俺の名前はK・ヤマト   作:遊び人(Lv.19)

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第3話 自重?できてるできてる!ガンガン行こう!

 時が立つのは早いって聞くけど、それはきっと当時は振り返ることもできないくらいその時間を精一杯生きているからなんだと思う。

 それは、一日が短い幼稚園児も部活で一生懸命な中学生も、そして入ったばかりの会社で悪戦苦闘する新社会人も変わらない。

 その時一瞬一秒を必死にこなして一日が終わり、濃密な時間から解き放たれて、それでもまだ似たような日々が続くと、振り返ることもなく眠りにつく。

 夢であったり生活のためだったりと、目的は違えどただその時をがむしゃらに生きる。

 ある程度慣れて、少しだけ時間に余裕ができて、ふといっぱいいっぱいだった日々を思い出す。

 そこで初めてあの時はあっという間だったと思うのだ。

 それは前世において様々な争いに巻き込まれた俺とて例外ではない。

 

 さて、今回二度目の生を何故か生きている俺はどうなのか。

 結論から言おう。

 

 

 

 めちゃくちゃ好き勝手にやっていた。

 

 

 

「よう、キラ!お前さんが作った“アブルホール”最高だな!いや~気持ちいいねぇ、IS相手に戦闘機で10連勝出来ちまう日が来るとはなぁ!」

 

「あの“IS”相手に被弾ゼロ!それどころか一部の能力においては“IS”を圧倒してるわぁ!いやぁん、“アブルホール”様さまよぉ!」

 

「全方位対応型のビーム砲台にピンポイントバリア発生装置、次元並直列スパコンに新型パワーエクステンダーに特殊Eカーボン装甲!勝つる!これならたとえ第三世代型にだって勝つる!」

 

「これならぁ、発展形も大して時間かからずに作れそうですねぇ~」

 

「あー、ムウさん、身体大丈夫?結構無茶な機動したって聞いたんだけど」

 

「あったりまえじゃないの。俺を誰だと思ってんの。不可能を可能にする男だよ、俺は!」

 

 研究所は熱狂に包まれていた。

 そこかしこで普段は濃い隈を携えグールのように呻いている研究者たちが、今日はキーボードもペンもそこらへ投げ出し、ビールを片手に睡眠不足を忘れて喝采を上げている。

 まぁ、当然っちゃ当然だけどね。なんせ、今研究所は盛大なパーティーの真っ最中だし。

 では、なんでこんなことになってんのか。

 うむ。

 

 お  れ  が  げ  ん  い  ん  だ  。

 

「ほ~ら一番の立役者が飲まなくてどうすんの!カリダさん!キラにビール!」

 

「キラはまだ未成年です!」

 

 機嫌よさげに軍服を着崩した金髪の大男が俺の背中をバンバンと叩く。

 大分体格差があるせいか、成長途中の体がすんげー揺れる。

 まぁ、気持ちはわからんでもねーけどな。

 確かに今回のことは、一男として俺も鼻が高いし。

 それなりに苦労して作り上げたものが想像以上の成果を上げれば、そりゃ嬉しくなるってもんだ。

 

「“こっち”でもムウさんはエースパイロットかよ……」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「いや、なんも」

 

 相変わらず勘が鋭いな。さすがムウさんって感じだ。前世でMAでMSを落とすだけはある。

 軽薄で緩めな感じの人だが、実力は確かなオーブのエースパイロットだ。

 ……そう、()()()()()()()()()()()()()である。

 

 この人はムウ・ラ・フラガ。俺の前世の戦友で、頼れる先任パイロットだった人だ。

 俺がストライクに乗っていた時、ムウさんはスカイグラスパーを駆りアークエンジェルの二大戦力として共に戦場を駆けた。

 フリーダムに乗り換えてからは俺の愛機だったストライクのパイロットとなり、持ち前の能力で三隻同盟の中核を担ったエースパイロットの一人でもある。

 マジで、懐かしいなあの頃。

 二人して大群相手に無双してた。

 無双しないと生き残れないっていうクソみたいな状況だったからな!

