俺の名前はK・ヤマト   作:遊び人(Lv.19)

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 夜分失礼します、3度目の投稿になります。
 だいぶ書き方が違うので、すごい不安です。
 あと、後書きにちょっとしたSSがあります。
 では、どうぞ。






K・ヤマト オーブ在住編
第1話 ヤツは来世でもK・ヤマト


 明日は、無限の可能性に満ちている。

 

 些細な行動一つで未来が変わる。

 

 選択しなかった明日はすぐ隣にあり、されど、その未来はまったく別の方向へと羽ばたいていく。

 

 勢いで選んだ明日が最高の結末を迎えることもあれば、長く熟考して選んだ未来が存外大したことなかったりもする。

 

 時間と空間を巻き込み、今を生きるすべての人を巻き込み、世界、はては宇宙をも巻き込んで明日は作られるのだ。

 

 この世界は、たしかに、俺がいなくても回るのかもしれない。

 

 でも、もしかしたら俺がいないと回らないのかもしれない。

 

 未来は誰にもわからない。

 

 だからこそ、今を足掻き、進み、目指すのだ。

 

 俺が信じた、望む明日へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………とは、偉そうに語ってはみたものの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………ふぅ。

 よし、落着け。クールになれ、キラ・ヤマト。

 koolじゃない、coolになるんだ。

 これでも俺は最強のスーパーコーディネーターと言われていたんだ。

 生身での切った張ったも、モビルスーツによるえげつない戦闘も、クソ親父が残した面倒な負債の清算もなんとか済ませてきた。

 自分のルーツを探るために11歳の時に家を飛び出して、傭兵をやりながら色んな知識を詰め込みまくって、地球連合軍の実験基地を木端微塵に爆破して妹を実家に連れ帰りすらした。

 ライブラリアンだとか、一族だとか、D.S.S.Dとか、そこら辺の厄介な相手とすらつながりを持ってきた。

 今、俺の身に起きていることなんて、それらに比べたら恐れるに足りない。

 コーディネーター最強の肉体と頭脳を持った俺に、解けない問題なんざねぇ!

 

「ねぇー、きらぁー。おままごとしようよぉ!わたしが、ながねんつれそいながらもこどもができずにふがいなくおもいつつも、だんなさまがだいすきなしょみんのおよめさんで、きらは、めいけのどろどろしたじじょうでどうしてもあとつぎがひつようで、こどもができないことにあせりをおぼえてついにはおめかけさんをつくっちゃうだんなさまね!」

 

「なんだその中世の貴族の止むに止まれない性事情みたいなおままごとは」

 

「?」

 

 あんまりなおままごとの内容に、思わず突っ込んだ。

 俺のツッコミに、目の前の3歳くらいの幼女がこてんと首を傾げる。かわいい。

 

 ……そうじゃない。

 どうも、目の前の幼女は自分が言ったことがどういうことなのか分かっていないようだ。

 理解してたら理解してたで問題だけど。

 つーか、誰だコイツにそんな言葉教えたのは。

 場合によっては訴訟も辞さない。

 

「きらぁ、だっこ!」

 

「はいよ……」

 

 おままごとはもういいらしい。

 ほわぁーっとした笑みを浮かべながら、俺へと手を伸ばす幼女を抱きしめる。かわいい。

 だっこは無理だ。コイツと俺は年齢が一つしか離れていない。

 俺のほうが身長が高いとはいえ、両方ともガキんちょだ。

 だっこはさすがに無理である。

 俺はほとんど顔がくっつくように目の前の幼女と抱き合った。

 

 至近距離で見える、紺に近い艶やかな黒髪に、エメラルドグリーンの瞳。

 すでに美人の片鱗が見え始めている端正な顔立ち。

 香水の香りとは違う、ミルクのような、どこか落ち着く甘いにおい。

 むふふー、とご機嫌に笑いながらすりすりしてくる幼女に思わずほっこりした。かわいい。

 

 ……俺ってロリコンだっけ。

 幼女ってやっぱ幼女、と俺はつぶやいた。

 ほんとに意味わかねんぇな。

 

「なぁ、おまえさぁ……」

 

「むっ……きら!わたし、おまえじゃないよ!」

 

「いや、まぁそうだけどよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたしには“あすらん”ってなまえが、ちゃんとあるよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 アスランである。

 うん、アスラン。

 何度も言うけど、目の前の幼女は、アスラン。

 いや知ってたけどね、前世でも女の子で幼なじみだったし。

 

 そう、アスランちゃん3歳である。

 

 ……うん。なんか、転生した。

 ごめんなさい、解けない問題なんかたくさんあります。

 スーパーコーディネーターでも、このわけのわからん現象は理解できなかったよ……。

 

 そして、そんな俺も、もう4歳。

 

 残念!かわいい女の子だと思った!?それはアスランちゃんだけでーす!

