エミヤ・オルタが転生したそうです   作:野鳥太郎

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第5話初投稿です。
思い切って今日中にもういっちょ投稿です。

なんか日間ランキングで1位になってる・・・


ボブは友達想いみたいです

「・・・連中には疫病神でも憑いているのか?」

 

 

土曜日、即ち休日。部屋で特に何するわけでもなく、気紛れで付けたTVニュースにはあるショッピングモール。

 

今朝黒鉄兄妹とステラ、あと有栖院凪とかいう・・・所謂オカマと出くわしたが、奴らの出先が確かこのショッピングモールだった筈。

 

どうも映像を見るに、解放軍(リベリオン)とかいうテロリスト共に占拠されているらしく、人質も多数いるらしい。

 

 

「解放軍、確か伐刀者至上主義の連中だったか。何処の世界にもいるもんだなぁ、自分達が特別な存在だなんて思い上がる連中は」

 

やれやれ、困った事に身体が疼く。丸くなったとはいえ、矢張り守護者として在り続けた期間がエラく長かったせいか、こういう塵どもを見ると無意識に固有霊装をぶちかましそうになる。職業病ってやつか?

 

 

 

・・・・・・

 

 

ノックも無しに理事長室のドアが開かれた。

現れたのは衛宮、普段仏頂面の癖に不気味に微笑んでいるように見える。

 

 

「何の用だ、見てわかると思うが私は忙しい」

 

 

今衛宮に構っている暇はない。テロリストに占拠されたショッピングモールには多くの人質がいるらしく、警察からの応援要請が来た。

 

丁度黒鉄兄妹とステラ、有栖院が現場に居るようなので固有霊装の使用を許可したところだ。

 

 

「解放軍が出たらしいな」

 

「ああ、現場にいる黒鉄達に固有霊装の使用を許可したところだ。直ぐに片がつくだろう」

 

「ならオレにも許可しろ」

 

「・・・なに?」

 

 

このガングロはなにを言っている?つまり、ショッピングモールの鎮圧に行かせろと?冗談ではない。

 

 

「もう説教を忘れたか?」

 

「理解し難いとは思うが・・・オレはこういった不特定多数を相手取るのに適していてね。それに、だ。どういうわけか身体が疼くんだよ、畜生共を鎮圧しろってなぁ」

 

「巫山戯るな、お前のやり方は死者が出る。学園外なら尚更だ。大人しく待機を・・・」

 

「死人を出さず、周囲へ被害を出さなければ良いんだな?」

 

「・・・?」

 

 

空気が変わった。妙な威圧感、それが衛宮から放出されている。

 

 

「ならそう命じろ(・・・)。国際的なテロ集団だ、黒鉄達でも苦労する相手だろうよ。

だからオレが行く、こういった仕事(・・)はオレが相応しい」

 

 

なんだ、こいつは本当に何を言っている?

何故相手が苦労する相手とわかる。

自分が相応しい?何処からそんな自信が出る。

 

 

「聞くが、何を根拠に?」

 

「勘、そして経験。そうだな、理事長のアンタには話しても良いかもなぁ。オレがなんなのかを、な。そら、早く命令してくれ。大事な数少ない友人が危ないんだ。トモダチとして助けに行かなくちゃあなぁ?なに、“警告”ならまだしも、“命令”なら違えることはない。オレはそういうモノだ」

 

 

己について教える?ますますわからない。

だが、何故かしっくりくる。コイツに任せれば全て解決するような、そんな安心、安定感があるのだ。

 

 

「敵を確認次第、殺さないよう再起不能にする。そう言えばいい。言ってくれよ、神宮寺理事長。オレの中の正義(何か)がそう願ってるんだ」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「お前が何者(・・)なのか、全て話せ。それが約束出来るなら行け。但し、幻想形態でな。既に現場が鎮圧、もしくはその目前であれば手出しするな。コレらは全て命令(・・)だ」

 

「契約成立だなぁ・・・。さて、邪悪なる者(正義の味方)として人肌脱がせてもらおう、理事長。あと、礼を言うよ」

 

「礼?」

 

「なんだか安心したんだ。友人を助けに行けるってのは・・・良いもんだ」

 

「・・・!」

 

 

部屋から出て行く直前、衛宮は確かに笑っていた。とても明るい、穏やかな笑顔。

 

 

「・・・チッ。この私が場に流されるとは」

 

 

衛宮の異様な気配に流された。本当にヤツは何者だ。

 

 

「まあ、事が終わればわかる、か」

 

 

大して話してもいないのに、妙に疲れた。だが休むわけにもいかない。というか、衛宮を出張らせた時点でそんな余裕などないからだ。

 

 

 

・・・・・・

 

