仮面ライダーリリカルオーズ 世界を救う欲望   作:シラカンバⅡ

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原作で不明な部分は独自設定で対応しようと思います。

カウント・ザ・メダルズ!!
今、オーズが使えるメダルは……

タカ×2
クジャク×1
コンドル×1

クワガタ×1
カマキリ×1
バッタ×1

トラ×2
チーター×1

サイ×1
ゴリラ×1

ウナギ×1
タコ×1


第12話 勉強と図書館と車椅子の少女

「さてと、次はどんな本にしようかな~」

 

 色々な書籍が詰まった本棚と本棚の間を進みながら、映司は間延びした声で本を物色中である。

 今映司がいるのは風芽丘図書館。 彼は現在ここで武道関連の本を読んで勉強している。

 魔法の修行も一応行っているのだが、そちらに関してはイマイチ進展していない。 魔法についてはユーノが教授してくれているものの、どうやっても魔力を撃ち出すことが出来ないのだ。

 何故なのか? ユーノの推測によると、映司には魔力を遠くに放つ素質が欠けていると言った。

 

 実際、スカイフィールドは自分の体の周囲にしか展開出来ない上に、他に使える魔法は身体強化や、手や脚を魔力でコーティングして魔力弾を弾くくらいだ。

 こうなると遠距離戦の弱点を改善するのはかなり難しい。 以前ジュエルマンティスを倒した砲撃、オーズブラスターはなんとか使えるようになり、その威力は絶大なのだが、1発に要する魔力消費は膨大であり、フルパワーで3発撃ってしまえば映司の魔力は空になってしまうのだ。

 

 そもそも映司の魔力量はなのはと比べると大分劣っており、彼女の魔力量が100とするなら、映司の魔力量は30から40ぐらいだそうだ。

 オーズのメダルチェンジシステムのおかげで豊富な戦術をとれるが、どっちにしてもなのは程の魔導師しての上達は望み薄である。

 なので映司は魔法をあくまでも補助として使い、体術を中心に鍛えることにした。

 

 その一環として本だけじゃなく、漫画やアニメにゲームの技を見て、それらを戦いに応用しようとしているのだ。

 強くなる為の道は険しく、いくら知識を学んでも実戦の役に立てるとは限らないが、それでもなのは達を守ると決めた以上泣き言は言っていられない。

 千里の道も1歩からの精神で映司は努力するのだ。

 

「う~ん、もうちょい……」

「ん?」

 

 そんな映司の耳に唸るような呻くような声が届き、聞こえてきた方に顔を向けてみると、そこには車椅子に座った少女がおり、本棚から本を抜き取ろうとしている。

 なのはより少し暗めの茶髪をショートヘアでまとめ、前髪の左側を2本の髪留めを並列に一房、更に2本の髪留めを×の字状に交差させてもう一房結わえており、見た目は映司と年齢は変わらなさそうだ。

 

 その足には包帯も巻かれておらず、怪我とは違う理由で歩けないように思える。

 しかし車椅子に座りながらでは目的の本は取りづらく、代わりに映司が取ってあげようするが……

 

「それなら……く~っと、届いたっ!」

 

 上手く上半身をバネのように屈伸させ、指先が本の背表紙の上に引っ掛けるのに成功したのを見て映司はいったん踏みとどまった。

 だが今度は本を引き抜くのに少女は苦労している。

 

「なんやこれ……ギュウギュウに詰まって、取れへん……!」

 

 どうやらあのあたりの本を出し戻ししていた図書館の利用者の誰かが無理に本を差し戻したので、少女が目的としている本が万力で挟まれているような状態になってしまい、抜けにくいようだ。

 それでも少女は体を車椅子に戻す勢いを利用し、力を込めて引き抜こうとする。

 

「関西人舐めたらアカンで、ん~っ!」

 

 少女の頑張りによって本は少しずつ引き抜かれるが、それにつられて両隣の本達も引っ張られ、一緒に落ちようとしている。 だが少女は本を引き抜くのに集中する為に目をつぶっているので、己の身に降りかかろうとしている落石()に気づいていない。

 このままでは危ないと思い、映司は少女のもとに駆け寄る。

 

「この手応え、あとちょっとやな!」

「危ないよっ!」

「えっ?」

 

 映司の注意も間に合わず、本は大量のオマケを引き連れて落ちる。

 それをやっと理解した少女は目を閉じながら体を縮こまらせて痛みに備えるが、いつまで経っても衝撃はやってこないので、恐る恐る閉じていた目を開けると、自分の体を覆うようにしている少年がいるのに気づく。 すると少年が声をかけてきた。

