Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~ 作:アマゾンズ
戦い二戦目に突入寸前。
自ら望んでいた栄光を手にする。
シオンは走り続けていた、足を止めたら間に合わなくなると確信を持って。その途中、雄輔とフー=ルーを連れた鈴と合流した。
「シオン!?あんた、どうして!」
「鈴!?いや、今はそれどころじゃない!急がないと!」
「私も行くわ!」
「(間に合え、間に合ってくれ!頼む!)」
シオンは走りながら不安と戦っていた。この時の悪い予感は必ず当たると確信出来てしまっている。一分一秒を争うこの状況で少しでも早く走り続ける。そして、ある部屋の前に差し掛かった時、悲鳴が聞こえてきた。
「嫌!!嫌やあああ!!誰か!誰かあああ!やめてええええ!」
「今の声!?この部屋から聞こえたぞ!」
「シャナさんか!!くそっ!鍵が掛けられてやがる!」
「フロントに連絡を!」
「それじゃあ、間に合わないわ!フー=ルー先生、後で反省文でも謹慎でも、勝手に処分して!二人共、退いて!」
ドアを開けようと、ドアノブをガチャガチャするシオンと雄輔だったが、鈴の叫び声に雄輔とシオンは引き下がり、鈴は扉の前で武術の構えを取った。
「すぅ・・・・破ッ!!」
鈴の蹴り技によって鍵が壊れ、ドアが強引に開けられた。彼女達の中では緊急事態なのだから、なり振り構っていられないのが事実だ。
しかし、鈴の蹴りの威力に三人は唖然としていた。
「うそーん・・・(そういえば、この世界の鈴って、生身の素手でISを壊してしまう五人の格闘家に鍛えられたって聞いてたのを忘れてた)」
「マジかよ・・・」
「ボーッとしてないで入るわよ!」
急いで部屋の中に入り麩を思い切り開けた瞬間、そこには信じがたい光景があった。一夏が、ほとんど裸に近い状態のシャナ=ミアを布団に組み伏せた状態にして胸を掴んでおり、下半身の下着をはぎ取ろうとしていた寸前であった。
「!!な、なんで!?」
「何を・・・!!」
「やって!えっ!?」
鈴が行動を起こす前にその横を素早く横切っていった影があった。それは言わずと知れたシオンだ。
「何をやってやがんだ!この、クソ野郎がァァァ!!」
鈴以上に素早く、また雄輔以上に正確にシオンは、右ストレートパンチを一夏の顔面へと思い切り打ち込んでいた。その衝撃で一夏は吹っ飛ばされ、畳まれていた布団へ頭から突っ込んだ。
「ぐぼらぁ!?」
「シャナさん!っ・・!?これを着て下さい!大丈夫ですか!?」
シオンは急いでシャナ=ミアへと駆け寄り、その姿を一瞬見て自分が着ていた上着を裸に近いシャナ=ミアに渡して着せた。
「大丈夫です・・・・胸は触られましたが、犯されてはいません。ありがとうございます、清浄の騎士よ。貴方が来てくれなければ、この身は汚されていました」
「!!いえ・・・。鈴、フー=ルー先生!シャナさんを頼みます!!(やっと・・・やっとだ。手に出来なかった栄光を・・・ようやく手にする事が出来た。シャナさんをこの手で守ったという栄光を・・・!それと、お前への誓いを果たしたぞ!政征!!)」
「っは!?ええ、任せなさい!」
「シャナ=ミア様、早くこちらへ!」
「はい」
シャナ=ミアはシオンから借りた上着を着込み、フー=ルーと鈴の元へと駆け寄った。二人はシャナ=ミアを護るように立ち、鈴が前へ出て構えをとった。
「っぐ、シオン!俺の邪魔をしやがって!」
「こんな現場を見れば、誰だって邪魔をするに決まってるだろうが!!」
一夏が殴られた箇所を手で押さえつつ、立ち上がるがその視線はシャナ=ミアしか映っていない。だが、触れさせまいとシオンを始めとする鈴、雄輔、フー=ルーがシャナ=ミアを守っている。
「っ、何で・・・俺はアイツの代わりにシャナ=ミアさんを、俺が剣になって守るって!」
