仮面ライダーリリカルオーズ 世界を救う欲望   作:シラカンバⅡ

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遅くなって済みませんでした!!

カウント・ザ・メダルズ!!
今、オーズが使えるメダルは……

タカ×2
クジャク×1
コンドル×1

クワガタ×1
カマキリ×1
バッタ×1

トラ×2

サイ×1
ゴリラ×1

ウナギ×1
タコ×1


第10話 告白と模擬戦と猫の王

「メズール、元気出して……」

「そこまで落ち込む事無いじゃない」

「運が悪かっただけだ。 次が有るだろう」

 

 ガメル、カザリ、ウヴァの順にメズールに話し掛ける。

 当のメズールは壁の方を向きながら、部屋の隅で体育座りをし、明らかに暗い雰囲気を醸し出していた。

 彼女が落ち込んでいる理由は恐らく、前回のクラゲヤミーの事だろう。

 弱くても数が多い分、全てをセルメダルに替えた時の獲得枚数が多いのも、メズールのヤミーの特徴だが、セルメダルを取られる側からすれば、やられた時の損失が最も大きいと言うデメリットも有るのだ。

 

 メズール達がセルメダルを欲するのは、プレシアと呼ばれる女性を助ける為であり、それが出来なかったので、落ち込んでいるのかも知れない。

 ウヴァ達がフォローの言葉を掛け続けても効果は無さそうだが、メズールは振り絞るような声を出し始めた。

 

「なんて事……私のミスだわ。 もっとよく考えなかったから……」

 

 その自虐的な言葉に、ウヴァ達は慰めの言葉を失ってしまう。

 この4人の中で、プレシアの病気を治せるのはメズール1人だけ。

 故に、病気を治す力を得る為のセルメダル収集に失敗してしまった事に対し、誰よりも責任を感じているのはメズールなのだ。

 ウヴァ達の心配をよそに、メズールの独白は続く。

 

「ちゃんと品定めをするべきだったのに、それを怠るなんて……あんな欲望を叶える手助けをしてしまったわ……」

 

 ん? 何かおかしい。

 品定めと言う言葉に関しては、ヤミーの巣の場所選びの事と解釈出来なくは無いが、後半の台詞はどういう意味なんだろうか?

 

「女が履いた水着や下着が欲しいですって? それなら彼女を作って、その人から貰えば良いじゃない! あの水遊び場ーーじゃなくてプールに来ていた娘達に可哀想な事をしちゃったわ……こんな馬鹿な私を許してぇ……」

 

 落ち込んでいる理由はそっちかい。

 同じ女だからこその事なのだろうが、本気でメズールを気にかけていたウヴァ達からすれば、自分達の気持ちを裏切られたようなものである。

 そのため彼等は嘆き続けているメズールの背後に回り、ウヴァが先頭に立ってメズールの頭を叩く。

 

「痛っ!? 何するのよ……」

 

 いきなり叩かれた事に怒り、叩いた犯人が誰なのかを知る為に、後ろを振り向いた先に居たのは、3人の羅刹であった。

 最初は一言文句を言おうとしていたメズールではあるが、ウヴァ達からにじみ出る重い殺気を当てられては、それすら出来なかった。

 とは言っても、何かアクションをしなければ状況は改善されないので、メズールは怯えながら怒っている理由を訪ねた。

 

「ど、どうしたのみんな? そんな怖い顔しちゃって……」

「人が本気で心配したっていうのに、何を考えてんだ、何を……?」

「僕達なりに君を元気付けようとしたのに、そういうのは良く無いんじゃない……?」

「メズールはプレシア達の事はどうでも良いの……?」

 

 やたらとドスを効かせたウヴァから始まる言葉を聞き、メズールは自分の本来の目的を思い出した。

 

「あっ……なんて事なの私ったら! ごめんなさいプレシア、あなたの力になれなくて……」

 

 今更過ぎるが、メズールは今度こそプレシアの事で落ち込んだ。

 その様を見て呆れてしまうウヴァ達だが、反省は確認出来たので、このあたりで許してやることにした。

 これ以上後ろ向きでいても前進出来ない。

 今は兎に角、次の1手を打つことを決めたのだ。

 

「それで、次に外出許可が出されるのは誰だ?」

「僕だよ。 外の空気を吸うのは800年ぶりだね」

 

