Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~ 作:アマゾンズ
囚われた四人が敵と会話。
春始にシャナ達四人が連れ去られて二日が経過し、残った代表候補生と三騎士は篠ノ之束でもあるタバ=サ・レメディウムの下を訪れていた。
「追跡をお願いしたいって事だけど、可能だよ。ただし、受信機となる端末に値するものが必要になる」
「受信機ならバジレウスが代わりになるはずです」
「シャナちゃんの機体と合体してるアレ?合体する二次移行なんて聞いた事無いけど」
タバ=サの疑問は最もだろう。この世界のIS開発者である身としてはラフトクランズもシャナ=ミアが使用しているグランティードも未知の塊なのだから。
解析出来たといってもこの世界のアシュアリー・クロイツェル社の協力があっての事であり、己自身の力ではない。
だが、己一人では無理でも協力してくれる人がいるという事を自覚できたのは大きかった。己自身の殻を己で破り、新しく変わる事に恐怖を感じることはなくなったのだから。
「バジレウスはグランティードを補助すると同時に、搭乗者を防衛する機能もあるんです」
「なるほどね。彼女のISはかなり特別って事かぁ・・・ISへの改修手段は提供してたけど、別世界でそこまで変わるなんて」
未知の二次移行は彼女にとっても研究対象ではあるが、今はそれを別にし、救出する為の座標を算出しなければならない。
2機の蒼いラフトクランズから提供されたグランティードのデータを元にバジレウスを検索し始める。
「なるほど、場所は特定出来た。だけど・・・」
タバ=サは言葉を詰まらせる。この場所はあまりに特殊な場所だ、行くことは出来ても帰還出来る補償がない。
「タバ=サさん。教えてください」
「俺達は行かなきゃいけないんです」
「君達ならそういうのは分かってるよ。だけど」
「束さん、俺も行かなきゃいけないんです。二人を取り戻すために」
「いっくん・・・?どうしてかな?」
政征と雄輔の二人は分かりきっていた事だが、一夏自身も行くと口にした事に、驚いてしまっていた。
「春始との決着、それに箒と鈴を助けなきゃいけない。これは男としての織斑一夏の言葉、そしてシャナ=ミアさんも救わなければならないんです。近衛騎士の織斑一夏として!」
「そっか・・・いっくんはどちらも大切だとどっちも取るよね。以前のままなら止めたけど、今なら止めないよ。それとね、返事しちゃったけど今はタバ=サって呼んでね?いっくん」
「あ、ごめんなさい」
「ふふ、話を戻すけど場所は特殊な空間のようだね。行くことは出来ても帰る方法は殆どない、皆無と言ってもいいよ」
「!」
変える方法が皆無と言われ、全員の顔が強張る。だが、ドライリッターの三人は決意しているかのようにタバ=サを見る。
「たとえ帰れなくても」
「俺達は行かなきゃならない」
「それが、俺たち三騎士の決めた事だから」
タバ=サは三人を見る。騎士として守るべき、そして愛している異性を奪われたドライリッターの決意が固い事は理解していた。政征と雄輔はまだ解る、彼らは別世界の人間だからだ。だが、一夏の決意が彼ら二人と変わらない事に内心、驚きを隠せない。
何事も兄によって否定され続け、全て諦めやすくなっていたあの頃の彼と全く違う。世界を掌握され、殺されてしまった彼とも違う。
今、此処に居るのは男として成長し、更には己を騎士として戒め、戦士としての教示を持っている者だ。改めてタバ=サは二人の騎士に感謝の想いを持った。
「タバ=サさん、俺達は死にに行くんじゃありません。箒と鈴、シャナ=ミアさん、フー=ルー先生。連れ去られた四人を助けに行くんです。帰れる事が皆無に近くても必ず帰ってきますから」
「!!」
タバ=サは表情が驚きに変わった。己の中にあった不安を見抜かれ、それを打ち消す言葉を紡がれた故だ。
まるで、自分の心の中を覗かれたような感覚だったのだ。
「俺、タバ=サさんの考えてる事が分かるんです。行かせたくない、死なせたくない気持ちは分かります。それはすごく嬉しい、でも・・・俺たちが行かなきゃいけないんです」
「いっくん・・・君は(地球人として一歩先のステージに行ったの?)」
三人の決意を聞いたタバ=サはため息を一つ吐くと、決意したように座標のデータを明確にする。
「私から言う言葉は一つだけ、全員必ず生きて帰ってきて!」
「「「御意!」」」
三人の後ろ姿を見ていたセシリア、シャルロット、ラウラの三人も決意を固めていた。
「わたくし達も負けていられませんわね」
「けど、二度と帰って来られないかもしれないんだよ?」
「確かにそれは怖い。だが、私はシャナ=ミア姉様を失うことの方がもっと怖い」
「ラウラ・・・」