 頼れる大人の戦友ということで、俺はムウさんと悪友のような関係を築いていた。

 それは今世もぜんっぜん変わらない。

 

 ……まぁ、正直オーブに前世と関わりのある人がいすぎてなんか微妙な気分になることはあるけどな。

 小学校でイザークの名前を聞いたときは顔を知らなかったせいでものすごく妙な気分になったし。

 いやだって、ディアッカから顔に傷を残してまでストライクと俺に執着してたとか聞いてたからさぁ。

 そりゃ、傷つけたのは悪かったとは思ってるけどさ。

 でも戦争中な上、先に襲ってきたのはあっちのほうだし。

 デュエルのパイロット怖ッ!めんどっ!しつこッ!とかめっちゃ思ってた。

 

 ま、そこら辺は全然杞憂だったけどな。

 話してみたら頑固ではあるがいいやつだったので、とりあえずお互いノーガードで殴り合いのケンカしたけど。

 ケンカは男の万能ツール。

 頑固な連中同士ならマジでこれで一発。

 多分汎用性は高くない。

 

「しっかし、どっちかっていうとオーブの場合“IS”のほうが問題かもねぇ」

 

 ふと、ムウさんが普段の彼に似つかわしくない神妙な顔でつぶやいた。

 

「オーブの“IS”、そんなよくないのか?」

 

「いやー、パイロットはいい腕してるんだけどな。機体のほうがダメダメな感じ。エリカちゃんも頑張ってるんだろうけど、ちょっともったいないよなぁ」

 

 ぼやくムウさんに俺はどうしたもんかなぁと考える。

 IS、通称<インフィニット・ストラトス>にも手を出すべきかどうか、と。

 

 

 

 

 

 

 さて、未だ齢12の俺が何故こんなことを考えているのか。

 それを説明するにはこの5年の間に起きた世界の変革について話す必要がある。

 

 この5年の間に世界は大きく変革した。

 

 5年前のある日、世界中の2341発ものミサイルが一斉にハッキングされ、制御不能に陥った。

 制御の手を離れたミサイルは世界各地から飛び立ち、その標的を日本に定め飛来した。

 ところが、それらのミサイルは突如現れた白銀のパワードスーツによって無力化された。

 このことに対し各国は治安維持を名目にパワードスーツの奪取を敢行。

 しかし、結果はあえなく惨敗。

 一人の人命を奪うことなく、多くの戦闘機や軍艦は白銀のパワードスーツによって破壊され、その圧倒的な性能を世界に見せつけた。

 白銀のパワードスーツ“IS”は、一夜にして世界中の人々にその存在を知らしめたのだ。

 後に“白騎士事件”と呼ばれるこの事件は“IS”を究極の兵器として世界にその名を刻んだ。

 

 で、一番の問題はその後。

 

 “IS”、女にしか使えないんだってよ。

 

 さてそのあとはもう大変。

 国にとって軍事力ってのは大事なステータスだ。

 国防にしろ侵攻にしろ、軍事力がなければ始まらないからな。

 そんな中に既存の兵器を凌駕する圧倒的戦闘能力をもつ兵器が現れたのだ。しかも女性にしか使えない。

 基本的に軍ってのは男社会の縦社会だし、それを根本から覆すような今回の出来事は、今までの常識が崩れるってことで。

 もう各国の首脳陣頭痛マッハである。

 

 いやー荒れたね。ほんっとうに荒れた。

 俺はISとやらに触ったことは無いから知らんけど、マジで男には動かせないらしい。

 そんなISが戦闘機をばったばった落としてくもんだからもう大変。

 既存の兵器は立場を失い、ISが世界に台頭してきた。

 製作者がISは兵器じゃありませんなんて言ってもそっちのけ。

 世界はISに兵器としての高い素養を見た。

 戦闘機なんかよりISだ!と。

 しかも女しか乗れません。女強い!と。

 

 てかなんで男乗れねぇんだよ。失敗作だろ普通に。

 面倒というか、よくわからんものを作ってくれたもんだ。

 

 で、そんな事件が起きてもう5年。

 当然ながらオーブにも混乱の波は来た。

 他の国にも言えることだが、オーブは自国の武装中立を堂々と公言し、技術国家だけあって当然ながら国防に最新鋭の自国産機を防衛に配備している。

 それらを容易く凌駕する兵器が新たに完成し、おまけに女性にしか動かせないなんてホントたまったもんじゃない。

 五大氏族の連中はてんやわんやである。

 現代表首長のアスハとか禿げちまえ。

 

「アスハのジジイはザマァwww」

 

 ウズミさんじゃないよ。俺の母親を勘当したくそジジイのほうだ。

 

