Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~ 作:アマゾンズ
騎士達は複製の女達に阻まれる。
初音のIS、ペルゼインはあらゆる距離に対応しており、遠距離で仕掛ければ全身の口らしき部分からビームのような光を放ち、中距離では二機の大型補助ビットが変形し、近づけさせず、接近戦を挑めば刀の形をした刃に止められてしまう。
「くっ!」
「っ!?危なっ!」
接近戦と主体とする箒の紅椿、中距離で真価を発揮する鈴の甲龍が積極果敢にアタッカーとして攻撃を仕掛けているが、初音の円を主軸とする流れるような剣術に受け流され、反撃されている。
「うあぁあ!くそぉ!はっ!?」
そんな中、箒はダメージを受けて立ち上がろうとすると同時に、実戦訓練を騎士の二人から受けていた時に言われた言葉を思い返した。
『良いか?剣術は確かに応用性が高い、それだけに範囲が広く戦い易くもある。でも、すぐに実戦で完全に使いこなそうとしても絶対に無理だ』
『それなら、どうすればいい?もしも、相手が剣術だったりしたら』
『だから、箒には切り替えのスイッチを身に付けてもらいたいんだ』
『切り替えのスイッチ?』
『柔の攻撃で来る相手なら剛である剣道の打ち込み、剛の攻撃で来る相手なら剣術の連撃といった感じにな』
『私が、か?』
『今の箒なら、相手の動きを見極めるのを造作もない位の洞察力は身に付いているはずだよ』
『切り替えの訓練は俺達がしてやる。この訓練の間に感覚を掴め!』
『ああ!わかった!』
箒は鈴達が遊撃してくれている間に初音の接近戦の動きや、どのタイミングで遠距離、中距離の攻撃を仕掛けてくるかを全力で観察した。
「!そうか、分かったぞ!」
二刀流を展開していた箒は一刀流に切り替えると同時に、得意とする剣道の構えを取った。たった一撃、その一撃に全力を込める。
「(紅椿、私に・・・私に力を貸してくれ!あの女を倒せなくていい、動きを制限させる事さえ出来れば、それでいい!)」
「!たあああ!」
「え、なっ!?」
「はあああ!」
「ああああああああっ!!!?」
箒が全力で打ち込んだ唐竹は、初音の駆るペルゼインの右部スラスターを完全に切り裂いていた。仮に再生能力があったとしても組織すらも切っているために、この戦闘での完全修復は厳しいだろう。
スラスターを切り裂かれた影響で、今のペルゼインはバランスが取れず、流れるような動きができなくなっていた。
「もらったあああ!(箒の作ってくれたチャンス、無駄に出来るもんですか!)」
「!鈴ーーー!そこから退けーーーー!」
「えっ!?」
「迂闊ですね・・・」
「う!ぐっ!?」
瞬間、鈴の身体にペルゼインの刃が貫通した。だが、浅めに刺さっており致命傷にはいたっていない。
「最初に相手へ浅く刺す事が、この技の発動の条件・・・」
「鈴さん!」
「鈴!!」
「マブイエグリにて失礼します・・・!」
初音は容赦なく鈴に刃を突き立てていく、絶対防御は機能しているが貫通しており、鈴の身体からの出血がひどくなっていく、黄色のドレスは鈴の鮮血に染まり、紅が広がっていく。
「あっ!?がぁ、ごぶっ!?」
「これで・・・さようなら・・・」
「!」
鈴からの返り血を浴びつつも、最後の一撃を突き立てようとした瞬間、ひし形のエネルギー波と緑色のエネルギーが同時に初音のペルゼインを捉え、強引に引き剥がした。エネルギーはどちらもオルゴンであり、それを放つことの出来る機体はこの場に二機しかない。
「私の目の前で生徒を死なせる訳にはいきませんわ・・・!」
「友人を死なせては、誇りを失うも同じ事!」
騎士機ラフトクランズ・ファウネアと玉座機グランティード・ドラコデウスの二機が連携し、鈴を救出したのだ。箒は急いで鈴に近づき、解除されてしまった甲龍と共に回収し、鈴を抱えた。
箒は出口へ近づき、フー=ルーとシャナはオルゴンクラウドの転移を使い、二人を背にして武器を構えた。
「フー=ルー先生、シャナ=ミア!?」
「行きなさい、恐らく彼らも来ているはず」
「政征達と合流し、早く鈴さんの手当てを・・・!」
「だが!」
「行きなさい!私達は貴女に託して、この場の殿を務めるのです!」
「箒さん!さ、早く!」
「っ!そうだ・・・!シャナ=ミア、これを使ってくれ!!」
箒は紅椿の主武装である二刀一対の太刀である「空裂」と「雨月」をシャナ=ミアに託した。無論、紅椿自身も太刀を使われる事に異存はない様子だ。彼女にとって魂とも言える武器を託され、シャナは驚きを隠せない。
