Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~   作:アマゾンズ

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騎士達が剣を持たせるために三騎士の一人を鍛える。




七日間の特訓

クラス代表を決める戦いで七日間の猶予を得た。それにより政征と雄輔はすぐにアリーナを使う許可をもらい、一夏を連れてアリーナに訪れていた。

 

「で、アリーナに来てどんな特訓をするんだ?」

 

「まずは機体操作に慣れる事からだな、武器などの訓練は模擬戦をすればいやでも鍛えられる」

 

「雄輔の言う通りだ、少し待っててくれ。訓練用の機体を今から出す」

 

訓練用機体を出すと言われ、一夏は疑問を抱いた。IS学園では訓練機がある。打鉄とラファールという名の量産機だ。しかし、許可を貰っても貸し出されるのに早くて一ヶ月以上はかかるはずだ。

 

そんな疑問に答えるように政征は口を開く、待機状態にしていた訓練機である機体を出現させた。

 

「これはヴォルレント、アシュアリー・クロイツェル社で企業レベルの代表候補生が使う訓練機だ。大企業とかで使われている」

 

「なんでお前がそんな機体を持ってんだよ!?」

 

一夏は驚きと共に叫んだ。代表候補生でもない二人が何故に代表候補生レベルの訓練機を持っているのかと。

 

「そういえば、言ってなかったな・・・俺と雄輔とシャナはアシュアリー・クロイツェル社の代表候補生なんだよ」

 

「え?それって本当なのか?」

 

「本当だ。だからといって畏まらなくていいぞ、訓練では代表候補生なんて言葉は意味が無いから普段通りにな?」

 

「ちなみにこれは俺達が編入する前に束さんから渡されたものだ。訓練機としてな」

 

政征の言っている事は真実である。ヴォルレントは訓練機となっているが、それは二人がラフトクランズというヴォルレント以上の機体を専用機として使っているためである。

 

ヴォルレントはそのまま専用機として使う事も出来る程の機体性能はあるが、拡張領域の容量が少ないという弱点があり、武装が二つのみで積極的に使う人間は現れなかった。しかし訓練機としては最高値に位置するため、レベルの高い訓練機として採用されている。

 

「じゃあ、遠慮なく使わせてもらうぜ?」

 

一夏はヴォルレントを身に纏い、その場で静止した。地上に立っている状態だがそれでもISを纏ったという感触を噛み締めている。

 

「どうだ?初めて纏って、違和感はないか?」

 

「ああ、違和感が全然ない。というよりヴォルレントだっけ?この機体が合わせてくれてる感じがするよ」

 

雄輔からの指摘に一夏は笑みを浮かべながら答える。偶然にも起動はさせた事はあったが、ISを実際に纏ってみて自分が初めて操縦者になったという事が嬉しいのだろう。

 

「よし、じゃあ先ずは歩行からだ。このアリーナを10分間歩き続けろ」

 

「わかった・・・おわ!?」

 

歩行しようとした瞬間、一夏は前のめりに倒れてしまった。人間が転んだ時と同じ状態であった為、手を着いて怪我は免れている。サイトロン・コントロール・システムが搭載されている機体を動かせたという事は一夏は束によってサイトロンの波動を絶やすことなく、浴びる事ができたのだろうと二人は口に出さず思った。

 

 

「大丈夫か?普通に歩くのとは違うぞ?機体と一緒に歩くような感じで歩いてみな」

 

「慌てなくていい、ゆっくりと一歩一歩確実にだ」

 

「あ、ああ」

 

雄輔のアドバイスと政征のフォローを受けた一夏は、まるで自転車の乗り方を初めて教わっているような感じで歩行を始めた。

 

「お?こうか!」

 

「コツは掴んだようだ」

 

「元々、センスはあるからな・・・アイツは」

 

楽しそうにISの歩行を続ける一夏をコーチしている二人は初めて笑みを浮かべ見守っており、指示した10分間の歩行を終えると一夏は息を切らしながら戻ってきた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・歩行だけでこんなに・・・疲れるのかよ?」

 

「体力だけじゃなく判断力も必要だからな、初めてにしては良い方さ」

 

「少し休憩を取ったら次は飛行だ。俺達も機体を展開して怪我しないようにするから安心しろ」

 

「ああ」

 

5分ほどの休憩を取った後に飛行の訓練を開始した。それに伴い、政征と雄輔の二人も待機状態となっている訓練機のヴォルレントを取り出す。

 

「え?まだヴォルレントを持ってるのか!?」

 

「訓練用に三機渡されたからな」

 