 ウヴァの問い掛けに答えたのはカザリ。

 彼はまだ外出許可を貰ってなかったので、外の世界がどうなっているのかは、ウヴァとメズールの話しでしか知らないので、内心は遠足気分である。

 

「言っておくが、抜かるなよ」

「当たり前さ。 そろそろオーズには、1杯喰わせてやらないとね……」

 

 一見軽薄そうに見えるが、今までの映司の働きにより、手に入るセルメダルは0であるため、プレシアの治療が思うように進まなかったのを憂いていたのはカザリなのだ。

 故に、今回のセルメダル作りは何が何でも成功させようとしていた。

 イレギュラーが起こらない限りは…………

 

 ◇◇◇

 

 ここは海鳴市に有る私立風芽丘学園の屋上、そこにはこの学園の高校2年生である美由希の他に、1人の男子高校生が居た。

 現在は休み時間中であり、青春真っ盛りの男女が2人っきりでこんな所に居るという事は……

 

「高町さん、本気であなたの事が好きなんです。 僕と付き合って下さい!!」

「え~っと……」

 

 やはり、どうやら男子の方から美由希に告白しているようだ。

 こういう光景は別に珍しくも無い。

 元々美由希はこの学園ではトップクラスの美少女、彼女は非公認だがファンクラブまで存在し、風芽丘学園のマドンナとも言われている。

 これくらいのイベントは日常茶飯事なのだ。

 しかし、美由希は困ったような表情をしながら頭を下げ、申し訳無さそうに断る。

 

「あの、ごめんなさい。 お気持ちは嬉しいんですけど、私まだそう言うのは考えてないんです。 本当にごめんなさい!」

 

 そう言って美由希は屋上から立ち去ってしまい、残ったのは彼女のクラスメートである、飛島雄也(とびしまゆうや) だけ。

 フられたショックに立ち竦む雄也だが、彼の不幸はこれからであった。

 

「アハハ! マジ受ける~!」

「!?」

 

 嘲笑と共に現れたのは3人のイマドキな女子高生。

 美由希を連れて行く雄也を偶然発見し、校舎から屋上に繋がる道の陰に隠れ、告白の一部始終を覗き見ていたのだ。

 そしてフられた雄也を笑ってからかってやろうと思い、わざとらしく大声を出しながら姿をみせたのだ。

 

「アンタみたいなちょっと顔が良いだけの奴じゃ、あの子と釣り合いとれないっしょ~!」

「まあ高町がお堅いのも有るけど、あの子にだって選ぶ権利ってモンが有るし~」

「ご愁傷様だったね、飛島クン♪」

「っ!!…………」

 

 彼女達からぶつけられる言葉の暴力の前に、雄也は無言で悔し涙を流すしかなかった。

 実際雄也の成績は悪くなく、ルックスも平均以上だが、それだけの話し。

 その事を誰よりも自覚しているだけに、何も言い返す事が出来ない。

 散々言いたい事を言い終えて、3人組の女子高生は校舎の中に入ってしまい、雄也の心の中は先程とは比べ物にならない惨めさでいっぱいだった。

 

「アイツ等……アソコまで言わなくても……」

「ホント、悔しいよねえ」

「えっ!?」

 

 バカにされた悔しさに打ち振るえていた自分に届いた声に驚き、振り返った先に居た者を見て、雄也の思考は止まってしまった。

 佇んでいたのはカザリ。

 美由希が居なくなった後にやってきて、雄也達の一連の出来事に注目していたのである。

 着ぐるみとは思えない、その余りにも生々しい異形の生物に、雄也はなけなしの勇気を振り絞って正体を訪ねる。

 

「だ、誰だ……?」

「あぁ、心配しないで。 僕は君の力になりたいだけさ」

「僕の……?」

 

 そう……カザリは雄也の心の闇から生まれた欲望に目を付け、それをヤミーの苗床にする為に姿を見せたのだ。

 最初は恐ろしさしか感じられなかったが、カザリの言葉は現実に打ちのめされた雄也からすれば、福音のように思えた。

 

「本当に、本当に僕の力になってくれるんだよね……?」

「勿論さ。 君は自分がやりたい事をやれば良い。 僕はそれの後押しをしてあげよう」

 