此処まで頭に血がのぼるのはいつ以来か。人質をとられ、ステラは現在進行形で辱めを受ける始末。始めは何人かのテロリストを鎮圧出来たが、まさか人質の中にも連中が紛れ込んでいたとは不覚。下手に動けない。

 

 

「いやぁ良い眺めですねぇ。流石は皇女様、お身体の方も大変お美しいようで」

 

 

「・・・っ!!」

 

 

目の前の男、ビショウ。後数枚で全裸になるステラの地肌をみて下衆な笑みを浮かべる辺り、嫌でもこの男の人となりがわかってしまう。

 

 

「あの野郎・・・っ!」

 

「お兄様、落ち着いて。今動いては・・・」

 

「そうよ、気持ちはわかるけど冷静になりなさい。・・・何も出来ないっていうのは本当に腹立たしいわね」

 

 

耐え切れなくなる寸前、珠雫とアリスに止められた。そうだ、落ち着け。冷静になれ黒鉄一輝。活路はあるはずだ・・・!

 

動けぬまま、遂にステラが下着に手を掛けた。

 

———その時だった。

 

 

「ぐぁぁぁ!!」

 

 

僕たちと人質を取り囲んでいたテロリストの1人が悲鳴を上げた。見れば、左肩から右足にかけて、真っ直ぐに長大な剣が突き刺さっている。

 

その後続け様に1人、また1人とテロリスト達が頭上から降ってくる剣に貫かれ、悲鳴を上げて行く。出血がないあたり、幻想形態による攻撃だと理解できた。

 

 

「この剣は・・・」

 

 

突き刺さった剣はゆっくりと錆び付き、崩壊していく。この光景で誰の仕業かは直ぐに理解する。

 

 

「無能共が、雁首揃えて・・・」

 

 

頭上から聴こえる声は紛れもなく・・・

 

 

「衛宮・・・衛宮なのか!?」

 

「騒がしいぞ黒鉄。仕事中(・・・)だ。それに、オレは今気が立っているそうだ」

 

 

四階のフロアから飛び降り、膝を曲げることなく着地した衛宮。その顔には・・・狂気を孕んだ微笑みがあった。

 

 

「さて、随分としてやられたらしいなヴァーミリオン。紅蓮の皇女の名が泣くぞ?」

 

 

そう言って衛宮は、僕達の真後ろにいた人質(・・)を干将で撃ち抜いた。幻想形態とはいえ、頭部を撃ち抜かれたその人質は当然意識を失う。

 

 

「な!?衛宮どうして!?」

 

「人質の中に伏兵が居たんだろう?そいつら全員がいっぺんに出てくるとは限らない。

念には念を、不測の事態に備えて予備の人員を入れておくのは別に可笑しな話じゃあない。しかし、演技が下手にも程がある。目は若干泳いでいるし、呼吸は不規則。素人の連中しかいないのか?世界を股にかける解放軍の連中は。

・・・そこ、お前もだ戯け」

 

 

ドガン!と再び人質に向けて発砲した。倒れ込んだ人物の懐から転がったのはサバイバルナイフと手榴弾。

 

 

「それで?」

 

「っ!?」

 

 

衛宮が視線に捉えたのはビショウ。先程までの余裕はどこに行ったのか、酷く焦燥している。

 

「随分とオレの友人で遊んでくれたみたいだなぁ。何故か無性にお前が潰したくなってきた・・・」

 

「見張りの・・・」

 

「うん?」

 

「見張りの連中はどうした。一階から四階まで全てのフロアにいた筈だ」

 

「あぁ、連中なら先に片付けたよ。安心しろ、死んじゃあいない。幻想形態なのが残念だが、命令だからなぁ。お前達みたいなゴミ屑は脳髄ぶち撒けさせないと納得できないんだ」

 

「チッ!無能共が。そんで、俺をどうする気だ?捕まえるのか?」

 

 

ビショウの問いに衛宮は答えなかった。その代わりに衛宮は莫耶でビショウを射撃する。

 

 

「無駄だよ」

 

「うん、吸収された?」

 

 

マズイ、ビショウの固有霊装に嵌った。幾ら衛宮でも自分の攻撃を受けてどうなるかわからない。

 

「俺の固有霊装大法官の指輪(ジャッジメントリング)は左手で攻撃を“罪”として無力化し、右手で“罰”として放出する。こんな風になぁ!」

 

 

瞬間ビショウの右手から衛宮の弾丸が射出された。そして、

 

 

「それで?」

 

 

———躱すことなく身に受けた・・・。

 

 

「な!?」

 

「お前の能力はわかった。態々説明までしてくれて助かったよ。それで、だ」

 

 

怯むわけでも、苦悶の表情を浮かべる訳でもなく、ゆっくりと再び莫耶の照準をビショウに合わせる。

 

 

「お前、そんなもの(・・・・・)が本当に強いなんて思っているのか?」

 

 

再び発砲。銃弾は真っ直ぐビショウの左手(・・)に向かっていく。

 