「これは・・・貴女様の?」
「お前ならきっと使いこなせるはずだ。私の魂を!」
「お借りします、貴女の力!」
「逃がしませんよ・・・?誰一人も」
「頼んだぞ!」
箒は鈴と甲龍を抱えて、出口へと向かい、姿が消えた。託された「空裂」と「雨月」展開すると、オルゴンの色である緑色のエネルギーが刃となって刀身を形成した。
本来であれば扱う事は出来ない「空裂」と「雨月」をなぜ、扱えるのか?それは制限解除を紅椿自身が行っていたからだ。
「二刀を扱うのは初めてではありませんが・・・行きますよ?フー=ルー!」
「はい、皇女殿下。これは騎士として最高の誉れ、皇女殿下と並び戦う事になるとは」
「ふふ、そうですね。共に戦ってくれますか?フー=ルー」
「無論ですわ、聖騎士団の名と我が名誉にかけて」
近衛騎士と皇女の二人は虚無の化身でもある目の前の女を相手に、向かっていった。
◇
その頃、潜入を果たした三騎士は、自分達の想い人と全く同じ姿の相手を倒し続けていた。
「箒と鈴、二人と同じ顔をしてるからやりにくい事、この上ない!」
「全くだな、想い人と同じ顔で攻めて来るとはな」
「一夏が居なかったら本物と見分けが付かない、な!」
そう、彼らが何故見分けを付ける事が出来たのか?それは覚醒した一夏が持つニュータイプの感覚である。
人間と全く変わらなくとも、今の一夏は「物事を正しく理解する」能力が二人以上に優れている為にアインストのコピー人間を簡単に見抜けたのだ。
「キリがない!誰でもいい、あの先に行ければ!」
目と鼻の先には通路が見えている。だが、そこを通さんとする大量のコピー人間が行く手を阻み続けている。
「政征・・!」
「ああ、雄輔!」
二人は何を思ったのか一夏を抱えると同時にオルゴンクラウドで転移し、先へ向かう通路の近くに来ると一夏を投げ飛ばした。
「うわっ!?ふ、二人共!何を!?」
一夏は二人の行動が理解できず、呆気にとられており、二人は収納していた応急手当用の医療キットを一夏へ投げつけると背を向け、武器を構えた。
「お前は早く奥へ行け!ここは俺達で抑える!」
「本物を見分けられるのはお前だけだ、早く!」
「で、でも!」
「行け!!清浄の騎士!!」
「我ら三騎士の誓いを果たせ!」
「っ!」
一夏の視線の先には二人の騎士の背中が見えている。今にも届きそうなのに、届く事がない大きく見える背中、その後ろ姿はお前の役目はこの先だと言われているようで・・。
「わかった、死ぬんじゃねえぞ!二人共!」
一夏はクラルスのスラスターを全開にして、先へ進んだ。先程までの二人の姿は今の一夏にとって「追い付いてこい」と叱咤激励されているようだった。
「死ぬんじゃねえぞ、か・・・背中を見せてるならあのセリフ、言ったほうがよかったかな?」
「バカ、それこそ死亡フラグってやつになるだろ?」
「違いないな」
目の前には連れ去られた女性達のコピーが迫ってきている。だが、二人は二イイッと歯を見せるように笑い、ラフトクランズの二次移行の全身装甲化形態に姿を変えた。致命傷も無く動きに支障はないが、ある程度は肩や腹部を負傷していた。それを隠すために全身装甲化形態を展開したのだ。
「気を付けた方が良いぞ・・・偽物」
「手負いの獣は・・・」
「「凶暴だからなァァァーーーー!!」」
二人は目の前の偽物を相手に自由と城壁の騎士は、クローとソードをそれぞれ貸し与え、二本の爪と剣で次々に葬り始めていった。
◇
「っ・・・」
一夏は長い通路をひたすら先へ先へと向かっていた。後ろからは金属のぶつかる音や爆発音、その余波の振動が伝わってくる。
今すぐにでも二人を助けるために引き返したい。でも、ここで引き返したら二人が何のために俺を先行させ、残ったのか、その意味を理解できない程、愚かではない。
「二人は俺に託してくれた。だから、俺は約束を果たす!」
先へと進むうちにセンサーに反応があった。これは友軍の反応で、二つ反応がある。しかし、一方の反応は弱々しかった。
「!あれは、白いラフトクランズ!?という事はクラルス!一夏!!」
「箒!?」
「一夏!鈴が、鈴が!」
「!」
鈴の姿は酷いものであった。おそらくは敵にやられたのだろう、全身に何度も刃物を突き立てられたような傷があり、出血も止まっていない。それでも、応急手当さえすれば大事には至らない時間まで間に合ったのは紅椿のスピードと箒の仲間を死なせないという、思いからだろう。