「私の名を呼ばないで下さい!!」
「!?」
シャナから発せられる強い言葉に一夏はたじろいだ。その声の強さに一夏以外の四人も驚く。今のシャナ=ミアは皇女として言葉を発しているのだから当然だろう。
「ハッキリと言います、貴方に私の剣を名乗る資格はありません!!」
「そ、そんな!俺は!!」
「私は貴方を拒絶します!これは私が心から思う事。今後一切、近づかないでください!!」
「っっ!?」
一夏はシャナから発せられた拒絶の言葉にショックを受け、放心状態になった。だが、それに追い討ちをかけるようにシャナ=ミアはリボンを解き、その中にあった物を四人に見せた。
「それに、貴方は言い逃れは出来ません。これに貴方の犯した罪が記録されています」
「これは?小型のICレコーダーか?」
「それも録音状態になってるわね」
「こんな物を一体どこで手に入れたのです?」
「(あの時に買い物があるって買いに行ったのはこれか!流石だな、政征)」
三人がなぜこのような物を持っていたのかという疑問に、シャナ=ミアは当然のように答えた。
「政征が渡してくれたのです、私を守ることになるだろうと」
それを聞いた一夏は怒りの表情を見せていた。自分の証を刻もうと行動した結果、己の罪の記録を取られてしまったからだ。
「なんで、アイツはいつも・・・いつも俺の邪魔をするんだよ!」
ICレコーダーを奪おうと襲いかかったが、目の前立っていた鈴が立ち塞がり、強烈な一撃を頬に撃ち込んだ。
「が!?あ・・・り、鈴!?」
「女を物としか見ない奴は!拳に砕かれ地獄へ落ちろぉ!!」
「ぐ、うおおおおおお!」
これで終わると思っていたが、一夏は火事場の馬鹿力を発揮したかのように出口付近に居る三人を押しのけ、逃走してしまった。
「しまった!」
「此処は私と鈴さんが何とかします。青葉さんとシオンさんの二人は早く彼を追いなさい!彼の目的は恐らく」
「!没収された白式か!?」
「まずいぞ!あれは今、織斑先生の部屋にある金庫の中に保管されているはずだ。もし、何らかの方法で織斑先生が動けなくなっているとしたら!」
「それを持って逃走・・・いや、恐らくは福音の処へ行くはず!」
「福音と戦って己の強さの証明をするために・・か!」
「急ぎなさい!二人の騎士よ!!」
「「御意!!」」
シャナ=ミアを鈴とフー=ルーに任せ、急いで千冬の使っている部屋へと走り出す二人。それを見送ったシャナ=ミアが呟くように口を開いた。
「二人に・・・武運を」
◇
部屋に到着した瞬間、千冬は気絶しており一夏はその手に白式を持っているところであった。
「それを置いて戻れ、本当に戻れなくなるぞ!」
「もう、戻るつもりなんてない!福音を倒せば、きっとシャナ=ミアさんだって!」
「どこまで愚かな・・・っ!」
殺気を感じたシオンが振り返り、雄輔を守った。それは木刀らしき物を持った箒が殴りかかってきたからだ。
「一夏!先に行け!」
「っ!篠ノ之箒、お前も戻らないつもりか!?」
「うるさい!一夏の邪魔はさせん!(一夏は私のモノだ!私が守り、私が愛する!)」
両手で箒の木刀を止めつつ、箒と言葉を交わすシオン。だが、箒の言葉とその中にある真意を覗いてしまい、既知感がせり上がって来る。
「(なんという自分本位の思い!戻る戻らない以前の問題じゃないかよ!!)」
「ありがとな、箒!」
一夏は白式を展開し、部屋の窓から飛んでいってしまう。それを追いかける雄輔だが、間に合う事はなかった。それよりもシオンを助けなければならないと思っていた矢先であった。
「ふん、一夏の為の時間は稼いだ。私も此処には用はない」
そう言って木刀を手放し、素早くシオンから離れると部屋から出ていってしまう。恐らくは紅椿は使えない為に訓練用の打鉄を持って一夏の後を追ったのだろう。
