仮面ライダーリリカルオーズ 世界を救う欲望 作:シラカンバⅡ
皆さん本当にありがとうございます!!
カウント・ザ・メダルズ!!
今、オーズが使えるメダルは……
タカ×2
クジャク×1
コンドル×1
クワガタ×1
カマキリ×1
バッタ×1
トラ×2
サイ×1
ゴリラ×1
ウナギ×1
タコ×1
翠屋に運ばれた頃に目覚めた映司は、ただならぬ事態を感じた士郎達に促されるまま、高町家のリビングの椅子に座らされ、手当てを受ける。
と言っても、オーズアーマーの防御力とカマキリボディの持つ強固な外骨格のお陰で怪我らしい怪我は殆ど無く、カザリの最後の一撃を受けた胸に湿布を貼るぐらいで済んだ。
その報告を聞いた士郎達も安心し、映司には翠屋の仕事が終わるまでは安静にしてもらい、その後詳しい話しを聞くことになった。
なお、心配したなのはが看護しようと申し出るが、目の前に居ながらも、何も出来なかったことに責任感を持った美由希が代わりを務めると強く言い出してしまい、しぶしぶと仕事の手伝いに戻る羽目になってしまった。
◇◇◇
時が経って翠屋も閉店し、後片付けや明日の仕込みも終わったところで、何が起こったのか詳しく聞く時間となり、現れたヤミーやカザリの能力を説明された際、士郎は軽くないショックを受けていた。
「それじゃあ恭也。 カザリというグリードには、神速が通じなかったのか?」
「ああ、余裕で見破られた。 下手したら父さんの閃も効かないかもしれないよ……」
「変身してる時だけですけど、僕も恭也さんの動きは見えました。 多分、人間の出せる力では対抗は無理かと……」
恭也に問い掛ける士郎は、続く映司からの気まずそうな感想に、恭也諸共落胆してしまう。
閃と言うのは、御神流の究極の奥義であり、戦闘の達人以上の者ですら反応どころか、視認することすら不可能な高速技術。
士郎は最初、己の全力を出し切ればグリード達に対抗出来ると思っていたが、それは希望的観測による、甘い考えだったことを痛感した。
映司の場合、変身している間はグリードと同等の能力を有している為だが、どちらにせよ、自分達の力ではどうにもならないことを、士郎達は改めて認識してしまった。
そんな中、美由希は雄也の身に起こった事を心配し、映司に問いただしてきた。
「映司君、飛島君を助ける方法は有るの?」
「ヤミーと分離していれば問題無く戦えるんですけど、もしヤミーが成長しきってしまえば、宿主を取り込まれてしまうので、その前に何とかしないと。 それに、僕が今持ってるコアメダルだけだと、戦法を考える必要が有ります」
そう、猫系ヤミーの厄介な所は、宿主を人質に取られていることだ。
取り込まれた状態で攻撃すれば、中に居る宿主を傷付けてしまう為、迂闊な事は出来ない。
一体化している状態を何とか分離させるには、宿主の体を覆うヤミーを構成するセルメダルを剥がす必要が有るのだが、それに最適な能力を持つコアメダルは持っていないので、戦い方を考慮しなければいけないのだ。
ちなみに、アンナは現在、鴻上から貰ったライドベンダーを動かす為に、大型二輪免許の試験を数日前から受けており、こうして傍に居られない時も有るので、映司はコアメダルを預かっているのである。
ひとまず今日は、預かってもらっていたユーノを連れて映司は家に帰り、雄也を見つけた時には必ず映司に連絡するという事を士郎達は決め、解散する一同である。
◇◇◇
場所は変わってここはウヴァ達の部屋。
部屋の中央に置かれた大きな円卓の周りに配置されているソファに座りながら、ウヴァ達はプレシアとリニスの2人が作ってくれた食事を楽しんでいた。
ウヴァ達の知り合いであるプレシア達は、彼等から受けられる治療のお礼として、こうして腕前を振るっているのだ。
今食べているのはクリームシチューに焼きたての自家製パン、色とりどりの新鮮な野菜を使ったサラダに、デザートは手作りプリンである。
どれもこれも丁寧に作られ、そんじょそこらのファミレスでは敵わないその味は、プレシア達の高い調理技術を窺わせる。
だが、よく見るとカザリは居ない。
その事に気付いたウヴァは、同席しているメズールとガメルに疑問を投げかけた。
「なあ。 聞きそびれていたんだが、カザリはどうしたんだ?」
「彼ならヤミーが成長しきっていないって言うから、今日は帰ってこないそうよ」
「飯はどうするんだアイツ?」
「リニスがお弁当を作ってくれたから、大丈夫だよ」
「そうか……なら心配無いか」
メズールからの答えに再び問い掛けたウヴァにガメルが答え、食事は再開される。
猫系ヤミーは昆虫系ヤミーより成長速度が遅いので、帰るのが遅くなることを予想し、カザリが予め弁当を頼んでおいたのである。
その内デザートも食べ終え、食事は終了したのだが、ガメルはまだ物足りなさそうだ。
「お腹いっぱいにならないな……」
「仕方無いわよガメル。 私達はそういう者なんだから」
