イギリスマグル界地下組織の総帥は魔法界も救うようです。 作:妃 翠
「で、用とはなんでしょうか?」
ホグワーツ校長室。そこで二人の魔法使いが向かい合っていた。
一人は校長、ダンブルドア。もう一人はセブルス・スネイプ。
「今から一人の入学資格者に会いに行くのじゃが、同行してもらいたいと思っての。というのも、家のある場所がコークワース州での、セブルス、地元じゃろ?」
ダンブルドアが言った。
「別に地元であっても大して詳しくないのですが。」
スネイプはあからさまに嫌そうな顔をする。
「まぁ、そう言わずに。ついでに言うとちと訳ありの生徒での。実は……マグル界地下組織の総帥なのじゃ。」
ダンブルドアは言った。
「地下組織?」
スネイプは聞き返す。
「そうじゃ、地下組織じゃ。主にはイギリスの裏社会を統治しておるようじゃが、影響力は諸外国にも持っておる。」
言いたいことがわかるじゃろう?という視線をスネイプに向けるダンブルドア。
「……打倒ヴォルデモートに利用したいのですか?」
スネイプはやや驚いたように言った。
「利用、というと言葉が悪いが、事実そうじゃの。マグル界の武器も侮れないから、そちらの方面からも攻めることができるようにしたい。マグル界の犠牲も減らしたいしのぅ。」
ダンブルドアは言った。
「行ってみて、もし家が近ければ、セブルスとも緊密に連携できるじゃろ?あの家はどうやらガードが固いようでの、一昨日飛ばしたふくろうは撃ち落とされておった。事が起こる以前から顔見知りになっておかないと、協力が得られないかもしれぬ。」
ダンブルドアが畳み掛ける。
「……わかりました。同行すればいいのですね?」
スネイプは渋々了承する。
「よろしく頼むぞ。午後3時に出発じゃ。」
ダンブルドアは言った。
時は過ぎ、午後3時。
ダンブルドアとスネイプはホグワーツの敷地を出ると、姿くらましをした。
「確か、住所はこの辺りじゃったの。」
住宅地に現れ、ダンブルドアは言った。
(確かに、スピナーズ・エンドに近い。)
スネイプにも見覚えのある風景である。
「ここかの?」
しばらく歩き、ダンブルドアは立ち止まった。
そこはごくごく普通の一軒家。地下組織総帥の家にしてはこじんまりとしている印象を受ける。
前庭には木と花が植えられ、『Querecute』と表札が出ている。
「何か用ですか。」
突然、頭上から声が聞こえた。
ダンブルドアとスネイプは驚いて上を見上げる。
「ここだよ。」
そう言って、男が木から顔を出した。そして、地上へと飛び降りる。
「この家の方かの?」
ダンブルドアは聞いた。
「まぁ、そうですね。」
男は言った。
「クイント・クエレキュートに用があってきたのじゃが……。」
ダンブルドアは言った。
「お嬢様に?」
怪訝そうな表情をする男。
「どうかしたか、ジェイ。」
奥からもう一人男が出てきた。今まで話していた男はジェイと言うらしい。
「クリフ。お嬢様から何か聞いているか?」
「いや、何も。」
クリフ、と呼ばれた男は首を振る。
そして、クリフはスネイプを見た後、「ん?」と声を上げる。
「君、あの時の小僧か?1970年のクリスマスの……。」
「セブルス、面識があるのかね?」
「さぁ、思い出せませんが。」
スネイプはクリフを見つめて言う。
「まぁ、私も歳をとったから、思い出せないのは仕方がないか……。覚えてないか?ポインセチア。」
クリフは言った。
「……ああ、あの時の。」
スネイプは驚いたように言う。
当時10歳だったスネイプは、クリスマスに家にいるのがいたたまれなくて、外を散歩していた時に真っ赤なポインセチアが咲いている家を見つけた。立ち止まっていると「一本持ってくか?」と奥から声をかけてきた青年がいた。スネイプが頷くと、一本切り取って渡してくれたのだ。
「ほら、私がハサミを使わずに切り取ったから、君、『魔法使いか?』なんて聞いてきたじゃないか。」
クリフが言う。
鮮明に思い出された記憶。スネイプは家を眺める。
季節が違うため違う印象を受けたが、確かにあの時の家である。
「先ほどから何を立ち話してるのですか?……お客様?」
ガチャリと玄関が空き、女が出てきた。黒い縦巻きロールの髪が印象的である。
「どちら様でしょうか?」
女は聞いた。
「わしはホグワーツ魔法魔術学校校長のアルバス・ダンブルドア。隣は教員のセブルス・スネイプじゃ。クイント・クエレキュートに用があってきたのじゃが、いらっしゃるかの?」
ダンブルドアが言った。