「とりあえず、準備が出来た。俺は地上で政征が上空を見てるから飛んでみな」

 

「わかった、やってみる。・・・っと、うわああああ!?」

 

一夏はスラスターを吹かし、飛行し始めたが全力で飛んだ為に制御が出来ずにいた。

 

「最初から全開で吹かしたな!?一夏!ブレーキをかけるイメージを持て!俺が拾うから!」

 

「わ、わかった!!!」

 

政征は上空で急停止した一夏へ近づき、支えながらアリーナの地にゆっくりと降りた。一夏は冷や汗をかいており、本気で助かったと思っている。

 

「一夏、いきなり全開でスラスターを吹かすか?」

 

「あ、いや・・・つい」

 

「俺達が居なかったら天井に激突してたぞ!?」

 

「面目ない・・・」

 

二人の厳しい言葉に一夏は謝りながら縮こまってしまった。しかし、理不尽な怒りではなく、注意喚起の為に厳しい言葉を発している。

 

「じゃあ・・今度は俺達に合わせて飛んでみるか」

 

「いきなり一人でやらせたのは俺達のミスだからな」

 

「ああ、頼む」

 

三人は同じ位置に立つと、見本を見せるために最初に雄輔が先行してゆっくりと飛行した。

 

「一夏、ゆっくりと上昇していくジェットコースターのようなイメージを持って飛んでみな?」

 

「わかった、やってみる」

 

政征のアドバイスを受けた一夏はゆっくり上昇し、先程よりも安定した飛行をしていた。

 

その後。三人は上昇、旋回、急降下、着陸、スピード調整の特訓を続けた。その結果、一夏はIS操縦者として必要な飛行技術を身に付ける事が出来た。一夏本人のセンスもあるが、政征と雄輔の二人という優れたコーチ役が居る事も大きい。

 

 

 

 

30分の休憩後、武装と機能に慣れる為の訓練を始めた。最初に始めたのは武装の訓練だ。二人は擬似ターゲットを配置し、準備を終えた。

 

「よし、先ずは射撃の訓練から始めるぞ?一夏、拡張領域からオルゴンガンをセレクトして展開するんだ」

 

「わかった」

 

政征の指示で一夏はヴォルレントの武装であるオルゴンガンを展開し、擬似ターゲットから指定されている位置に立った。

 

「俺達が見てるからターゲットを狙って撃つんだ。全部に当てようとせずに射撃の反動とかに慣れるまで撃っていいぞ」

 

「ああ」

 

オルゴンガンを一発だけ撃った反動で一夏は腕が痺れていた。扱いやすいとはいえどオルゴンガンは出力が高く、反動が強かった。一夏は主に剣道をやっていたが、射撃というものに対し縁が一切無く、その為に射撃に関しては全くの素人であった。

 

「うう・・・やっぱり俺、射撃は苦手だし無理だ」

 

「同じ苦手でも、全く出来ずに苦手だっていうよりも、ある程度扱えて苦手だっていう方がマシだろう?」

 

「それは・・・確かに」

 

「別に完全に扱えるようになれとは言わないさ。銃を扱えて牽制が出来るだけでも有利になるぞ」

 

「そうなのか?なら、扱えるようになるまで訓練を続けてくれ!」

 

諦めかけていた一夏に対して、雄輔は戦術における射撃の優位性を説明し、政征は扱える事で出来る事が増えるという事の大切さを教えた。

 

一夏は休憩時間になるまで射撃の訓練を続けた。その結果、時間制限付きで擬似ターゲットを撃つ訓練においてターゲットを六割、撃ち抜く成果を上げた。

 

「六割か、訓練を続ければ更に腕が上がるな」

 

「そうか?ありがとう」

 

「じゃあ、次はオルゴンクラウドの扱いの訓練だな」

 

「?オルゴンクラウド?」

 

聞きなれない言葉に一夏は首を傾げ、政征と雄輔は頷き合うとアリーナで対峙した。

 

「オルゴンクラウドはシールドエネルギーを強化してくれる物であると同時に、転移装置の側面も持っているものさ」

 

「そんなに凄い物なのか?」

 

「先ずは俺達が見せる」

 

二人はオルゴンガンを構えると、最初に政征が死角を塞ぐように弾幕を展開し雄輔を狙い撃つ。それを見た一夏は声を上げた。

 

「あんな数の弾幕を回避できるはずがない!」

 

しかし、一夏の予想とは裏腹に雄輔の駆る訓練用ヴォルレントがオルゴン・クラウドによる転移で弾幕の前へと転移した。

 

「なっ!?」

 

