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「一方通行?・・・琴線に激しく触れる名前であることは認めますけど、知らない名前ですね」
「めぐみんもそう?私も聞いたことないの」
めぐみんに経緯を洗いざらい話した後、私のパーティーメンバーになった人が一方通行という名前であることを告げた。
いくつかの特徴を伝えたら「きっと紅魔族に関わりがあるのでしょうね」と言ってくれたけど、その人自身についてはやっぱりめぐみんも知らないみたい。
ただ、続けて「まさか!伝説の紅魔族の忘れ形見が現れたとでも言うのか!?」なんて大声で叫ぶタイミングではなかったと思う。
眼帯に左手をあてて、右手を天に突き上げるポーズは見ていて痛々しい。
あと、叫んでからチラチラとこっちを見て私に感想を求めるのはやめてほしい。
一方通行さんの話が、めぐみんの中の何かを触発してしまったのかな。
「そもそも、あなたが知らないのに私が知るはずありませんね」
「・・・まぁ、お父さんにお手紙書いたから、お返事が来たらわかると思うけど」
「では紅魔族うんぬんについては置いておきましょう。本人が話そうとしないのですから、今は打つ手なしです」
「そうだよねぇ」
一方通行さんは、私が「紅魔族ですよね?」と言っても、「そうなンじゃねェの?」とか、ぶっきらぼうにしか返してくれない。あからさまに避けてるその態度は私をからかっているとしか思えないけど、何かあるのかな。
「それよりも!!」
急に声を上げためぐみんが嬉々として目を輝かせてる。
「彼が使った『爆裂魔法』みたいな何かは、一体どんな感じだったのですか!?」
眼を爛々と輝かせて、「さぁ早く話せ!話せ!」と迫ってくるめぐみん。
私のライバルが、ちょっと怖い。
なにがそこまでめぐみんを『爆裂魔法』に駆り立てているのかな。
「えーとね・・・」
私は自分が見ていた範囲であの人の攻撃魔法について説明した。
彼が掌を空に掲げると青白い光が彼の周りに集まっていって、巨大な光の渦を形成していたこと。その巨大な渦が放たれて目的のカエルの大群に高速で衝突した瞬間、その渦が光り輝いて大爆発を起こしたこと。そして、その爆発は連鎖的に広がっていって、丘を丸ごと吹き飛ばしたこと。
話していて思うけど、私、よく生きていたなぁ。
「青白い光・・・連鎖的な爆発・・・」
「どう?なにかわかりそう?」
「うーん」
腕を組んで唸っためぐみんは席から立ち上がり、私たちが囲むテーブルをグルグル回りだす。
しばらくグルグルしていためぐみんだったけど、私の前で足を止めて、満面の笑みで告げる。
「さっぱりわかりません」
「わからないんだ!?」
その反応は何かを思いついた時のものじゃないのかな。
めぐみんはまた席について、食後のお茶を啜る。
私もなんとなくつられてお茶を飲む。
あれ。もう温くなっちゃった。あっお姉さん!お代わりを!
「少なくとも、爆発現象を引き起こしていることは確かですね。あなたの話だけでは、それ以上はなんとも」
「も、もしかして私の説明のせい、かな?」
「あなたの説明というわけでは・・・そうですね。もっとわかりやすい説明を「ねぇ、いま否定してくれそうじゃなかった?ねぇってば!」あぁもう!抱き着かないでください!おほん!少なくとも、私が知っている『爆裂魔法』とは似ているようですが、どうも違いますね。爆発の原理が違うというか」
「どういうこと?」
「いいですか。わかりやすく言えば、『爆裂魔法』というのは、目標の敵を目がけて己の魔力をありったけ注ぎ込んで、そこに着火させて一気に燃焼させているのです。つまり、爆発の規模こそ魔力量に寄りますが、一気に爆発する事象なんですよ」
「ふんふん。なるほどぉ」
そういうことだったんだ。
学校だと爆裂魔法について習うことなんてなかったから知らなかったなぁ。
もっとも、それは実用的な上級魔法が多いからなんだけど。
「あなたの話を聞く限り、彼の『爆裂魔法みたいな何か』は、一気に燃焼させているというより、『何かを連鎖的に反応させて生じさせた爆発』という印象です。青白い色というのも異なっていますしね。そしてなにより!!」
めぐみんは真剣な表情で言葉を区切る。
なにか重大な事実に気づいたのかな!?