 そこまで言ってカザリはセルメダルを取り出し、厳かな雰囲気で言葉を発する。

 

「その欲望、解放せよ」

 

 セルメダルを投入されるが、ウヴァの時と違い、成長前のヤミー……白ヤミーは現れなかったが、白ヤミーの特徴とも言える包帯に似た物が、雄也の体に出現していた……

 

 ◇◇◇

 

 海鳴市の浜辺にて対峙するは、映司となのは。

 いつもの和気あいあいとした雰囲気は無く、決闘さながらの面構えをしていた。

 アンナとユーノは、2人から離れた場所で傍観者に徹し、その傍らにはクーラーボックスが置かれている。

 数秒の沈黙の後に映司が口を開く。

 

「さあ……始めるよ、なのはちゃん!」

「映司君、負けないからね!」

 

 そして映司はオーズドライバーを装着して3枚のコアメダルを装填して読み取り、なのははペンダント状に待機しているレイジングハートに呼び掛け、お互いに掛け声を上げる。

 

「「変身!!」」

「タカ!! トラ!! バッタ!!」

「タ・ト・バ!! タトバ、タ・ト・バ!!」

《私も歌うべきですかね》

 

 2人の変身は完了し、先に映司がなのはに向かって疾走する。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!」

「させない!」

 

 仮面ライダーオーズお得意の接近戦になれば、遠距離戦重視であるなのはの不利は一目瞭然。

 そこでなのははパワーチャージを省いた砲撃を連射し、近付かれる前に先手を取ろうとするが、両手に白く光る魔力を纏わせた映司の拳によって横薙ぎに弾かれ、接近を許してしまう。

 

「トォッ!」

《プロテクション》

 

 しかし、肉迫した映司の右ストレートは、レイジングハートが自動的に展開した障壁に阻まれ、飛行魔法ーーフライアーフィンを発動したなのはは靴から光の羽根を出しながら後退し、距離を大きく空けて次弾を撃ってくる。

 

「ディバインシューター、シュート!」

《避けられますか?》

 

 ジュエルマンティスのスピードの前に、隙を点かなければ砲撃を当てられなかった事を反省したなのはが開発した新魔法ーーディバインシューターが映司に迫る。

 

「うっ、くっ」

 

 自動追跡機能を持つディバインシューターを両手のみならず、両脚にも魔力を纏わせて弾いていくが、それに気を取られている隙を狙ったなのはの砲撃が見舞われる。

 

「行っけぇぇぇぇぇぇ!!」

「ぐあっ!?」

 

 命中するギリギリの所で両腕をクロスして防ぐも、映司は大きく吹き飛ばされて、地面にぶつかりそうにーー

 

「ふっ、たあっ!」

「ふぇ!?」

 

 ーーなると思った瞬間、映司の体はまるでトランポリンに受け止められたかのように宙に弾かれ、予想すら出来なかった光景を目にしたなのはは面食らってしまった。

 宙に投げ出された映司は体を丸めて反転しながら体勢を整え、地面に着地したと同時に、なのはから見て左の方に駆け出した。

 

「よく分からないけどーー今度はそこ!」

 

 正体不明な現象に驚かされたが、気を取り直したなのはの攻撃は再開され、映司の移動地点を計算した砲撃が当たると思った瞬間、また妙な事が起きた。

 

「それっと!」

「嘘っ!?」

 

 当たる直前、その場で両手を上げながら跳ぶと、鉄棒の逆上がりのような動きで砲撃を回避し、空中で逆立ちした状態で、腕の力だけでなのはの方に跳んでいく映司。

 それを迎撃する為に再びディバインシューターを放つが、映司は宙に両手を置き、それを軸にして全身をコマのように回転させ、カポエラのような、ブレイクダンスのような動きで、脚で魔力弾を弾いていく。

 

「もう! 一体どうなってるの!?」

 

 自分では到底真似出来そうもない、アクロバティックな動きを見せながら近付いてくる映司に混乱したなのはは、砲撃の連射で対応する。

 だが、見えない足場が有るかのように、映司は宙を走り、ジャンプし、時には体の上下を逆にした体勢で駆け寄り、側転や空中前転を交えながら回避していく。

 

