エミヤ・オルタが転生したそうです   作:野鳥太郎

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まずはじめにお詫びから入らさせて頂きます。
今回ボブの髪について多くのご指摘を頂きました。
ボブカットという言葉は以前から聞いた事があったのですが、エミヤ・オルタ発表から随所でボブ、ボブと呼ばれており、

「アレがボブカットってやつなのかな」

と考え、ロクに調べぬまま執筆していた事が原因です。この文を書く前、今まで投稿してきた本編を恐らく違和感がないであろう状態に編集致しました。

本来ならばご指摘を下さった方々個人個人にお詫びとお礼を申し上げるべきなのでしょうが、誠に勝手ながらこの場で謝罪を申し上げたいと思います。

本当に申し訳ありませんでした



ボブは弄るのが好きなようです

あの1回戦から、俺を見る周囲の目が変わった。

別に特に思うことはない。ああいった侮蔑や畏怖の目を浴びせられたのは一度や二度ではない。それこそ何百、何千とだ。

 

戦場などの極限状態の場で死にゆく者たちのモノからすれば、伐刀者といえど平和ぼけした

 

 

「間違っても殺される事はないだろう」

 

 

なんて考えてる連中のモノなど比べる事もない。

そうだ、アレが本来の衛宮士郎という人間(バケモノ)だ。去年は偶々闘う機会が一度を除きなかっただけ。闘うならば相手は完膚なきまで叩きのめす。

 

・・・筈なのだが、試合後理事長に正座させられ、足の時間だけを停止させられるなんて器用な事されたせいでその気は起きない。おまけにその状態のまま3時間、しかも道徳やら伐刀者らしい振る舞いやらについて一からレクチャーされる始末。

 

ここまでやるなら、去年の東堂刀華との模擬戦を観ていたなら初めからオレから試合出場の権限を剥奪しておけば良かろうに・・・。

いや、それだと去年の黒鉄と殆ど同じ扱いになるのか。黒鉄の処遇を良しとしなかった理事長としては前任者のような立ち振る舞いはしたくなかったのかもしれない。少々強引な考えか?

 

しかしまぁ、17年とはいえ普通の人間として生活してきたためか、守護者として肥溜めのゴミどもを処分していた時よりは随分丸くなったと思う。

去年まで変に面倒ごとをつくらないよう他の連中に幾らか友好的に接していた。無意識のうちに、平穏というものを謳歌していたのかもしれない。

 

———いや。一度だけ、何故かはわからないが自ら首を突っ込んだ事がある。

“黒鉄一輝”だ。

 

きっかけは去年、偶々複数人の生徒が黒鉄を一方的に追い詰めていたのを目撃したこと。

その時には既に当時の黒鉄の立場は知っていたし、別にどうとも思わなかった。黒鉄が一切の抵抗をしていなかった事にも頷ける。

本人が堪え忍んでいるならそれで良いだろうと考えていた。

 

しかし、そんな思いとは裏腹に身体は勝手に動いていた。傷付いた黒鉄を見て笑っていた1人を蹴り飛ばし、此方に視線を向けた他の仲間であろう連中も纏めて昏倒させた。

よく殺さないよう気絶させるだけに留めたと思う。

 

今思えば、黒鉄と会話をするようになったのもコレがきっかけだったな。

 

その後案の定当時の理事長から直々のお呼び出しを食らったが、奴が何を言っていたのかはよく覚えていない。自分がなにを思い、何を言ったのかも覚えていない。ただ、気付いたら奴の頭髪の一部を実像形態で撃ち抜いていたのは覚えている。

 

その時の事が何やら噂になっていたようで、理事長が新宮寺黒乃に変わってから追求された。無論面倒になりそうなので適当に流したが。

 

———話がだいぶ逸れた。

 

そんなこんなで俺を取り巻く環境は大きく変わったが、変わらず話しかけてくる連中はいる。

物好きな連中だとは思うが、突き離す理由もないので会話をする事にしている。

 

まあ今回はどちらかというと尋問だが。

 

 

・・・・・・

 

 

「衛宮、アレが君の伐刀絶技なんだね?」

 

「そうだ。“無限の剣製”、見た通り殺傷性が極めて高い」

 