「そしてなにより・・・なんなの?めぐみん」
「爆発させた後に、平然と歩き回れるわけがありません!」
「そこ!?・・・でも、たしかに『爆裂魔法』って、めぐみんが蓄えてる魔力を一度に使い果たすくらい燃費が悪い欠陥・・・強力な魔法「おい。我が爆裂魔法を侮辱しなかったか?言いたいことがあるなら聞こうじゃないか!」もう!ちょっと邪魔しないで!・・・強力な魔法なんだよね?めぐみんはいつも放った後に動けなくなるし。どうしてあの人は普通に動いて私も助けることができたんだろう」
「そうなのです。そこがどうも変なのですよ。その人は、多数の上級魔法を放ってなお、後で動き回れる魔力を残せる程度の、少ない魔力消費で『爆裂魔法』と同等の威力を発動させたということになるんです。はっ!そんなことありえませんがね!」
「爆裂魔法で負けたくないのね・・・」
「・・・ゆんゆん、あなた、錯乱魔法でもかけられて、騙されているのではないですか?」
めぐみんがちょっと優しい口調で聞いてくる。
それは私も昨日からずっと考えていたことだった。
でも、これだけは断言できる。
「大丈夫よめぐみん。私は、騙されてるわけじゃないわ。自分で見て、信じられることだけ話しているから」
「そうですか」
少し微笑んだめぐみんは、すぐに下を向いて考える素振りをみせる。
「まぁ、結局のところ、真相は彼のみぞ知る。ですから、『爆裂魔法』と同じなのかについては、今のところなんとも言えませんね」
「さっきは「さっぱりわからない」と言っていたけど、けっこうわかってるじゃない。さすがね、めぐみん」
「これくらい『爆裂魔法』を極める者として当然です」
「当然なんだ・・・」
『爆裂魔法』ってなんだろう。
私がもんもんと『爆裂魔法』について考えていると、めぐみんが何かを思いついたみたい。
ただ、その赤い瞳が輝いているから、きっとろくでもないことを思いついたんだと思う。
「いいでしょう」
「どうしたの?」
「私がその人を品定めしてあげます。同じ爆裂道を歩むものとして、喧嘩を売っておかなければ」
「なんでそうなるの!?というか、喧嘩を売る必要はないと思うんだけど!?」
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「という訳なんですけど・・・」
「なンでお前はそこで断らねェンだ」
自分の宿の部屋に戻ってから、めぐみんに言われた内容をそのまま伝えたんですけど、予想通り、ため息をついて面倒くさそうな対応をされてしまいました。
「ど、どうしてもダメですか?私のと、とも、友達の頼みなんですけど」
「・・・はァ」
「お、お願いします!会ってくれるだけでいいんです!私にパーティメンバーができたことだけでも伝えられれば、きっとめぐみんだって満足して、喧嘩売ったりはしないと思うんです」
「つってもなァ。いやまて、なンで見境なく喧嘩売ろうしてンだそいつは」
「あはは。『爆裂魔法』の使い手として譲れない何かがあるみたいで」
「なンだそりゃ。まァ、その内、気が向いたら話しくれェしてやるよ」
「約束ですからね!?私、一方通行さんを説得してみせるって大見えきっちゃったんですよぉ」
「自業自得じゃねェか」
「うぅ!・・・あ!そうだ一方通行さん、お昼ご飯食べました?」
「あからさまな話題逸らしだな。あァ、そういや、まだ食ってねェな。誰かさンに朝早くに叩き起こされたから二度寝してたしなァ」
一方通行さんは、蔑むような視線を私の方に向けてくる。
だ、誰かこの部屋にいるの!?
「なにキョロキョロしてンだ。テメェだっての。太陽が昇ったくれェの早朝に起こすンじゃねェよ。俺が昨日魔力を大量消費してなけりゃ、テメェ骨折くらいはしてたぞ」
「だ、だって、早朝のギルドに一人で行くのは怖かったから・・・すみません」
あそこはずっと営業しているけど、深夜や早朝は酔っぱらいの冒険者たちが溜まっていて、変に絡まれるって評判なんですから。
というか、骨折ってどういうこと?
「ちっ。次からはもっとまともな時間に起こすこったな」
「はい・・・あ!いけない!忘れるところだった!・・・あの、もしよかったら、これ」
「ン?」
私はめぐみんと別れてから、ギルドの料理長のおじさんにお願いして作ってもらったキャベツ炒め弁当を差し出す。
なんだか、ちょっと照れくさいですね。
「さっきギルドでお弁当をつくってもらったんです。ここのキャベツ炒めが絶品で、ぜひ一方通行さんにも食べてほしくって」
「キャベツ炒めェ?おいおい。冗談だろ。キャベツ炒め如きが絶品料理になる世界がどこにあるってンだよ」
「まぁまぁ。文句は食べてから聞きますから。一口!一口食べてもらえれば、わかってもらえるはずです」
「別にいらねェ。お前と話して疲れた。寝る」
「えぇ!?」
この差し出したお弁当箱の行方をどうしろというの!?