 

「だ、大丈夫? 怪我無かった?」

「い、いや、アンタの方こそ大丈夫なんか?」

 

 少年の正体はもちろん映司なのだが、涙目で痛みに耐えながら自分を気遣う声に、少女はむしろ映司の容態を心配してしまう。

 厚みのあるハードカバーの小説という物は有る意味凶器。 そんな物が頭や体に落ちてきては、流石の映司も泣けるで。

 取り敢えず散らばった本を人に見つかる前に元の場所に戻し、映司と少女は読書用の机に移動することにした。

 

「さっきはホンマにありがとうな。 私は八神(やがみ)はやて。 念の為もう一回聞くけど怪我はしてないんか?」

「本当に大丈夫だよ。 僕も自己紹介するね、僕は白野映司。 映司でいいよ」

「じゃあ、私の事もはやてって呼んでな」

 

 お礼と自己紹介も済ませると、映司ははやての選んだ本について聞いてきた。

 

「はやてちゃんはファンタジーが好きなの?」 

「うん。 なんちゅうかこう、自分を主人公だと思いながら読んでみると、ドキドキして面白いんよ」

「あー、確かにあるよね。 そうすると物語の中に入り込んでいるみたいでさ」

「そやろ」

 

 自分の趣味を理解してくれたからか、はやての笑顔は明るい。 今度は映司の方が聞かれた。

 

「映司君はなんや、世界の格闘技って本を読むんか?」

「まあ、僕の場合は勉強だけどね」

「お? てことは将来の夢は『世界最強の男』やな!」

「んー、それとはちょっと違うかな」

 

 そう言って映司は自分が何故強くなろうとするのかを静かに語り始める。 その時の彼の顔は真剣そのものであり、それを目の当たりにしたはやては思わず息を飲んでしまう。

 

「僕にはね、やりたい事が有るんだよ」

「やりたい事……?」

「そう、ある日突然目の前に苦しんでいる人が現れてね。 僕はその人を助ける為に頑張ってみたんだ。 取り敢えずその場はなんとかなったんだけど、それは始まりに過ぎなかったんだ」

「まだ終わってないんか?」

 

「うん。 今度はは小さな子が『助けて』って言ってきてね。 僕は僕の友達と一緒にその子を助けたんだけど、その子にはやらなきゃいけない大変な事があって、彼はそれを1人で解決しようとしていたんだ。 でも、事態はもう彼1人の手では負えなくなってて、その時もう一度お願いされたんだよ、『一緒に来てほしい』と。 だから僕はその子の力になりたいと思って、その為に強くなろうとしてるんだ……」

「…………」

 

 はやては映司の話しに聞き入っていた。 最初は軽い気持ちで聞いてみただけなのに、自分のスケールを大きく超えていたが故に、言葉を失ってしまったのだ。

 何より、自分とほとんど歳の変わらない少年をここまで駆り立てる『何か』が気になったのだが、ここでふと自分の懐に入れている携帯電話が音も無く振動しているのに気づき、映司に一言断りを入れてから確認すると、少し困り顔になった。

 

「うーん……」

「どうしたのはやてちゃん?」

「今メールが届いてな、私を送り迎えしてくれてる人が急用で来られなくなったんや」

「送り迎え?」

「私の自宅からこの図書館に連れてきてくれた人や。 本当なら帰りもお世話になるはずやったんやけど……」

 

 補足すると、着信音が出なかったのはマナーモードにしていたからであり、メールで知らせた理由は、現在はやての居場所が図書館であるのを知っていたので、通話をして図書館の利用者達に、それ以上にはやてに迷惑をかけない為だ。

 もちろん映司達も周りの人達の読書を邪魔しないよう、声は小さくしている。

 

「お迎え無くても大丈夫なの?」

「ちょっと遠いけどなんとかなるわ。 こう見えても車椅子生活は長いからノープロブレムやで!」

 

 はやてはガッツポーズしながら言うものの、映司は不安を拭えなかった。

 彼女の車椅子は簡易型の電動式で、障害者の腕力や介助者が無くても移動出来るが、このタイプは通常の電動式と比べると走行距離が半分近く短い。 それに段差を越えるには苦労するし、自力ではどうしても進めない場所も有るので、迂回する場合遠回りになってバッテリーが切れる恐れも有る。

 

