イギリスマグル界地下組織の総帥は魔法界も救うようです。 作:妃 翠
午前10時。
予告通りスネイプはクエレキュート家を訪ねた。
「おはようございます。」
クイント本人がドアを開ける。後ろにはミュラが立っている。そして、もう一人、ふわふわの茶髪と眠たげな目が特徴的な少女が立っていた。
「じゃあ、留守を頼むわ、ミュラ、シャノン。」
「お嬢様こそ、お気をつけて。Mr.スネイプ、クイントをよろしくお願いします。」
ミュラが言う。眠たげな少女は礼をした。
「じゃあ、お願いします。」
そう言われ、スネイプはクイントを連れて姿くらましした。
視界が反転し、漏れ鍋に到着する。
「ワァオ、一瞬ですね。」
クイントが言う。全く先ほどと顔色が変わっていないので、どうやら酔っていないらしい。
「大抵、初めて経験した人は酔うんだがな……。」
スネイプはクイントを見て言う。
「この程度なら全然大丈夫ですよ。」
クイントは言った。
スネイプがレンガを叩くとダイアゴン横丁のアーチが開く。
「ここがダイアゴン横丁だ。まずはグリンゴッツ魔法銀行に向かう。」
スネイプはそう言って歩き出す。クイントも後に続く。
「賑わってますね。」
「今は入学シーズンだからな。」
そんな会話をしながら銀行へと向かう。
銀行に着くと、ゴブリンが忙しなく働いていた。
「ここでマグルの通貨と魔法界の通貨を両替する。」
スネイプが言った。
「どれくらい両替すればいいのでしょうか?」
クイントはスネイプに尋ねる。
「……ゴブリンに聞くのが一番いいだろう。」
スネイプは言った。
「ホグワーツ入学では何ポンド両替すればいいですか?」
クイントはゴブリンに聞いた。
「全て揃えるなら1000ポンドくらい両替すればお釣りが来るでしょう。」
ゴブリンが答えた。
「じゃあ、1000ポンド両替で。」
クイントは50ポンド紙幣を20枚出す。
「確かに。200ガリオンへの両替です。1ガリオン5ポンドですから。」
そう言ってゴブリンはクイントに袋を渡した。
「ありがとう。」
そう言って袋を受け取り、クイントは斜めがけ鞄に入れた。
そして、グリンゴッツ魔法銀行を出た。
「次は?」
歩きながらクイントが言った。
「マダム・マルキンの洋装店だ。制服を揃える。」
スネイプは答えた。
マダム・マルキンの洋装店に着くと、運良く空いていてすぐに採寸が始まった。
「あら、不思議な目をしてるねぇ。髪の色もなかなか見ないよ、この色。」
マルキンは陽気に喋りながら採寸をしていく。
クイントの髪は砂のような金髪だ。輝くような黄金の金髪とはまた違う。今日は幻術も使用していないため、目の色もオッドアイだ。
「はい。終わったよ。すぐに出来上がるからね。」
そう言ってマルキンは店の奥に引っ込んだ。
「陽気な方ですね。」
クイントは言った。
「まぁ、いつものことだ。」
スネイプは言った。
「はい、出来たよ。82ガリオンね。」
クイントは82枚金貨を数え、マルキンに渡す。
クイントは紙袋を持って店を出た。
「ガリオンって数えるのが面倒ですね……。」
クイントは言った。
「魔法界は紙幣がないからな。」
スネイプは言う。
「荷物は持とう。」
「ありがとうございます。」
スネイプが紙袋を持ってくれたので、クイントの両手はフリーになる。
教科書、薬瓶、鍋、望遠鏡……。次々と準備品を揃えていく。
「次は杖だな。」
スネイプが言った。
「買い物、かなり物量がありますね。」
クルフでもジェイでも連れてくればよかったなぁ、とクイントはぼやく。
「そういえば、クルフと知り合いだったようですね。昨日、クルフが言ってましたよ。」
思い出したかのようにクイントが言った。
「そうか。」
「あまり変わってなかったのですぐわかったと言ってましたよ。」
クイントが言った。
「こちらは20年以上前のことをよく覚えているものだ、と感心した。」
たった一回会っただけなのに、とスネイプは言った。
「クルフは記憶力がいい人ですから。あの日は総帥一家が出かけるので留守番に来ていたらしいです。普段なら通行人に声をかけるなんてことできませんから。」
クイントが言った。
「まさか、あの家が地下組織の総帥の家だとは思わなかった。」
スネイプが言った。
「どんな家を想像していたんですか?豪邸とか?そんな仰々しい家に住んでたら、襲撃されるじゃないですか。」
住むのは普通の一軒家に限ります、とクイントは言った。
話している間にオリバンダーの杖店に着く。
「いらっしゃいませ。」
店の奥からオリバンダーが出て来た。
「ほう、珍しいタイプの方ですね。」
クイントを見るなりオリバンダーは言った。
「杖腕は?」
「右です。」
クイントが答えると、オリバンダーは巻き尺を取り出して採寸を始める。
「ちょっとお待ちください。」
採寸が終わるとオリバンダーは奥に引っ込んだ。
