プリズマ☆イリヤにテイルズの魔術をぶっこんだだけ小説   作:エタりの達人

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エタってたわけではないです。ただこの話を投稿するのに恥ずかしさを覚えただけです。
主な原因は自分のセンスの無さにあると思うんですけど(凡推理)

※オリジナル詠唱あり。うすら寒さを覚えたならこの小説を記憶から消して人理を救うことをおすすめします。




 夜の校庭に人工的な明かりはない、僕ら互いを視認させるための光は月が代わりに担っていて、僅かなながらの明るさが僕たちの戦闘の手助けとなっていた。

 

 しかし自分でも今のはよく間に合ったと思った。自分に強化魔術をかけようと思った矢先にイリヤスフィールが襲われているのが見えたから、ふと頭に思い浮かんだ強化魔術らしいものを付与、そのまま突撃してドロップキック。って改めて思い返して見ると、かなり小学生離れしたことをしているなぁ僕。

 魔術の世界は人外の世界に片足を踏み入れているのは最初のあれでよく分かっていたけれど、ここまで顕著に表れると色々と不安になってくる。

 

 けど、そういうのは後で考えれば済む話だ。

 

『それで聞きますけど、どれぐらい戦えますか?』

 

「ルビー!?」

 

『イリヤさん、ぶっちゃけて言うと私たちだけではあれに勝つことはできません。向こうにはあって、こちらには足りないものが五万とありすぎるのです。だから一つでもアドバンテージを多く得ることが出来なければ、私たちは負けます』

 

 僕は俯いていたから戦いをあまり見てはいなかったが、さっきの状態から見るに戦況は芳しくないのだろう。

 

 イリヤスフィールは直感タイプの天才型だから正解を朧気に散らばる経験から拾い上げることが出来るが、そもそも当たり前のことだが今の日本に戦闘を経験する小学生の数自体が少ない。それに人型と戦うと言う躊躇いもある。もちろん僕にもあるが、どちらかと言うと迫害する人間の気分になっているからまだ大丈夫だろう。

 

 なんにせよ、人に在らざる化け物は倒さないといけない。

 

「大船が1隻増えたと思って貰って構わない」

 

『ほほー頼もしいですねぇ! では、期待しましょうか』

 

「で、でも……」

 

 イリヤスフィールはまだ何か思うところがあるらしく、どこか言葉をつまらせている。大方僕には危なすぎるとか思っているんだろう。昔から僕は運動が絶望的すぎるからな、わからないでもない。でも今は使えるものはなんでも使い、とにもかくにも生き残ることが先決だ。

 

 それに、イリヤスフィールは一つ忘れていることがある。

 

「イリヤスフィール、僕はお前と違ってドジを踏むような男じゃない」

 

「せ、折角心配してあげたのにこの態度……っ!」

 

『お二人とも、漫才はその辺りにしないと。もう向こうは準備万端ですよ!』

 

 その声に淀みの方へ目を向けてみれば、いつでも襲いかかってこれるように背を低くし両足を広げ構えている女の姿があった。先程のような不意打ちならともかく、真っ向から来たあれに僕が対応できるとは思えない。ここはイリヤスフィールを任せるとしよう。

 

「行くぞイリヤスフィール。僕は魔法使いタイプだから後ろでチマチマ攻めさせてもらう、前衛は筋肉であるお前に任せたからな」

 

「私そこまでムキムキじゃないしっ! ばーかばーか!」

 

 馬鹿って言った方が馬鹿の法則に従って二重に馬鹿になってしまったイリヤスフィールを他所に、淀みが踏み込み距離をつめるために加速を始めた。

 

「う、うわわ来た!しかも早っ!」

 

 与えられた時間は少ない。先程のような強くとも短い強化魔術ではイリヤスフィールが制御不能に陥る可能性がある。ならば別の強化魔術を与えるだけ。自身を中心に陣を投影する、陣に含まれた式の意味は他者への強化。

 

「『生命の鼓舞、躍り狂え!』【チアリング】!」

 

 術発動に呼応して陣がさらに強く光を発する。と同時に強化の光が彼女をつつみ、術が成功したことが目に見える形で視認された。

 

「か、体が軽くなった……?」

 

『他者への強化魔術とは……これは驚きですね~』

 

