアさん、逃げてくれたよな?)」
「おい!織斑一夏!戦闘に集中しろ!死にたいのか!?」
「なっ!?」
一夏を叱り飛ばし、シオンの指示通りに鈴はエネルギーを最小限に抑える戦いで遊撃を開始し、シオンは苦手な射撃をしつつ一夏の援護などを引き受け改めて二人が来るのを待った。
◇
走ってきた政征は息を切らしながらも雄輔と合流し、息を整えた。
「すまない、待たせた!」
「シャナさんは大丈夫みたいだな、行くぞ!」
リベラとモエニア、自由と城壁の名を冠する
だが、そこで目にしたのは一つの信じられない出来事であった。此処には二つしかないはずの
「ぐっ!」
「シオン!」
「大丈夫だ。それよりも鈴、気づかないか?」
「え?」
ドナ・リュンピーからの射撃を受けてしまい、後退するがシオンは二機から感じる違和感を口にした。
「動きが機械的すぎる。さらに言えば単調だ。だが、確証が欲しいな・・・」
「そういえば・・・確かに・・っ!?」
シオンはソードライフルをライフルモードに切り替え、単発モードでリュンピーの片腕を撃ち抜いた。
「おい!何やってんだよ!?あのISには人が!」
「よく見ろよ。あれが人か?」
一夏が咎めてきたのを制し、リュンピーの方へ視線を向けさせる。片腕を吹き飛ばされたリュンピーからは配線のコードがバチバチと電流を流しながら立ち上がっていた。政征と雄輔もシオンの隣に降り立ち、三人を援護する。
「あれはもしかして無人機?」
「恐らくはな」
「なら、遠慮なしに倒せるって事だよな!」
一夏の一言に嫌悪感を覚え、一瞬だけ苛立ったのはシオンであった。無人機は人間以上に正確な攻撃をしてくる事を忘れていないのかと。
「(下手したら俺も・・・こうなっていた可能性があったのか)」
そう考えていると同時にアリーナ全体に響くような声がした、それはアリーナの放送室に誰かが居る事を示している。
「一夏ぁっ!!」
声の正体は箒だった。アリーナの放送室に侵入し、マイクで叫んでいる。
「男なら・・・男ならそのくらいの敵に勝てなくてなんとする!!お前の剣はそんなにも脆いのか!?」
一夏に激を飛ばしているようだが戦場になっているアリーナでは何の意味もなさない。それを見たシオンは再び怒りが込み上げてきたが、それを代弁するかのように鈴が声を上げる。
「何やってんのよ!?アイツは!?危険だっていうのに!」
「バカな!何をしているのだ!?死にたいのか!」
「あの・・・馬鹿箒!!」
「!おい、シオン!!」
ドナ・リュンピーが放送室に狙いを定め、足を固定していた。ロングレンジキャノンの砲弾を受けたらなんの防御もしていない人間など即死してしまう。
ロックオンに気づいたシオンは放送室がある窓の前に突撃し、シールドクローを掲げスラスターで踏ん張りを効かせた。ロングレンジキャノンが三発発射され、シオンのラフトクランズ・クラルスが、クローシールドとオルゴンクラウドの出力を全開にして防ぐが反動は相殺出来ていない。
「ぐっ!?おおおおおおお!」
二発目までは耐え抜き、三発目の砲弾には耐え切れなかったのかシオンは吹き飛ばされ、防御していた腕からは裂傷した部分から血が流れている。
「う・・ぐううう」
「シオン!?」
「俺を気にしてる場合じゃない!政征!雄輔!!二人共、頼む!無人機を倒してくれ!!」
「分かった!」
「任せよ!」
雄輔と政征はオルゴンソードによる連携で無人機二体の武装と四肢を破壊し、戦闘不能にした。
「「チャージ完了!!オルゴンキャノン!広域モード!」」
「ヴォーダの深淵を垣間見よ!」
「ヴォーダの闇へと還るがいい!」
トドメと言わんばかりに放たれた二機のオルゴンキャノンは無人機達を飲み込み、残骸だけを残して完全に破壊し尽くした。
「う・・・痛ぅ」
「シオン!大丈夫!?」
「衝撃が凄かった・・・流石に血が出てる」
「シオン、済まないが・・・後で俺達二人はお前と話がしたい」
「ああ、色々聞きたいことがあるからな」
「わかったよ。俺も二人とは話がしたかったんだ」
鈴に支えられつつ、騎士の二人に返事を返すシオン。一夏も合流するがしきりに周りをキョロキョロと見回している。
「何キョロキョロしてんのよ!?一夏!」
「いや、別に・・・(俺が戦ってたの見ててくれたはずだよな?シャナ=ミアさん)」
「っ・・・」
知りたくもないのにシオンはまた一夏の真意を知ってしまった。歯ぎしりしてしまうくらいに強く噛み締め、嫌悪感を飲み込む。
己自身であるのに、此処まで嫌悪感が出るのかと思えてしまう。だが、己自身であるからこそ有り得た可能性なのだろう。
自分が居た世界では自分を支えてくれた人、自分を鍛えてくれた親友、そして自分の思いを受け止めつつしっかりと答えを出してくれた異性、それらを考えれば自分はどれだけ腐らず、偏屈的な正義感を持たずに済んだのかと思う。
そう考えながらシオンは鈴と騎士の二人に肩を貸して貰いつつ、アリーナを去るのだった。
やはり、紛らわしいので名前を変えました。
シオンの試練は同一の存在である一夏の真意に耐えて、己を倒せるかということになります。
どれもこれも己自身に有り得た可能性、しかもニュータイプに覚醒済みなので、この世界にいる限り嫌でも一夏の真意を見せられ続けます。
前作でのシャナ=ミアが襲われる場面まで行く予定ですが、長くなりすぎるのでかなり端折ります。
次回はシオンと一夏が大喧嘩します。原因はやはりニュータイプ能力によるものです。
※本来なら同一の存在は対消滅するのですが苗字が違っており、更にはラフトクランズ・クラルスの存在と搭載されているシステムのおかげでシオン自身が別の存在と世界から認識されているので対消滅は起こりません。ただし、別の方向で不利益が起こります。
篠ノ之箒(白の地球)の強化における能力覚醒(参考意見用)
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SEED因子
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イノベイター(純粋種)
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Xラウンダー
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念動力