「なんか言ったか?」

 

「いや、なんも?」

 

 ま、だからこそその隙をついて研究所にもぐりこめたんだけど。

 

 俺の両親、カリダとハルマは子煩悩かつ教育熱心で親バカだ。

 もともと頭のいい子供をアピールしていた俺はある日、母さんの親バカが暴走してIQテストを受けることになった。

 そこで俺は無邪気さを装いながらそこそこ本気でテストに取り組んだ。

 前世の記憶のこともそうだが、なぜかこっちでもスーパーコーディネーター並の能力を持つ俺のIQの高さに両親とも驚愕&大歓喜。

 年頃の少年らしくロボットに興味があることを伝えたら、それじゃあとなんと親父が使ってない研究所の一室とパソコンやらなんやらをくれた。

 以来、俺は学校が終わると、その日の気分次第で研究所に入り浸っていた。

 初めのうちは適当にPCを組み立てたり、ゲームを作っていただけだったが(それでも親父にはものすごく驚かれたが)だんだんと興が乗り始め、研究所の職員を巻き込んで盛大に遊びまくった。

 そして、やらかした。

 

 やらかした、つーかやっちまった☆

 

 オーブは人口や資源が少ないせいか、割と実力主義なところがある。

 俺みたいなガキでも、能力あるならいんじゃね?って感じでわりと簡単に受け入れられたのがその証拠だ。

 親父が勤めていた研究所はオーブ国内でもかなり変わり所で、とりあえずなんでも作ってみて、できたものに問題がなければ使ってみよう☆という変態研究所だった。

 

 おまけに奇人変人変態の巣窟で、ポンコツふわふわ理系女とか、真剣にセンサーつけて振りまくってぎっくり腰になってる爺さんとか、なんか作ったりばらしたりする度にオペ!とかメス!とか、わけのわからんことを言ってるやつもいる。

 理系のポンコツとか物理的に危ねーし、ポン刀振るなら手からすっぽ抜けないでくれないかなぁ!と思うし、そもそも最後のヤツの本業は医者らしいし。

 この研究所怖ァ……。

 

「なんかバカにされた気がするぅ……」

 

「セファンもか!誰じゃい!儂のことをキ○ガイ頑固ぎっくり腰痴呆一歩手前ジジイとか思ったやつは!」

 

「ふむ、ならばオペが必要だな!」

 

「誰もそんなこと言ってないよぉ~……」

 

 あそこはスルーだな。めんどくせぇし。

 

 そのくせ妙に倫理観がしっかりしており、決して危険なもの、非人道的なものは作らないというおかしな研究所だった。

 ハッキングして調べたけど、本当に後ろ暗いことはしてない。

 だから俺も信用してるんだけどな。

 

 おかしいと言えばこの研究所、やたらと権限があるのも不思議だ。

 通常そういった軍事面に利用できそうな技術は軍部が目をつけ、徴収されそうなもんだが、なぜかこの研究所にはそういうのは一切ない。

 国防に限り、こちらの裁量権という形である程度の量産や協力はすることになっているが。

 まぁ、それはそれとして。

 普通さ、戦闘機の試験機に乗せるパイロットとか絶対軍部から指定くるよな。

 でも、そんなことお構いなしにこの研究所の所長がどっからかムウさんを引っ張ってきたのだ。

 ありえなくね?

 マジでどうなってんだこの研究所。

 所長とか、3年も出入りしてるのに数えるほどしか見たことない。

 あいつカマっつーかオネエっぽいから会わないに越したことはないんだけど。

 いかにもオネエっぽい仕草と共に「あら、かわいい子♪大丈夫よ、そんなに警戒しなくって。私オネエじゃなくて紳士だから♪」「オホホ、大丈夫よ。あなた達のことは私が守ってア・ゲ・ル♪」とか言いながら笑っていたのはすんげー記憶に残ってる。

 たしか、名前はマティアス・キオウとかって言ってた気がする。

 いい人だけど超忘れたい。

 

 信用できる人ではあるんだけどな。

 オネエだけど。

 すげぇ優しくて、研究所と研究員のことを一番に考えてくれて、謎の権力で俺たちを守ってくれるんだけどな。

 オネエだけど。

 

「今、なんかすごい侮辱された気がするわぁ……」

 

 やべっ、カマ所長に気付きかれかけた。

 けっこう離れた位置にいんだけどなんで気付いたんだ?