 

「だから無駄だと」

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

「何!?」

 

 

銃弾は左手に命中する寸前で突如爆発を起こした。大した威力ではないが、その光と爆風によってビショウは思わず顔を覆った。

 

 

「確かに真正面から突っ込んでくるやつには強力かもしれないなぁ。しかし、攻撃を捉えられないなら意味はないだろう?態々左手で迎え撃たなきゃならないんだからなぁ。要は、目くらましや奇襲に相性が悪過ぎる」

 

 

今度は干将から銃弾が射出される。向かうのはビショウの“左腕”。左手ではない。

 

 

「ぐっがぁ!?」

 

「喚くな、ゴミはゴミらしく黙ってるのがお似合いだ。それでも喚くなら・・・豚小屋にでも入っておけ」

 

 

追い撃ちに放たれた銃弾は4発。全てビショウの頭部に命中し、意識を奪っていた。

 

 

「頭が悪いのか、それとも性根が悪いのか、或いは両方か。随分と焦らすのが好きだったみたいじゃあないか。テロリスト失格だな」

 

 

その結果ヘマかく訳だ、そう言って衛宮は霊装を消した。

 

 

「おい、呆けてないでさっさと服を着ろ」

 

「へ?あ!わ、わかってるわよ!」

 

 

呆然としていたステラに衛宮が服を拾い投げ渡す。我に返ったようでステラはいそいそと着替え始めた。

 

 

「黒鉄、有栖院、お前達もだ。さっさと避難誘導してやるなり、外に知らせに行くなりしろ」

 

「え、ええ・・・」

 

「わかりました・・・」

 

 

突然の出来事過ぎて珠雫もアリスも混乱しているようだった。それより・・・

 

 

「わかったよ・・・。えっと衛宮?」

 

「なんだ?」

 

「どうして此処に?」

 

「理事長に許可はとってある。序でに下手に暴れたり相手を殺さないよう命令も受けた。しっかり守ってるだろう?」

 

 

何か問題があるか?と衛宮は言ってくる。

理事長が許可しているなら問題はない。問題はないのだが・・・

 

 

また(・・)、助けてくれたのかい?」

 

「あぁ、客観的に見ればそうなんだろう。

しかしまあ、“皆無事でよかったよ”」

 

「「「「!」」」」

 

 

僕も、珠雫も、ステラも、アリスも、皆が驚いた。仏頂面で不気味だと言われていた彼が笑っていた。

 

———その笑顔は、とても明るかった。

 

 

 

・・・・・・

 

 

「本当に鎮圧してくるなんてな」

 

「言っただろう、命令は違えないってな」

 

 

解放軍によるショッピングモールの占拠は、目の前のガングロボブ、もとい衛宮士郎によって鎮圧された。

 

解放軍の連中は皆意識のない状態で発見され、そのまま連行された。どうやら1人も殺さないという命令は確り守られていたらしい。

 

 

「それで、約束のオレについてだが」

 

「あぁ、さっさと話せ。全て話せ、偽りの話はするな」

 

「フッ。それも命令か?」

 

「当たり前だ。今回の一件で余計にお前のことがわからなくなった」

 

「というのは?」

 

「惚けるな、数キロ先離れた地点に数分で辿り着く奴があるか!本当になんなんだお前は!?」

 

 

らしくもなく思わず叫んだ。此処まで声を張り上げたのはいつ以来か・・・。まあいい、今はこのガングロボブについてだ。

此奴は学園から出た途端ほんの数分で現場に辿り着いたのだ。テレポートでも、魔力で肉体強化をした訳でもない、地力で。

生徒手帳のGPSが確り記録しているので間違いない。

 

 

「確り話すから安心しろ。ただ、ここではなく別の場所でな。盗聴や監視の可能性の低い場所、例えばオレの部屋だな」

 

「・・・ほう?そこまでして秘匿したいものがお前にはあると?」

 

「正直言って、普通ならありえない話をするからだ。誰かに聞かれて変な噂を流されるのも癪だ」

 

 

そう言って衛宮は有無を言わさず理事長室から出て行った。

話が進みそうにないのでやむなくついて行くことにする。

 

・・・。この後衛宮の部屋で話されたことだが、私はとてもじゃないが信じられない。“前世の記憶がある”なんて真顔で言われても無理ないだろう。

 

 

 

 

 




戦闘描写が難しい。てか一方的過ぎるせいで私の実力だとどうしても淡々で盛り上がりに欠けてしまう。

あ、落第騎士のワカメ枠の人は・・・出番なかった。書いてる時存在を忘れていたんだ。
序盤で1番キャラ濃いのになぁ・・・。ごめんよ。


今回ボブの綺麗な一面がチラッと見えましたが、書いててボブの綺麗な笑顔が想像出来ませんでした。

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