Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~ 作:アマゾンズ
騎士の二人も。
生まれ変わった春始がIS学園へと向かっている最中、IS学園の所属のメンバー達は接近戦の訓練をしていた。今回は珍しく千冬とフー=ルーの二人も参加している。最も危険な行為をさせない為の監視ではあるが。
「また、攻め手を剣道にしようとしているぞ!」
「す、すまない!もう一度頼む!!」
箒はあれから剣道から実戦用の剣術を叩き込まれていた。無論、剣道は剣道の良さがあると踏まえてはいるが、彼女の身体に染み付いた剣道の癖が剣術を学ぶ際の枷になっている。
今回のコーチは政征であり、彼は騎士の師であるセルダから教わった剣術を伝授している。
だが、剣道を失いたくないとの嘆願もあった為に剣術と剣道を区分けして学べるように訓練している。
だが、剣術の柔軟な手数と対応力に箒自身がついて行けない事も露呈してしまったのだ。
「止め!一撃必殺を狙うなら剣道、通常で対応するのは剣術って言ってるだろう?」
「う・・・すまない・・・どうしても剣道の足運びをしてしまうんだ」
「うーん、それなら両足の踵を軽く浮かせた状態で軸足を使い分けてみたらどうだい?」
「!やってみる」
軸足の切り替えを提案され、さっそく実践に移す箒。剣道を失わずに剣術を極める事は並大抵の事ではない。
剛の技と柔の技。箒は剛の技を極めようとしていたが、その技はあくまでも形式上のものであり、実戦では通用しなかった。
実戦において通用する柔の技を教えられているが、形式上であっても剛の型を持つ箒は柔の型と技を身につける努力をしている。
だが、その為には思考の分割をしなくてならない。心は熱く思考は冷静に、と言う有り触れた言葉だが、実践となると極端に難しい。
怒っているように怒号を上げつつも、思考は冷静にする。これは一例だが、この方法を身につけた時、彼女は代表候補生に匹敵、否、超える可能性がある程の逸材になるだろう。
最も訓練や勉学を怠らなければの話ではあるのだ。一方、雄輔は一夏の剣術の相手をしていた。
「うおおおお!」
「叫ぶな・・・」
「ぐはっ!?」
唐竹割りによって振り下ろそうしたオルゴンソードは雄輔を捉える前に彼からのカウンターパンチによって防がれてしまう。
「はぁ、毎回言っているだろう?叫んで突撃するなって」
「いや・・・つい、癖で」
「叫んで良いのは攻撃が当たった時、もしくは連撃が成功した時だけだ。当たる前に叫んでいたら躱されたり、カウンターを受けるのは当たり前だろう?」
「おっしゃる通りです・・・」
「叫ぶなとは言わない。タイミングを考えろって事だ」
「う・・・もう一度頼む。踏まえた上で突撃から」
「ああ、もう一・・・っ!?」
瞬間、学園のアリーナのバリアが砕かれ、何かが地上に降り立ち、粉塵が舞い上がった。
◇
粉塵が晴れた先には二次移行した白式が立っていた。それを纏っている人間を此処に居る誰もが知っている。
「織斑・・・・」
「春始っ!!」
「世界・・・静寂。お前達は静寂を乱す存在・・・お前達は望まれない世界を創る・・・」
「何を言っているの?」
鈴が疑問を口にしたと同時に一夏はニュータイプの感性、政征と雄輔はサイトロンによる予測によってなんであるかを知った。
「春始からとんでもない意思が感じられる・・・あれはもう、人間じゃない」
一夏の一言に全員が一夏を見た後、春始に視線を戻す。
「皇女・・・女騎士・・・そして・・・鈴・・・箒・・・俺の下に」
「!!」
「っ!?」
「なんですって!?」
「何を言っている!?」
やはり諦めていなかったのかと三騎士が前へと出る。瞬間、モエニアとリベラが二次移行の姿、即ち全身装甲化した状態の姿になった。それ程までに、今の春始は警戒しなければならない相手だという事になるのだろう。
「良いか?一夏・・・今のアイツを今までの奴だと思うな。相当ヤバイぞ」
機体を展開した時、騎士としての言葉遣いになる政征が普段の口調になっていた。
「恐らくはアインスト化か・・・だが、この威圧感はただのアインストじゃないな」