 自分の攻撃が当たらない事に業を煮やしたなのはは、ディバインシューターで映司の逃走経路を塞ぎ、そこにディバインバスターを撃ち込むという戦術をとる事を決めた。

 逆に自分の周りの魔力弾が来ないのに訝しんでいた映司だが、なのはが魔力をチャージしているのに気付き、こちらも最大の必殺技を使うのであった。

 

「ディバイィィィィィン……」

「スキャニングチャージ!!」

「タトバキィィィィィィィィック!!!!」

「バスタァァァァァァァァ!!!!」

 

 お互いの切り札がぶつかり合い、戦いは終局に向かう。

 果たして、勝利はどちらの手に……

 

 ◇◇◇

 

「あ~あ、負けちゃった……」

「映司君、大丈夫?」

「気軽に言うねぇ……あの光の中に飛び込むのは、バンジージャンプを命綱無しで飛ぶようなもんだよ?」

 

 勝利の女神はなのはに微笑んだ。

 既にお気付きだろうが、2人がしていたのは模擬戦であり、大ダメージを受けて変身が解けてしまった映司は地面に仰向けに横たわり、それをなのはが見下ろす形となっている。

 ライダーバレしてから数日、映司達はそれぞれ別の場所で訓練を重ねていたのだ。

 訓練の内容は、お互いの得意分野を中心に鍛え、弱点を補うという物。

 

 なのははユーノを師とし、新魔法を使えるようにした。

 細かい機動が苦手な彼女は相手を近付けず、自分はあまり動かない半固定砲台戦法となり、強力な障壁で攻撃を防ぎながら、自動追跡弾等を以て敵の隙を誘い、一撃必殺の砲撃を叩き込む戦術。

 

 一方映司は仮面ライダーに必要な体力を鍛えつつ、士郎から体術を学んだ。

 模擬戦で見せた動きがそれであり、やたらと覚えの早い彼の身のこなしは子供のレベルを超える物となっていた。

 更に御神流と呼ばれる剣術をマスターしている士郎により、剣の教えも受けているが、技では無く、あくまでも剣術の基本のみである。

 

 訓練内容も至ってシンプルな、棍棒を使用した素振り。

 1度映司の特訓風景を見たなのはは、どうして技を教えないのかを士郎に訪ねた所。

 

「基本が出来ていなければ、どんなに強力な技を覚えても、実戦では役に立たないからさ。 それに技なんて物は、基本を積み重ねていく事で生まれる副産物のような物だから、映司君なら特に意識していなくても、自然と出来るようになるよ」 

 

 と言うお言葉を頂き、映司は愚直に基礎を重ねているのだ。

 剣術の事は分からなくても、士郎の言いたい事は何となく理解出来たので、なのはもそれ以上は何も聞かなかった。

 

 ◇◇◇

 

 観戦していたアンナとユーノはクーラーボックスに入れていた冷たい飲み物持参で映司達の所に近付き、2人の苦労を労い、見た事もない戦いを見せられた事で、ユーノは軽く興奮気味に映司達を賞賛してきた。

 

「2人共凄かったよ! 特に映司は不思議な魔法も使ってたし、あれなんだったの!?」

「そう言えば、空を飛ぶ相手に対抗する術を編み出したそうだが、あれがそうなのか?」

「映司君、私も気になってたから、教えてくれる?」

「うん、あれはね……」

 

 映司がやってみせた空中移動術にみんなが興味を持ち、説明が始まる。

 訓練を始める前に、魔導師は空を飛んで戦うと言う話しをユーノから聞かされた映司は、自分もそれが出来るようになるため、飛ぶ方法を考えた。

 元々オーズは、アンナの持つ鳥のコアメダルのコンボを使えば空を飛べるが、タトバ以外のコンボは体に掛かる負担が大きく、滅多な事では使えない。

 更に映司本人の希望としては、空中でも地上と同じ感覚で戦いたいのだ。

 

 故にそれ以外の方法を模索した所、ユーノから足場を作る魔法ーーフローターフィールドと呼ばれる魔法を教えて貰う。

 しかし、このフローターフィールドは激しい移動には不向きであり、常に広い範囲をカバーするとなると、魔力消費も馬鹿にならない。 

 そもそも戦闘時に使う魔法では無いので、実戦用にするには改良しなければならなかったのだ。

 