シャルロットは決意していても不安が過ぎり続けていた。決意していても恐怖が去らない、慣れ親しんだこの世界に帰ってこられないかもしれないという恐怖は拭えない。
「皆さんも同じ気持ちなのですよ、シャルロットさん」
「セシリア?」
「政征さんも雄輔さんも一夏さんもラウラさんも、そしてわたくしも帰ってこられないのは怖い。けれでも、わたくし達だけが行く事しか出来ないのであれば、やらなければならないのですわ。大切な友人であり仲間でもある人達を助けるために・・・!」
「!・・・うん」
「私が言いたい事を取られてしまったな」
嫌なムードから一転して和やかになり、三人はそれぞれ手を重ね合って改めて決意を固める。帰ってこられない、それでも仲間を救いたいという気持ちは本物だ。だからこそ自分たちも行くのだと。
◇
その頃、異空間とも言える場所で箒、鈴、シャナ=ミア、フー=ルーの四人は軟禁されていた。拘束も特にされず、四人はそれぞれに見合ったドレスを着せられている。
「気絶している間に着せられたのか?このドレスは」
「違和感ありすぎよ・・・」
「なぜこのような・・・?」
「分かりませんわね」
箒は情熱を体現するような真紅、鈴はオレンジに近い黄色、シャナ=ミアは髪の色と同じ水色、そしてフー=ルーは知的さを表すような青のドレスを着せられている、
『ようこそ、皆様。そのままお進みください』
どこからか機械音声のような声が響き、四人はそのまま歩いていく。歩いて行った先には扉があり、自動で開くとそこには長い黒髪を揺らしながら、ピアノを弾いている女性がいた。かつて春始が言ったガン×ソードに登場するキャラクター、ファサリナの姿に似ている。
「クラシック?」
「そのようだな・・・」
「それに、この曲は」
「ラヴェルの亡き王女のためのパヴァーヌ・・・。それもピアノ曲用にアレンジされたものですわね」
四人の気配に気づいたのか、女性は目を閉じながら演奏していたピアノを止め、瞼を開いた。
「ようこそ、おいで下さいました・・・」
椅子から立ち上がり、四人へと向き直る。長い黒髪は艶があり、それを美しく映えさせる白い肌を持ち、同じ同性だというのに肌を合わせたくなるような妖しい色気を持っている。軽く指を鳴らすとテーブルが現れ、同時に用意された椅子に優雅な足取りで座った。
「どうぞ。お掛けください」
四人は警戒しながらも椅子に座る。すると同時に奥の方からなにかを、大声で叫んでいる声が聞こえた。
その声の主は全員が知っている。最も嫌悪し相手にしたくなく、無関心の物へとしたい存在。
「何故だ!約束が違うだろ!箒と鈴、シャナ=ミアもフー=ルーも俺のモノで抱けるって!があああああ!?」
「静かに。それと大人しくしていなさい、貴方にこの場へ来る資格はありません」
べーオウルフと化した春始ではあったが、女への肉欲、房中術を使った身体強化への欲望だけは意識と共に根強く残っている様子だ。
だが、初音が指を鳴らしたと同時に苦しみだし大人しくなってしまう。彼女は彼をべーオウルフへと生まれ変わらせた母体であり、彼の肉体の主導権を奪えるよう処置したのも彼女自身なのだ。
「ち・・・き・・・」
春始としての意識が一時的に消え、べーオウルフとしての意識が戻ると彼は去っていった。
「紅茶ですが、どうぞ。毒は入っていませんし塗ってもいません」
四人は警戒していたが、フー=ルーが代表して飲むと何も異常はなかった。それを見た他の三人も紅茶を飲む。
「彼を使って貴女方を此処に連れてきたのは、お話するためです」
「話、だと?」
「はい、私の望む世界に関して」
「貴女の望む世界?」
箒と鈴は警戒を解かずに怪訝な顔で初音を見え据えている。表情に出さずにいるが、フー=ルーとシャナ=ミアも警戒を解いてはいない。
「貴女の望む世界とはなんでしょう?」
「私の望む世界は一切が静寂の世界・・・ただただ静かに緩やかに生きていける世界です」
その言葉に偽りはない。だが、その中で箒が疑問を口にした。
「植物や無機物はそれでいいだろう。だが、動物はどうなる?静かに生きるなど出来んぞ」
「言ったはずです。ただ静かに生きれば良いと」
「まさか、動物まで無機物と同じようにするとでも言うの!?」
「はい」
鈴が身を乗り出して発した言葉に初音は、何も動じる事なく淡々と答えた。動植物全てが物言わぬ無機物のように生きていく世界、それが初音の作りたい世界だというのだ。
確かにそうなれば、差別も争いも憎み合う事もなく静かな世界で生きていけるだろう。しかし、それはただ生きているだけ、後退も前進もない、ただ生きているだけの世界だ。
「それでは、ただ生きているだけの無明の世界と変わりません!」
「その通りですわね」
「ですが、貴女方が理想とする争いのない世界が実現できます・・・」
「っ・・・」