「でも、これなら!」

 

 ぐっと彼女が踏み込むと、ドンっという音と共に目の前から見事消え失せる。淀みの方へと目を向けてみれば、イリヤスフィールが女と交戦中であるのが見えた。出来るだけ僕に注意を向けさせないように近距離で散弾を連発する作戦に切り替えたようだ。あぁいう柔軟性があると、僕としては非常にありがたい。

 

 さて、僕もサボっていないで仕事をしようか。と言っても僕に出来る戦法は夢で見た通りのことをなぞるだけだ。前衛が止めている間に、僕が威力をぶつける。難しいことを考える必要は何もない。僕のような、いやあの男のような魔術師は、とりあえずぶっ飛ばす魔術しか使えないのだから。

 

 陣の投影を始める。

 

「『其は汝の終末にして墓標!』」

 

 座標軸目測、指定完了。魔術陣から指定箇所への魔力の壌土による形成を開始、完了。方位角固定、目標確定。

 柔そうな横っ腹をぶっ叩く。

 

「【グレイヴ】!」

 

 散弾のせいでまともに身動きの取れていない淀みの真横に魔力でその形に形成させた岩の槍が地表を砕き現れる。いくら化け物と言えど予告なき一撃にまともな反応を見せることは出来ないらしく、無防備なままその横っ腹に岩槍がぶち当たる。

 

 当たった、という達成感と、魔術を使ったという充足感が僕を満たしていく。僕も特別な存在の一つであるというオンリーワンの確信、そういうものが内にあるという快楽がどうしようもなく僕を貪っていた。

 

「そうか魔力で作られたものでなく、魔術で象られたものでなら対魔力を抜くことができる! よし、その調子よ、二人で一気にいきなさい! 速攻よ!」

 

 遠くで頭を抱えながら叫び散らす遠坂凛の姿は滑稽ではあったが、その実指示は的を得ている。どんなものだろうと勝敗があるもので自分が確実に勝つには、相手に気持ちよくプレイさせないのが重要だ。先の術、穂先が尖っていなかったとはいえ、あの質量をまともに食らって早々立ち上がれるものではないはずだ。

 

「言われた通りだ」

 

「うんっ! ルビー、えっと……なんかため技みたいなやつ!」

 

『あいあいさー! 充填(チャージ)……完了! オールグリーン!』

 

「『灼熱の軌跡を持って、野卑なる蛮行を滅せよ!』」

 

 一撃で仕留める。その気概が僕らに共通していて、己の魔力を更に励起させるのには十分な思いだった。

 

放射(フォイア)!」

 

「【スパイラルフレア】!」

 

 そうして破格の威力を持つであろう桃色の閃光と、触れるものを塵に変えるほどの熱量を持つ炎塊が同時に放たれる。 先に着弾するのは速度と貫通力に優れているイリヤスフィールの砲撃が着弾、それに続いて火力と攻撃範囲に優れた僕の火の魔術弾が淀みに追い討ちをかける。

 

 イリヤスフィールの純魔力である攻撃は奴の防御を無視して直接のダメージを与えられるらしい。そして僕の魔術もまた奴の防御を一切合切無視して直接的に被害を追わせることができる。貫通力と爆発力によるWキラー。相手は死ぬ。

 

 ――やったのか?

 

 マジカルステッキだのとほざく杖は何も喋らない、遠坂凛もまた同じ。そうして僕らはどちらからともなく互いの顔を見合わせて。

 

「「……だぁ~~……」」

 

 思いっきり脱力した。どうやら、なんとか勤めを果たせたようだ。いや、僕に課せられたわけではなかったから、僕がしたことはただのお節介かもしれないが。それでも目的を達したことに変わりはない。土壇場の継承であったから完璧に出来ているかどうかの不安はあったが、三四発程度ならまだ問題はないらしい。それ以上はどうなるのかと言われると、検証が必要となるだろうが。

 

「お疲れ様~……」

 

「ああ、お疲れ……」

 

 そうして互いに労りながら地面に座り込んで間もなくのことであった。土という感触のある地面に、まるで割れ物のようなヒビが入ったのだ。それからは地面だけでなく空や果てには校舎までピシリピシリと音をたてて割れていく。

 