 やっぱオネエって敏感なんかな……。悪意とかあいつオカマだー、しっ、見ちゃだめよ!とかそういう視線に。

 今度差し入れでも持ってってやろう。髭剃りとか。

 

 まぁいい。オネエの話は置いておこう。

 世界では“IS”の研究や軍事転用などによる“IS”至上主義の風潮がだんだんと見られ始めた。

 オーブはもともと男女の格差が少なかったおかげでまだマシではあったが、世界は着実に女尊男卑へと傾いていたのだ。

 特に日本ではそれが顕著らしい。テレビでヒステリーな厚化粧ババアが喚いてんの見てウエッとなった。

 お前どう見てもIS乗りこなせねーだろうが。

 

 分かりやすいと言えばそれまでだが、なんというかもうちょっと理性的になってほしかった。

 たかがパワードスーツを動かせる、性別が女ってだけでなんで選民思想に取り憑かれんのかね。

 世界の半分は男と女だっつの。

 たまにオネエもいるけど。

 

 それに、まだISは300も作られてないのに、究極の機動兵器とか頭沸いてるんじゃなかろかと。

 そもそも兵器じゃないらしいしアレ。宇宙用のスーツなんだって。

 乗ってる人水着だけど(水着じゃありません)。

 

 俺は自分で言うのもなんだが、身勝手で負けず嫌いだ。

 精神だけならそれなりに歳食ってるせいか、自制は効くし、我慢もできなくはない。

 それでも、ケンカは売られれば積極的に買うし、理不尽なことを見逃せる質でもない。

 そんな俺が、ちっぽけな理由だけで女だからどうこうってのを聞いてやるわけもなく。

 それも、たかがパワードスーツを使えるかどうかで男が女より弱いとか、そんなくだらない理由でごちゃごちゃと難癖つけられるのはホントにめんどくせぇ、となるわけだ。

 

 結果、俺と研究所は外国に実機並びにデータを持ちださないこと、情報の流出を完全に防ぐこと、さらには軍部相手でも許可なしには使用、製造を禁止することを絶対条件としてあるものを作り上げた。

 

 それが、可変型戦闘機“アブルホール”だ。

 

 それはまるで足の生えた戦闘機だった。

 通常の戦闘機は後部にスラスターがあり噴射孔が他方向には動かないが、“アブルホール”のスラスターは可変式、というか全方位に動く。

 つーか、ほとんど真ん中から折れて足になる。当然歩行もできる。

 足はかざりじゃねぇよマジで。

 端から見てみるとものすごく脆そうだが、そこはEカーボン装甲の出番である。

 Eカーボン装甲は元来のカーボンナノチューブの約20倍もの引張り強度を持つ、現段階ではどこの国も開発できていない新素材である。

 本当は無重力空間で開発を行いたかったところだが、この世界では実用段階での宇宙進出がまだまだ未熟だった。

 しゃーなしってことで、性能は落ちるが、大気圏内での開発を行ったってわけだ。

 

 機動性に関しては支えるエネルギーに難はあるが、それに関しては俺が小型の大容量バッテリー、パワーエクステンダーを作ることによって解決した。

 そこら辺は前世でとった杵柄ってやつだな。

 大して苦戦もせずに完成した。

 

 小型ながら作業用のアームも着いており、戦闘には耐えないもののある程度の細かい作業もこなせる。

 ビームサーベルとか持たせてもよかったけど、光学兵器すら微妙な段階にあるこの世界で完全に収束、安定したビーム兵器を持たせるのはさすがにアレだったので止めた。

 白騎士とかプラズマブレード持ってたね。映像見た限りエネルギー効率と収束率があんまよくなさそうだったけど。

 

 スラスターやエンジン、可変式の空力制御翼などにも手を加え、結果“現在のIS”を超える性能の戦闘機を作り上げた。

 後はそこにちょっとばかし、ロックオン性能を強化した新システムと全範囲に攻撃できる火器を搭載。

 元来の戦闘機を大きく超える機動性を獲得した、ある意味では新世代の戦闘機って言っても過言じゃないくらいには進化させちゃった。

 こういうときっててへぺろっていうんだっけ?

 

 まぁ、そのせいで搭乗できるパイロットがほとんどいなくなったけどな!

