Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~   作:アマゾンズ

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一夏とイチカ(シオン)のバトル。

己自身の可能性(悪い意味)を見せられる。


俺がお前でお前が俺で

一夏と約束した戦いの日の二日前。シオンは政征と雄輔に頼み込み、ヴォルレント1機を貸してもらい、三人で学園の整備室を借りてシオン専用のデータを作り、書き込んでいた。

 

「どうだ?」

 

「これで限界だ。これ以上タイトにしたらバランスが取れなくなる」

 

「一時的とはいえ、ラフトクランズから降りてヴォルレントを使うからな。機体のあらゆる面で性能がダウンするのは仕方ないことだろう」

 

「ダウンした性能は俺の腕で補うしかないか」

 

「シオン・・・一つ聞きたい、ラフトクランズ・クラルスだったっけ?どうして、それを使わずにヴォルレントで一夏と戦う事にしたんだ?」

 

「それは俺も気になっていた、どうしてだ?」

 

「試合を見ていた限り、今の織斑一夏はクラルスと戦うに値しない。仮にクラルスを使って戦ったとしても言いがかりをつけて自分の実力を認めないだろうさ」

 

シオンの意見には納得できるものがある。並行世界の織斑一夏であるシオン、同じ織斑一夏であるのにこの違いは何なのか?

 

シオンは自分達と同じように己を騎士として戒めており、それに見合う実力を持ち、己を高める為に厳しい特訓にも耐える精神力と正しい努力の仕方を知っている。

 

「何でだろうな・・・俺達の知る一夏とは大違いだ」

 

「ああ、そうだな」

 

「鍛えられたからな、自分の世界で」

 

シオンは鍛えてくれたのが自分の世界に跳ばされてきた未来の二人だという事を明かす事はしなかった。

 

下手な言動をすれば、未来が変わってしまう恐れがあるからだ。故に世界が修正できるレベルの行動しか起こしていない。

 

「余程、厳しくとも良い師匠に巡り会えたんだな?フフフ・・・」

 

「そうかもしれないな、フッ」

 

「ああ、最高の師匠に出会えたさ。ハハハ・・・(そうさ、その最高の師匠こそ、お前達なんだよ。政征、雄輔)」

 

会話をしながら、ヴォルレントのデータ書き換えを行っていった。その間、特訓内容が話題になっていく。

 

「特訓って気になるんだが・・・」

 

「どんな特訓をしてるんだ?お前は」

 

「そうだな。先ずはアリーナを5週して汗をかくだろ、柔軟体操を一時間かけてやった後に筋トレを30秒5セット、腕立て、腹筋、背筋をそれぞれやった後に、無手の格闘技や武術の組手を2時間、ISの起動訓練を3時間、それから・・・」

 

「ああ、もういい!もういい!!」

 

「聞いているだけで特訓の濃さが分かる。充分に理解した」

 

まだまだ未熟な騎士の見習い時代である為、二人は年相応に話をしている。それでも、騎士としての戒めや厳しさはしっかりと持っている。

 

そんな二人を見れたシオンは改めて、この二人と友情を深められた事に感謝していた。

 

 

 

 

 

 

 

そして、当日。シオンは立会人として騎士の二人とシャナ=ミア、そして代表候補生であるセシリアと鈴、無理を言って千冬とフー=ルーの二人にもお願いして来てもらった。

 

シオンは白くなったヴォルレントを手にしたまま、一夏がくるのを待っている。2分後に一夏は白式を纏った姿でアリーナへと飛び出してきた。

 

「シオン!絶対に勝って箒に謝らせるからな!(シャナ=ミアさんもいるのか!絶対に勝って良い所をみせないと)」

 

「・・・やれるものならな?ヴォルレント(コイツ!本当にシャナさんの事しか頭にないのか!もしかしたら俺自身がこうなっていたのか!?気持ち悪くて反吐が出る!)」

 

歯ぎしりを隠すようにヴォルレントを展開するシオン。だが、ラフトクランズでない事を看破した一夏は怒りを向ける。

 

「なんで、ラフトクランズじゃないんだよ!?ラフトクランズを使って戦えよ!(舐めやがって!馬鹿にしてんのかよ!?)」

 