 そこで映司が思いついたのは、自分が使いたい時に、必要最低限の足場を作ると言う物。

 具体的には、自分の足の裏のみに力場を発生させることで足場を作り、場合によっては空中に力場を生み出して、それに手を引っ掛けての逆上がりや側転等の、模擬戦で見せたアクションが可能となり、設定しておけば、最初になのはに吹き飛ばされた時のように、地面にぶつかりそうになったら自動的に作動させ、強度も調整してトランポリンのように利用し、高い所から落ちても無傷でいられる。

 

 これこそ映司の魔法ーースカイフィールドであり、なのは達は独力で魔法の改良を行った映司にとても感心していた。

 説明が済んだその時、陽輝がバスケットとビニールシートを持ってやって来た。

 最初からこの浜辺で待ち合わせする事を決めていたからであり、模擬戦で疲れている映司達の為に差し入れを用意したのだ。

 砂浜にビニールシートを引いた上に座り、陽輝が作ってくれたクッキーとアンナ達が用意しておいた飲み物とで、ちょっとしたお茶会が始まった。

 

 しばらくはこうして談笑をしていたが、話しはこの前陽輝が封印したジュエルシードに変わった。

 士郎がオーナー兼コーチを勤めている少年サッカーチーム、翠屋JFCの試合が有った日、都合が悪くなって来られなくなった選手達の穴を埋めるため、映司と陽輝が急遽助っ人に入ったのだが、試合前に陽輝が翠屋JFCのキーパーからジュエルシードを手に入れてきたのに、映司達は驚いてしまった。

 話しによると、ジュエルシードの気配を感じたのが気になり、思い切って聞いてみたら、案の定持っていたので、女の子が喜びそうな宝石付きの指輪と交換して貰ったそうだ。

 

 その後は問題無く試合は開始され、予期せぬ贈り物を貰って、モチベーションが良くなったキーパーの鉄壁の防御と、チームプレーを尊重する映司と陽輝の活躍により、翠屋JFCの勝利に終わった。

 余談だが、試合終了後にキーパーは、両想いである少女に陽輝から貰った指輪をプレゼントし、2人の仲はより進んだそうな。

 

 話しはそこから模擬戦の内容に移り、映司となのはの戦いの流れを纏めた結果、やはり映司の弱点は遠距離戦、なのはの欠点は近距離戦である事に着眼点が置かれた。

 鍛錬の成果やお互いの問題点を確認し合う為に、コアメダルのチェンジ無しという条件で始まったので、砲撃能力を持たない映司が負けるのは当然と言えるが、魔力で強化された四肢による防御法と、軽快な動きで翻弄することで、ある程度は弱点を補えるのが分かり、今後は魔力弾を発射出来るようになる訓練を映司は積み、逆になのはは早い動きに惑わされないようにする為に、体の動かし方や、常に冷静沈着でいる事を学ぶ形となった。

 

 休憩も終わったので、今度は映司対陽輝、なのは対陽輝といった模擬戦を行い、その日の訓練は終了した。

 

 ◇◇◇

 

 模擬戦から翌日、映司、恭也、美由希の3人は一緒に買い出しに出かけ、映司はメダジャリバーを入れたリュックを背負っていた。

 最初は映司が自分の家の食料や消耗品を買うついでに、翠屋で足りなくなってる物を聞いて、お使いに行く話しになった所、それでは悪いと思った恭也達2人が付いて来てくれたのだ。

 本日はジュエルシード探しや訓練は休み、3人以外に、なのはまでもが翠屋のお手伝いをしていたのである。

 ただ、恭也達が映司と一緒に居る理由は、買い出しだけでは無く……

 

「はあ……翠屋の新しい趣向には、まだ付いていけそうに無いな……」

「て言うか、アレ絶対お母さんの趣味全開だよね……」

「あはは……やっぱ、僕のせいですかね……?」

 

 溜め息の後に続く恭也の言葉に、肩を落としながら相づちを打つ美由希。

 そんな彼等を見ても、映司は苦笑するしか無かった。

 ライダーバレしたあの日、桃子主導による、変身した映司の撮影会が行われたのだが、コアメダルを変えることで次々と姿が変わっていくのを見た際に、桃子の中の何かが刺激され、翠屋はその在り方を変えていった。