 だから映司は申し出る。

 

「その、よかったら、僕が送ろうか?」

「えっ?」

 

 

 

 最初は迷惑をかけられないと言って断ろうとするも、一度やると決めた事は何がなんでもやり抜く頑固さを持つ映司の熱意に負け、結局はやては申し出を受け入れた。

 もっとも、はやて自身誰かに助けて貰った方が安全なのは分かっているので、正直な話し嬉しい申し出だったのだ。

 そして初めて操作する車椅子に四苦八苦しつつも、はやてのアドバイスと案内により、映司は見事に彼女を無事に送り届けるという大任を果たした。

 

「おおきにな映司君。 ホンマに助かったわあ」

「どういたしまして、じゃあ僕はこの辺で……」

「あ、ちょっと待って映司君!」

「ん?」

 

 任務完了とみなして映司は立ち去ろうとするが、はやてに呼び止められて振り向くと、彼女はおずおずと尋ねてきた。

 

「あの、よかったらなんやけど、家に上がってくれへん? 私を送ってくれたお礼にお茶くらいは出したいんやけど……」

「迷惑じゃないの?」

「迷惑だなんてとんでもない! むしろ迷惑かけたのは私の方なんやから、なんのおもてなしもせずに帰したら八神はやての名がすたるわ!」

 

 映司は考える。 今日は特に用事も無い上になのは達はそれぞれ都合が有るので、ぶっちゃけ暇である為はやての提案は素直に嬉しいと思っている。

 それ以前にはやてのすがるように震える目が気になり、断るべきではないと直感がささやいてくるので、映司は彼女の家にお邪魔させて貰うことにした。

 

「……うん。 じゃあ、お言葉に甘えようかな」

「ホンマに!?」

「そこまで言われて断ったら白野映司の名が泣くからね」

「あ……真似したなあ映司君!」

 

 そう言いつつもはやては満面の笑みを浮かべており、これで良かったんだと映司は思った。

 

「ほな、映司君は座っててな。 今すぐお茶を用意するから」

「ありがとう」

 

 ご厚意を受けて映司はソファに座って待っており、キッチンでははやてがご機嫌な様子でせっせとお茶とお茶菓子の準備をしていた。

 外から見たときも思ったが、この家は結構大きい上にバリアフリーが行き届いている。

 しかし、こうして家に上がってもはやて以外の住人は見かけないのを映司は不思議がる。

 そう思っている内にトレイにお茶一式を乗せて、はやてがやってきた。

 

 彼女はそれをテーブルに置いて、映司に彼の分のお茶と羊羹を差し出す。

 

「どうぞ」

「頂きます」

 

 映司ははやての淹れてくれたお茶が入った湯のみを両手で持って厳かに飲む。

 真心込めて淹れてくれたおかげで、自販機の物とは旨味が違うように感じられ、映司は自然な笑顔で感想を伝える。

 

「すごく美味しいよ、はやてちゃんが淹れてくれたお茶」

「ホンマ? 嬉しいわ。 お茶のおかわりが欲しかったら遠慮なく言ってな」

 

 そう言ってはやてもお茶を楽しむ。

 用意してくれた羊羹はお茶の適度な渋みとよく合い、羊羹を食べきるまでに映司はお茶を1杯おかわりしたが、自分の淹れたお茶を美味しく飲んでくれているのが嬉しいのか、はやては喜んでお茶のおかわりを淹れてくれた。

 もちろん話しだってしている。

 

 はやては足が不自由なので休学中だが、本来は映司やなのは達と同じく聖祥学園の初等部に所属しており、同学年であるそうだ。

 勉強に関しては複数の家庭教師が教えてくれるそうだが、ここでふと映司は考えてしまう。

 まず送り迎えの事、ああいうのは普通はやての家族がするものであるが、図書館での彼女の言葉を察すると、他人のようなニュアンスが感じられ、あまり親しい間柄とは思えない。

 

 それに事情があるとは言え、足を患っている自分の娘を放っておく両親とはどういうことか。

 あのまま1人で帰らせたら事故に遭う可能性だって有るのに、障害者の送り迎えがおろそかになっている。

 好奇心とは別種の何か……あえて言うなら焦燥感に近いものにかられ、いけない事だと分かっていても、映司ははやてに踏み込んだ質問をしてみた。

 

「ねえ、はやてちゃん。 聞いてもいいかな?」

「ん、聞きたい事ってなんや? まさか私が今着けてる下着の色か~?」

「はやてちゃんのご両親の事だよ」

 