 ムウさんは“アブルホール”をまともに運用できる数少ないパイロットである。

 まともにというか、恐ろしいことにムウさんは完全にアブルホールを制御下においている。

 

 確かにアブルホールはこの世界の技術レベルを逸脱しすぎないように大幅にスペックを落とし、戦闘機という形を取ることで、あくまでも現存する兵器の発展形ということになっている。

 俺だって多少は考えてるよ?これでも自重してんだよ?ホントダヨ?

 さすがにいきなりMSを作ってしまえば、明らかに厄介なことになるだろうし。

 スペックを落としたことについては、それ以外にも俺の中でいくつか考えがあったしな。

 

 ベ、別についでだからこの際、研究所全体のレベルを引き上げて有耶無耶にしちまおうとか思ってないし……。

 全部一人で作るのがすげぇめんどくせぇとか思ってないし……。

 でも、いいもの作るときはみんなで協力して作りたいよね。

 あーあーみんなでアブルホール作るの楽しかったなー!

 この研究所?IS以外は世界最先端じゃない?みんなで頑張ったからな。仕方ねーよ(目逸らし)。

 

 ぶっちゃけ、というかまじめな話をするとだが。

 一人でものを作るのには絶対に限界がある。

 俺は異端だが、それでも理解される努力を怠るつもりはない。

 オーブの技術ということで世界相手には独占はするが、俺個人でそういった知識を独占するつもりはないからな。

 さっきも言ったけど、みんなで物を作り上げた時の達成感を感じたいからというのは当然ある。

 すっげぇ気持ちいからなあれ。

 そのおかげともいうべきか、お互い楽しく(これ大事)協力して恐ろしいほどの短期間で作成することができた。

 

 こんな感じでアブルホールはスペックを落とされつつも、完成しちゃったわけである。

 大幅にスペックを落としたアブルホールだが、それでも現在の世界の戦闘機の中では、間違いなく最強と言っても過言じゃないくらいにはヤバい。

 それをやすやすと扱うムウさんはもっとヤバいけど。

 おそらく、俺がいくつか考えているアブルホールの完成系に乗らせてもムウさんは完璧に扱ってのけるだろう。

 ムウさんマジでパネェ。

 

「ムウさんマジで化け物だよな」

 

「ちょっ、ずいぶん失礼なこと言ってくれるじゃないの」

 

「褒めてんだよ」

 

 マジで。

 いい意味か悪い意味かはともかく。

 

「おいおい、その歳であれだけのモン作れる坊主が何言ってんの。俺からすりゃ、お前さんのがよっぽどとんでもないと思うけどねぇ。ま、そのおかげでこっちは大助かりだけど」

 

「えー……。ムウさんなら、既存の戦闘機でもなんとかなんじゃねーの?」

 

「さすがに今までのオーブ国産機じゃあ、落とせんのは並くらいまでだって。国家代表はムリムリ」

 

「落とせんのかよ!?」

 

 つーかオーブの国家代表とやり合ってたのか!?

 マジでおかしいんじゃないのこの人……。

 

「ところでよ、アレってまだ発展途中なんだろ?」

 

「”アブルホール”のことか?そりゃあな。やろうと思えばもっとヤバくなるけど」

 

「よっしゃよっしゃ。俺はそれが聞ければ満足よ」

 

 そう言ってムウさんは満足そうに笑った。

 あれ、もしかして。

 

「なぁムウさん。もしかして、物足りない?」

 

 俺がそう言うと、ムウさんはばれたか、と笑った。

 

「どういうのがあるんだ?もう構想はあんだろ?パイロットの意見は聞くべきだぜ」

 

「えぇー……。一応守秘義務があんの忘れてねぇよな?」

 

「ああ、そこら辺は大丈夫だ。俺んちの一家はここの派閥に入ることになったから」

 

「は?……おい、そんな話俺に聞かせてどうすんだよ。つーか12歳のガキに聞かせんな」

 

「いまさら子供アピールはズルくねぇ!?」

 

 知るか。

 こっちでも命狙われるようなめんどくせぇ展開はごめんなんだよ。

 

「そういやお前さんまだ12なんだよなぁ……。俺がそんくらいの時は、川とか山とか海とか駆けずり回ってた記憶しかねぇなぁ……」

 

「うわ、おっさんくせぇ」

 

「もうちょっとオブラートに包もうぜ!?俺まだ23だかんな!?」

 

 まだ23なのかこの人。

 てかこの研究所に派閥とかあんの?知らなかったんだけど。

 