「俺のラフトクランズは整備中だ。ヴォルレントはラフトクランズより少しだけ劣るが、強い機体に変わりはない」

 

一夏のこだわりを正当らしい理由で返すシオン。納得は出来ていない様子だが、一夏は雪片を構えた。

 

「それじゃ、模擬戦・・・試合を始めるわよ!」

 

鈴が放送室から合図を出し、試合開始のブザーを鳴らす。それと同時に一夏は突撃し、シオンへと向かってくるが、シオンはそのまま立っているだけだ。

 

「貰ったああああ!」

 

得意の唐竹割りが決まると思った矢先、信じられない事が起こった。まるで、背中を押されたような衝撃が一夏を襲い、バランスを崩して地面に倒れ、摩擦が足りなく滑っていったのだ。

 

本人からすれば何が起こったか、まるで理解できないだろう。シオンは開始位置で滑っていった一夏を見ている。

 

実際はシオンが突撃してきた速度を利用して背中を押しただけである。その状態とは、一夏が突撃し唐竹割りを仕掛け、それを受ける寸前のギリギリで回避しつつ、身体の裁きだけで背後へ周り、その背中を押したのだ。

 

「な・・なんだよ・・今の?(まるで蝶を捕まえようとして捕まえていなかったような・・・すり抜けた?)」

 

「・・・・」

 

シオンは何も言わず、視線だけで「かかってこい」と言いたげだ。だが、彼はヴォルレントの武装を何一つ使っていない。鍛錬で培った洞察と格闘武術だけで戦っている。

 

「このおおおおお!(コイツに勝ってシャナ=ミアさんに良い所を見せるんだああ!)」

 

唐竹、袈裟斬り、横薙ぎとあらゆる斬撃を繰り出すが、シオンはそれを避けてばかりで反撃を一切しない。逆にそれが一夏にとっての挑発となっている。

 

「くそおおお!何で、何で反撃して来ないんだよ!」

 

「・・・・(右からの袈裟斬りが多く使われていて、片腕では横薙ぎを併用するのか)」

 

シオンが反撃しない理由。それは実力差を見せつけるためではなく、一夏の攻撃のリズムを見極めるためであった。

 

人間というものは必ず自分のリズムというものを持っている。それを見極めた時、相手の行動を予想しやすくなる。

 

「・・・(よし、この世界の織斑一夏のリズムは分かった)」

 

ニュータイプに覚醒しているシオンだが、それを使わずに自分の洞察だけでリズムを見極めた。だが、見極めたとしても、その通りに来るとは限らない、予想外の時にこそニュータイプの力を使うべきと自分に言い聞かせていた。

 

「くらえよおおお!」

 

再び唐竹割りを打ち込んできた一夏に肩を入れ背を向けると、シオンはその勢いを利用した背負い投げを決めて地面に叩きつけた。

 

「ぐはっ!?」

 

「此処からは、攻撃させてもらう」

 

開始位置から垂直に飛ぶとシオンは拡張領域からオルゴンガンをセレクトし、それを単発モードで倒れた一夏へ放ち、上昇していく。咄嗟にそれを転がる事で回避した一夏だが、回避に専念せざるをえない状態だ。

 

「あぶねえ!?」

 

「休ませはしない!そこだ!!」

 

一定まで上昇し、急速落下を利用しつつ背後へと旋回した後、アリーナへ下りてくると今度はそのまま地面スレスレの状態でオルゴンガンを連発し牽制してくるシオン、その動きに最も驚いたのは射撃を主に扱うセシリアだろう。

 

「垂直落下からのスラスター切り替えと平行して行う水面軌道上移動による牽制射撃・・・!極めて難しいとされるあの技術を習得しているなんて・・・!シオンさんは一体・・?」

 

「シオンはやっぱり只者じゃないわね・・あの動きと戦略性、代表候補生になっていてもおかしくないレベルだわ」

 

鈴も拳を握りながらシオンの試合を見ている。一夏が相手とはいえ高度な戦闘技術、戦略性を見せられ自分の中にある戦いへの飢えが鈴を奮い立たせる。シオンと手合わせしたいと。

 

 

 

 

 

 

 

[推奨BGM スーパーロボット大戦OGムーン・デュエラーズより【Fate】]