校内選抜1回戦から2日、放課後に僕とステラは廊下を歩いていた衛宮を呼びとめ、共有ラウンジに向かった。

僕の質問に大した事じゃない、と衛宮は言った。あの一撃を食らった後、桃谷先輩は理事長の能力とIPSカプセルのお陰で一命をとりとめたが、精神に甚大なダメージを負ったらしい。特に、刃物に対して怯えるようになったらしい。

幾らか落ち着いてきているそうだが、それでも完治するまで最低2週間は精神治療を受けるらしい。

 

 

「ねえ、桃谷って人が串刺しになったあと見えたアレはなに?」

 

「アレ、とは?」

 

「惚けないで頂戴。一瞬薄っすら見えたあの荒野は、剣は、歯車はなんだって聞いてるの」

 

 

ステラの言うそれらは、衛宮士郎の伐刀絶技において特に疑問視されていたものだ。ドス黒い魔力を撒き散らす以外に、特になにも起こるわけでもなく幻出するあの風景。

 

 

「あぁ、アレか。・・・お前たちは心象風景と言うものを知っているか?所謂心の世界ってヤツだ」

 

「知ってるけど、それがなんだって言うわけ?」

 

「オレの伐刀絶技はなぁ、その心象世界を弾丸に圧縮し、相手に撃ち込む技だ。その弾丸は発射から着弾まではオレの制御下にあるが、相手に命中した時点で暴走し炸裂するんだよ」

 

「炸裂?・・・まさか!?」

 

 

成る程、つまりそう言う事なのか。確かに言葉で表せばなんとなくその脅威がわかる。

 

 

「察したか?そう、炸裂した弾丸はオレの心象世界。自分の体内で1つの世界が破裂するんだ。当然、その世界にあるモノも全てが外側に射出される」

 

「つまり、桃谷先輩を貫いた剣も、あの荒野も歯車も、アンタの心象世界にあるモノってこと・・・?」

「あぁ。薄っすら見えた異界は射出された心象世界が実体化したものだ。殻となっていた弾丸が消えた時点で脆くなっているから、直ぐに消えるがな」

 

 

あの異界は心象世界の具現化だと言う。

だがそれでは・・・

 

 

「衛宮、君の心は・・・どうしてああなってしまったんだい?」

 

 

あの荒んだ風景が衛宮の心象だと言うならば、過去に何かあったに違いない。きっと彼の虚ろな瞳は、その何かが原因じゃないだろうか。

 

 

「さあなぁ・・・、残念だが全くわからないんだ。オレは生まれつきこういう人間だし、あの心象風景も生まれつきだ。それに、伐刀者としてこの学園に入るまでは至って普通の生活をしてきたからな。過去に悲劇的な出来事に巻き込まれたこともない」

 

 

そう言って笑う彼の眼は相変わらず虚ろだが、一切ブレていない。呼吸や表情にも焦りは見られない自然体。

どうやら嘘を言ってはいないらしい。

しかし、どうも引っかかる。

 

 

「そうか・・・」

 

「まあ、今後余程の事がない限りあの伐刀絶技は使えんな」

 

「理事長から直接使うなって釘を刺されたんでしょ?確かにアンタの戦闘力が高いのはわかった。けど、きっとこの学園の上位は伐刀絶技抜きじゃ厳しいんじゃない」

 

「・・・オレの伐刀絶技は1つじゃないさ」

 

「「え?」」

 

 

衛宮はニヒルに笑って言う。

 

 

「複数の伐刀絶技を持ってる奴は多くいるだろう?オレもそうだ。ついでに言うと、無限の剣製(アンリミテッド・ロスト・ワークス)は対人向きだが、オレ本来の闘い方は殲滅戦、つまり大多数を相手取るのに適している」

 

「1回戦では加減してたってわけ」

 

「言ってただろう?容赦は出来んが加減はしてやるってなぁ。もしオレが本気で戦ってたら、もしかすると相手は今頃チリかもなぁ」

 

「本気で言ってるのかい、衛宮」

 

 

嗤う衛宮に思わず低い声で威圧していた。やはり理事長の言っていたことは本当だったのか。去年のぶっきらぼうだが信用できるという人物像が崩れ始めていた。

 

 

「冗談に決まってるだろう。だが、戦いで容赦出来ない性質(タチ)なのは事実だ。何というか、相手は確実に倒さないと安心出来ないというかなぁ。しかし、試合後理事長から3時間あまり説教受けたんでそれも出来なくなりそうだ。少なくとも、1回戦のような事にはならないさ」