「お嬢様ならもうそろそろ外出から戻られると思いますが……。魔法魔術学校?」
女は首をかしげる。
「一昨日、そちらにふくろう便を送ったのじゃが、ふくろうが撃ち落とされてしまっての。直接会いにきたのじゃ。」
ダンブルドアが言った。
「ふくろう……?」
ジェイが呟く。
「何か知ってるのか?」
「いや、確かに撃ち落としたけど……。もしかして、アレ?」
ジェイが言う。
「そういえば、ロッティが何か燃やしてたな。」
クリフが言う。
「門前で何をしているのですか?」
鈴のような、よく通る声が響いた。
「お嬢様、お帰りなさい。ロッティも。」
女が言った。
「お客様ですか?ミュラ。」
お嬢様ークイント・クエレキュートは言った。黒髪縦巻きロールの女はミュラと言うらしい。クイントの後ろに立っている女が、おそらくロッティだろう。
「ええ。ホグワーツ魔法魔術学校というところからいらっしゃったようですがお嬢様、面識はおありで?」
ミュラは言った。
「ホグワーツ……。どうぞおあがりください。ミュラ、お茶の準備して。皆は持ち場に戻って。」
クイントは言った。
「了解しました。」
口々に言って、ミュラ、ジェイ、クリフ、ロッティは指示に従う。
クイントは二人を食堂に案内する。
ミュラが紅茶とクッキーを出す。
「今日は、わしらは君にこれを渡しにきたのじゃ。」
そう言ってダンブルドアは話を切り出した。クイントに入学許可証の入った手紙を渡す。
ふむふむと読むクイント。
「あの、お嬢様。どういうことでしょうか?」
未だ状況がつかめていないミュラがクイントに聞いた。
「ミュラ、落ち着いて聞いてね?実は、私は魔女なの。6歳ごろから気がついてはいたんだけど、ずっと隠してたの。私個人で家系を調査したら、私の母は魔力を持ちつつもうまく使えない、スクイブっていう種族の人だったの。でも、魔法使いの遺伝子は持っているから、私にも魔力が遺伝する可能性はあって、実際に遺伝したの。だから、魔法魔術学校から入学許可証が届いたの。」
クイントが言った。
「ちょ、ちょっと待ってください、お嬢様。この世に魔法使いがいると、魔法が存在するとおっしゃるのですか?」
ミュラは言った。
「存在するわ。ミュラなら知ってるでしょ?1978年ごろから1980年にかけて不思議な事件が起きていたこと。あれは魔法界、この世界から隔離されている世界のゴタゴタの余波よ。」
クイントは言った。
ミュラは目を丸くして、クイントを見つめる。
「まぁ、その通りじゃよ。クイントが言う通り、こちらの世界のゴタゴタにマグル界ー魔法界から見たこちらの世界のことを指す言葉じゃ。マグル界を巻き込んだことは申し訳ないと思っておるよ。……それにしても、よく知っておるの。」
ダンブルドアは言った。
「隔離されていようとも、この世界ーマグル界と魔法界は表裏一体で存在しているのですから、情報を手に入れようと思えば手に入ります。」
クイントは言った。
「お嬢様が魔女という証明は?」
ミュラが聞く。
「この入学許可証が一番の証明かしら。実は私も、陰で魔法を練習していたから、多少は使えるけど。」
クイントはそう言った後、指を弾いた。
戸棚から、キャンディーの入った瓶が飛び出してくる。
クイントは瓶をキャッチすると、机の上に置いた。
ミュラは言葉が出ない。
「……クイントは魔法を使うのが上手いの。習ってもいないのにあれだけの魔法が使えるとは。」
ダンブルドアが言った。
「ま……幻じゃないんですよね?」
ミュラは言葉を絞り出した。
「ミュラ
促されて、ミュラは瓶を手に取る。もちろん普通の瓶なのでしっかりとした実体がある。瓶の蓋を開け、ピンク色の飴を口に入れる。
「甘い……。ってことは、本当に……。」
ミュラは言う。
「嫌いになった?」
クイントがミュラに聞く。
「そんな……!お嬢様は何があろうとお嬢様です。嫌いになるなどありえませんし、忠誠は変わりません。ただただ、びっくりして……。」
ミュラが言った。
「なら良かった。」
クイントは言った。
「先ほど、クイントはミュラ
ダンブルドアは聞いた。
「ええ。あなたたちには若干私の姿を捏造して見せています。幻術というのはその名の通り幻を見せる術で、相手の感覚機能をコントロールすることで使えます。一番一般的なのは視覚ですが、別に視覚以外もコントロールできます。」
クイントは答えた。
「幻術を解いてくれるかね?」
ダンブルドアは言った。
「もちろんです。」
クイントは言った。