「雄輔、織斑先生を」
「ああ、織斑先生!しっかり!」
声をかけ、軽く頬を叩き続けると千冬は意識を取り戻し、二人が見え始める。意識が少しずつ覚醒して来た様子だ。
「青葉・・・・?それに・・・シオ・・ンか?」
「織斑先生、一体何があったんです?」
「う・・・一夏に何かを押し付けられて・・・そこからは覚えていない」
「(スタンガンか何かか?)織斑先生、実は」
シオンと雄輔は先程まであった出来事を千冬に話し、一夏と箒が無断で出撃してしまい取り押さえることが出来なかった事を正直に話した。意識がハッキリした千冬は二人を労った後に怒り心頭な声を上げた。
「あの・・・大馬鹿者が!やりかねないと思っていたが、まさか本当にやるとは!・・・うっ」
「織斑先生、無理しないでください。さっきまで気絶していたんですから」
「すまんな・・・私の権限でお前達の出撃を許可する。代表候補生の奴らにも伝えてくれ。私はこのザマで動けん。指揮権限をフー=ルー先生に一時譲渡する。フー=ルー先生の指示に従って動くようにな」
「分かりました」
「今は休んでいてください」
「本当にすまん、それとシオン・・・」
雄輔が先に出ていきシオンも後に続こうとした時、千冬に呼び止められ振り返った。
「なんですか?」
「何故、この世界のアイツは・・・お前のように成れなかったんだろうな?」
その質問は束と同じものであった。あの時は答える前に束に離れられてしまい答えられなかったが、千冬にならと答える事にした。
「憧れであった貴女と同じ姿、同じ力を持った出来事は切っ掛けでしょう。
そう言い残し、シオンは部屋から出ていった。並行世界の
「まさしく、その通りとしか言えんな。私自身も解ってはいた、だが・・止める手段がなかった。ああしてしまったのは私の罪だな」
自虐的に呟くと千冬は手を壁につけてゆっくりと起き上がり、最初の罪を償おうと行動を開始した。
◇
話を聞いた代表候補生達と雄輔、シオン達は脱走しようとする二人を追跡し福音が迫って来そうなポイントへ付いた。そこには当然、一夏と箒もいる。
「!しつこい奴らめ」
「箒、退いててくれ。シオン!お前のおかげで全てが台無しだ!シャナ=ミアさんを守る騎士になれなかった!」
その言葉を聞いて怒りのままに言葉を出そうとした鈴を手で制し、シオン自身が前へと出た。
「シャナさんを守るだと?あんな事をしておいてどの口が言う!?」
「あんな事?」
「あんな事とは一体何ですの?」
「シャナ=ミア姉様に何かあったのか!?」
「みんな、此処から先はあいつに任せましょう?何が起きたか、後方で私が教えてあげるから」
代表候補生達は少し、距離を置くとあの部屋で起きた事を説明し始めた。それを聞いた鈴以外のメンバー達は烈火の如く怒りを見せ、突撃しそうになっていたがシオンに任せた方が良いと宥めた。
「俺の証を刻もうとしたのに、政征を忘れさせて、俺がシャナ=ミアさんの騎士になるはずだったんだ!」
「シャナさんの騎士?ふざけるな!!お前なんか騎士のメッキを塗りたくった下衆だ!これが
「!?」
指を差して怒りの声を上げるシオン。だが、シオンの言葉に一夏は一瞬だけ聞き逃せない言葉があった。彼は確かに言った。
「シオン、お前は一体・・・何者なんだ?」
「俺は俺・・・お前と同じ一夏という名前を持つだけの存在、イチカ・フューリア・シオン!それだけだ。清浄の騎士として、そして
ソードライフルを向けるシオンだが、それ以上にシャナ=ミアの近衛騎士という言葉に一夏は激しく反応する。近衛騎士という事は最もシャナ=ミアの傍に近く、またシャナ=ミアが信頼を置ける人物でもあるということである。それを許容できる程、彼はまだ成長できていなかった。
「お前・・・お前が近衛騎士だと!?ふざけんじゃねえーー!」
「一夏!!」