 

 

シオンの放った弾幕は一夏を狙ったモノではなかった。狙っているのはその唯一の武器である雪片である。

 

「ぐうう!?射撃武器を使って来やがって!」

 

「武器の特性など関係ない、ISの戦闘においては特にな(やはり、手放させなきゃな)」

 

弾幕を展開しつつ、緩急をつけることで自分のリズムを一夏に悟らせないよう対策する。同質の存在ならば、自分が使用した技術を曲がりなりにも使ってくる可能性が高い。それを考えた上であった。

 

「・・・ヴォルレントでどこまで出来るか。それに俺は射撃が苦手だし」

 

ラフトクランズとは違い、ヴォルレントで狙撃するには自分の眼を頼りにしなければならない。ましてや狙撃で相手が持っている武器を撃ち抜かなければならない。

 

シオンの狙撃は自分の世界において成績は低い、未だセシリアやシャルロットなどから教えを請いている身だ。だからこそ、己の力で成功させなければならない状態へと追い込む、そうやって自分を成長させてきたのだから。

 

「!シオンの動きが止まった!!そこだああああ!」

 

勢いに任せて瞬間加速で突撃してくる一夏。シオンにとっては慣れた速度だが油断はしない、ギリギリまで引きつけ狙いを定め、握られた雪片を狙撃し、それを手から弾かせることに成功した。

 

「なぁっ!?雪片が!(銃で刀を弾くなんて!)」

 

「さぁ、どうする?頼みの武器は後ろへ転がったぞ?」

 

シオンはオルゴンガンの銃口を向けたまま、武器は後ろにあると一夏に言う。確かに自分の後ろには白式の唯一の武器である雪片が転がっている。だが、背を向けて武器を取ろうとすればシオンは間違いなく撃ってくるのを一夏は理解できていた。

 

「くっ・・・・(ここで降参なんかしたらカッコ悪すぎる!)」

 

「・・・・・(さぁ?どうやって持ち直す?俺ならもう、出来上がっているが)」

 

シオンは銃口を一夏から離そうとはしない、一夏が僅かに足を引いたのも見抜いている。武器を手にしなければ勝つ事は限りなく不可能、何か一瞬の隙を作り出す事は出来ないかと一夏が思ったその瞬間・・・。

 

「はあああああああ!」

 

「うぐっ!?」

 

シオンの背後から斬撃を繰り出した誰かがいた。一夏だけに集中し、ニュータイプの力に自ら制限をかけていたシオンはまともに当たってしまい、その場で膝を着いた。

 

 

 

 

 

背後からシオンを斬ったのは打鉄を纏った箒であった。打鉄は無断借用したか、束の名前を使ったか、訓練中の生徒から強引に取り上げて纏ったかのどれかだろう。だが、問題はそこではない。

 

「一夏!早く、刀を拾え!」

 

「え、あ・・ああ!」

 

シオンが膝をついている隙に一夏は雪片を拾い、構えをとる。箒は隣に立ち刀を構えた。それを見ていた立会人達は非難の声を上げようとしたが、意外にもそれを制したのはフー=ルーであった。

 

「篠ノ之!?アイツ!」

 

「織斑先生、大丈夫・・・寧ろ見物になりますわ。あのシオンという生徒の実力が見れますわよ」

 

「何!?」

 

シオンは立ち上がると二人を見据える。箒の顔はやってやったぞという達成感を得たような表情をしており、一夏の方は何があったのか理解が追いついておらず、箒に合わせている。

 

「・・・1対1の戦いに乱入するとはな。そうまでして俺を潰したいのか?篠ノ之箒、織斑一夏」

 

「そうだ!お前は私に泥を塗った!だからこそ、お前を断罪する!」

 

「ち、ちが・・お、俺は!」

 

「もはや問答無用・・・!死力を尽くして来るがいい!」

 

右腕を振ってオルゴンダガーを出力し、格闘技の構えを取る。オルゴンダガーは腕から出力されるために格闘と似たものになってしまうからだ。

 

シオンは少しの間、目を閉じ自分の中に抑え込んでいたニュータイプの感覚を目覚めさせ、更にはオルゴンクラウドの転移までも解除してしまった。更には彼から発せられる気迫が一般の常人を超えている。