『あらー、原因を取り除いたようなので鏡面界が閉じようとしているようですねー』

 

「何ですって!? じょ、冗談じゃないわっ。そこの二人っ、へばってないでさっさとカードの回収をしなさい! 鏡面界の崩落にカードが巻き込まれちゃ本末転倒よ!」

 

「そ、そういう説明はもっと早くにしてよ~!」

 

「あれ、もうボケてるんじゃないか……?」

 

 しかしそれでも自分で取りに行こうとしない辺り流石である。僕は体がもう怠惰に包まれているのでどうもする気が起きない。大人しくイリヤスフィールに任せよう。あの粉塵の舞う場所で土ぼこりまみれにもなりたくないし、な――――?

 

「……冗談キツいぞ」

 

 その時、僕は見てしまった。欠損した体で確かに立ち、僕も男も見たこともない陣を形成しながら、おどろおどろしい殺気をぶつけてくる淀みの姿を。

 

『ど、どでかい魔力反応確認!』

 

「霊器は消滅の一途を辿ってるのに……まさか、道連れ覚悟に"宝具"を使うつもりなの――!?」

 

 宝具。その言葉を聞いただけではそれがなにかはわからないが、突き刺さる恐ろしいまでに研ぎ澄まされた殺気とますます上昇していく魔力を見ればすぐにわかる。あれは食らっては不味いものだ。もし食らおうものなら、どう運が良かったとしても――

 

 ――死ぬ。

 

「ッ!」

 

 吐き気と頭が死による混乱でぐるぐるとしていてまともな思考へと至ることができない。だから陣を投影し、最も早く発動できる術を選択したのは僕ではなかったのかもしれない。

 イリヤスフィールは未だに状況を飲み込めずあたふたとして錯乱している、カレイドステッキとやらが全力で防壁を張ろうとしているようだからもし発動されれば彼女は助かるかもしれない。ついでにあやかるように遠坂凛も無事に済むだろう。

 では僕は? 恐らく、今の器の僕では防壁魔術を発動しても、威力が足りずに耐えきれない。防ぐ時間は数秒が限度だろうし、ほとんど意味を成さないだろう。

 

 時間稼ぎ、それが今の僕に残された唯一の選択肢だった。

 

「『迸れ!』【ライトニング】!」

 

 手をかざした先に浮かび上がった陣から雷光が走る。生前の男が最も得意としていた雷魔術だからこそできる詠唱の簡略化、十全な威力にできるほど僕は経験を積んではないから威力も簡略した分軽減されているが、今はあの淀みの手を止めることが出来れば十分だ。

 

『――――ッ!』

 

 雷は見事に淀みの不気味なバイザーに命中しバイザーは砕かれ、陣の形成もそれに合わせて一瞬ではあるが止まった。しかしそれだけでいい、それだけあればあの炎をもう一発食らわせることができる。それで本当に止めを差す。今度こそ木っ端微塵、いや塵も残さない!

 

「『灼熱の軌跡を持って――――』」

 

 刹那、バイザーに隠された淀みの目が開かれた。瞳には長方形が刻まれていて、それが魔術的何かであることは一目瞭然であった。そして、僕はそれに捉えられてしまったということも。

 

 気づいたときにはもう遅かった。体が、完全に静止してしまっている。石にされてしまったかのようにもがくことも許されないその状況にあるにも関わらず、淀みは再び陣の形成も始め。そして、それを終えた。

 

「ダメ、逃げてッ!」

 

 出来たら、そんなこと出来ているのならそんなのとっくの昔にやっているさ。

 だがしかし、考えてみればこれはある意味不幸中の幸いだろう。淀みは完全に僕の方へと狙いを定めた。それはつまり、イリヤスフィールへの被害が軽減できると言うことだ。

 

『【騎英の(ベルレ)……――!』

 

 なんだ、女の子のために死ねるなら、案外、悪くないのかもしれない。

 瞳の震えでさえも、もう動くことはない。意識が、遠退く

 

 

 

 

 

 

 

 

「【刺し穿つ死刺の槍(ゲイ・ボルグ)】ッ!」

 

 完全に闇に染めるその前に、そんな勇ましい叫び声が聞こえたような気がした。




イリヤちゃんにチア服来てほしいけどな~俺もな~

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