数十秒後、何箱か箱を持ってやってくる。
「では、楓にユニコーンの尾の毛、30cm。しなやか。」
オリバンダーがクイントに杖を渡す。
突風が吹き荒れ、部屋がめちゃくちゃになる。
「違うようですな。」
そう言ってオリバンダーは何事もなかったかのように杖を箱に戻した。
「次、ハンノキにドラゴンの心臓の琴線、28cm、振りやすい。」
クイントが杖を握った途端、オリバンダーは杖を奪った。
「これも違う……。」
そんなことが数回続き、オリバンダーが持って来た杖は全て失敗に終わる。
「やはり平凡な杖は好みませんか……。」
そう言うとオリバンダーは店の奥へと戻り、何やらごそごそと探し始める。
数分後、オリバンダーは埃のかぶった箱を持って来た。
「ではこれは?サティーネにセストラルの尾の毛、不死鳥の尾羽、34cm。強力であり協力的。」
クイントは杖を握る。部屋が元に戻る。
「これのようですな。しかし、初めの杖でセストラルと不死鳥のハイブリッドに選ばれるとは……。」
オリバンダーはどこか感心するようにも、畏怖するようにも見える表情で呟いた。
「8ガリオンです。」
オリバンダーに言われ、クイントは代金を払い店を出た。
「長らくお待たせしました。」
クイントはスネイプに言った。
「いや、構わない。だが、セストラルとは……。」
スネイプが言った。
「セストラルって何ですか?」
クイントは聞いた。さっきからセストラルの意味がわからず悶々としていたのだ。
「天馬の一種で肉食だ。死を見たものにしか見えない。」
スネイプは答えた。
「馬なのに肉食とは、不思議ですね……。」
クイントは首を傾げて言う。
「……気になるのはそこか?」
若干調子が狂ったようにスネイプは言う。
「え、はい。死を見たものにしか見えないのも不思議ではありますけど、調べる限り何でもありな魔法界なら、そんな生物がいたとしても驚きません。」
クイントは言った。
「ペットはどうする。飼うのか?」
スネイプはクイントに聞いた。
「そうですね。ふくろうを1羽。学校のをお借りして、またジェイが撃ち落としたら悪いので。」
クイントは言った。
イーロップのふくろう百貨店に着く。
「できるだけ大きくて物量運べる子がいいんだよなぁ……。」
クイントは呟く。
(何を運ぶつもりなんだ?)
スネイプはクイントの呟きを聞いて不思議に思った。
クイントが目を止めたのはシマフクロウだ。
金色の虹彩が美しい。
「この子ください。」
クイントは即決した。
「はいはい。大きい子を選んだね。18ガリオンです。」
クイントは代金を支払う。
「相当大きいのを買ったな。」
スネイプが言った。
「ええ、まぁ。色々運んでもらうものがあるので、力とスタミナがある子を選びました。」
クイントは言った。
姿くらましでクエレキュート家に戻る。
「お帰りなさい、お嬢様、Mr.スネイプ。」
ミュラがクイントたちを出迎えた。
「ただいま、ミュラ。……お昼ご飯は残ってる?」
クイントが言った。
スネイプはその一言を聞いて、「あっ……。」という表情となる。
すっかり食事のことを忘れていたのだ。
「あら、食べてなかったんですか?ってことはMr.スネイプも?もう2時ですからお腹も空くでしょうに。」
ミュラは驚いたように言う。
「では、今から作りますね。お嬢様一人分だけ作るのも大変ですから、Mr.スネイプも食べていってください。」
「……すみません。」
スネイプも食卓に着くこととなった。
「すっかり忘れてましたね、お昼ご飯。」
クイントが言う。
「別に言ってくれれば良かったんだが。」
スネイプが言う。
「いえいえ、私も忘れてたんですよ。家に帰ってきて思い出したんです。」
クイントが言った。
「この家は何人住んでるんだ?」
スネイプが聞いた。
「3人ですね。私とミュラとシャノン、朝会った茶髪の子です。クリフとジェイとロッティは近くにアパートを借りてますよ。この家で寝泊まりすることもありますけど。」
クイントが言った。
「大抵朝ごはんは全員揃って食べますよね。」
ミュラが皿を並べながら言った。
「簡単なものですみませんが、ピラフです。」
ミュラがスプーンを渡して言う。
「美味しい。さすがミュラ。」
「なら良かったです。」
クイントは嬉しそうにピラフを頬張る。
「今日のお米は日本から届いたコシヒカリなのでおいしいとおもいますよ、いつもより。」
朝の残りご飯ですけどね、とミュラが言った。
「今日は何もなかった?」
「ええ、今日も平和です。」
「なら良かった。皆は今何してる?」
「クリフは見回り、ジェイは射撃練習、ロッティは火薬の調合、シャノンは新しいプログラムの開発、ですね。」
ミュラは答えた。
和やかに昼は過ぎて行った。
こんな感じでいいのだろうか、お買い物回。
次は一気に9月1日です。