 

「惑わすなぁぁ!お前の声を聞くと私が惑う!私はお前の後ろにいるシャナ=ミアも断罪せねばならんのだ!(コイツは一夏と同じ何かを持っている。コイツを殺し、シャナ=ミアを殺し、一夏の目を覚まさせる!)」

 

箒の言葉と真意を見抜いたシオンは、この世界の箒の歪みを知ってしまった。一つの憎しみだけで此処まで人間は歪むのかと。だが、この憎しみは一方的な逆恨みに等しい。男が女に惚れる瞬間は突然なのだ、しかし、箒の考えはまるで、一夏の考えや恋慕の感情を認めず、己の立場すらも全てが己自身の物か己が上だと思っている。

 

「もういい、お前は俺の知る箒じゃない・・・!倒す!」

 

オルゴンダガーを構え、瞬間加速を使い箒へと突撃する。この基本的な動きですら今の箒には驚異的であった。

 

「ぐっ!?重い!?」

 

「当たり前だ、加速の速度と俺の腕力、衝撃、体重、あらゆる重さが乗っているんだからな」

 

だが、競り合いをせずにすぐに押し返し、左手にオルゴンガンを持つと一夏へと銃撃する。

 

「ぐあっ!?」

 

「お、おのれ!シオォォォォン!」

 

剣では負ける事がないと思っていたのだろう。一夏以上の剣道の実力を持つ箒だが、シオンは簡単に避けてミドルキックを打ち込み、アリーナの壁際へ箒を激突させてしまう。

 

「箒!」

 

「自分の心配は不要なのか、織斑一夏ァ!」

 

オルゴンダガーをスラスターの左部分に突き刺し捩じ込んだ後、すぐにダガーを引き抜いて距離を取ると同時に背後から迫る刃を感じ取り、ダガーでその刃を切り返し逆に斬りつける。

 

その反応にまるで自分の攻撃が読まれているような錯覚に陥る箒。だが、シオンは容赦なく攻撃してくる。更には一夏が瞬間加速を使う前にオルゴンガンで弾幕を展開し、動きを封じる。

 

「うあああ!?」

 

「ぐああああ!」

 

2対1だというのに圧倒的に押しているシオン。だが、冷静に試合運びを見ている政征と雄輔、悪態をついていたセシリアと鈴も冷静になり改めて試合を見て、気づいた事があった。この試合は2対1ではなく1対1と変わらない試合だということに。

 

そして、誰もが思っていた事を千冬が口にし始める。それを皆が聞きフー=ルーが隣に立った。

 

「シオンが相手では、あの二人は二人で一人分の実力になっているという訳か・・・それ程までに実力差がありすぎるのだな。一夏はIS学園で普通に高校生活を送っているだけで、篠ノ之は己の実力を過信している。シオンがどのような訓練や戦いをして来たかは知らんが・・・血の滲むような努力を重ねてきたのは分かる」

 

「ええ、それには同意しますわ。おまけにあのシオンという子は実戦を経験していますわね、訓練だけではあれだけ冷静かつ判断する事は出来ませんわ。遠距離近距離の切り替えも」

 

その間にもシオンは二人を圧倒し続けた。判断は冷静だが頭の中と腹の中は怒りで煮え繰り返っている。それを戦闘にぶつけているだけだが、怒りに任せる事は未熟な騎士がする事だ。怒りが沸騰しても心を鎮めなければ戦いには勝利できないのだから。

 

「ぐ・・おのれ!何故・・・!何故、貴様に私の斬撃が当たらないのだ!?」

 

「知りたいか?篠ノ之箒。お前の斬撃は剣道そのものだからだ。剣道の試合なら確かに俺はお前には勝てない」

 

「それなら!」

 

「だが、これは剣道の試合じゃない。ISの戦闘だ!ISは近距離だけで相手は挑んでこない。近距離、中距離、遠距離と得意な距離を維持するのは当たり前の事、お前の思っているように試合や相手が動くなど有り得ないんだ!」

 

「ぐ・・っ!」

 