「少なくとも空腹よりはマシだろ」
故あってグリード達の五感は正常だが、『満足』することは無い。
例えば、どれだけ食べても満腹にはならず、精々腹八分目といったところまでだ。
余談だが、アンナはちゃんと満腹になれる。
同じグリードと言っても、両者の誕生した経緯が違うからだが……
「それよりも、明日は確かガメルが外出するんだったよな?」
「うん、どんな世界か楽しみだなあ」
「人間に見つからないように、気をつけなきゃ駄目よガメル」
「分かってるよ。 ちゃんと考えているから大丈夫」
憂鬱な気分を紛らわせる為、話題を変えるウヴァ。
どうやら今度はガメルが海鳴市に出掛けるようだ。
そんな彼を心配するメズールだが、ガメルはやけに自信が有るので、ウヴァとメズールは顔を合わせながら首を傾げてしまう。
◇◇◇
海鳴市の裏路地でカザリはリニスお手製の弁当を浮かない顔をしながら食していた。
その傍には弁当を分けて貰った雄也が居たが、泣きながらそれを食べており、カザリはそんな彼を申し訳無さそうな顔で見ていた。
「済まないね……僕だって憂鬱なんだ。 いくらでも恨んでくれて構わないから、もう少し付き合ってもらうよ」
人間ごとヤミーを連れて帰る訳にはいかないので、セルメダルにするまでは辛抱してもらっているのであり、オーズの正体を知ったことに加え、雄也に辛い思いをさせている事実に、カザリは心苦しい思いをしているのだ。
「それにしても、オーズが子供だったのは驚いたな……次出会ったら、何故戦っているのか。 その理由を聞かないとね……」
もし、誰かに戦うことを強いられているとしたら……
そう考えたカザリは、まずは相手の話を聞くことを優先する。
こうして各々の思惑は交錯し合い、今日という日は終わっていく……
◇◇◇
新しい1日が始まり、美由希は学校に雄也が来ていないか確かめていた。
残念ながら、本人には会えなかったものの、色々な生徒達から話しを聞くことにより、雄也と昨日襲われた女子生徒の関係が分かった。
女子生徒とその友人2人は、雄也が美由希に告白していた現場を覗き、交際を断られたことでからかったという。
この時、美由希は映司からの話しを思い出した。
猫系ヤミーは宿主に、その宿主が持っている欲望を増幅させ、半ば強制的にその欲望を満たさせると……
と言うことはつまり、元はと言えば自分に原因が有るのでは無いのか……
それは違うのだが、映司が傷付く姿を目の当たりにした為に、美由希は自責の念に囚われてしまうのであった。
それ故に、3人組の女子生徒の襲われてない最後の1人を見つけ出し、雄也に手を上げさせる前に何とかしようとするが、運悪くその女子生徒は学校では見つけられず、映司にメールで雄也の目的となる欲望を教えるのが精一杯だった。
◇◇◇
学校を終えた映司は現在、アンナと恭也に誘われて翠屋におり、なのはは勿論、アリサとすずかにユーノや陽輝も一緒。
呼ばれた理由は、アンナは戦いの時に傍に居られなかった事へのお詫び、恭也は庇ってくれた事へのお礼であり、椅子に座った映司の目の前のテーブルには、ケーキセットとヨーグルトパフェが置かれている。
「昨日はご苦労だったな映司。 私の奢りだから遠慮無く食べてくれ」
「俺からも受け取ってくれ。 こんな形でしか借りを返せないがな……」
「とんでもないですよ。 お2人のお気持ちは凄く嬉しいです。 ありがたく頂きます」
気心の知れた人からの好意というのは、遠慮すると相手に対して失礼になってしまう。
それが何となく分かっていた映司は、2人の気持ちを噛みしめつつ、味わって頂くのだ。
なのは達もそれぞれが頼んだデザートの味を楽しんでいたのだが、その途中アリサから話題が出てきた。
「でも、ゆっくりしてて良いのかしら? 飛島さんって人を早く見つけないとまずいんじゃ……」
「とは言え、手掛かりも無く闇雲に捜しても、無駄足を踏むだけだ。 少なくともヤミーの気配は今のところは無い。 それまでは英気を養え」
アンナはカザリが雄也と一緒に行動していると踏んで、下手に動いても意味は無いと分かっていた。
実際に雄也が自宅には居ないのは、彼の両親に所在を聞いてみた時に確認済み。
アンナがヤミーの気配を感じるまでは、迂闊に動かない方が得策なのだ。
ついでに言うと、今日の翠屋のコスプレは執事服。
女も男も例外無く執事服であり、メイド喫茶ならぬ、バトラー喫茶である。
そんな翠屋に新しいお客様がやってきた。
「いらっしゃいませ」
「わ~! ここ良い匂いがする~!」
入ってきたのは長身の、整った顔立ちをした黒い短髪に、恭也と変わらない年頃の男性。
見た目の割にはどこか幼い印象を受けるが、応対をした桃子からすれば、その人の個性として受け入れられるので、別に気にするようなものでは無い。
桃子によって案内された席は、映司と陽輝が使っているテーブルであった。
