このろくでもない世界に救いの手を!   作:あべかわもち

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第4話 ボッチ姫は爆裂娘と昼食をとる

 

「や、やっと見つけたわ!我が終生のライバル!めぐみん!」

 

「はぁ。あなたですか。そう言えば数週間前に旅立ってましたけど、いつ戻ってきたんです?というか誰がライバルですか誰が」

 

「こ、細かいことはいいの!今日はあなたに報告することがあるの」

 

「そふでふか。わふぁしにはあふぃましぇんのでおふぁえりくふぁさい」

 

「せめて飲み込んでから言ってよ!?」

 

 

私の眼の前でキャベツ炒めを頬張っている女の子はめぐみんと言って、私のと、とも、友達であり、宿命づけられた終生のライバル。

 

紅魔の里の出身で、私のお昼ご飯を強奪するためなら手段を選ばない意地悪な女の子。でも私のお弁当を美味しいと言って食べてくれたことはちょっと嬉しかったりする。

 

この子は私と同じ黒髪で長さは私より少し短い。そして女の私からみても、めぐみんはとても可愛らしい顔をしている。いつも仏頂面で言動がアレだからあまり注目されないけど。

 

ただ、本人にそのことを伝えると、いつも口では「どうでもいいですそんなこと」と言いながら、その口元が緩むことを私は知っている。

 

そうそう。めぐみんは私より身体は小さいけれど、その身に宿す魔力は膨大で、たぶん紅魔の里の中で一番だと思う。昔から才能に溢れていた彼女は学校で一番の天才だったけれど、何をとち狂ったのか爆裂魔法に惚れ込んで、他の上級魔法を一切習得しようとせず、せっせと自身の爆裂道を極めんとしている。

 

 

「ごくん!・・・相変わらず困った子ですね。見ての通り、私は昼食中ですから、あなたもどうですか?ついでに聞くだけなら構いませんよ」

 

「あ!それいい提案ね。太陽が昇った頃から街中を歩き回って何も食べてなかったから、私もお腹空いてたの」

 

 

めぐみんを探すことに夢中でご飯を食べるのをすっかり忘れていたわ。

 

 

「・・・もうお昼過ぎなんですが。まったく。ほら隣が空いていますよ」

 

「し、失礼します」

 

 

あれ?めぐみんの昼食がかなり豪華なんだけど、どうしたんだろう。

 

 

「めぐみん、随分と豪華な昼食ね」

 

「ふ。私くらいの魔法使いともなれば、活動するために必要なエネルギー量も膨大なのですよ」

 

 

めぐみんの目の前には大量のキャベツ料理が並んでいる。

 

キャベツ炒めにはじまり、ロールキャベツ、キャベツと鶏肉のクリーム煮、キャベツのシュウマイ・・・いくら成長期とはいえ多すぎではないかな。

 

 

「めぐみん。さすがに食べすぎじゃないかしら?いくらキャベツでも」

 

「ゆんゆん。その言い方は食料となったキャベツ達に失礼です。私たちは冒険者。次にいつ食事にありつけるかわかりません。それに、上級魔法を操るためにはこれくらい必須なのですよ。とくに最強の爆裂魔法ともなれば、この程度でも足りませんね」

 

 

すごくカッコいいこと言ってるように聞こえるけど、それって単に「食べれる時にはしっかりと食べておこう!」ということを言ってるだけよね?

 

どうして紅魔の人は皆カッコつけたがるのかな。

 

めぐみんにそのことを指摘しようとしたけど、すんでのところで思いとどまる。

 

危ない危ない。私が指摘したら、きっとめぐみんの思うつぼ。そのまま私のお話を有耶無耶にするに違い。その証拠に、すでに私の話はお流れになりそうだもん。

 

よーし。

 

 

「そ、そうね。めぐみんの言う通りかもね。でもその理屈なら、私もたくさん食べないといけなくなるんだけど・・・」

 

「どういう意味です?あなたはまだ中級魔法しか使えないでしょう」

 

 

かかったわね!めぐみん!

 

 

「ふふん!いつまでも私を甘く見ないことね!これをみなさい!!」

 

「な!?」

 

 

ついに!

 

ついにこの時が来たわ!

 

習得した上級魔法が記載された冒険者カードをめぐみんに突きつける瞬間が!

 

あぁ!

 

これでやっと私もめぐみんと同じ土俵にたてたのね!

 

なんて嬉しい瞬間!

 

快感と言ってもいいかもしれない!

 

 

「こ、これは!」

 

「・・・長い道のりだったけど、私もついにここまで来たの!これであなたを倒せば私が紅魔族随一の座を手に入れることになるわ!」

 

 

ビシッと人差し指をめぐみんに突きつける。

 

これできっと、里の皆も認めてくれるよね。

 

そして、お友達もできるよね?

 

 

「ゆ、ゆんゆん!」

 

「なぁに?どうしたの、めぐみん。そんなに慌てて。もしかして、自分が追い抜かれたことがそんなに悔しいの?」

 

 

焦るめぐみんなんてすっごく久しぶりに見た気がする!