「これがオルゴン・クラウドだ。移動手段として使うのが主だが、回避不可能と思えるものも回避する事が可能だ。だが、それには集中力と転移のタイミングを見極めなきゃならない」

 

回避不可能と思われた狙い撃ちによる弾幕を回避した事を目の前で見た一夏は口を開けて驚いている。

 

「これは強力なものだが、使い過ぎれば精神的な消耗が激しくなる。ここぞという時にだけ回避機能は使ったほうがいい」

 

「そうか」

 

「それじゃまず、地上で自在に転移出来るまで訓練するとしよう」

 

「そうだな、先ずは五分間の連続転移だ。慣れてきたら地上や空中、連続転移の時間を増やすとして難しくしていくからな?」

 

「ああ!」

 

オルゴンクラウドの訓練は想像以上に大変であった。初めて使う機能である事である為、仕方ないにしても一夏は壁の目の前や、観客席に転移したりなど振り回されまくったのだ。

 

「痛てて・・・」

 

「大丈夫か?織斑、オルゴン・クラウドの制御は難しいだろう?」

 

「ああ、確かにこれは無闇に使うもんじゃないな・・・」

 

「まずは慣れさせる事からだな、水泳と同じさ」

 

「ああ・・・けど、俺にこんな機能が本当に使いこなせるのか?」

 

一夏は機能に振り回され過ぎたせいか諦めかけている様子だ。それを見た政征と雄輔は軽くデコピンと頭上に手刀を振り下ろした。

 

「あたっ!?」

 

「オルゴン・クラウドはちゃんと機能したんだ。途中で諦めてどうする!?」

 

「その諦め癖、少しは抑えられるようにしたほうがいいぞ?」

 

「う・・・・」

 

この日以降、一夏の為にオルゴン・クラウドの制御訓練に三日間を費やした。その成果もあって一夏はオルゴン・クラウドを制御出来るようになり、地上でも空中でも転移を使いこなせるようになっていた。

 

訓練四日目、実戦を兼ねた手合わせをする事になった。相手は無論、コーチ役の二人だが、訓練を偶然にも目撃した箒が参加させて欲しいと頼み込んできた為、箒も参加する事になった。

 

IS戦闘はヴォルレント同士、政征と一夏の手合わせとなり、武装に関しては事前に説明し、オルゴンキャノンを制限した状態で戦う事になった。

 

「一夏、戦闘は競技だと考えるな。命の奪い合う戦場だと思ってかかってこい!」

 

「っ!あ、ああ!」

 

「俺は手加減しない、来い!」

 

開始の合図であるブザーが鳴らされ、二機のヴォルレントが向かっていく。政征はオルゴンガンを撃ち、牽制する。実戦と同じように攻撃してくる政征に一夏は恐怖を抱きながら回避した。

 

「うっ、うわああああ!」

 

「どうした!?怖いのか?だが、それが当然だ!戦闘は怖い。俺も、雄輔も、シャナも戦闘に対して恐怖を持っている!実戦では死ぬかもしれないという恐怖をな」

 

「っ・・・」

 

「だが、その恐怖を力に変えろ!自分がやらなければ自分の手に届く大切なものを失うと思え!」

 

「!」

 

政征の言葉に一夏はハッとした。自分は守る事の出来る力を持った。しかし、自分が恐怖し自分がやらなければ守れない状況に陥ったらどうなるか?

 

親友も、恋した相手も、仲間も守れなくなってしまう。それだけは絶対に嫌だと一夏は強く決意したのだ。

 

「行くぞ!政征!!」

 

「来い!一夏!」

 

お互いにオルゴンダガーを展開し、刃をぶつけ合う。一夏の剣撃に対して政征と雄輔は既に文句なしの評価をしていた。やはり、剣を扱っていたからだろう、踏み込み、一撃の重さは訓練しなくとも基本が出来ている。

 

「このおおお!」

 

「まだまだぁ!」

 

オルゴンダガーで押し合いながら政征はどこか悲しい気持ちになっていた。自分の世界でもこうして剣を交え続ければ、何か違っていたのではないかと。しかし、今となっては既に過ぎ去ってしまった事。それならばせめて、この世界の一夏との友情を築こうと政征は考えた。

 

「二人共、試合は終わってるぞ!休憩しろ!!」

 

戦いに夢中になっていた二人は終了のブザーに気づかず、雄輔の放送によって試合を止められた。

 

「あれ?終わってたのか」

 

「夢中になり過ぎて気付かなかったな」

 

二人は休憩に入るためにピットに入ると、入れ替わりで箒と雄輔がアリーナへと入った。

 