 

「メイド喫茶が有るのなら、コスプレ喫茶もアリよ!!」

 

 という、高町家のヒエラルキーの頂点に君臨する桃子の考案により、翠屋は日替わりコスプレ喫茶へと大改革したのだ。

 勿論、翠屋の手伝いをしている時は、映司や恭也達もコスプレが義務付けられている。

 ……殆ど強制的な物だが……

 

 抵抗が有る内は、コスプレと言うのは苦行。

 故に、交渉の結果ーーお使いで外に出る時は普段着に戻れるので、渡りに船とばかりに、恭也達も買い出しに出たのだ。

 帰ったらまたコスプレが待っているけどね……

 ちなみに、今日のコスプレは着る人に合わせてサイズを変更された、聖祥学園初等部の制服そっくりに作った物である。

 無論発案者の桃子も同じ。

 色んな意味で破壊力の高い光景だったが……

 

 そうこう言っている内に買う物も買い終わり、さあ帰ろうとなった所でーー

 

「イヤァァァァァァ!! 助けてぇぇぇぇぇぇ!!!」

「な、何だ!?」

「誰かが助けを求めてる!?」

「映司君! 恭ちゃん! あっちからだよ!」

 

 ーー映司達の耳に女性の悲鳴が届いてきた。

 それもかなり必死な様子であり、不安になった彼等は脇目も振らずに、美由希が指し示した方に走って行った。

 

 ◇◇◇

 

 到着した先の広場に居たのは、雄也をからかった女子高生の1人と……

 

「あの人、飛島君!?」

「知っているのか美由希?」

「私のクラスメートだよ、でも……何で彼が?」

「ん? あれは……まさか!?」

 

 そう、今まさに女子高生を襲おうとしている雄也本人がおり、彼等の近くには雄也により倒された複数のーー女子高生を守ろうとしていた男達が転がされていた。

 雄也はいたって大人しい性格で、人に危害を加えるような人物では無い事を知っていた美由希は訝しむが、雄也の体に現れている包帯を視認した映司は、カザリの作るヤミーの特徴が有る事に気付いた。

 

「や、止め……」

「飛島君、駄目!」

「うぅぅ、アァァァァァァ!!」

「あっ!?……」

 

 美由希の制止の声も意味を成さず、女子高生は雄也に右手で首を掴まれ、壁に向かって強く投げつけられ、気絶してしまった。

 

「アイツなんて事を!」

「待って下さい恭也さん! あの人はーー」

「ぐっ、あ、あぁぁぁぁ!!」

 

 女性に暴行を加えた事に怒る恭也を、事情を知っている映司が抑える。

 その直後、雄也が苦しみだしたと思ったら、彼の体から白ヤミーが飛び出し、瞬時に成長して、雄也は気を失ってしまう。 

 

「あれは……」

「やっぱり、猫のヤミーに取り憑かれていたんだ!」

「取り憑かれた!?」

 

 恭也は雄也から出てきたヤミーに、美由希は映司の不穏な発言にも驚いた。

 これがカザリのヤミー……親を宿主にして、その親に欲望を満たさせることによって成長するのだ。

 成体となったその姿は均整のとれたスリムな肉体、黄色い体色に黒いまだら模様、豹の敷物を頭から被ったような男ーー名付けるならヒョウヤミー。

 映司達の存在に気付いたヒョウヤミーは、自分の邪魔立てをする者と認識し、迫ってきた。

 それを迎え撃つ為、買い物袋を恭也に持ってもらい、オーズドライバーを装着し、護身用に持たされた3枚のコアメダルを装填。

 

「変身!!」

「タカ!! トラ!! バッタ!!」

「タ・ト・バ!! タトバ、タ・ト・バ!!」

 

 後ろに居る恭也達を守るために、変身して直ぐ右手にメダジャリバーを持ち、勇猛果敢に立ち向かう映司。

 

 解説しよう。

 変身した際、映司が所持していた物品は、彼の体の表面を覆う強化皮膚ーーオーズアーマーの内側に量子化される形で取り込まれ、それらの物は、出すときは一瞬で出せるのである。

 

「テヤァァァァ!」

 

 真上から振り下ろされる斬撃を飛び退いてかわし、ヒョウヤミーは映司の頭の上を飛び越してくる。

 