「映司君、陽輝君。 今は他の席が空いていないから相席をお願いして良いかしら?」
「勿論ですよ」
「僕達と一緒で良ければどうぞ」
「ありがとうね」
「俺からもありがとう~」
コスプレを導入してからは客の入りも多くなり、相席をお願いする機会が増えてしまったのだ。
と言っても、この翠屋の客である以上、映司達に断る理由など存在しない。
快く要望を受け入れてもらい、桃子も男性も笑顔だ。
その後桃子にメニューを手渡されたのだが、男性は難しい顔をしてメニューと睨めっこしている。
それを気になった陽輝が質問してきた。
「どうかしたんですか?」
「俺、字読めないんだった……」
『えっ?』
最初は選ぶのに悩んでいると思っていたのだが、予想を妙な意味で裏切られ、映司達は素っ頓狂な声を出してしまった。
そこで、困っているのを見て忍びない気持ちになった映司が、どんな物を食べたいのかを聞き、それを桃子に伝える形で解決となった。
頼んだのはサンドイッチとケーキセットに、士郎自慢のコーヒー。
その際、男性の友達へのお土産として、翠屋特製のシュークリームのテイクアウトが決まった。
ただ……男性は頼んだ物を美味しそうに食べ終え、テイクアウトのシュークリームを受け取る場面で、問題が発生してしまった。
「お会計をお願いします」
「はーい」
飲食店で必ず有るもの、それがお会計である。
男性は最初ポケットの中に手を入れ、財布を取り出そうとするが……
「あ……ごめんなさい……お財布落としちゃった……」
『えっ?』
またしても間の抜けた声を出してしまう一同。
これは困った……お代が払われないのもそうだが、友達にお土産をあげられないと言って、男性が泣き出してしまったからだ。
しかも嘘泣きでは無くマジ泣き。
これでは変に強く出る気も起きない。
しかし、この世に神は居なくても、それっぽい人ならここに居る。
「泣かなくても大丈夫ですよ。 僕が払いますから」
「え、本当に良いの映司君?」
「嘘ついたって仕方無いじゃないですか」
そう言って映司は男性のお代を全額支払った。
無論、立て替えだなんてしみったれたことはしない。
つまり後で返して貰わなくても良いのだ。
映司の優しさに心打たれた男性は、輝かんばかりの笑顔でお礼を言ってきた。
「ありがとう! このお礼はきっと返すからね!」
「気にしないで良いんですよ。 それよりも、早くお友達にお土産を持っていってあげて下さい」
「うん! 本当にありがとう~!」
そうして男性は翠屋を出て行った。
そして、満足そうな顔をしている映司に、呆れたような声でアリサが話しかけてきた。
「アンタねえ……あんな事言っちゃって。 騙されたって知らないわよ」
「そんな人には見えなかったと思うよ?」
「でも、それで映司君にお返しが来る訳じゃ無いんだよ?」
すずかの心配そうな忠告を聞いても、それでも構わないと映司は言う。
「僕が勝手にそうしたくてやった事なんだから。 何も返ってこなくても良い……あの人の助けになれたなら、それで良いんだよ」
その言葉にアリサもすずかも溜め息をつくが、それも直ぐに苦笑に変わり、優しい眼差しで映司を見つめてきた。
こういう時は妙に頑固になり、損得勘定抜きで人助けが出来る……そんな映司だからこそ、自分達はこの少年が好きなのだ……それをアリサは勿論、すずかもなのはも再認識する。
一連の出来事を見ていた士郎達に、翠屋の客達も映司を暖かい目で見つめている中、アンナだけは思案顔だった。
(映司はいつも通りだが、あの男……どこかで会ったような……)
いくら思い出そうとしても、アンナの記憶には無い。
だが、会ったことなら有るのだ。
何故なら……
◇◇◇
「あの子良い子だったな~」
さっきの男性はご機嫌な足取りで道を歩いている。
その内、大きな花壇が有る場所にたどり着き、彼の頭の中に一つの思い付きが浮かんだ。
「そうだ! プレシア達にお花をあげよう!」
そう言って男性は物陰に隠れて、1枚のセルメダルを取り出し、自分の額に向けてそれを投げた。
するとどうだろう、男性の額にメダルの投入口が現れ、セルメダルはそこに入り込み、男性の体が異形に変わり、その体からは、サイの頭に屈強な肉体を銀色の堅牢な装甲に包み、左手には戦車砲のような砲身が1門ついているヤミー、サイヤミーが出現した。
既にお気付きだろうが、男性の正体はガメル。
何故人間の姿でいるのかというと、自分達グリードの格好では堂々と外も歩けないのをウヴァ達の話しで理解した、ガメル流の解決法と言うわけだ。
街中で見つけた適当な人間の姿を模倣し、それによって気兼ね無く人間社会を楽しめるし、全くの偶然だが、人間の姿の方が強い力は出せなくても、セルメダルの消費量が少なく済み、日常生活を送るのに適しているのにガメルは気付いた。
そしてガメルは配下のサイヤミーに命令をする。