初音の言葉は真実だ。人間も獣も昆虫も全てが無機物と同じになれば争いどころか、あらゆる苦しみから解放されるだろう。だが・・・。
「私は、そんな世界など望まない!」
「・・?」
いち早く反対の意志を見せたのは箒であった。彼女の目には初音に対する憤怒に近い感情が出ている。
「確かに生きていれば苦しい事も、思い通りにならない事も沢山あるだろう。それを乗り越えられずに立ち止まったまま絶望する人間も確かにいる」
初音以外の三人は滅多に聞けなかった箒の心からの言葉を聞いていた。今の彼女は思っている事を隠しやすく、話さないことが多くなっていた。だが、今の彼女は自分の意志でハッキリと言葉を述べている。
並行世界の記憶を見せられた5人のヒロインの中で、最も辛く、最も己にとっての恥であり、乗り越える事が難しかったのが彼女、篠ノ之箒であった。
己自身にも有り得たかもしれない可能性。別世界の自分は力に溺れ、傲慢になり、己を高める事などせず、周りの意見にも耳を貸さず、ただただ、一方的に別世界の織斑一夏だけを追いかけ、自分を地に着けた青葉雄輔を逆恨みして狙い続けた。最後には破滅という名の力に魅せられ、堕落していき別世界の姉に粛清された。
そんな記憶を見せられ、あの時の箒は何ともない風に装っていたが、実際は、しばらくした後にトイレで嘔吐していた。
この世界の一夏自身も見せられた時は嘔吐しないまでも、気持ち悪さを拭えない程に酷かった並行世界の己自身。
箒はそれを己自身の中にもありうるものであると受け入れたのだ。一夏への思いは解らないままだったが、傲慢さも、己こそが強いという自惚れもあった。姉の名前も利用したことすらあった。だからこそ、それを全て受け入れ、己の糧とした。同じ顔、同じ名前、同じ遺伝子を持っていようとも別世界の己と同じ道を歩む気はないと強く決意して。
今の箒は仲間も師も家族も友人でさえも大切に思える。今までの自分であればそんな事はなかった、己の周りがどれだけ恵まれていたかを知る事もなく、弱かった自分を支えてくれている人が居る。そんな世界を無機物のような世界にはしたくない、それが彼女の望むことであった。
「人は些細な事ですれ違い、喧嘩したり、憎み合ったりするだろう。無機物のようになれば、そんなものからは解放されるかもしれない。でも、中には己のために泣いてくれる人や助けてくれる人間だって同じくらいにたくさんいる。そんな世界を壊されてたまるか!」
「箒の言う通りだわ。確かに世界には争いも憎しみも差別も多いけど、それと同じくらい優しい人達もいる。私はそう信じる!」
「フューリーも純血主義者は多い、皇族であるならば尚更です。それでもわたくしは次代に繋いでいきたい。流浪の民であったフューリーを受け入れて下さった地球のように」
「騎士の身ではありますが、そんな世界は御免被ります。そうなってしまっては武を競い合うどころか相手すらも居なくなってしまいますもの」
フー=ルーも初音の望む世界を否定した。彼女は今や教師の身ではあるが、騎士の矜持を忘れた訳ではない。むしろ、騎士だからこそ、戦場の恐ろしさを知り、それを教えながらも共に競い合える相手を大事にしろと次世代の若者達に教育できるのだ。
「そうですか・・・・」
初音の雰囲気が変わり、彼女は立ち上がると血のように真っ赤なISを展開した。紅椿が紅葉の鮮やかさを表すのならば、初音の機体は鮮血の色をそのまま移したようなものであった。
「誠に残念です。貴女方なら私に賛同してくれるとおもったのですが・・・」
四人も紅椿、甲龍、グランティード・ドラコデウス、ラフトクランズ・ファウネアを展開し戦闘態勢を取る。
「残念ながら」
「私達は」
「無機物の存在になるなど」
「望んでいませんので」
初音を見え据え、二刀を構える紅椿、甲龍。インフィニティキャリバーを手にしたグランティード、オルゴンソードを構えたラフトクランズ・ファウネアそれぞれが刃を向ける。
「女としても貴女方が妬ましいです。ですから、潰します」
会談していたテーブルと椅子が無くなり、ドレス姿の五人はISによる戦闘を始めた。まさに舞踏会ならぬ武踏会と呼ぶに相応しい戦いが今、始まったのだ。
◇
「世界・・・・静寂」
そんな中、同じ顔、同じ体格をした大量の女性達がドライリッターを待っていた。彼女達のISは陰で見えず、それでも共通の言葉をつぶやき続ける。
「静寂でなければならない・・・」
それは椿、龍、創世機、女騎士の機体と全て酷似しており、出撃していった。三騎士達をただ、足止めするために。
や、やっとかけた。
徹夜で11連勤もしてたせいだ。
次回は潜入します。アインストの巣の中に
篠ノ之箒(白の地球)の強化における能力覚醒(参考意見用)
-
SEED因子
-
イノベイター(純粋種)
-
Xラウンダー
-
念動力