「二人がこれ程までに警戒しているなんて、相当な化物になっているのか?」
「行くぞ・・・!」
春始は薄ら笑みを浮かべながら三騎士へと突撃し、雪片を振り下ろす。それを受け止めたのは政征だ。
「ぐっ!舐めるな!!パワーなら!」
お互いに二次移行したISではあるが、リベラはパワーを強化されたラフトクランズであり、白式の剣を押し返していた。
「押せ・・・!白式!!」
「ぐうっ!!!!!?」
人間以上の剣力で押してくる春始。しかしほんの僅かな隙を狙い撃った騎士がいた。
精密射撃とは言えないが、発射された強大なオルゴンエネルギーの正体はオルゴン・マグナムだった。
「ぐああああっ!?」
「っ!ふっ!!」
怯んだ隙を狙って鍔迫り合いから抜け出し、構え直す政征。その隣には一夏と雄輔もいる。
「まさか、お前に射撃で助けられるとはな」
「俺だって成長してるさ」
「一夏が何とか右腕を吹き飛ばしてくれたが、どうなる?」
止まっていた二次移行している白式から緑の触手のようなものが生え、それが形を成して新たな腕へと再生し、同時に白式の姿も禍々しいものへと変貌していった。その姿はまさしく人獣のような姿でアインストヴォルフと似たような変化であった。
「白式というには外道が過ぎるんじゃないのか?織斑春始!!」
「お前達は純粋な生命体にはなりえん、だからこそ・・・俺が、そう!俺こそが新たな創造主となって生み出す!新たな純粋な生命体を!!」
演説のように己の言葉を発する春始。それは人間の意志のようで人間ではないものであった。
「だから箒達を利用するっていうのか!ふざけんじゃねえ!!」
「一夏・・・お前は最も純粋な生命体から遠い・・・新世代の因子を覚醒させたお前はな」
「何!?(コイツ、俺が完全に覚醒させたのを知っている?臨海学校の時は知識だけのはずだったのに)」
「さぁ、種を宿す揺り篭を渡してもらおう」
「はい、そうですかと渡す人間がいると思うのか?」
雄輔がソードライフルをライフルモードへと切り替え、オルゴンライフルを放つが、春始はそれを受けたのにも関わらず平然としていた。
「くくく・・・・ハハハハハ!!」
「!?」
「俺は人間を超えた!お前らの攻撃など所詮は人間の技術。今の俺には通用しねぇんだよ!」
混濁していた春始の意識が一瞬だけ戻った。極上の女を自ら手篭めに出来るという思いからだろう、それ程までに彼の美少女や美女への肉欲の渇望は強い。
「コイツ・・・この状態、もしかして?」
「ベーオウルフ・・・だな」
「ベーオウルフ?神話の英雄の?」
「ああ・・・名前だけ、だけどな(もしも、ベーオウルフになっているのなら噛み砕かれる!)」
雄輔が危惧していたのは春始が完全にべーオウルフ化しているのでは?という事だ。もしも、そうなっているとしたら非常に厄介なのだ。
機体は二次移行した白式。曲がりなりにも白式には、IS殺しの牙とも言える零落白夜が装備されている。
それだけではなく、射撃武器以外は全て零落白夜の特性を持っていた。臨海学校の際の戦闘データによって判明している。
アインストの力は機械のデメリットを有機物とする事で無くしてしまう。生物化し半永久的に別のエネルギーで補ってしまう。
つまり、燃費が恐ろしく悪かろうと関係ないのだ。半永久的にエネルギーが供給される為に零落白夜を常時展開できるのだから。
「静寂を作り出す白夜・・・・使わせてもらう」
「!」
アインストとしての口調に戻り、春始は一本の剣を取り出しそれを光り輝かせた。その刃は青白く輝いており、冷たく恐ろしい絶対零度を圧縮したかのように凍気が溢れ出ている。
「零落白夜・・・!」
「零落・・・それは落ちぶれる意味だが、草木が枯れる事の意味もある」
「さしずめ、絶対防御という名の草木を枯らす白い夜って訳か。おまけに周りがほんの僅かに凍りついているのは、白夜が主に寒い土地で起きる現象だから」
一夏が零落白夜を詩的に表現するが、身体が震えていた。あの刃の恐ろしさは一夏がシオンとして跳んだ別次元であり、過去でもある世界で異次元同位体である「織斑一夏」が政征を斬った刃である事を覚えているために威力も理解していた。オルゴン・クラウドによって強化されている絶対防御をやすやすと切り裂く程の威力があるという事を。