「お花をいっぱい集めて、プレシア達の所に送って来いよ。 俺は先に帰ってるから」
「わ……かった……!」
その後ガメルは人間の姿になって立ち去り、残されたサイヤミーは花壇に向かって左手の砲から銀色の波動を撃った。
撃たれた花は、最初はなんとも無かったのだが、次第に根っこごと地面から離れていき、宙に浮きながらサイヤミーの腕の中に飛び込んできた。
「行け……! プレシア達のもとに……!」
そう言ったら花は何処かに消えてしまった。
これがサイヤミーの目的通りならば、おそらくはプレシア達の所に瞬間移動させたのだろう。
ガメルの作り出すヤミーはウヴァ達のそれと異なり、ガメル自身の欲望を叶える為に生み出される。
その上、グリードであるガメルの肉体を媒介にするので、白ヤミーの段階をすっ飛ばし、最初から成体として出現する、今までの事例と比べると極めて異例なヤミーなのだ。
「まだだ……まだ足りない。 もっともっとだっ!!」
この程度では満たされないと言わんばかりに、次の獲物を探し始めるサイヤミー。
こいつだけでも大事だが、現実は更に過酷だった……
◇◇◇
「早く!! 早く逃げないと!!」
「待ってよ高町! アンタの言った事が正しいなら、アタシ等のせいで飛島があんな風になっちゃったってこと!?」
「アァァァァァァァァ!!」
奇しくもサイヤミーが暴れる数分前、美由希は雄也をからかった3人組の最後の1人を見つけ出し、彼女達が雄也に襲われる理由を説明して、一度翠屋に来て貰おうとするが、運悪く雄也に発見され、逃げている途中なのだ。
美由希自身は剣術の心得が有るとは言え、武器が無ければヤミーに対抗する事は不可能の上、下手に反撃すれば雄也に怪我を負わせてしまう。
自分ではどうすることも出来ない状況に泣きたくなりつつも、美由希は彼女が知る唯一無二の希望、仮面ライダーオーズである映司に電話を掛ける。
「お願い映司君、助けて……!」
◇◇◇
「ん、ヤミーだ!」
「何!?」
ヤミーの気配を感じ、声を上げるアンナに反応する恭也。
その直後、映司のスマートフォンに美由希から電話が掛かってきた。
「映司君聞こえる!? 今、飛島君が狙っている子と一緒にいるんだけど、その飛島君に追われているの!! お願い助けて!!」
「何ですって!? 今行きます!!」
美由希の身に危険が及んでいることを知らせるが、アンナは難しい顔で言い出した。
「ちょっと待て! 私が感じている気配は2つ、そのどちらかがカザリのヤミーだ!」
「どっちがどっちなのか分かりますか!?」
「済まんーー私に分かるのは位置ぐらいで、区別はつかんのだ。 しかも、2体のヤミーはそれぞれ距離が離れ、この翠屋を挟み込むような位置に居る!」
最悪だ……これではどちらか一方に集中していたら、被害は増すわ美由希は助けられないわな事になりかねない。
事件を解決する為、映司はなのはと陽輝に念話で助力を求める。
「《2人とも力を貸して! 僕だけじゃ無理そうだよ!》」
「《任せて映司君! お姉ちゃんも街の人達も助けないとね!》」
「《喜んで申し受けるが、まずは場所を変えよう。 ここじゃ魔法も使えないからね》」
心強い返事を貰い、戦う準備をする為と言って、映司はユーノ諸共一度高町家の本宅にお邪魔させて貰い、それを手伝うと言ってなのはと陽輝がついて行った。
アンナは仕事中であるため、士郎に事情を話して外出許可を頂き、彼等の後を追う。
人目につかないようなのはの部屋に移動し、作戦会議をする一行だが、最初にアンナが切り出した。
「問題は、映司が戦うのはカザリのヤミーでなければいけない所だな」
「取り憑かれているからですか? でも、非殺傷設定にしておけば私と陽輝君でも……」
「その非殺傷設定が今回は足枷になる。 宿主がヤミーに取り込まれた場合、宿主の体を覆っているヤミーを剥がすには、傷付けなければいけないという前提条件が有る。 なのはと陽輝の攻撃は、非殺傷設定を解除したら宿主ごとヤミーを消してしまいかねん」
その言葉を聞き、なのは達は押し黙ってしまう。
非殺傷設定というのは呼んで字の如く、生き物を傷付けないようにする為の、一種の安全装置。
セルメダルの集合体とは言っても、地球上に存在する生物を元に誕生したヤミー達も生き物として扱われる。
故に、いくら攻撃しても傷を負わせられない非殺傷設定では、取り込まれた時には役に立たない。
オマケにアンナの指摘通り、なのは達の主な攻撃方法は、斬撃や光線に弓の射撃。
うん……下手したら雄也死んじゃうね。
徒手空拳で戦える映司以外、雄也を助けられる者は居ない。
だからこそ、映司は雄也を宿主とするヒョウヤミーの方に向かわなければ駄目だ。
そのためにはアンナが感じた2つの反応の内、どちらがヒョウヤミーなのか見極めなければいけない。
ゆっくり考えている時間は無いが、外して二度手間を喰ってしまうと、映司の負担が大きくなる。