「……で、どんなのがあんだ?」

 

「そうだなぁ……」

 

「アブルホールの改修案ですかぁ~?」

 

 間延びした呑気そうな女の声がした。

 俺たちの話題を聞き取ったのか、件のポンコツふわふわ理系女、ユン・セファンがこっちに来ていた。

 うーん、毎回毎回聞くたびに不安になる声だ。

 技術者のはずなのに、スパナすら持たせたいとは思わない。

 いっつもツナギだし、髪型は謎のサイドテールだけだし、俺より二つ上の13歳で華の中学生のはずなのに化粧の一つもしてないし。

 女捨てすぎじゃね?

 

「キラくぅん、失礼なこと考えてない?」

 

「コイツなんでこの研究所にいんのかなって」

 

「ひどくなぁい!?」

 

 意外と鋭いなコイツ。

 腐っても女だってことか。

 

「うぇ~ん、キラ君がいぢめるぅ~!」

 

「おいキラ。思ってても声に出しちゃいけないことだってあんのよ?ユンちゃんに失礼だろ」

 

「ムウさんもいじめるぅ~!」

 

 コイツをからかうのはこの研究所の名物みたいなもんだからな。

 むしろからかわないのは失礼(暴言)。

 

「で、改修案だっけ?」

 

「おう、それそれ」

 

「え、女の子が泣いてるのにスルーなんですか?スルーなんですかぁ~!?」

 

「女の子wwwユンがwww」

 

「わかってないねぇ、キラ。この娘あと5年もたって化粧憶えれば、すごい美人さんになるよ?今はともかく」

 

「うわぁ~~~~~ん!!カリダざぁ~~~~ん!!」

 

 ユン、もといポンコツふわふわ理系女が母さんへと泣きついた。

 あ、泣きつく前にテーブル巻き込んですっ転んだ。

 何やってんだアイツ……。

 

「はぁ……。改修案の話、後でもいいか?めんどくせぇが、放置しとくとあの恰好で抱き付かれそうだ」

 

「おー、りょーかい。くくっ、しっかしキラも優しいねぇ。なんだかんだで助けてやるんだろ?」

 

「まぁ、アイツはなんだかんだで一番話が合うしなぁ……」

 

 意外なことに、ユンは俺がでっち上げた機構やシステムに一番早くに順応してくれる。

 歳が近いから仲もいい。

 なんかもの作るとポンコツのせいでやたらと時間かかるけど。

 図面引かせると地味にすげぇんだよアイツ。

 時間かければMSくらい作れるんじゃねぇかな。

 

「あぁ、キラ」

 

「あん?」

 

「改修案なんかはいつでもいいからよ。明日ちょっと頼まれごとしてくんない?」

 

「頼まれごとぉ?」

 

 思わず怪訝そうな声が出た。

 ムウさんからの頼み事なんて今までなかったからな。

 

「ホントは俺が面倒みるはずだったんだが、急に用事が入っちまってな。悪いんだけど明日、午後から妹の相手してやってくんない?俺、お前以外に小学生の知り合いとかいなくてさぁ……」

 

「ムウさん妹なんかいたのか」

 

「まぁな。かわいい妹ではあるんだが、ちょっとばかし残念なやつなんだよねぇ……」

 

 え、なに、妹が残念なのって常識なの?

 知らなかったわ……。

 

「俺明日道場の日なんだけど」

 

「あー、漢道場だっけか。じゃあ午後にそこ連れてくわ」

 

「おい、決定事項かよ」

 

「いいじゃねぇか。兄貴の贔屓なしでも、妹は将来美人になるぜ?じゃ、よっろしくぅ!」

 

 言うだけ言って酒取りに行きやがった。

 あの野郎、今度絶対なんか奢らせる……!

 

 ……はぁ、しょうがねぇな。

 まぁいいか。

 適当にゲームでもして遊べばいいだろ。

 

 ユンの頭についたケチャップをぬぐってやりながら、俺はそんなことを考えていた。

 この考えがいかに甘いものだったか、俺は翌日に知ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読了お疲れ様です。

今回の話はどうだったでしょうか?
すげぇ説明文になってる気がします。文章が安定しなくて作者も困る……。
あとガンダムアブルホールってヴァルキリーの進化過程に似てると思うのは私だけだろうか。

感想などありましたら、どうかお気軽にどうぞ。

ではまた。



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