仮面ライダーリリカルオーズ 世界を救う欲望 作:シラカンバⅡ
ストーリーそのものは、大体同じです。
第1話 少年と公園と運命を変えていく出会い
何の変哲も無い少年が街中の道を歩く。 彼の顔立ちは平均以上だが、街中でもよく見かける程度で、年齢はおよそ6歳といった所だ。 リュックを背負い、第三者から見れば普通の外出だと思うだろう。
しかし、その少年は自分が何故此処にいるのか、此処が何処なのかが分からずにいる。 呼吸を知り、二本の足で問題無く歩いているが、彼は自分が誰なのかが分からないのだ。 今は取りあえず、此処がどんな場所なのかを知る為に歩いているだけに過ぎない。
◇◇◇
やがて公園の入り口前にたどり着き、その公園に入っていく。
公園の中を進んでいくと、ベンチに一人の少女が座っているのが見えた。 染めている様には見えない自然な色の茶髪を短いツインテールに纏めた、少年と同い年の少女である。 だがその少女にはどこか悲しい、寂しい雰囲気が見て取れた。
少年は少女の様子が気になり、話し掛ける。
「どうしたの?」
「ふぇっ!?」
深く考え事をしていたのか、普通に声を掛けただけなのに、その少女は驚いた。
少年は少女を驚かしてしまった事を謝り、もう一度問い掛ける。
「急に声を掛けてゴメンね、どうしたの?」
「えっと、大丈夫だよ。 さっきはごめんなさい、ちゃんとお返事出来なくて」
今度は笑顔を付けて、返事をしてくれた。 しかし少年には、その笑顔が少女の心からの笑顔とは思えなかった。
故にもう一度問い掛ける。
「何が悲しいの?」
「か、悲しくなんか無いよ。 ちょっと考え事をしていただけだから!」
どう見ても作り笑顔であり、その少女は無理やり明るく努めている。
そう感じた少年は、少女が何かを伝えたがっている様に見え、もう一歩踏み込むように問い掛ける。
「君の本当の気持ちが知りたいよ」
少女は驚いたような表情を浮かべ、その後直ぐに落ち込んだ様子で言葉を発する。
「なのはのお父さんが怪我で入院して、お母さんやお兄ちゃんにお姉ちゃんも、お家のお仕事で忙しくて、なのははみんなに迷惑かけたくないから、ずっと此処に居たの……」
少女は自分の気持ちを打ち明ける。 言葉を述べるにつれ、目尻に涙を浮かべながら。
少年は少女を救いたかった。 しかしどうすれば良いのか分からなかった。 自分が何を出来るのかすらも分からなかったからだ。
何も無い。 少女を喜ばせるお菓子も無ければ、少女の家に起きた不幸を無くす方法も無い。
しかしそれでも、例え自分が空っぽな、何の価値も無い器だとしても。 目の前の少女の為に力を尽くしたいと想う熱い『何か』が自分の中に有る。
故に少年は自分の気持ちを伝える。
「僕は君じゃ無いから君の悲しい気持ちが分からない。 何が出来るのかも分からない。 それでもね……」
少年はそこで1拍程の間隔を開け 、言葉の続きを紡ぐ。
「僕はここにいるよ。 君の悲しい気持ちが少しでも無くなるなら、君の寂しい気持ちが少しでも無くなるなら」
ハッとなって少女は、いつの間にか俯いていた顔を上げる。
そして少女が目にしたのは、何も持っていないけど、何の変哲も無いけれど、そんな人だからこそ浮かべられる、精一杯の笑顔が有った。
「うっ、うえええぇぇぇぇん!!」
少女は大声で泣き出す。 今まで我慢していた涙を出し切るかのように、目の前の少年の胸に顔を埋めながら。
少年はそんな少女の頭を暖かい微笑みを浮かべながら、優しく撫でる。 一生懸命頑張った子供を褒めるかの様に。
やがて気は済んだのか、少女は泣き止み、ゆっくりと少年から身を離す。
「ぐすっ、ごめんね。 それからありがとう、側に居てくれて」
「どういたしまして」
少年は微笑みながら返事を返す。 目の前の少女が、自分が出来る事で少しでも楽になれたことを喜びながら。
そんな少年の笑顔に釣られて、少女も微笑みを返す。
「良かった。 君の役に立てて」
「うん!」
見たかったものが見れたからか、少年はとても嬉しそうにしている。
そんな彼に対し、少女は笑顔で自己紹介を始める。
「本当に側に居てくれてありがとう! 私は高町なのは! 貴方のお名前も教えてくれる?」
「うん、僕の名前は……」
言い掛けて少年は思い出す。 そういえば自分は誰なのかを。 なのはと出会い、話しをするまで思い出そうとしていた自分の名前を。
少年は困った、折角なのはが自己紹介してくれたのに、自分の自己紹介が出来ない事を。
しかし、ふと自分の頭の中に文字が浮かんだ。確かめる方法は無いけれど、今浮かんだその文字こそが、自分の名前だと確信が持てた。
「僕は
だからこそ、誇らしく自分の名を名乗る。
「なのはで良いよ。」
「じゃあ、僕のことも映司って呼んでね。 なのはちゃん」
「うん! よろしくね映司君!」
お互いを名前で呼び合えるのが嬉しいのか、なのはは元気良く返事をする。 その顔には、初めて見た時の寂しい雰囲気はもう無かった。
「じゃあなのはちゃん。 折角友達になれたんだし、一緒に遊ぼうか?」
「うん! 遊ぼう!」
公園の中で遊び始めた映司となのは。 砂場にブランコやジャングルジムに滑り台と、次々と遊具を変えて遊んでいった。 二人とも仲良くはしゃいでるが、特に映司は公園で遊ぶという記憶が無かったため、新鮮な気持ちで胸はいっぱいだった。
そうして時間を気にせずにしていたが、日が傾いてきたのに気づき、なのはは少し顔を曇らせながらつぶやく。
「そろそろお家に帰らないと……」
そのつぶやきに気付き、映司は思い出す。
人には自分が返る家というものが有るという事を。
もちろん映司にも自分の家が有り、何処に有るのかという『知識』は有るし、子供はそろそろ家に帰らなければいけない事も知っている。
だが、なのはの家の事情を思い出し、なのはは家に居づらい事も思い出した。
「帰りづらいの? なのはちゃん」
「ちょっとだけ……」
映司はこのままなのはと別れるのは良くないと、何故かは分からないがそう思えた。
「なのはちゃん。 こんな時間だけど、なのはちゃんの家のお店に行っても良いかな?」
「えっと、お店はまだやっているから大丈夫だよ」
「ありがとう。 じゃあ一緒に行こうか」
「う、うん!」
なのはは嬉しかった。 映司と一緒に居られる時間が延びた事が。
そうして二人はなのはの家に向かう。 それを見ていた人影が有った。
「誰なんだ彼は……リリカルなのはにあんなキャラいたかな?」
その人物は、自分の知識の中に映司が居ない事に首を傾げた。
「まあ良い。 この世界の悲しい運命を変える事さえ出来れば……」
なのははまだ知らない。 映司との出会いが自分の人生を変えていくことを。
謎の人影はまだ知らない。 この世界の行く末は既に自分の予想から外れていることを。
そして映司もまた知らない。
自分の決断によって世界の運命が変わるという事を……
少しでも読みやすくなっていると思って頂ければ幸いです。