それを聞いたなのはは映司の力になる為、新しく覚えた魔法を使うことにした。
「どうするつもりなの? なのはちゃん」
「見ててね。 変身!!」
映司に応えつつ、なのはは防護服であるバリアジャケットを身に纏い、アンナに訪ねてきた。
「アンナさん、ヤミーはどっちの方角に居ますか?」
「あっちと、そっちだ!」
問われたアンナは指差しで教え、それを聞いた後に意識を集中させると、レイジングハートに桜色の魔力光が溜まり、なのははそれを教えて貰った方向に飛ばした。
「見極めてみせる、歪んだ欲望から成る者を……!」
なのはが使っているのは、探索魔法のエリアサーチ。
さっき飛んでいった光達は、魔力で生成されたサーチャーと呼ばれる端末であり、それらの端末は自分の周囲を見渡し、その視覚情報を術者のなのはに送る事が出来る。
まあ、便利な空飛ぶ監視カメラのような物だ。
飛ばされて1分もしない内に、なのははどっちがどういうヤミーなのかを突き止め、指で指し示しながら映司達に教える。
「こっちに居るのはサイみたいなヤミー、そっちはお姉ちゃん達が男の人に追われてる!」
これを聞いてアンナの方針は決まった。
「良し! なのはと陽輝は2人でサイのヤミーを倒せ! 映司は私と一緒に美由希の所に急ぐぞ!」
「俺達は2人で良いんですか?」
陽輝からの質問に、アンナは手早く答える。
「サイのヤミーはガメルというグリードが作ったヤミーだ。 奴の作るヤミーは動きは鈍重だが、その分桁外れな攻撃力と防御力を持つ強敵。 それにお前達はヤミーとの戦いは不慣れだろう? 今後のヤミー戦の為にも、非殺傷設定では無い戦いを多く経験しておけ」
そう言われたら反対する理由は無い。
作戦も決まり、目的地に急ぐ為、映司は先に変身することにした。
「変身!!」
「タカ!! トラ!! バッタ!!」
「タ・ト・バ!! タトバ、タ・ト・バ!!」
変身も完了し、映司は久し振りに妖精フォームとなったアンナを肩に乗せながら部屋の窓を開け、なのは達の方を振り返る。
「じゃあ美由希さん達は僕達に任せて、なのはちゃんも陽輝君も気をつけてね」
「気をつけるのはお互い様だろう映司君?」
「お姉ちゃんの事、お願いね映司君!」
「うん!!」
なのは達からの激励を受け映司は窓から外に飛び出し、家屋の屋根に飛び移りながら道を急いだ。
「私達も急ごう!」
「御意!」
赤い外套を纏った陽輝がユーノを自分の肩に乗せ、なのは達2人もサイヤミーのもとへ急行していった。
◇◇◇
美由希は女子生徒の手を引っ張りながら、必死に逃げる。
必ず映司が来てくれると信じて……
しかし、その希望を打ち砕くかのように、災難は降りかかってくるのだ。
「ちょっと待ちなよ」
「あっ!?」
「また変なのが出た!?」
猫の王にして烈風を司りし者ーーカザリが行く手を遮ってきた。
「諦めてくれないかなあ。 あとちょっとで成長しきるんだから」
「それって、彼女を傷付けさせるって事? させないんだから!!」
女子生徒を守る為、美由希は果敢に立ち向かうが……
「ハアッ!」
「ふう……」
カザリは気怠い感じで美由希の右ストレートを左に軽く動いてかわし、すれ違いざまに右手を掴んで上に上げさせ、左手は彼女の腰の後ろに回させて拘束する。
その無駄の無い電光石火の如き早業に、美由希は知覚することすらできなかった。
「くっ、離しなさい!」
「大人しくしてなさいってば」
「ああっ!?」
美由希はカザリを振り解こうともがくが、より強くなる拘束に苦痛の声を上げてしまう。
そうしている内に雄也が追い付き、女子生徒に迫る。
「や、やめて……からかって悪かったから……いくらでも謝るから許して……」
「ふー、ふー、オアァァァァァァ!!」
「あうっ!?」
涙ながらの謝罪も受け入れられず、女子生徒は雄也に思い切り頭を殴られ、気絶してしまう。
それを見ることしか出来なかった美由希は悔しさに歯噛みする。
そこで映司が飛び込んできた。
「遅かった……!」
「カザリの邪魔立てが入ったのか……」
「映司君!」
「来たねオーズ。 それと久し振りアンナ」
美由希は解放されるが、その場に力無く座り込んでしまい、映司がすぐさま駆け寄る。
カザリはそれを見届けること無く雄也のもとに向かってジャンプし、着地した後、未だ妖精フォームのアンナと視線を交わす。
「随分小さくなってるね。
「放っとけ。 他人の昔の肩書きなんぞどうでも良かろう。 お前こそ相変わらず悪趣味なヤミーだなカザリ殿?」
初めて聞いたアンナの異名は気になるが、映司はまず美由希の容態を確かめるのを優先した。
「美由希さん、怪我は有りませんか?」
「映司君……私のせいだったんだね……」
いきなり自虐的な言葉に映司は首を傾げるが、美由希の独白は止まらない。