 俺はキラ君!よんさいです!

 幼稚園に通ってます!(絶望)

 道路を渡るときは手を上げて渡ります!!(半ギレ)

 スモック着て黄色い帽子かぶってはーい(^O^)/って返事してます!!!(全ギレ)

 

 

 

 

 ■□■

 

 

 

 

 

 いつから記憶があるのかと聞かれたら、最初からと答えるしかない。

 息苦しさを覚えて目が覚めたら、周りは白衣の看護婦と助産師さんで、俺はその腕に抱かれていた。

 驚愕なんてチャチなもんじゃない、マジでわけがわからなくて思わず泣くのを止めたら、助産師さんに背中をぶっ叩かれた。

 とりあえずギャン泣きした。

 

 少しばかり落ち着いてようやっと周囲に意識を向ける余裕ができた。

 いつの間にかへその緒は切られ、赤ん坊用の貫頭衣のようなものを着せられ、そして俺を生んだ母に抱かれていた。

 

 ……前世での俺の養母、カリダ・ヤマトだった。

 その隣にはカリダの夫、ハルマ・ヤマトもいた。

 俺を生んだためか、明らかに憔悴した様子のカリダは、けれど俺をしっかりとその胸に抱き、心の底から慈しむように俺を見つめていた。

 ハルマも同様で、涙ぐみながら母の肩を抱き、俺の誕生を本当にうれしそうに祝ってくれた。

 俺もうれしくなったが、同時に疑問も抱いた。

 

 前世では、彼らは俺の実の親ではなく、養父母だった。

 ユーレン・ヒビキとヴィア・ヒビキが己の遺伝子を使い、ガラスの子宮から生まれたのが俺だった。

 それをヴィア・ヒビキの妹であり、俺にとっては叔母でもあるカリダの夫婦に預けられた。

 

 だが、どうにもこの世界では、俺は普通にカリダとハルマの実の息子らしい。

 周りの様子を見るに、カリダが俺を生んだのは確かなことのようだし。

 つーか母が若い。18くらいに見える。

 ……まさか見た目通りの年齢じゃなかろうな?

 ちょっとロリっぽいんだが。

 

 それと、だが。

 俺は、この人たちの子供だっていう妙な確信がある。

 感じられる縁とでも言えばいいのか、繋がりとでも言えばいいのか。

 こう、なんとなくわかるとしか言いようがない。

 初めてカナードを見た時、この子は俺の妹だと直感的にわかったときみたいな感じだ。

 例えは悪いが、ラウ・ル・クルーゼを初めて見たときに、ムウさんを幻視したのと同じだろうか。

 どうにも妙な勘というか、そういうものが俺にはあった。

 考えても仕方がないから、多分そういうものなんだろうと納得している。

 

 さて、まぁ、イマイチ働かない頭で考えてみたんだが。

 かくいう俺は、生まれたばかりの赤ん坊なわけで。

 今の両親の名前も、自分の名前すらわからない、というか、ない状態なのだ。

 

 なにが言いたいかというと。

 俺の現状が知りたいのである。

 俺は赤ん坊をあやすように、母の腕の中で揺られていた。

 父は何やらお客さんが来たようで、病室から出て行ってしまっている。

 

「ふふ、私の、赤ちゃん。わたし達の、赤ちゃん。生まれてきてくれて、ありがとうね。実はね、あなたの名前はもう決めてあるのよー」

 

 顔に疲労をにじませながらも幸せいっぱいに笑う母に、俺は素直に嬉しくなった。

 前世ではずっと、二人が本当の両親ならいいのにと思っていたのだ。

 今度こそ本当の子供になれてすんげー嬉しい。

 

「あ、笑った!ふふ、あなたも、生まれてこれて嬉しいのかな?」

 

 ていうか、名前決まってるのか。

 普通に気になるんだが。

 

「その前に、自己紹介したほうがいいかな?でもわかんないよねー、赤ちゃんだし。まぁでも、いっか。私、カリダ・ヤマトっていうの。あなたのお母さんで、ハルマさんのお嫁さんだよー。あーんもぉー、子供ってかわいいなー!」

 

 ……。

 …………ん?