箒からすれば銃器を使う相手は卑怯者という認識なのだろう。だが、それでは世界大会に出ているIS操縦者も卑怯者という事になる。ISの常識を知っていれば当たり前の事だと認識できるが、己が勝ち取った剣道の実績が通用すると考えている為に認められないのだろう。

 

「箒を責めるな!同じ条件で戦わないお前が!!」

 

「何か勘違いしているな織斑一夏、このヴォルレントは訓練機だ。拡張領域が極端に少なく武装もオルゴンガンとオルゴンダガーの二つのみ。訓練機である故にラフトクランズよりも反応速度が鈍い、それを俺は自分の腕で補っているだけだ。使える武装が少ないのなら戦略を考えるのが戦闘における定石だ」

 

「な!?その機体が訓練機だって!?(ハンデを付けられてシオンに戦われていたのかよ!?)」

 

「ああ、高度な訓練をする為のな」

 

一夏は驚きを隠せなかった。専用機レベルの動きをしているヴォルレントが訓練機だとは思わなかったのだ。つまりシオンは格闘技の試合におけるハンデを付けて戦っていたという事になる。格闘技の試合においては重りをつけてウェイトアップする事でハンデをつける。

 

ラフトクランズよりも低い反応速度、スラスターの出力、武装の少なさ、それを踏まえたうえでの高度な戦闘力を見せつけてくる。何よりも専用機と訓練機の組み合わせとはいえど2対1で圧倒されているのが現実である。

 

「認めん!認めんぞ!私は貴様を認めない!」

 

「箒!ダメだ!」

 

箒は感情のまま突撃し刺突を繰り出すが、シオンはそれを見極め僅かな動きで横へ避けると箒の顔面を掴み、そのまま地面に叩きつけた。合気道と似ているが全く異なる技術の一つだ。あまりの衝撃に箒は声を上げてしまう。

 

「がはっ!?」

 

「さっきの刺突から刃を横にしていたのなら横薙ぎの攻撃に切り替えられたな?まだ、そこまでの技術をお前はまだ持っていないか、篠ノ之箒」

 

シオンは容赦なくオルゴンダガーを突き立て、打鉄のエネルギーをゼロにした。このアリーナではエネルギーがゼロになった機体は戦闘行動を行うことができず、ピットへ戻ることしか許可されていない。学園から貸し出されている訓練機であれば尚更だ。

 

「ぐ・・・何故だ!?私はお前よりも強いはず!何故、勝てないんだ!お前にも、他の奴にも!」

 

「さぁ、な。自分で考えて、自分で答えを見つけろ。ヒントはお前の中の傲慢さを理解する事だな(俺の世界の箒は這い蹲ってでも努力し、己以外の強者を認められる女性だ。だからこそ惚れたんだけどな)」

 

「私の中の傲慢・・・だと、ふざけるなぁぁぁ!」

 

大声を出す事しか今の箒に抵抗できる手段はなかった。シオンは背を向けて一夏の目の間へと立つ。

 

「箒が倒されたのかよ!?」

 

「・・・・」

 

「くぅっ・・・!負けてたまるか!お前にだけは負けられないんだ!」

 

「(使うのか?零落白夜を)」

 

シオンは零落白夜の危険性、デメリットを嫌というほどに理解している。しかし、危険なのはそれではない自分の技術を覚えられた上での零落白夜による斬撃が最も危険なのだ。

 

「これで終わりにしてやる!零落白夜!」

 

一夏は無意識にシオンが使ったスラスターの緩急を使っていた。己のリズムをずらす事で間合いを図らせない技術の一つ。スラスターが一つ潰されてはいるが、姿勢を安定させ突撃する事は可能だったのだ。

 

「(やはり、無意識とはいえ覚えてたか!)」

 

別世界の住人とはいえ同じ存在だからこそ、一夏はシオンの技術を吸収してしまう。どんなに手加減しても一夏からすればシオンは鏡面の存在であり、別世界から来た師になってしまう。

 

「なら、仕方ない」

 

シオンは零落白夜を回避すると同時に一夏の背後へと回り、ロングレンジビームを放ったがこれで終わりではない。

 

「オルゴンキャノン!シングルモード!!」

 

両肩、両脚部からも余剰エネルギーを放出し最大出力のエネルギーを発射した。その際に砲身を保護する為なのか結晶が付き、更には相手を結晶体へ閉じ込め爆発した。

 