「私が告白を断ったから、でも私ーーそういうのまだ分からなかったの……。 自分がどういう人を好きなのか分からなくて、飛島君は良い人だけど、恋人になりたいとかは思えなかったの……。 でもそのせいで私は飛島君を苦しめて、あの子達を酷い目に遭わさせて、映司君に迷惑掛けて、全部私のせいだよ……」
「…………」
独白の途中から大粒の涙をこぼし、美由希は後悔と自責の念に苛まれ、自分自身を苦しめる。
今の美由希に理屈で飾った言葉は届かない。
だからこそ、映司はーー
「もういいんですよ」
「……えっ……?」
ーー美由希の頬を伝う涙を指で拭いつつ、自分が今伝えられる精一杯の言葉を優しく紡ぐ。
「美由希さんのした事も、飛島さんの欲望も、後は僕に全部任せて下さい」
「映司君……?」
仮面で見えないが、この時映司は自分に向かって優しく微笑んでくれている。
確証は無いけれど、そういう確信を美由希は持てた。
そして映司は静かに立ち上がり、アンナの横にまで歩み止まり、カザリの横に居る雄也を見据える。
すると雄也は泣きながらも、映司に向かって助けを求めてくる。
「た……すけて……もう、自分を止められないんだ。 お願い……助けて……」
その直後、雄也は完全に成長しきったヒョウヤミーに飲み込まれてしまった。
それを見た映司はカザリに対し、静かな怒りを込めて、自分の想いを投げ掛ける。
「貴方の事は憎くは無いし、セルメダルを集めるのは仕方無いというのは分かってますけど、美由希さんを泣かせ、飛島さんを苦しめたのは許しません」
「最初から許される事をしてるとは思ってないから良いけどさ、僕からも質問良い?」
映司は無言で頷き、了承の意を示す。
「君ってまだ子供なんだよね? なんのために戦っているのさ。 そうするとお金でも貰えるの? それとも、隣の赤い髪のお姉さんに脅迫されてるのかな?」
その問いに返す言葉は……
「僕が飛島さんを助けるのも、美由希さんを守る為に戦うのも、見返りが欲しい訳でも無ければ誰かに言われたからでも無い。 全部僕がそうしたいからですよ!」
「「!!」」
その迷い無き言葉に、美由希もカザリも目を見開く。
映司が戦うのは自分の為、どんな大層な理屈を並べても、結局は自分がそうしたいと願う欲望に他ならないのだ。
それが分かっていたアンナは、不敵な笑顔で3枚のコアメダルを取り出し、大きな声で言い放ちながら、そのメダルを投げ渡す。
「見たかこの世界最高の欲張りを!! 映司! そのテンションのまま思い切り行け!!」
「オーケー!!」
受け取ったのは緑と赤と青のコアメダル。
それを確認した映司は流れるような動作でコアメダルを交換し、勢い良く読み取る。
「クワガタ!! クジャク!! タコ!!」
頭と胴体は見たこと有るが、下半身は脚全体に吸盤の意匠が備わる、水色のタコレッグ。
オーズの亜種形態の1つ、ガタジャタである。
「行くぞ!!」
映司にとって、これは先日の負け戦のリベンジでもあり、その気合いの入りようは並みじゃ無い。
かくして戦いのゴングは音無くとも鳴らされたのであった。
◇◇◇
一方その頃、現場に着いたなのは達は花屋を襲っていたサイヤミーと交戦中である。
周りに被害を及ばさないように、ユーノが封時結界を張ってくれたので、戦う事自体に問題は無かったのだが、苦戦は免れなかった。
「チィッ! なんて頑丈な体なんだ!!」
「それにっ! いくら動きは遅くても、こんなに撃たれたら大技が使えないよ~!!」
陽輝の双剣は鋼よりも頑強な装甲に歯も立たず、接近戦はパワーで圧倒されてしまい、それを援護しようとなのはが砲撃を行うものの、並みの砲撃では撥水コーティングを施された車のフロントガラスに降る雨のように、装甲に弾かれてしまう。
更に左手からは機関砲を連想させる重力弾の連射が見舞われ、なのはは魔力を上手くチャージ出来なかった。
オマケに非殺傷設定は解除されているので、お互いの立ち位置を気をつけないと同士討ちも有り得る。
まあどちらかと言うと、主になのはからの流れ弾で、陽輝を殺傷する可能性の確率の方が高いのだが……
どちらにせよこのままではジリ貧。
だからなのはは思い切って、アンナに念話で助言を求めると、すぐにその答えが返ってきた。
「《アンナさん! ガメルさんのヤミーに弱点って無いの!?》」
「《済まん言い忘れていた。 ガメル自身もそうなんだが、アイツの作るヤミーは強い光に弱い。 目眩ましで隙を作って、そこを叩け!》」
「《分かりました! ありがとうございます!》」
なのははアンナから教えて貰った弱点を陽輝にも念話で伝えると、彼からは自信に溢れた返事が来た。
「それならお任せあれ! トレース・オン!」
陽輝が一言の詠唱を終えると、その手には手榴弾が握られており、なのはとユーノに念話で目を塞いでおくように注意を呼び掛け、自分も目を庇いながら、それをサイヤミーに向かって投げつける。
「カメラに向かってハイチーズ!」