「あれは暴力で使われるべき刃じゃない・・・!」
「お前達は此処で凍りつかせ、噛み砕く・・・ふ・・・ふふふ」
春始は大剣とも言えるサイズの雪片を手にスラスターを吹かせ、突撃してくる。三人は迎撃しようと向かっていくが変異した春始の筋力と組み合わさった剣力に押し返されてしまう。
「ショボイ、ショボイ!こんなペーパーナイフみたいな威力で・・・ハハハハハ!」
「ぐっ!」
「うっ・・!」
「野郎・・・!」
「もう飽きた。静寂にしなければならない」
「「「!!!!」」」
春始は零落白夜の刃の長さをアリーナ一杯にまで引き伸ばし、至近距離まで近づいていた三人に回転する事で刃で切り刻み、三機のラフトクランズのエネルギーを奪い去り、行動不能にしてしまった。無論、その他のメンバー達、代表候補生達も例外ではない。
「ぐ・・が・・・」
「う・・・ぐぐ・・・」
「嘘・・・だろ・・・」
三騎士は機体を解除され、動くことが出来ず、訓練していた代表候補生達は気絶している。だが・・・。
「春始!」
「千冬姉・・・か」
目の前には自身の姉である千冬が立っていた。だが、ISを身につけてはおらず、手にはIS用のブレードを手にしているだけだ。
「だ・・・め・・だ・・・IS・・・・無し・・じゃ」
「行くぞ!」
「静寂を乱すものは・・・修正」
今の千冬は頭に血が登っており、聞き入れる事はなかった。一瞬の攻防、零落白夜を解除し更には峰打ちで千冬を地面とキスさせてしまった。
「が・・・・ぁ」
「四人は連れて行く」
「ま・・・て・・・」
「ぐ・・・バ・・・ジ・・・レウ・・・ス」
気絶している箒、鈴、シャナ、フー=ルーの四人を抱えると同時に春始は空間転移して消えてしまった。三人の身体の自由が利いたのはそこから10分経過した後であった。
「くそ・・・!(また俺は・・・はっ!)」
「っ・・・これが奪われるって事かよ!」
「箒、鈴・・・!ちくしょう」
三人は冷静になれなかったが、政征が思い出したように何かを閃く。そう、シャナ=ミアの機体となっているグランティード。正確にはグランティード・ドラコデウスに合体しているバジレウスだ。バジレウスは搭乗者を防衛する機能が備わっており、更にはオルゴンエネルギーを使用しているために追跡できる可能性があった。
「二人共、もしかしたら奴が連れ去った場所がわかるかも知れない」
「本当か!?」
「教えてくれよ!」
「だが、それが成功するかは分からない。今はまだ解析に時間をかけないと」
「結局、打つ手無しって事かよ」
「ぐ・・・」
「すまない・・・ぬか喜びさせて」
一夏は壁に近づくと同時に殴りつけた。歯軋りをして相当悔しさがせり上がっているのと同時に幼少期のトラウマにも近いものが己の心の中から出てくる。
「くそ・・・箒・・鈴・・・ちくしょう・・・ちきしょおおおおおおおおおおお!」
一夏は吠えた、やり場のない怒りと悔しさを表すかのように。初めて異性として意識した二人を下衆にまで落ちた兄に奪われた事が一夏にとって最も悔しかった。
またもや誘拐です。
今回はバジレウスがあるので防衛されています。
政征は二度目、雄輔は初めて目の前で大切なものを奪われる気持ちを味わいました。
一夏も幼少期のトラウマと戦っています。
次回は解析依頼と休息になります。
篠ノ之箒(白の地球)の強化における能力覚醒(参考意見用)
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SEED因子
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イノベイター(純粋種)
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Xラウンダー
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念動力