「箒、落ち着いてくれ!今、拡張領域から預かった医療キットを出すからよ」
医療キットを出し、蓋を開けると丁寧な使い方、応急手当の仕方までもが書いてあった。しかも、素人でも打つ事のできる注射まで入っていた。ウサギのマーキングをしてあったのを見つけ、一夏は苦笑していた。
「(流石だよ。タバ=サさん)」
鈴の応急手当と新陳代謝の活性化、自己治癒を強めるナノマシンを注射する。圧縮型だった為に針を刺す必要がなかったのが幸いした。
「よかった・・・これで命は助かるはずだ」
「一夏・・・私は」
「箒、ありがとうな。俺は箒も鈴も失いたくなかった・・やっぱり俺はどっちかを選ぶなんて出来ない。男としては最低な言葉だけどな・・・」
一夏の目を見て箒は確信した。ああ、そうか・・・この寂しそうで悲しそうな目を私は支えたかったのだと、一夏の辛さはどれだけのものだったのか、一人では支えられない事はこの時に理解してしまった。世間では最低と言われるかもしれないが、それでもいい。この人を支えられるなら・・・。
「一夏、私も鈴も同じ気持ちだ。お前を失いたくはない・・・」
「箒・・でも、今は鈴を安全な場所へ運ぶのが先決だ」
「ああ、解っている。しかし・・・」
「どうした?箒、お前の武器は?」
「シャナ=ミアに託してきた・・・彼女はフー=ルー先生と一緒に殿を務めてくれた。そのおかげで、鈴を運んでこれたのだ」
「そうだったのか・・・っ!箒!鈴を抱えて横へ飛べ!」
「!?」
言われた通りに鈴を抱えて、横へと回避する。瞬間、砲撃らしき光が中心を通過する。
「ヨコせ・・・!リん・・・を・・ソイツはオレのモノだ!」
「春始!?」
「なんつう間の悪さだ!」
現れたのは、アインスト・べーオウルフと化した春始であった。まだ自意識を残し、鈴を狙うという事は性的欲求を捨ててはいないのだろう。
「まるでバ〇オハザードのG生物みたいだな。ま、まだ人間の形をしているだけマシか」
「あれ?箒ってゲームするのか?」
「動画や宣伝用の映像くらいは観ている」
「意外だな」
そんなやりとりも春始にとってはストレスだ。何よりも一夏が生きている事が最も許せない。
「一夏、お前が・・オマエがいるからオレはアアア!!」
「相変わらず、主人公とか、ハーレムとか騒ぐのかよ?はぁ・・・兄として見てた自分が恥ずかしくなってくる」
「一夏・・・!」
「箒、俺が逃げるまでの時間を稼ぐ。向こうに行けば政征と雄輔がいるはずだ」
「だが!」
「援護する前に助けなきゃいけない仲間が居るだろ!」
「っ!」
「早く行け!」
一夏が一歩前へと出る。自分の目の前に立っている男の背中が大きく見えた。その姿は戦士そのもので・・。
「う・・・」
鈴も目を覚ました。僅かに視界がぼやけてはいるが背を向けて立っている白騎士の姿が写る。
「後顧の憂いを断っておくのに越した事はないからな。時間を稼ぐのは良いが・・・」
「
「!!」
「!!」
初めて見る自信に満ちた一夏の言葉。だが、その後ろ姿が遠くに見えてしまう、彼は死ぬつもりはない、それでもと不安を二人は隠せない。
「一夏、頼む!」
「思いっきり・・・やっちゃいなさい・・・よ!」
「分かった。さぁ、早く行け!!」
箒は歯を食いしばったまま一夏が向かってきた道を進んだ。鈴自身も自分の状態を薄々ながら把握している。
本当は一緒に戦いたい。あの二人に鍛えられ、強くなっているとは言えど、化物となった春始を相手にたった一人で戦わせるなど悔しさがこみ上げてくる。
「鈴、悔しいのは解るが今の私達には何も出来ん!」
「アンタ・・・私が起きてたのを・・・」
「手当した時から知っていた。だが、武器を託した私に怪我人のお前、今の私達に何ができると言うんだ?」
「冷静に見てるのね・・・意外だわ」
「いつまでも昔の私じゃないさ」
箒はスラスターを吹かしながら先へと進んでいく。自分の力では自分の制御できるスピードを維持するのが限界だ。それでも、速度は量産機を軽く超えてはいる。二人は政征と雄輔に合流するために先へ進んでいった。
赤い弓兵のフラグを立てましたが、死なせる気はありません。彼は赤くはないので。
次回は合流と春始が優勢の戦いです。
篠ノ之箒(白の地球)の強化における能力覚醒(参考意見用)
-
SEED因子
-
イノベイター(純粋種)
-
Xラウンダー
-
念動力