投げられた手榴弾はサイヤミーの目前で破裂し、眩い閃光がサイヤミーの目を灼く。
「があぁぁぁぁぁぁぁぁ!!? 目がぁぁぁぁぁぁ!!」
使用したのは閃光手榴弾、なのはの動きを阻害しないよう音の出ないタイプだ。
一時的に失明状態となったサイヤミーが苦しみ、勝機を感じた陽輝はなのはに念話で指示を送る。
「《俺が奴を空中に上げる! そこを一気に叩くぞ!!》」
「《うん!! お願い!!》」
「トレース・オン!」
陽輝は双剣では無く、子供の体には不釣り合いな、自分の身長程のメイスを取り出し、サイヤミーの懐に入り、姿勢を低くして力を溜め、下から上に大きく振り上げる。
「ソオォォォォラッッ!!」
「おおおぉぉぉぉぉぉ!?」
天高く打ち上げられたサイヤミーに止めを刺すべく、なのはは魔力をチャージし、陽輝は弓と血のように赤い槍を取り出し、それらをつがえて獲物に狙いを定める。
「ディバイィィィィィィンーー」
「今回は趣向を凝らす!」
お互いに必殺の一撃を放つ準備は整い、この戦いに幕が下ろされる時が来た。
「バスタァァァァァァァァ!!」
「
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
桜色の高出力砲撃と超音速で飛来する魔槍を受け、サイヤミーは爆散した。
その直後、厳しい戦いが終わり、一息つくなのはの頭に1枚のセルメダルが落ちてきた。
「にゃっ!? ……何これ? いつもは沢山セルメダルが出てくるのに」
「俺達にセルメダルは必要じゃ無いが、あんだけ苦労してたったの1枚じゃ割に合わないな」
「なんか、凄くガッカリな気分だね……」
ガメルのヤミー……重量系ヤミーのもう一つの特徴。
主であるガメルの欲望を満たす為に生み出された重量系ヤミーは、最初から大量のセルメダルを持っているのだが、そのセルメダルを消費して力を行使するので、倒すのに時間が掛かれば掛かる程、倒した者が獲得出来るセルメダルは少なくなってしまう。
逆に欲望を満たして生成されたセルメダルは、ガメルの体にテレポートするように供給されるので、倒された損失が最も少ないというグリードにとっての利点が有る。
折角頑張ったのに、得られた成果が散々だったことになのは達は肩を落としてしまうが、気を取り直して映司のもとに向かうのであった。
◇◇◇
なのはがアンナに助言を貰っていた直後、映司もなのは達に負けじと奮闘していた。
「フッ! ンッ! ホアアッ!!」
「中々やりにくいなあ!」
「オオオッ!」
先日と同じ1対2という不利な状況ではあるが、映司はガタジャタの力を大いに振るい、カザリとヒョウヤミーを相手に互角以上の戦闘を演じている。
クワガタヘッドがもたらす全方位への視覚は、こういう1対多数の戦いに於いては有効な武器となり、ヒョウヤミーからの光弾はタジャスピナーで受け止めつつも火炎弾の牽制を放ち、隙を突こうと後ろからカザリが仕掛けてきた時は、タコレッグの変形による8本の脚が迎え撃つ。
美由希が見ているので魔法は使えないが、タコレッグはそれ以上の働きが出来た。
「それっ! ハッ! テヤアアアッ!!」
「この! ちょこまかと!」
タコ・コアの力を解放し、下半身を変形させた8本脚のタコレッグから繰り出される変幻自在なアクションはカザリ達を翻弄していく。
ジャンプしてからの8本分の旋風脚に、伸縮性を利用した死角からの蹴り。
相手の脚を絡め捕っての投げ技や多数の脚による不規則な動きがカザリ達を追い詰める。
ヒョウヤミー内部の雄也に怪我させないようにする為、メダジャリバーは使えないが、それを補って余りある、獅子奮迅の活躍を見せ付ける映司。
(どうなってんのあの子!? 昨日と動きが別物だよ!?)
先日の戦いでは考えられなかった映司の動きに、カザリは内心狼狽してしまう。
当の映司自身、自分が何故これ程強く戦えるのかは分からなかったが、一つだけ分かっているのは、雄也を救いたいーー何よりも美由希を守りたいと想うと、映司の心は熱くなり、体の中からどんどん力が湧いてくるのを感じているのだ。
故に……何が起ころうとも、今の映司は誰にも負けない。
そんな映司の命懸けの戦いに、美由希は目を凝らして見守る。
「映司君……負けないで……!」
(そろそろ決めるか……)
カザリ達の動きが鈍くなっているのを見抜いたアンナは、映司に念話を繋ぐ。
「《映司、其奴等を痺れさせろ。 その後私がカザリの動きを抑えている間に飛島を助け出せ!》」
「《了解!》」
指示を受け取った映司はクワガタヘッドのもう一つの能力、クワガタの大顎を模したクワガタホーンからウヴァと同様の緑色の電撃をカザリ達に浴びせる。
「ハアァァァァァァ!!」
「ぐああっ!?」
「ぐううううっ!?」
高圧電流を体に流され、怯んでしまったカザリをアンナのクリムゾン・グレイプニルが縛り上げる。
「しまった!」
「急げ映司!!