 

「本当かい?」

 

「ああ、本当だ。約束するさ」

 

 

真っ直ぐ此方を見つめてくる衛宮に何も言えなくなる。多分本気で言っていると思う。一度助けられている身(・・・・・・・・・・)としてはあまり疑いたくはない。

 

 

「僕もまだまだ甘いな・・・」

 

「うん?」

 

「いや、何でもない。それよりその言葉、信じるからね?間違っても裏切ってくれるなよ?」

 

「了解した。ところで・・・」

 

「うん?」

 

「さっきからオレを凝視してる生徒がいるわけだが、アレがお前の“妹”って奴か?」

 

 

衛宮が示した先に顔を向けると、そこには妹の黒鉄珠雫がいた。6m程離れた位置で露骨に衛宮を警戒していた。

 

 

「珠雫!?一体いつから・・・」

 

「またアンタね・・・」

 

「ついさっきですお兄様。無駄に胸のデカイ女は黙っててください。それで、その方が衛宮士郎さんでよろしいんですね」

 

「・・・っ!!」

 

「す、ステラ落ち着いて」

 

「ああ、こいつとは去年からの付き合いでな。キミのことは時々話を聞いていた。よろしく」

 

 

此方に近付いてきた珠雫に衛宮が手を差し出した。握手のつもりらしいのだが、

 

 

「貴方と友好的な関係を築くつもりはありません。お兄様、こんな危険人物と付き合うのはやめた方がよろしいです。校内選抜の記録を見せてもらいましたが、この男はアレです。見た目通り、身も心も真っ黒です。他人を平気で傷付ける真性の鬼畜外道です」

 

 

それを無視して早速罵倒した。流石の衛宮も一瞬呆けた顔をしたが、直ぐに苦笑しつつ首を横に振った。

 

 

「嫌われたもんだなぁ。ああ、そう言えば黒鉄・・・一輝の方だ。キミを呼んだわけじゃない、そう睨むな」

 

「ごめん珠雫、ちょっと話を聞きたいからさ。・・・それで、何だい?」

 

「噂に聞いたんだが・・・昨日この妹と“口付け”したそうじゃないか」

 

「・・・」

 

 

———場が凍った気がした。突然何を言いだすんだこのガングロボブ・・・。

後ろでステラと珠雫が睨み合っているのか、熱気と冷気がぶつかっている感覚がする。

 

 

「え、えーと。何のことかなぁ?」

 

 

とりあえず誤魔化す。下手なこと言うとロクなことにならない気がする。

 

 

「聴けばステラ・ヴァーミリオンと相部屋でもあるそうだな。普段仲睦まじく見えるあたり付き合っているのか。・・・まさかとは思うが、お前タラシか?」

 

「いや違うから!?」

 

 

さっきまでのシリアス空間はどこに行ったんだろうか。虚ろな筈の衛宮の視線が痛い。

 

 

「まあ恋愛は個人の自由だと思うが、流石にそこに実の妹が交じると言うのは・・・罪な男だなぁ」

 

「いやいやいや!?僕は断じて近親相姦なんてしないぞ!今もこれからも断じてだ!」

 

 

何だが衛宮が楽しそうに見える。おかしい、こんなキャラじゃなかった筈なんだ。辛辣な言葉を吐くことはあったけれど、弄るように言葉を投げかけてくるなんてことはなかった筈なんだ。

 

 

「おっと、もうこんな時間か。オレは寮に戻らせてもらおう。では失礼」

 

「え?いやちょっと衛宮!?」

 

「ああ、黒鉄。最後に1つ」

 

「な、なに?」

 

「“どっちが本命なんだ?”」

 

「だからぁぁぁ!!」

 

 

駄目だ。やっぱり信用できない。もう信用なんてできない。このガングロボブ絶対楽しんでる、そうに決まってる。若干修羅場ってる後ろの2人に油を注ぎ入れるようなことを態々去り際に言っているんだ。確信犯だ。

 

・・・なんて思ってるうちに衛宮はもう居なかった。

 

ああ、放課後だっていうのにまだ疲労が溜まりそうだ。

 

 

 

 

 

 




今回はシリアスとネタです。
前書きで書いたような事が今後ないよう気を付けますが、なにか気付いた点、気になる点がありましたらご指摘ください

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