 

「あなたはね、キラ。キラっていうの。キラ・ヤマト。ふふ、私たちの、むすこ」

 

 目尻を下げ、幸せそうにへにゃりと笑うロリっぽい母に気を取られながらも、俺は動かない頭を精一杯動かして周囲の様子を探った。

 …………ここ、C.E.じゃないよな?

 周りの設備から、宇宙に進出してはいないと思ってたんだが。

 いや、カレンダーは普通に西暦になってる。

 ……よくわかんねぇ。

 

「カリダ、大丈夫かな?」

 

「! 大丈夫よ、ハルマさん。それで、お客さんって?」

 

「……それが」

 

 ノックのあとに、父が入ってくる。

 どうやら父も、前世の養父と同じ名前らしい。

 偶然だと笑えばいいのか、それとも因果なのか。

 判断がつかなくて困る。

 

「……失礼するぞ、カリダ」

 

「……兄さん」

 

 父が言っていた“お客さん”が入ってきた。

 ウズミさんだった。

 ひげである。

 いや、それにもびっくりだが、今兄さんって言わなかったか、母よ。

 関係ないけどさ、前世のころから思ってたけど、ウズミさんって老けすぎじゃねぇ?

 うちの母は若すぎる気がするけど……。

 

「……なによ。私はもう“アスハ”じゃないんだから関係ないでしょ」

 

「そう言うな。ここに来ていることは、父上には知らせていない」

 

「っ、それって……」

 

「父上は、私がどうにかしておこう。今は身体を大事にしなさい」

 

 やべぇ、事案っぽい。

 明らかにお家騒動の匂いがするんですがそれは。

 それだけ言って、ウズミさんは背を向けた。

 

「……待って!……キラの顔くらい、見てって」

 

「……いいのか?私は……」

 

「兄さんが庇ってくれたこと、知ってるから……」

 

 どうにもシリアスな空気に、俺は考えを巡らせる。

 ……もしかして、うちの両親、駆け落ちしたんじゃないだろうか。

 マジか。

 言葉が話せたら、やるなぁ!!って喝采をあげてたところだ。

 

「君がキラ君、か。私の甥っ子になるのか……」

 

 ウズミさんが俺を抱き上げた。

 少しおっかなびっくりしているのが微笑ましい。

 急にドアップになった顔とひげにびっくりしつつも、俺はウズミさんをまっすぐ見返した。

 顔とひげは厳ついが、すごく優しげな笑みを浮かべている。

 前世のころに会ったウズミさんと比べると明らかに若い。

 ……やっぱりこの世界は、前世と似たような世界なんだろうか。

 俺は混乱した頭でそんなことを思った。

 

「兄さんの顔見て泣かないなんて、キラは将来大物になるわね!」

 

「妹よ、さすがの私も傷つくのだが……」

 

 いじけたようなウズミさんの声に、病室が笑いに包まれた。

 

 

 

 ■□■

 

 

 

 さて、まぁ、そんな風にして“俺”は生まれた。

 あれからもう4年である。

 俺は4歳になった。

 1年遅れてアスランが生まれた。

 どうやら、彼女と幼なじみになるのはこちらの世界でも共通らしい。

 

 この4年の間に色々と知ることができた。

 

 こちらの世界はC.E.の時代とは大きく異なる。

 宇宙にコロニーはなく、地球連合軍などという大きな組織もなく、当然ながらコーディネーターも存在しない。

 地球上に多くの国が存在し、各国が牽制しあうことによって一応の平和を保てている。

 無論、紛争なりクーデターなりが世界のどこかでは起きていて、完全な平和などとは言えないが。

 俺たち一家が住んでいるのは、こちらの世界でも中立国であるオーブ連合首長国だ。

 地球連合が存在しないため、オーブは前世よりもはるかにマシな状況だった。

 国家が多く、意外なことに中立国がそれなりにあることも要因の一つと言えるだろう。

 