箒の静止も聞かずに刀を抜き、シオンへと突撃し刃を交える。雄輔はこれはシオンなりのケジメなのだろうと捉えていた。今、シオンは更なる成長をした表情をしているのだから。
「ああ・・・今のお前ならそうくるな。だが、俺は違う。この戦いを政征の復活に捧げよう!」
「何!?」
「俺もシャナさんを好きになった。告白もした・・・でも、届かなかった。それでも俺は構わない、俺は別の女性を好きになっても、シャナさんの近衛騎士として戦う!その為にも、クラルス!俺と政征の可能性を繋げてくれ!」
シオンは距離を離すと己のニュータイプとしての感覚をクラルスへとぶつけた。その思いを受け取ったクラルスは再び可能性の獣の魂を目覚めさせる。装甲が展開し、シオンを「変身」させていく。以前とは違い、赤い光ではなくオルゴンを体現するかのような緑色に輝いていた。
「シャナ=ミアさんに告白しただって・・・?じゃあ何で、自分のモノにしなかったんだ!?お前は!」
「さっきも言っただろう?振られたからだよ。恋人になるだけが全てじゃないんだよ」
理解が出来ない。告白したのなら恋人にするのが当然ではないのか?だが、目の前の男は恋人でなくてもいいと断言している。話をしている間にクラルスの「変身」が完了してしまった。
「綺麗・・・」
「機体が変身するなんて聞いた事もないよ」
「クラルス、正に清浄の名の通り美しい輝きですわ・・・」
「政征兄様や雄輔師匠と同じラフトクランズでも「変身」を行うのはシオンのラフトクランズだけなのか・・・」
前回は遠くで輝いているという事しか知らなかった。だが、間近で可能性の獣となったクラルスを見たのは初めてであり、その輝きを美しいと感じている。
「やはり俺はお前は気に食わない!負けられない!お前を倒して!福音も倒して、俺が強いという事を示してやる!お前のせいで俺は!」
「ま・・・れ」
「シャナ=ミアさんを俺のモノに」
「黙れ!戦士の風上にも置けぬ者、織斑一夏!武名を恥で汚す前に、我が剣でヴォーダの闇へ誘ってやる・・・・・・覚悟!」
「な、なんだよ。その言葉は!?」
「あの言葉は・・・フューリア聖騎士団の!?」
その言葉に一番驚いたのは雄輔であった。シオンがフューリーの騎士が反逆者などに対する口上を述べたのだ。
フューリーではないはずのシオンが何故、フューリーの騎士の口上を知っていたのかは分からない。だが、彼が自分の世界で騎士として己を鍛えてきたのは間違いない。
「来い、織斑一夏!その汚れた欲望、我が剣で清めてやる!」
「っ!負けるかああああ!」
瞬間、再び二人の刃が交差し、戦いが始まった。
シオン(イチカ)は間に合いました。そして、望んでいた栄光を手にすることが出来ました。
これでシオン(イチカ)は騎士として一段と成長しました。クラルスも完全に覚醒しましたが、それは危険と隣り合わせです。
その危険とは「可能性の獣」という時点で察しが付いていると思います。
次回は政征の復活と雄輔の二人へ可能性の種子を植え込みます。
そう、元の世界で不死鳥と百獣の王を宿した可能性です。
感想をお待ちしています。
※追伸
クラルスの危険性の考察を感想にてお待ちしてます。
篠ノ之箒(白の地球)の強化における能力覚醒(参考意見用)
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SEED因子
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イノベイター(純粋種)
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Xラウンダー
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念動力