「オォッ!」

「あっ!?」

 

 すれ違いざまに、足の爪で映司の頭を引っかき、着地したヒョウヤミーは再び飛びかかってきた。

 

「シャアッ!」

「ぐっ、コノッ!」

「キアッ!!」

「うあっ!?」

 

 捕まえて反撃しようとするも、ヒョウヤミーは素早いジャンプを繰り返し、前後左右から縦横無尽に、四肢の爪で切りかかってくる。

 その動きに翻弄され、メダジャリバーも手放してしまい、トラアームのスピードでは捉えられない事実を悟った映司は、ベルトの左側に付いているメダルケースーーオーメダルネストから預かっていたカマキリ・コアを取り出し、トラ・コアと入れ替え、オースキャナーで読み取る。

 

 再び解説しよう。

 変身に使用しなかったコアメダルや、持っていたセルメダルもまた、メダジャリバーと同じ形式で取り込まれ、映司が使いたいと思った時、オーメダルネスト内に形成されるのだ。

 

「タカ!! カマキリ!! バッタ!!」

 

 黄色のトラアームからイエローグリーンのカマキリアームとなった、タカキリバと呼ばれる亜種形態にチェンジ。

 

「ガアッ!」

「ソラァッ!」

「ぐう!?」

 

 オーズの上半身を構成するボディコアの中でも、最速の攻撃速度を誇るカマキリボディのパンチは、またしても飛びかかってきたヒョウヤミーに対し、鋭いカウンターを見舞ってやることが出来た。

 攻撃を受けたせいで着地に失敗しても、ヒョウヤミーは直ぐに立ち上がってくるが、それより素早く接近してきた映司は、カマキリアームから展開するカマキリソードで斬りつける。

 

「セヤアッ! ハアッ!」

「アァッ!?

 

 右手からの斬撃を上から下に一閃、続いて左から右に走る左手の斬撃がヒットし、怯まされるはヒョウヤミー。

 無論それだけでは止まらず、両足を軸にすることで、竜巻さながらの回転斬撃をも喰らわせ、セルメダルをバラまきながらヒョウヤミーは斬り飛ばされる。

 

「映司君やるう……」

「俺はあの歳でアソコまで動けたかな?」

 

 流石の恭也達も映司の動きには感心させられてしまう。

 まだまだ2人の技術には及ばないまでも、映司にはまだ伸びしろが有り、純粋な剣術ならば、いずれは恭也達はおろか、士郎にも迫るかもしれないと、士郎本人が言っていたのを思い出し、自分達もうかうかしていられないと、恭也達は思ってしまった。

 しかし、このままイケると確信出来た時に限って、必ず嫌な事が起こってしまうのだ。

 

「うわあっ!?」

「「映司(君)!?」」

 

 突如として黄色い竜巻が映司に襲いかかり、吹き飛ばされた姿を見て、恭也達は思わず叫んでしまう。

 それでも映司は何とか体を起こし、攻撃が来た方を向いて、新手を確認。

 すると、そこに居たのは……

 

「オーズ。 僕のヤミーを虐めるのもソコまでだよ」

「今度は何だ!?」

「まさかーーあの姿は!?」

 

 映司はアンナから、まだ見ぬグリードの容姿等も教えて貰っていたので、乱入者の正体はあっさりと判明した。

 

「その顔と、(たてがみ)や爪は……貴方がカザリさん!?」

「へえ、僕のことをご存知とは光栄至極……」

 

 現れしはカザリ。

 彼は自分の事を知っていた映司に向かい、仰々しい手振り身振りでお辞儀をしてきた。

 

「だけどオーズ、これ以上ヤミーをやられて、セルメダルが手に入らないのはゴメンなんだ。 悪いけど今回は2対1で相手して貰うよ!」

「アアァッ!」

「くっ」

 

 主が加勢に来てくれたので、ヒョウヤミーは戦意を回復し、第2ラウンドが開始された。

 

「フッ! ハッ!」

「ぐっ! オォーー」

「シュアッ!」

「がっ!?」

 

 カザリの右手からの爪撃を左手でブロックし、流れるように繰り出される左ミドルキックをバックステップで避け、今度はこっちから斬りつけようとした所で、背中からヒョウヤミーの爪によって火花が散らされた。