「分かってます!!」
映司はすかさずタコレッグを8本脚に変形させ、ヒョウヤミーに向かう。
「ウゥゥゥゥリャリャリャリャリャリャリャリャ!!」
「がが!? ががぐががが!?」
タコレッグを素早く動かし、ヒョウヤミーの体を構成するセルメダルを銀剥がしのように削っていく。
すると見る見るうちにセルメダルがこぼれ落ち、ヒョウヤミーの体から雄也の腕が出てきたのを見つけ、映司はその手を掴みながら更に激しくタコレッグで削る。
「ダアアァァァァアァァァァァァ!!!」
「うぐぐぐ、ごあああっっ!!?」
ヒョウヤミーが弾け飛ぶと同時に、遂に雄也と分離させることに成功した。
気を失っている雄也を一度地面に寝かせた後、ヒョウヤミーに今までのお返しをすべく、映司は3枚のコアメダルを読み取る。
「スキャニングチャージ!!」
「ハアァァァァ……ヤアッ!!」
読み取った後、駆け寄る映司はヒョウヤミーの手前で逆立ちになり、クワガタホーンからの電流が変形したタコレッグに伝わり、それを竜巻のような勢いで高速回転させ、ヒョウヤミーにぶつける。
「オーズ! ガタジャタハリケェェェェェェェェン!!」
「おおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
ヒョウヤミーを撃破した後、休む間も無く映司はカザリに向き直り、アンナが止めを急かす。
「映司! サッサと終わらせろ!!」
「ちょっーーヒーローのくせにズルくない!?」
「ズルくありません!!」
微妙に的を得ているカザリのツッコミを一蹴しつつ、映司は所持している6枚のコアメダルをタジャスピナーに装填し、ギガスキャンを発動させる。
「タカ!! クジャク!! クワガタ!! バッタ!! トラ!! タコ!! ギン!! ギガスキャン!!」
タジャスピナーの紋章部分ーータジャドルフェイスに、6枚のコアメダルのエネルギーが六芒星の配置で浮かび上がり、その真ん中のセルメダルのエネルギーを中心となって回転していて、映司はそれをカザリ目掛けて射出した。
「ヘキサブレイズ!! シュゥゥゥゥゥゥトッ!!」
「うああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
映司の渾身の一撃が炸裂し、カザリは何処かへ吹き飛ばされていった。
それを見届けたアンナは戦いが終わったのを確認した後、術の使用によって消耗したセルメダルを補充しようとするが、美由希に呼ばれたので、彼女の方に行った。
「私の方に飛んできたから捕ったんだけど、これって……」
「それはカザリのコアメダル、しかもチーターか。 これは思わぬ収穫だな」
予想外の収入に喜び、アンナはホクホク顔でヒョウヤミーから散らばったセルメダルを回収していく。
その後美由希は雄也を介抱している映司の近くに歩み寄り、彼等の安否を気遣う。
「映司君怪我は無い? 飛島君の方もどう?」
「僕は大丈夫です。 飛島さんも怪我は無さそうですけど、疲れてるように見えるので救急車を呼びましょう。 あっちのお姉さんも一緒に」
映司はそう言った後に変身を解除し、懐からスマートフォンを取り出して電話を掛けようとするが、操作する前に美由希の方に顔を向け、彼女に語り掛ける。
「美由希さん。 これでやっと安心出来ますね」
微笑みと共に伝わる、美由希を思いやる映司の優しい声に……
「……うん!!」
一瞬呆けてしまうが、それもあっという間に、涙を目の端に浮かばせた、花咲くような笑顔に変わった。
そして救急車がやってくる間になのは達が現れ、お互いに仕事をやり遂げたことを念話で称え合い、美由希は雄也達の付き添いを申し出たので、そこでいったん彼女と別れ、映司達は一足先に翠屋に戻っていった。
戻った際に、何でなのは達も映司と一緒に外から来るのか士郎に問いただされるが、新しく手に入れたチーター・コアを見せ、アンナが語る映司の武勇によって、力業で誤魔化しておいた。
◇◇◇
その後の事だが、美由希が雄也達のお見舞いに行った時に聞いた話しによると、雄也は怪我を負わせてしまった3人の女子生徒に土下座込みで謝ったが、元はと言えば自分達の自業自得であるとして、女子生徒達は雄也の事を許してくれたが、それでは雄也本人の気が済まないと言って、何時間にも及ぶ話し合いの結果、彼女達に1発ずつ痛いビンタを貰うことで、ようやく話しは丸く収まった。
また、その時の雄也の真っ直ぐな男気に惚れた女子生徒達は、チャラチャラした事からは卒業し、美由希とも友人になり、今度は想い人を巡って争う恋する女達に変わったそうな…………
金髪のツインテールのあの子の前にちょっと小話を入れます。
「まだなの……?」
ホンッットゴメン!!
それが終わったら必ず出て貰いますから泣かないで!!