 

あぁ今日はなんて嬉しい日なのかしら!

 

喜びに浸る私は、めぐみんが焦る表情を見せながらも、その口の端が上がっていることに気づかなかった。

 

 

「このカード!どこから盗んできたのですか!?もしくは偽造したのですね!?それだけはしない子だと信じていたのに!!」

 

「えぇええ!?」

 

「せっかく上位悪魔を倒せるチャンスを活かすことができない可哀そうなあなたが!「ひどい!!」こんな短期間で上級魔法を引っ提げて帰ってくるなど、『神様の奇跡』でも起きない限りありえません!!」

 

「そこまで言う!?」

 

 

そんなにも私が上級魔法を使うのは似合わないの!?

 

 

「ゆんゆん。さぁ、全てを吐いて楽になりなさい。たとえあなたが犯罪者になっても、私だけはあなたの友達ですよ」

 

「私がそんなことするはずないから!というか、そこは味方って言うところじゃないの?ねぇめぐみん。あなた、そんなことできないのわかって言ってるでしょ。ちょっと!黙ってキャベツシューマイ食べてないで、私が苦労して上級魔法を習得したことを一緒に喜んでよぉ!」

 

 

 

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「そろそろ機嫌直したらどうです?」

 

「意地悪なめぐみんなんてもう知らないから」

 

 

冒険者カードは、王族や貴族以外で、貴族の領民でない者がこの国で働いて生きていくための身分証。そして自分の能力が正確に記述されたとっても大切なもの。また、冒険者にとっては自身の能力に依存する仕事を請け負う際の指標にもなる。契約や借金の担保にもなるので、その内容を改ざんすることはとても大きな重罪にされているの。

 

「疑わしきは罰せよ」な国だから下手すると国家転覆罪になってしまうかも。

 

実のところ、誰も改ざんなんてできないし、そんな心配はいらないとわかっているけど、あらぬ疑いをかけられて酷い目にあうのは嫌。

 

 

「もう。ただの冗談ではないですか。そんなに拗ねないでください。あなたが上級魔法をこの短期間で会得したことは信じますから。ええ信じますとも。よく頑張りましたね。ゆんゆん」

 

 

優しい笑みを浮かべて私の頭をなでるめぐみん。

 

そんなことくらいで私の機嫌が直ると思っているのかな。

 

甘いわねめぐみん。

 

 

「あとで甘味亭のクレープを奢ってあげますから」

 

「ま、まぁ、疑いは晴れたみたいだし、特別に許してあげるわ!感謝することね!」

 

「・・・チョロイ」

 

「え?めぐみん今何か言いかけなかった?」

 

「いえ別に何も。それより、あなたも何か頼んだらどうです?まだご飯にありつけてないんでしょう?」

 

「・・・それもそうね。えーと、今日はキャベツ炒めがあるんだったわね。お姉さーん!キャベツ炒め定食一つ!」

 

 

それにしても、どうしてこんなにキャベツ料理が充実してるのかな?まだキャベツが飛んでくる時期には早いと思うんだけど。

 

 

 

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「はぁああ!美味しい!」

 

 

相変わらずここのキャベツ炒めは美味しいなぁ。シンプルな料理なのにこの味は忘れられないくらいの衝撃がある。しばらくはキャベツ炒めにはまりそうだわ。

 

そういえば、すっかり忘れていたけど、一方通行さんはお昼ご飯どうしたのかな。昨日聞いたときは「適当にすますから気にするな」って言ってたから、大丈夫だと思うけど。

 

せっかくだから後でお持ち帰り用のお弁当を作ってもらおうかな。

 

 

私が食事を終えたタイミングで、めぐみんが話かけてきた。

 

 

「それで、あなたは自分が上級魔法を習得したことを自慢するためだけにわざわざ私のところに来たんですか?性格悪いですね。だからボッチなんですよ」

 

「そんなわけないでしよ!?あと、ボッチじゃないから!」

 

 

い、いけないいけない。

 

今はきちんと報告することが先決よ、ゆんゆん。

 

そして私は、昨日カエルの一件を通じて出会った一方通行さんと一緒のパーティーを組むことになったと、めぐみんに報告した。

 

したんだけれど・・・

 

 

「ふーん」

 

 

めぐみんは私の言うことを全く信じてくれなくて「はいはい」「へぇ」「おもしろいおもしろい」とか聞く耳を持ってくれません。

 

 

「もう!私がせっかくパーティーメンバーを見つけたのに、どうして信じてくれないのよぉ!」

 

「えー。だって、ゆんゆんですよ?パーティーメンバーを募集したら、話を聞いてるふりをする食事目当ての人や身体目的のナンパ野郎とか、アクシズ教の勧誘なんかがウジャウジャと寄って来ていた、あのゆんゆんですよ?いきなり信じろって言われても無理な話です」

 

「そ、それは、まぁ、そうだったかもしれないけど」

 

 

以前めぐみんとこの街に来た時に、メンバー募集していた時の悲しい思い出を振り返ると・・・いややめよう。あの記憶はなかったことにしよう。

 

・・・やっぱりパーティーメンバーの条件に色々とつけたのがいけなかったのかなぁ。

 

でも!それは過去の話!