 まぁ、難しい話は今は割愛する。

 なにせ4歳児なので。

 重要なのは、この世界は前の世界とは明らかに違うってことだけ。

 物理法則とかそういうことは同じだけど、あくまでそれだけ。

 この世界はこの世界で、前の世界は前の世界。

 あくまでも今の俺はこの世界の住人であって、前の世界の住人ではない。

 それだけ理解できていれば十分だ。

 

 ベッドに寝転がる。

 時計はすでに11時を回った。

 頭の裏に手を組んでぼんやりと天井を眺める。

 最近は転生した理由だとか、俺が死んだ後のことだとかを考えなくなった。

 頭は悪くないほうだと自負しているが、元来ごちゃごちゃと悩み、考えたりするのは好きじゃない質だ。

 神様なんかがいるのならば、礼の一つでも言ってやってもいいが、会ったことないし。

 俺が死んだ後の世界なんて、俺が気にしても仕方がない。

 気にはなるが、すでに退場した身だ。

 残った連中が勝手に未来を紡いでくれるだろう。

 

 さて、それよりも。

 今のこと、それと、これからのことだ。

 

 自由に歩けるようになって、言葉も話せるようになった。

 世界を巻き込んで戦争がやばいとか、そんな話も聞かない。

 家のことは多少やることはあるが、この年齢で出来ることでもない。

 俺は、自由だ。

 

「自由か……」

 

 前世ではしがらみがあったせいで、あんまり好き勝手はできなかった。

 俺がやったことなんて、正体隠して傭兵やって、妹を実験基地ぶっ壊して連れ出して、最後に盗んだフリーダムでジェネシスにカチコミかましたくらいである。

 

 ……そうでもねぇな。

 

 よく考えたらけっこう好き勝手やってた。

 

「ま、今さらか」

 

 そうだな。

 親父はどうやら、総合的な工学関連の研究者らしい。

 これでも機械いじりは得意なほうだ。

 ねだったら、研究所に出入りくらいさせてくれないだろうか。

 

「空が飛びたいな」

 

 ふと、そんなつぶやきがこぼれた。

 ……悪くねぇな。

 とりあえず、自由に空を飛ぶことを目標にでもしてみるか。

 時間も、ノウハウも、経験もたっぷりあるんだ。

 工業カレッジにも通ってたし、ストライクもフリーダムも結構好き勝手いじってたし。

 なんだか少し楽しくなってきた。

 

「ふわぁ……。……しっかし、子供の身体ってのは、勝手が効かねーもんだな」

 

 簡単に欠伸が出る。

 けっこう眠い。

 

 子供の体は自分の欲望に正直だ。

 何度夜泣きして、母さんを起こしことか。

 本当にコントロールできねーんだよこの身体。

 それでも、嫌な顔一つせずに夜泣きした俺の相手をしてくれる母さんには頭を垂れる思いだった。

 

 親父も一緒に起きてきて、二人でいちゃつきながら俺に授乳させるのはなかなかにきつかったが。

 寝たふりしてるからいいけど、隣で砂糖吐きそうなぐらいいちゃつくのはやめて欲しい。

 おいこら、盛んな盛んな、せめて隣の部屋行け。

 赤ちゃんプレイとかやめーや。

 

 思い出したら、なんかイラッときた。

 

「水飲んで、寝よう……」

 

 冷蔵庫に、冷えた麦茶があったはずだ。

 俺は台所に向かった。

 

『―――ッ!―――ッ!』

 

「ん?」

 

 父と母の部屋から光が漏れている。

 それと、なにやら声も聞こえた。

 

『―――ッ!~~~ッ!?』

 

「あー……」

 

 そういうことか。

 つーかまたかよ。

 両親ともまだ若いから仕方ねぇっちゃ仕方ねぇんだが。

 いやまぁ、むしろ、やることきちんとやってて安心したくらいだ。

 

「そう遠くないうちに、弟か妹ができそうだな」

 

 弟でも妹でも、名前はカナードとかに決まりそうだ。

 

「兄弟か……。弟でも妹でも、すんげー甘やかしそうだな」

 

 そっと扉を閉じて背を向ける。

 水は……洗面所でいいか。

 