クイントは特徴的な瞳を隠すために、ダンブルドアとスネイプには金髪碧眼の少女に見せていた。しかし、実際は……。
「緑と、オレンジ。珍しい瞳じゃの。」
ダンブルドアは言った。
翡翠のような緑色の左目とファイアオパールのようなオレンジの右目が微笑む。
「元は両目ともオレンジなんですけどね。事故の後遺症で左目の色が変わって。別にそれ以外の影響はないのですが。」
クイントは言った。
「で、ホグワーツに入学するかどうか7月31日までに決めなければならないんですよね。」
クイントは言った。
「そうじゃ。ホグワーツは7年間全寮制でクリスマス、イースター、夏休み以外はずっと学校におることとなる。」
ダンブルドアは言った。
「総帥としては、あまり家を空けたくないのですが……。」
クイントは言った。
「あの、連絡手段は?」
ミュラがダンブルドアに聞いた。
「主にはふくろう便による手紙じゃ。ホグワーツではマグルの機械製品はうまく作動しない。電話などは通じぬ。」
ダンブルドアは言った。
「ジェイがふくろうを撃ち落として申し訳ありません。」
ミュラが言う。
「……ジェイ、何かやらかしたの?」
クイントが聞く。
「一昨日、ホグワーツの方がふくろう便を送ったようなのですけれど、ジェイが撃ち落としたのですよ。」
ミュラがクイントに説明する。
「ああ、だからロッティが火葬してたのね。木の下に埋めていたわ。……弁償するべきよね。」
ジェイの給料から天引きかしら、とクイントが言う。
「いやいや、まぁふくろうに関しては心配せんで良い。きちんと火葬してくれたようじゃしの。」
ダンブルドアは言った。
「で、クイント、ホグワーツに入学するかね?」
ダンブルドアが話を元に戻した。
「そうですね……。別に総帥として未成年の私が何をするわけでもないのですが、トップが不在だと組織が緩みますからね。」
クイントが言う。
「お嬢様、そのことなら最高幹部でなんとかします。お嬢様が入学したいのであれば、皆全力でバックアップしますから。」
ミュラが言う。
「じゃあ……。これから卒業するまで、私がいない間は総帥権を最高幹部に移すわ。何かあればふくろう便で連絡して。……ジェイには撃ち落とさないよう言わないとね。」
クイントが言った。
「入学してくれるのじゃな?」
ダンブルドアが言った。
「ええ。よろしくお願いします。」
クイントは言った。
「では、入学に必要なものを買いに行かねばならんの。ロンドンの漏れ鍋、というパブからダイアゴン横丁という場所に行くのじゃが……。やはり引率者が必要かの。」
ダンブルドアが言った。
「いえ、まぁ自力で行ってもいいのですが、ロンドンか……。」
北部のコークワークス州からロンドンまでは距離がある。
「魔法で移動すれば良いじゃろう。セブルス、頼んだぞ。」
ダンブルドアが言った。
「なぜ、我輩が……。」
スネイプが言った。
「家が近くじゃろう。今日1日家に帰って、明日、クイントを連れてダイアゴン横丁に行って、そしてホグワーツに戻って来れば良い。」
ダンブルドアが言った。
(全くクイントと話しておらんじゃろう。少しは親睦を深めておくべきじゃ。)
(校長がどこまで事を見通しているのか知りませんが、なぜそんなに我輩にクイントを押し付けるのですか?)
(彼女がハリー防衛のキーパーソンになりかねんからじゃ。)
「……わかりました。」
目での口論はダンブルドアの勝利に終わった。
「じゃあ、また明日セブルスが来るからの。時間はいつが良いかな?」
「いつでも。明日は何も予定がありませんから。都合がいい時に来てくだされば。」
クイントが言った。
「……では、10時ごろ迎えに来る。」
スネイプが言った。
「よろしくお願いします。」
クイントが言う。
そして、ダンブルドアはホグワーツへと、スネイプは自宅へと帰って行った。
おまけ
クリフ:「ジェイ、ふくろうを撃ち落とすってどう言う事だ?」
ジェイ:「いや、だって急に何かしらを持った鳥が飛行してくるんだぞ?危険だと判断したんだ。」
ロッティ:「あんた、撃ち落としたふくろうそのままにしてたでしょ。私が火葬したのよ?あとで木の下に行って祈っときなさい。」
ジェイ:「木の下のどこで祈ればいいんだ?」
ロッティ:「園芸用の立て札に『ふくろうの墓』って書いて立ててあるからわかるでしょ。それが墓よ。」
クリフ:「そんなんでいいのか?墓。」
ジェイ:「どんなセンスだよ。」
ロッティ:「何もないよりマシよ。ジェイには言われなくないわ、元凶はあんたよ。」
シャノン:「ただいま。」
3人:「おかえり。」