 それを聞いた途端はやての表情は固まり、一瞬瞳が揺らいだ。

 地雷を踏んだ……そう思った映司は罵声を浴びせられる覚悟を決めて、はやての言葉を待つ。

 10秒か、それとも1分経ったのか、極度の緊張と罪悪感に苛まれた映司の時間感覚は麻痺しているが、はやては悲しげな笑みを浮かべながら口を開く。

 

「ふう……そら聞かれるわな」

「ご、ごめんよはやてちゃん。 どうしても気になっちゃったんだよ……」

「そんな泣きそうな顔せんでも怒っとらんよ。 もう慣れとるさかい、むしろ謝るのはこっちや。 普通は私の方から言い出すのが筋やのに、同い年のお客さんが来てくれたのが嬉しゅうて言うタイミング逃してもうた。 この場合親の事を聞くのは当然なんや、映司君は何も悪ない。 だから気にせんといて」

 

 逆ギレされても仕方がないのに、はやては映司を優しく微笑んで許してくれた。

 はやては冷めかけたお茶を飲んで喉に潤いを与えた後、静かに語り出す。

 

「私の両親はな、私が物心つく前に亡くなっているんや。 せやから私はお父さんとお母さんの顔は写真でしか知らんねん」

「じゃあ、お金とかはどうしてるの? それに休学の手続きや、この家のリフォームとかは?」

 

 そう、現代社会を生きるのにお金は必要不可欠であり、休学の手続きは保護者が必要の上に、はやての家は比較的まだ新しい。 最初からバリアフリーの家なんて物は、組み立てる前にそういう設計をしなければ出来ない筈だし、そもそも障害者が居なければバリアフリーは必要ない。

 昔は歩けていたそうなので、もしはやてが物心つく前に彼女の両親がこの家を購入したならば、少なくともその時のはやては健常者なのでバリアフリーはいらない。

 

 歩けなくなってからリフォームしようにも、それに必要な資金の用意や契約の手続きはどうやって果たされたのか。 第一未成年で障害者のはやてが1人暮らしなのもおかしい。

 どこかの施設か病院に居ても不思議ではない。 それに親戚はいないのか?

 映司の疑問は尽きないが、はやては一つずつ答えてくれた。 

  

「親戚なら分かっているのが1人だけ、グレアムおじさんって人や。 外国に居るから会ったことは無いんやけど、その人が私の生活費の援助や休学の手続きをしてくれてる。 それとこの家も私の足が悪くなり始めた時にグレアムおじさん名義でリフォームしてくれたわ。 なんで施設に入れられたりしないのかは私にも分からへん。 その事は誰も不思議に思わないんや。 まるでそれが当たり前みたいな感じで……」

 

 はやての言葉に映司は自分と同じものを感じた。

 ご存じのように映司に両親はいない。 と言うか存在そのものが無いのだ。

 市役所に尋ねても死亡届すらなく、そもそも存在しない者に死亡届なんてある訳がない。

 なのに映司はいつの間にか聖祥学園の入学手続きは済まされ、保護者を要する事柄も問題なく解決している。

 

 お金に関しては映司名義の口座が用意されている上に、そこには法外な預金が有った。

 学校としてのレベルが高い分、学費が高い聖祥学園に通いながら生活出来るのはそういう理由が有ったからだ。

 しかも周りの人達は映司の境遇に同情こそすれ、不審に思ったりはしない。 施設に入れられるか、誰かの養子になってもおかしくないと言うのに。

 

 色々と考えさせられるが、今重要なのははやてだ。 しかし……

 

「まあともかく映司君は気にせんでな。 1人でもなんとかやってけるし、足が動かなくても私は大丈夫やから、気軽に仲良くしてくれると嬉しいわ」

 

 何かを言う前にはやては気丈に振る舞っている。 彼女からすれば、自分の身に降りかかった不幸は全て、『過ぎ去っていくもの』。

 なんの前触れも無く現れては、自分の大事な何かを持ってどこかに行ってしまう。

 悲観しても喚いても、行ってしまったものは帰ってこない。

 それでもはやては真っ直ぐに前を向いていける。

 

 人生は悪い事ばかりじゃないと信じているからだ。

 不幸が来ると言うことは、いつか必ず幸せもやってくることを。

 だって自分には、面識は無くても助けてくれるおじさんがいる。

 出会ったばかりだけど、親切にしてくれる男の子と仲良くなれる。

 そういうことも有るから、はやては優しい子なのだ。

 