 でも、この調子でやられたんじゃ、弟か妹に悪影響が出そうだな。

 ……よし。

 無邪気さを装って、明日は盛大にからかってやるか。

 

 欠伸を噛み殺しながら、俺は明日の計画を練り始めた。

 

 

 

 

 

 

 




 




「ねーねーおとーさん!おかーさんも!いけないんだー!」

 朝食の時間、一人息子のキラがはしゃいでいる。
 朝から元気な息子にほっこりしながらも、キラの言ったことをカリダは考える。
 少しばかり(カリダ視点)おっちょこちょいなところがあるカリダはキラの言うことを頭から否定できなかったのだ。
 私、なにかやらかしちゃっただろうか、と。

「キラ、なにがいけないんだい?お父さんに教えてくれ」

 ハルマさんがコーヒーを片手に、優しげな笑みを浮かべながらキラに問う。
 夫も心当たりがないようだ。
 朝食のサラダのレタスを千切りながら、カリダもキラの話しに耳を傾けた。

「よる、ねるときは、きちんとぱじゃまきないといけないんだよー!おとーさんもおかーさんも、きのう、おふろにはいるときのかっこうだった!おふとんのなかで、ふたりともはだかだった!」

 ブフゥー!!とハルマさんがコーヒーを吹いた。
 カリダも、思い切りずっこけて、レタスがあらぬ方向に飛んで行った。

「きききき、キラ?え、えぇーっと、どういうことかな……?」

「だーかーらぁ!おとーさんとおかーさんがおふとんのなかではだかd―――」

「それ以上言っちゃダメぇ!!?!」

 カリダは耳まで真っ赤になりながらキラの口を手で押さえた。
 なんてことだ。
 昨日のアレの最中に、まさか、キラが起きていたなんて!

「―――?おかーさん、これ、いっちゃだめなこと?」

 こてんと首を傾げながら息子が問うてくる。かわいい。
 ……可愛いけど、今は違う。
 ぶんぶんとカリダはうなずいた。
 
「き、キラ?いいかな?この世界には、たとえ知っていても言っちゃいけないことがあるんだ。キラが昨日見たことは、そういうものなんだ。キラが大きくなったら意味が分かるようになる。だから、昨日のことは人に言っちゃだめだよ?」

 ハルマさんの説得にカリダはナイスフォロー!と言いたくなった。
 キラは賢い子だ。
 こういう言い方をすればきっとわかってくれるはずだった。

「―――あ!これが“おとなのじょうじ”ってやつ?」

「間違ってるようで間違ってない!けど間違ってる!」

「ハルマさんそのツッコミは危ないからやめて!!」

 “情事”じゃない、“事情”よ!昨日しちゃったことは間違ってないけども!
 難しい言葉を中途半端に覚えているせいでより直接的な表現になってしまった。
 キラ恐ろしい子!とカリダは自分の不注意を棚に上げた。

「あ……まずい!もうこんな時間だ!急がないと!」

 ハルマさんの声で我に返る。
 カリダが時計を見ると、本来はもうキラを幼稚園へ送り出している時間だった。

「キラ!サンドイッチ急いで作るから幼稚園に行きながら食べよう?このままだと遅刻しちゃう!」

 キラの着替えをハルマさんに頼み、カリダは手早く調理を始める。
 今の時間ならギリギリ間に合うかもしれない。  

「おかーさんだいじょうぶだよ。ようちえんのせんせい、ちこくしてもりゆうをきちんといえばおこらないっていってたから。おとーさんとおかーさんの“おとなのじょうじ”でおくれました!ってきちんといえば、ゆるしてくれるよ!」

「「お願いだからやめてぇぇぇぇぇぇぇえ!!?!」」

 ヤマト家の朝に、カリダとハルマの心の叫びが響き渡った。
 カリダとハルマが錯乱している間、キラは一人ニヤニヤと笑っていた。






 ひどい……こんなのってないよ……。

 こんばんは、遊び人です。
 後書きのほうにSSを作ってみました。
 一人称描写と三人称描写の対比にもなっています。
 本日も本作をお読みになっていただきありがとうございます。
 もしよろしければ、アドバイスとしてどちらのほうが読みやすかったか等の感想がいただけたら嬉しいです。
 まぁ、内容があれなので一概にどうとも言えないんですけどね。
 では、また。

 
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