「ぐあああああ!?」

 

瞬間、白式のエネルギーもゼロになり戦闘行動が不可能になった。瞬間、終了のブザーが鳴りシオンは一夏へ近づく。

 

「約束だな。俺や政征、雄輔、シャナ=ミアさんに付き纏うなよ?(怒りに任せてしまったな、反省しないと)」

 

「ぐ・・ちくしょう!(ふざけんな、認めるかよ!シャナ=ミアさんは俺が守る人だ!)」

 

「・・・・・付き纏うなら、今度は本気でヴォーダの闇に還すぞ?」

 

「っ・・・う」

 

シオンの目は輝きのない冷たい目に変わっていた。それは今度は容赦なく命を奪うといった意思表示であった。シオン自身、騎士ではあるが騎士は戦士であり、戦士は己の手が汚れる事を教えられそれを覚悟している。

 

清浄の騎士の称号を持っていても破壊でしか、清らかな浄化を行う事が出来ない。それが己自身の騎士としての在り方。己が綺麗なままで何かを守れるものなど何もない、それこそが戦士の真実。

 

この世界の織斑一夏は己が綺麗なままでシャナ=ミアを守れると思い込んでいる。シオンはその考えこそが、この世界の織斑一夏を許容出来ない原因だと気づいた。

 

惚れ込んだ女性を守りたいというのは男ならば誰もが一度は持つ想いだ。自分自身もそうであったのだから、理解もできる。

 

だが、この世界の彼は力のあり方を勘違いしている。力は無色な液体のようなもの、手にした相手の色によって変化する。彼は姉である千冬と同じ零落白夜という名の力を得て己が姉と同じ事も力を得たとも思っている。力の在り方を誰も教えなかったのだろう。だが、教えた所でその言葉に聞く耳を持つのだろうか?

 

そう考えながらシオンは背を向けて歩きながらピットへと戻っていこうとしたが、膝をついている一夏が大声を上げる。

 

「(この世界は俺自身の有り得た可能性・・・騎士ですらない子供のままの憧れを持っただけの俺自身)」

 

「待て、シオォォン!」

 

「一つだけ現実を教えてやる。自分が綺麗なままで全てを守れると思うな、時には卑怯者、時には悪にならなきゃ守りたいものは守れない。何かを切り捨てなくちゃ守れない」

 

「なんだよ・・・それ、そんな訳あるか!俺は俺に関わってきた全てを守ってみせる!それが俺の役目だ!(そうだ、みんなもシャナ=ミアさんも俺だけが守るんだ!)」

 

「(大層な理想だな・・・子供そのものだが)いい台詞だ。感動的だな・・・だが無意味だ。その役目がお前一人で出来ると言うのならやって見せろ。その前に目の前の現実に押し潰されるだろうよ」

 

そう言い残してシオンはピットへと戻った。この後にシオンはこの世界の織斑一夏を最も許せなくなる出来事に遭遇する事を彼自身、知る由もなかった。




スーパーロボット大戦OGムーン・デュエラーズにて使用されたアレンジ曲の【Fate】。

今のシオン(イチカ)に似合っていると作者は思います。騎士としての自覚と己自身に有り得た悪い意味の可能性から逃げようと彼はしません。

シャナ=ミアに関しては近衛騎士として守れるだけで良いと考えて吹っ切れており、箒に関して、この世界においてはあまりに違いすぎると考えるシオン(イチカ)。

彼が自分の世界の箒に惹かれたのは、訓練で倒されたとしても何度も何度も立ち上がって騎士の二人に向かっていく姿を見て美しいと思ったからです。

鈴に関しては訓練やサポートなど箒とは違い、傍で支えてくれている異性として惹かれています。

だからこそ、シオン(イチカ)は悩み苦しみながらも可能性を探し続けるのです。理想ばかりを口にするこの世界の一夏を許せなくなったのでしょう。

次回は時間が飛んで臨海学校の準備から入ります。

篠ノ之箒(白の地球)の強化における能力覚醒(参考意見用)

  • SEED因子
  • イノベイター(純粋種)
  • Xラウンダー
  • 念動力
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