 

私は今を生きているの!

 

 

「とにかく!私はついにパーティーメンバーを手にいれたのよ!」

 

「はいはい」

 

「その人は『ロックウェーブ』を操り!・・・たぶん。カエルを『ウインドカッター』の雨あられで迎え撃ち!・・・たぶん。最後には、20匹以上のカエル達を『なんだかよくわからない魔法』で一掃したの!」

 

「ふーん。その程度なら、私の爆裂魔法の敵ではないですね。というか、『たぶん』とか『よくわからない魔法』って、色々と曖昧なんですが・・・設定がふらついていますよ」

 

「設定じゃないから!!本当だから!!ただ、あの人はどの魔法も詠唱していなかったから特定できなかったのよぉ」

 

「はぁ?そんなことあるわけないでしょう。少なくともあの生命力の強いカエルをまとめて一掃するだけの魔法を唱えるなら、『高速詠唱』を使っていたとしても、魔法名を唱えないと十分な威力は出せないはずです・・・よくわかりましたよゆんゆん。あなたも寂しかったんですね。いいでしょう。そこまで思い詰めているとなると、さすがに放っておけません。さっそくカズマに私たちのパーティーに入れないか聞いてみてあげますから」

 

 

話しながらだんだんと慈愛に満ちた表情を浮かべて私の肩に手を置くめぐみん。

 

わ、私は寂しくなんてないんだから!

 

 

「なによ!だから違うからね!?私が言ってるのは全部事実なの!あの人はカエルに呑まれていた私を助けてくれたのよ!そして、とっても強いんだから!」

 

「カエルに呑まれていたあなたを、ね。よかったですね。ヒーローの登場ってわけですね。あるえに話したらきっと英雄譚に仕上げてくれますよ」

 

「・・・ねぇ、どうしたら信じてくれるの?その人は、よくわからないけど、あなたより強力な『爆裂魔法』みたいなのを使ってカエルを一掃させてたから、一目見てもらえればわかってくれるのかな。でも「どうせ演技を頼んだんでしょう?」とか言われそうよね「ガシャン!!」ん?めぐみん?どうしたの?」

 

 

急に立ち上がってどうしたんだろう。

 

 

「ゆ、ゆんゆん?今、なんて?」

 

 

あぁ!やっと信じる気になってくれたのね!

 

めぐみんのビックリしている顔を見るのも久しぶりだわ。

 

めぐみんには色々と先を越されてたけど、これでやっと私が同じ舞台に立ったことを理解してくれたみたいね。

 

 

「もうめぐみんったら、急に立ち上がった拍子にお皿がひっくり返ってるよ?」

 

「そんなことはどうだっていいでしょう!」

 

「えぇ!?」

 

「それより、あなたが組むことになったと言うのは、一体どんな人なんですか!?私より強力な『爆裂魔法』を使うだなんてありえません!!さぞかし強力な魔法使いなのでしょうね!?正直、あなたが変な男に騙されてパーティーを組んでいたとしても、話してる表情が楽しそうだから今は放っておこうと思いましたが、事情が変わりました。この私より強力な『爆裂魔法』を使うと聞いて、黙っているわけにはいきません!さぁ!早く話しなさい!!一体どこの馬の骨がそんな戯言を言っているのか、すべて吐きなさい!!」

 

 

めぐみんは私の胸倉を掴んでゆさゆさと左右に揺さぶってくる。

 

この小さな体のどこにこんな力があるのか。

 

そして、やっぱり『爆裂魔法』には譲れない何かがあるのか。

 

色々と疑問はつきないけど、それよりも、左右に揺すられて、き、気分が・・・

 

 

「わ、わかった!わかったから!ちゃんとお話しするから!そんなに揺すらないで!酔っちゃうから!お酒飲んでないのに酔っちゃうから!」

 

 

めぐみんの変なスイッチを押してしまったらしい私は、あの人のことを全て話すことになりました。

 

当初から望んでいた結果のはずなのに、全く嬉しくない経路を通って到達したような気がします。

 

どうしていつもこうなるのよぉ!?

 

 

 





お父さん、お母さん、お元気ですか?

私は元気です。

日々、冒険者として頑張っています。

え?パーティーメンバー?

もちろん私にもいるよ。

嘘じゃないよ?

白髪で、目つきと言葉遣いが悪くて、変なシマシマの服を着ている男の子。

まだ出逢って1日しか経っていないけど、私を助けてくれてとっても・・・え?

それ、騙されているからすぐに逃げろ?

そ、そんなことないってば!

あまり優しくないけど私の話も最後まで聞いてくれるよ?

だ、だから、心配いらないってば、本当に!!


              ゆんゆん
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