私はもうお腹いっぱいだし、かといって捨ててしまうのも、ちょっと・・・
「仕方ない人ですねぇ」
よーし!
こうなったら、里を出る前にふにふらさんが言ってた、『駄々をこねる男の子にご飯を食べさせる方法』を実践するしかないわ。えーと、あれはたしか・・・
「一方通行さん」
「なンだよ」
「あーん」
「な!?なにしやがる!テメェ、なンのつもりだ!」
ベッドに横になってる一方通行さんが焦ってる。
焦ってるこの人はちょっと面白いかも。
けど、これでも起き上がらないというのはどうなんだろう。
「だって、私はお昼とデザートを食べたばっかりでお腹一杯ですから、このお弁当は一方通行さんに頼むしかないんですよお!ほら、食べさせてあげますから!」
「いらねェよ!そもそも、弁当を食わねェって選択肢があるじゃねェか」
「ひどい!せっかく一方通行さんのためを想って、つくってもらったのに!」
「ふーん」
「う、嘘じゃないですからね!?」
「へェ?」
なんでしょう。
この沸々と湧いてくる感情は。
「昨日からずっと思っていたんですけど、一方通行さんはパートナーである私への態度が酷いと思います!もう少し、優しくしてくれてもいいじゃないですか!」
「はァ?この俺に、もっと優しくしてくれってか?おいおい。なに言ってンですかァ。お前のようなボッチに対してこんなにも優しいパートナーなンて、世界広しといえど、他にいるわけねェだろうが」
「えぇ!?何言ってるんですか!そんなことありません!私に対する態度の改善を要求します!めぐみんだって、あなたほど・・・あれ?」
うぅん!めぐみんなら!
・・・うん。たぶん。優しくしてくれるよね?
「というか、今、またボッチって言いましたよね!?言っておきますけど、私はボッチなんかじゃなくて、里にはどどんこさんやふにふらさんだっているんですからね!!」
「あァもう!うるせェ!わかった。わかったっての。食えばいいンだろ!?飯食ってねェのはたしかにそうだからな!?」
一方通行さんはベッドから起き上がって、半ばやけくそ気味に、私の手からキャベツ炒め弁当とお箸を奪い取って、もくもくとお弁当を食べ始める。
「---!?」
あ、あれ?すごく驚いた表情でお弁当を食べる手が止まってる。
「どうしたんですか?あっ!お水ですね。だったらここに「うめェ」へ?」
「くそ!なんでただのキャベツ炒めがこンなにうめェンだ!」
がっつきながらも美味しそうにお弁当を食べる姿を見ていると、さっきまでの感情がその色を変えていく。
なんだか微笑ましい。
そんな色に。
「えへへ。よく噛んで食べてくださいね」
お弁当を食べ進める一方通行さんをみながら、ふと思う。
そういえば。
私、めぐみん以外でここまで口喧嘩したこと、これまでなかったなぁ。
『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武器を手にし、戦闘態勢を整えて街の正門に集まってくださいっ!繰り返します!!』
「えぇ!?」
「あン?なんだァ?」
一方通行さんがお弁当を食べるのを見守っていると、宿の中まで響き渡る大音量で、『緊急クエスト』を告げるアナウンスが流れてきました。
冒険者に平穏な日常はないようです。
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「テッラ様。彼から定期報告が届きました」
「あら?本当に?絶対に書いてくれないと思っていたのだけれど、殊勝な心がけね。えーと」
『定期報告ぅ?
なンでそンな面倒くせェことをこの俺がしないとならねェンだよ。
そンなもン、勝手にお前がこっちを覗き見すればいいだけだろうが。
こっちはただでさえ、ボッチ姫の相手で疲れて・・・は?
テメェ、おいこらテッラ。
また俺の能力を封じやがったな!?
前から言ってやろうと思っていたンだが、
テメェ、たまに俺の能力をいじってるだろ!?
俺の能力をいじったり、封じたりして何が楽しいンだテメェはよォ!?
ぶっ飛ばされてェのか!?次に会ったら最後だからな!?
覚悟しておけよ!この【天使による検閲が入りました】
だいたいだな(ry』
「まぁ!随分と楽しい生活を送っているようね。とっても安心したわ!」
「私はテッラ様の感性が心配です」
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