 しかし、はやては目の前の少年を甘く見ている。

 彼は『いつか』ではなく『今』はやてに幸せになってもらいたいのだ。

 だからこそ映司は伝える。 己の想いを込めて。

 

「大丈夫だよはやてちゃん!」

「な、何が!?」

 

 突然テーブルの向こう側から身を乗り出して迫ってくるのに困惑するはやてに構わず、映司は続ける。

 

「はやてちゃんには絶対家族が出来るよ! 間違いない、だって僕もそうだったんだから!!」

「え、映司君も……?」

「僕なんて親の顔は知らないし、て言うか最初から居なかった事になっているんだけど、それでも家族が出来た! 友達だっている! こんな僕でも幸せになれるんだから、はやてちゃんだって幸せになれる! 絶対! きっと。 多分……」

 

 前半はともかく最後の辺りの台詞のせいでなんか色々と台無しである。

 最初は絶対と言ったくせになんで段々と自信が無くなるのか。 映司の気迫に圧されていたはやてだが、これには呆れ顔になってしまう。

 

「映司君、そう言う時は最後まで自信を持って言ってほしいんやけど?」

「いや、その……人生何が起こるか分からないし、万が一、絶対有るって言っても何も無かったら、なんて言うかこう……」

 

 はやてはジト目で映司を睨み、睨まれた方は完全に小さくなっている。

 さっきの気合いは異次元の彼方に追いやられてしまったようだ。

 だが、間もなくはやてのジト目も穏やかな苦笑に変わり、彼女からのプレッシャーは消えた。

 

「もうええよ。 映司君は私を励まそうしてくれたんやろう? 嬉しかったで、ホンマおおきに」

 

 途中曲がりくねってしまったが、とりあえずはやてを元気付けることは出来たので映司はホッとする。 その瞬間、もう一つ伝えたい事が有るのを思い出した。

 

「あ、はやてちゃん。 さっきの図書館での話し、なんで強くなるのかについてなんだけど、もう一つ理由が有るんだよ」

「教えてくれるんか? 一体どんななんや?」

 

 映司はそこで軽く深呼吸し、気持ちを改めて告げる。

 

「守りたいんだ。 僕の大切な家族や友達を。 僕に、こんなにも暖かい気持ちをくれる人達を……もちろんはやてちゃんの事もね!」

 

 その迷い無き言葉を聞き、はやては一瞬キョトンとするが……

 

「……さよか」

 

 涙を目の両端に溜めた、慈しみに満ち足りた笑顔を魅せてくれたのだ。

 そう、はやては信じ続けていられる。

 こうして心からの笑顔をくれる人と出会える自分は、きっと幸せになれると……

 

 

 

 あの後お互いのアドレスを交換し、話し込んでいる内にそろそろ夕食の準備に取りかかる時間となったので、映司ははやて宅を出た。

 近い内に、なのは達を紹介することを約束して。

 

「ニャー」

「ん?」

 

 そんな映司の足元に一匹の猫が現れた。 首輪は着けていないので、恐らく野生だろう。

 猫は映司の足に鼻を押し付けて匂いを嗅いでいる。

 映司はその場にしゃがみ込んで、猫の頭を優しく撫でる。

 

「可愛いなー君。 すずかちゃんに見せたら喜びそうだなあ」

「ニャー」

 

 危害を加えないと分かるのか、猫は大人しく撫でられることを喜んでいた。

 

「と、和んでる場合じゃないよ。 じゃあね」

「ニャー」

 

 もう少し癒されたかったが、夕飯が遅れて家族にどやされるのはイヤなので、映司は帰り道を急ぎ、彼が見えなくなるまで猫はその背中を見つめていた。

 

「……間違いなく魔力反応。 ここは管理外世界だけど、居るときは居るものね」

 

 周りに人がいないのを見計らったかのように、猫が言葉を発した。

 

「あれで悪人なら相当な狐だけど……念の為お父様に報告しなきゃ」

 

 運命と言う物は、今を生きる人々のその時々の選択で変わっていく。

 それは穏やかに、かつ唐突に…………

 

 




と言うわけで無印編ははやてにもスポットを当てたいと思います。

「ホンマにええんかな? フェ○トちゃんを差し置いてこんな……」

でも無印編ずっと独りぼっちでいるのはちょっとなーと思ってね。
あえて言うなら、これが私の欲望です。

「さよか、皆さんよろしゅうお願いします」
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