 

「やったな! ホッ!」

「ヒュッ!」

「あれっ!?」

「後ろががら空きだ!!」

「ああっ!?」

 

 やられたお返しと言わんばかりの斬撃も、学習したヒョウヤミーが真上に高くジャンプしたせいでかわされ、その隙をカザリに狙われてしまい、振り返ったそばから左右の爪撃によって切り裂かれる。

 カザリとヒョウヤミーはこうして、相手の虚を突くヒット&アウェイ戦法を駆使して、ジワジワと映司を追い詰める。

 

「恭ちゃん、このままじゃ映司君が!」

「分かってる! これ以上黙って見ていられるか!! この剣借りるぞ映司!」

 

 弟分が傷つくのを見過ごせず、恭也は地面に落ちていたメダジャリバーを拾い上げ、カザリに斬ってかかる。

 

「ハッ!!」

 

 御神流の奥義の一つーー神速を用いてカザリの後ろに回り込み、居合いの原理をもって目にも留まらぬ斬撃が振るわれるが……

 

「甘い」

「なっ!?」

 

 後ろに回った時には既に、カザリは恭也の方を向いており、振られたメダジャリバーを片手で受け止められてしまう。

 自慢の奥義が破られたことに動揺し、隙を見せてしまった恭也の襟首を掴み、カザリは威圧をかけながら、決定的な言葉を叩きつける。

 

「嘗めて貰っては困るなあ。 人間に出来る程度の技が、僕達グリードに通用する訳無いだろう!!」

「うああっ!?」

「恭也さん!!」

 

 カザリは恭也を映司に向かって投げつける。

 それを受け止めようした時、ヒョウヤミーの顔が光っているのを見た映司は、抱き留めた瞬間後ろに振り向き、恭也を庇う。

 

「カアアッ!!」

「ああぁぁぁっ!?」

「映司!?」

 

 ヒョウヤミーから放たれたのは、セルメダルのエネルギーを凝縮した破壊光弾。

 それをまともに背中に受けてしまい、映司は無視できないダメージを喰らう。

 しかも、まだ終わりでは無い。

 

「映司君後ろ!!」

「ハァァァァ……!」

「うっ!? 恭也さんごめんなさい!!」

「映司!!」

 

 美由希の叫び声を聞いて顔を向けた先には、腰を下げて力を溜めているカザリが居た。

 危険を感じた映司は申し訳無さそうに恭也を放り投げ、彼の安全を確保する道を選ぶ。

 それに構うこと無く、カザリは凄まじいスピードで映司に向かって走る。

 

「フゥゥゥゥゥゥゥゥーーハアッ!!!」

「うわぁぁぁぁぁ」!!?

 

 カザリの強烈な右飛び後ろ回し蹴りを喰らってしまい、映司は大きく吹き飛ばされてしまう。

 更に許容範囲を超えたダメージを受け、変身まで解除された。

 

「うう……」

「映司君! しっかりして!」

「映司!!」

「なっ!?」

 

 倒れた映司に恭也達は駆け寄り、オーズの正体を知ったカザリは愕然とする。

 

「子供? 馬鹿な……聞かされてないぞ、そんな事!?」

 

 衝撃の事実に動揺するカザリをよそに、ヒョウヤミーは宿主の雄也の体に戻り、何処かに行ってしまった。

 それに気付いたカザリも、やるせない気持ちを持ったまま、立ち去った。

 その場に残された恭也達は必死に映司に呼びかける。

 

「映司君! 大丈夫!?」

「映司! ゴメンな、俺のせいでーー」

「う……」

 

 2人の声を聞き、意識が朦朧とする中、映司は恭也に訪ねる。

 

「……恭也さん……怪我してませんか?……」

「!!…………!」

 

 それだけ言った後、映司は気を失ってしまう。

 恭也はこんな小さな子供に守って貰った自分を情けなく思いながらも、一刻も早く映司を休める場所に連れて行く事にした。

 

「美由希、映司を運んでやってくれ。 荷物は俺が全部持つ!」

「分かった! 映司君、直ぐだからね!」

 

 自分達を守るために倒れた映司の手当てをする為、恭也達は翠屋への道を急ぐのであった。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

   




次回に続きます。
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