「何故…こんなことに……」
エンダーマンの青年、エンダー・ビー・ランドは呟く。
ここはエンドシティの港。と言っても水は無く、飛行船やエンドシップが停泊してある。
常時開かれているゲートを介して、エンドと通常世界(オーバーワールド)の交易が行われていた。
二つの世界の関係は穏やかで、これまで何十年もの間、平和が保たれていた。そしてそれが続く……はずだった。
飛び交う悲鳴、飛び散る体液、エンドシティは地獄と化した。(エンダーマンには、人間で言う血液に当たる、液体のエンダーパールが流れている)
その日、人間は大規模なエンダーマン狩りを決行。目的はエンダーマンの心臓部分に当たる、エンダーパールである。
これはオーバーワールドでは手に入りにくく非常に高値で売れるため、それに目をつけた人間の一団が商人に成り済まし、エンドシティの港を襲ったのである。
数十分前に父と母を殺され、家族の中で唯一生き残った妹の手を引いて彼は逃げていた。
妹の前では冷静に接しているが、内心は辛くて気が狂いそうだった。夢だと信じたかった。
妹は両親を殺されてパニックに陥っていたが、少し落ち着いてきたようだ。
呆然と燃え盛る町を見ていたが、人間が近くを探索し始めたため近くの廃墟に隠れる。
もし見つかった時のために近くの窓を開けておき、息を潜めて暗いキッチンカウンターに隠れる。音を聞く限りだと、家の前まで来ているようだ。
コツ…コツ…コツ…コツ…
硬い足音が聞こえる。
「…私達…このまま死んじゃうのかな…」
「大丈夫、音を立てなければ見つからない。やり過ごしたらどうするか考えよう。」
「うん…」
心配する妹を励ましつつ、人間が通り過ぎるのを待つ。
…しばらくして、人間の足音が遠ざかっていった。
少し安心したとともに、ふと、キッチンの角に黒い塊があるのに気付く。
「なんだろう?これ…」
妹がそれを掴んで引き寄せる。
次の瞬間、二人はそれの正体に驚愕した。
黒い塊はエンダーマンの死体だったのである。
腹部に二つの弾痕、背中には大きな切り傷がある…逃げようとして斬られたのだろう。
凄まじい死臭が漂ってきて、吐き気がこみ上げてくる。
「うっ…おえぇっ…ゲホッ…」
妹が耐えきれずに吐いてしまったようだ。無理もないだろう、彼女にこれは年齢的に早すぎる。
大丈夫か?と声を掛けようとした直後だった。
「居たぞ!」
叫び声と共にライトが向けられる。
とっさに妹の手を引いて、開けておいた窓から外に飛び出た。
「逃げるぞ!」
声を放った直後、目の前の光景に体が固まった。
待ち伏せだ。最初から気付かれてたんだ。
後ろは行き止まりだ。完全に包囲されてしまった…
カバンの中から父の形見である動力剣を取りだし、構える。
これはレッドストーンからエネルギーを抽出し、最大2000℃を越える高温の刃を作り出す剣だ。
手探りでアイテム化したレッドストーンブロックを取り出す。
助からないかも知れないなら、やれる所までやってやる。
具現化で壁を張り、銃弾から妹を守る。
「こんなところで死んでたまるか!」
自分にも言い聞かせるつもりで叫び、敵の包みに斬り込む。
軍事学校である程度の技術は学んだ。何とかして守りきってやる。
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「ごめん…私のせいで…」
涙を溢しながら妹が言った。まだ終わってないと言おうとしたが、言葉が詰まって出ない。
状況は絶望的だ。
まだ敵の半分も倒しきっていないのにレッドストーンが底をついた。
銃弾の直撃は無いものの、戦える程の体力は残っていない。
もはや万事休す…と思ったとき、敵の包みが割れ、隊長と思われる一人の男が現れた。
「気分はどうだ?小さな戦士さんよォ。俺は今すぐお前らを殺してエンダーパールを頂きたい所だが…俺も鬼じゃねえ、【条件付きで】見逃してやるよ。」
「条件?」反射的に聞き返す。
「そうだな…その剣でお前の妹を殺したら見逃してやるよ」
「ッ!」
怒りがこみ上げてくる…
「どうした?早く殺せよ。生き延びたいんだろ?」
「…」
「別にそんな足手まといの一匹や二匹消えたところで、何になるってんだ?」
「黙れ…」
「黙れ?考えてみろよ。お前の居場所がバレたのも、かばってて身動きが取れないのも、ぜんぶお前の妹のせいじゃないかw」
「黙れッ!!!貴様らに笑い者にされるぐらいなら…ここで死んだ方がマシだ!!」
言い終わらない内に、剣を握った手に肉を裂くような感触が伝わる。
「…えっ…?」
視線を落とすと、妹が動力剣を自分の胸に突き刺している。
ショックと動揺と混乱で言葉が出てこない僕に向かって、今にも消えそうな声で彼女は言った。
「あの人が言う通り…私はお兄ちゃんの足手まといでしか…なかった…」
咳き込みながら、彼女は続ける。
「でも…もし…私が死んで…お兄ちゃんが生き残れるなら……命だって…投げ出せる…」
幾度となく血を吐いたが、彼女は続ける。
「お兄ちゃん……今まで一緒に過ごせて………本当に良かっ………」
…守れなかった…罪悪感と自己嫌悪に押し潰されそうになった。
終始見ていた人間が口を開く。
「ケッ、醜い殺し合いが見れると思ったのによォ…まあいい、命だけは助けてやる。だが、お頭はここを凝縮TNTで吹っ飛ばす気だ。それまで精々その死体にお別れでもして潔く死ぬことだな」
そう言って人間は引き返していった。
妹の亡骸が剣から抜け、どさりと地面に落ちた。冷たくなっていた。
…もう…腹を立てる気力もない。
死んだ妹の為にもなんとかして生き残らねばならない。その一心で港まで歩いた。
既に精神的なダメージは限界を越え、幾度となく倒れたが、なんとかエンドシップに乗り込んだ。
甲板から、壊滅したエンドシティを見下ろす。
他のエンダーマンはもうほとんど殺されてしまい、人間も撤退したため辺りは静まり返っている。
地獄とはこのような場所の事を指すのだろうか。生気がまったく感じられない。
最後の力を振り絞りコクピットまでたどり着くと、倒れている死体をどかし、エンジンを起動して自動航行モードをONにし、ディメンション間ゲートを起動する。
それを終えると糸が切れたかの様に、意識が闇の中に消えていった…