箒は打鉄を纏っており、雄輔はヴォルレントを身に纏っている。

 

「無理を言って貸してもらえた打鉄だ。今日の実戦訓練を無駄には出来んな」

 

「まさか、姉の名前を使ったのか?」

 

「いや、頭を下げて頼んだんだ。どうしても訓練したい相手が居ると言ってな」

 

「そうか」

 

雄輔はこの世界の箒に信頼を少しだけ持てるにようになっていた。自分よりも上の相手が居るのを自覚し、更には剣道以外の訓練も大切にし一夏ばかりの事を言っていない。それだけでも雄輔は信頼出来ると思った。この世界の箒となら良い剣友になれる、その考えが彼の胸の中に嬉しさ溢れさせている。

 

「行くぞ!」

 

「ああ、かかってこい!」

 

打鉄の接近ブレードとヴォルレントのオルゴンダガーが競り合いを起こすが、雄輔はオルゴンガンを左手に持ち、発射しながら間合いを開いた。

 

「ぐっ!射撃武器か!!剣道に拘り過ぎていた事が悔やまれるな!」

 

「これから学んでいけばいいだろう?無理に射撃に拘る必要もないからな」

 

「そうだな。だが、せめて扱えるくらいにはなっておきたいものだ」

 

再び剣でぶつかり合う両者だが、技量が僅かに雄輔を上回っていた。剣道と実戦を踏まえた剣術では攻めと守りに差が出来るのが必然だ。

 

「そこだ!」

 

「ぐ!しまった!」

 

オルゴンダガーの突きを受けた打鉄はエネルギーが0となり試合が終了した。

 

「あと少しで私の一撃が決まれば・・・!」

 

「お前の型は攻撃的じゃなく防御的なんだ。それではバランスが取れないのも当然だ」

 

「防御的だと?」

 

「ああ、篠ノ之箒。後の先を取るのがお前の学んだ剣道の在り方だと俺は見たぞ」

 

「そうだったのか・・・私もまだまだか」

 

自分の剣の本質を理解していなかったと自覚した箒は自分が未熟である事を自覚し、雄輔に一礼した。

 

残りの四日間を機体制御と実戦を兼ねた模擬戦に充てて、出来る限りの準備をした。

 

そして、試合前日となりアシュアリー・クロイツェル社へ連絡してくれるよう政征と雄輔はフー=ルーに頼み込んでいた。

 

「彼の専用機を当日に届くように連絡して欲しいと?」

 

「ええ、当日にならなければ意味がありませんから」

 

「お願いします」

 

「分かりましたわ、私から連絡しておきます」

 

「ありがとうございます、それじゃ」

 

「失礼します」

 

フー=ルーは二人が出て行くと、電話の受話器を手にし特殊回線を使える番号からアシュアリー・クロイツェル社へ連絡をいれた。

 

「もしもし、フー=ルー・ムールーです。はい、研究部長のタバ=サさんをお願いしますわ」

 

「はーい、電話代わったよー!タバ=サさんだよー!今日はなんの用かな?フーちゃん!」

 

「その呼び方は慣れませんわね、例の機体を明日には届けて欲しいのですけれど?」

 

「そっか、とうとう・・・」

 

「ええ、自由と城壁・・・更に清浄の剣が揃う事になりますわ」

 

「わかったよ、明日の朝までには届くようにするね」

 

「お願いしますわ」

 

電話を切り、受話器を置くとフー=ルーは待機状態となっている自分の機体であるファウネアを見つめた。

 

「また、楽しみですわ・・・ふふ」

 

 

 

その頃、アシュアリー・クロイツェル社では束がコンテナの中で眠っているラフトクランズ・クラルスの最終調整をしていた。

 

「クラルス、いっくんの力になってあげてね」

 

コンテナを閉じると束はすぐに届けられるように準備し、手配した。

 

ラフトクランズ・クラルスは戦場に立てる喜びと持ち主となる者への所へ行ける事を嬉しく思ったのかモノアイが強く輝き、青くなっていた。




一夏と途中参加の箒の訓練風景でした。

次回はラフトクランズ・クラルスの初陣であり三機のラフトクランズが揃います。

そして転生者くんが政征に対して試合前に禁句を言ってしまい、政征がジュア=ム(狂)状態に再びなってしまいます。

雄輔も拳で戦います、おそらくなんでそれを使うの?と言われる拳法を使います。

では、次回!

篠ノ之箒(白の地球)の強化における能力覚醒(参考意見用)

  • SEED因子
  • イノベイター(純粋種)
  • Xラウンダー
  • 念動力
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