仮面ライダーリリカルオーズ 世界を救う欲望   作:シラカンバⅡ

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また書き方を変えてみました。

いや意味はあるんですよ! ライトノベルなどの紙の小説を見ればわかるように、ページ数の都合から文字はビッシリ記載されていますが、ネット小説なら文字数制限を守ればビッシリ書き込む必要も無く、読者の皆様の目が疲れにくくなるかなあと思ったからです。

とりあえず、不評が出なければこの書き方のままで行きたいと思います。

カウント・ザ・メダルズ!

今、オーズが使えるメダルは……。


タカ×2
クジャク×1
コンドル×1

クワガタ×1
カマキリ×1
バッタ×1

トラ×2
チーター×1

サイ×1
ゴリラ×1

ウナギ×1
タコ×1


第14話 口論と3対3と友からの力

「ねえみんな、一体何が起こっとるの?」

 

 

 映司達が出て行ってすずか達が戸締まりをし終わった直後、この場でただ1人映司の事情を知らなかったはやてから疑問の声が上がった。

 

 

「さっきアンナさんがヤミーって言うてたけど、それって一体なんなん? 何で映司君が行かへんとなのはちゃん達が危ないの?」

 

 

 これには皆どう答えればいいのか頭を悩ませてしまう。

 

 本人達のいない時に勝手に話していいような小事ではないし、映司と付き合いのある彼女達だからこそ思い至る事なのだが、彼の立場になって考えると、どうしても教えられない理由があるのだ。

 

 誰も彼もが貝のように口をつぐむなか、ノエルが重々しくその口を開いた。

 

 

「率直に申し上げますと、私どもの一存ではお答え出来ません。映司様のお許しも無くに言える事ではないのです」

 

「ほな、映司君に直接聞けば教えてもらえますか?」

 

「それでも、教えていただけるかどうかは分かりません。映司様ご自身にとっても、言いづらい事なのです」

 

 

 ノエルの真剣そのものの表情と言葉に、はやてはこれ以上何も聞けなくなってしまう。

 

 本音を言えば、自分1人だけ仲間外れにされているようで寂しい気持ちもするが、しつこく聞いて嫌われたくもないので、この場は諦めるしかなかった。

 

 

「(ねえ恭也、はやてちゃんには内緒にしたままで良いの?)」

 

「(仕方ないだろう。映司達のいない時に話せる事じゃないし、そもそも話したところでどうなる? 信用してもらえなきゃ意味無いだろ)」

 

「(でも……なんだか嫌な予感がするのよ)」

 

「(じゃあ、話した場合に起こりうる最悪の可能性を考えてみたのか? 俺からすれば、何が起こるか分からない事よりも、そっちの方が怖いぞ)」

 

 

 真相を話してもらえず、落ち込む様子を見せるはやてを気の毒に思った忍は小声で恭也に相談するも、彼はそうすべきではないと判断した。

 

 ……果たして、最悪の可能性とは何か……。

 

 忍の不安、恭也の恐れ、はやてと映司を取り巻く環境はいくつもの思惑と運命の悪戯によって、そう遠くない内に、恭也達の議論の結果を見せるのだろう……。

 

 

 

   ◇ ◇ ◇

 

 

 

 突如として現れた黒衣の少女に、映司は目を奪われた。

 

 羽織っている黒いマントは裏が暗い赤に染められ、黒いレオタードに薄めの桃色のミニスカートに身を包み、漆黒の機械的な杖を手にした赤い瞳の少女の姿は本人に言うと失礼かもしれないが、死神を連想させるものだった。

 

 以前、なのはの変身した姿を改めて見て、映司はなのはが天使になったと錯覚し、見とれてしまったことがあったが、その時の彼女とは正反対の印象を受けたのだ。

 

 こんな時に言うことではない、それぐらいは映司にも分かってはいたが、どうしても聞かずにはいられなかった。

 

 

「ねえ!」

 

 

 映司の呼びかけに黒衣の少女ーーフェイトは身構える。

 

 例えどんなに口汚い言葉を吐きかけられようと、彼女は2本の足で大地をしっかりと踏ん張って受け止める覚悟が出来ていた。

 

 ……もっとも、それはあくまでも想定の範囲内、という条件付きだが。

 

 

「その格好寒くないの!? いくら春だからって、そんな薄着じゃ風邪ひいちゃうよ!」

 

 

 その直後、映司とリクガメヤミーを除いた全員の右膝が崩れ、それに伴って体が右に傾いた。

 

 お前こんな時になに言っとんねん! と思うだろうが、映司の知り合いの女性陣には水着でもないのに、人前でそういう格好をする人がいないので、フェイトのような服装は見慣れていないからこそ出てきた言葉なのだ。

 

 初対面で5分も経っていないうちからずっこけさせられたフェイトだが、一応自分を気遣ってくれているだけだというのは読みとれたので、体勢を立て直しながら返答する。

 

 

「これはれっきとしたバリアジャケットだから、別に寒くはないから大丈夫だよ」

 

「え……本当?」

 

「本当だよ」

 

「マジに?」

 

「マジ」

 

 

 そうして数回聞き直し、自分が勘違いしていたことを映司は理解した。

 

 

「あ……なんだ、そうだったんだ! ゴメンね、なんか1人だけ空回りしちゃってたよ……」

 

「映司君……」

 

 

 照れくさそうに後頭部をかいて謝る映司を、なのは達はため息を1つついて呆れ目で見ていたが、何故かカザリだけは違っていた。

 

 

「まあ、気持ちはわからないでもないかな。初対面のーーしかも君ぐらいの子がそう思うのは仕方ないね」

 

「私の格好ってそんなに変かな?」

 

「変って言うか、将来が心配になってくるんだよね。特にテスタロッサ家の年長者達の格好を見ていると、このままで良いのかなあっていう考えを余儀無くされちゃうんだよ」

 

「ちょっ!?」

 

 

 半ば映司をフォローしていると言えなくもない台詞に、フェイトは首を傾げて自分のバリアジャケットを眺めるが、その直後のカザリの言葉は聞き捨てならなかったのか、猛然と彼に食って掛かった。

 

 

「私やお母さん達のどこがおかしいって言うの!?」

 

「前々から言いたかったんだけどね……露出が多すぎるんだよ! 君のバリアジャケットはスカートは短いわ肌を覆っている部分は少ないわ! 行く末は露出狂なんじゃないかって僕もウヴァ達も心配してるんだからね!」

 

「こっ、これは私が戦いやすい姿をイメージしたらこうなっただけで、別に私は変な趣味なんか無いもん!」

 

 

 どうやらカザリはフェイトと彼女の家族の姿に対して、一度でいいから一言物申したかったようだ。

 

 説明させていただくと、バリアジャケットは装着者の魔力で編まれた防護服であり、そのデザインは魔導師本人のイメージによって構成される。

 

 なのはのバリアジャケットが聖祥初等部の制服にそっくりなのも、ほぼ毎日身に纏っているが故の愛着というところが大きい。

 

 となると、フェイトのバリアジャケットも彼女のイメージによるものの筈であり、一体全体何をモデルにしているのだろうか気になるところだが、そのヒントとなるものは間もなくカザリの口から語られるであろう。

 

 

「その不必要なまでに肌を晒したデザインは絶対プレシアの影響でしょ! そもそも彼女の仕事着も大概だよ! いい大人が胸元は開いてるわヘソ出しだわ! 今度言っていい!? 家長(かちょう)なんだから少しは自重した格好してくれって!?」

 

「お母さんは威厳を組織の人達に見せなきゃいけないからだよ! だからお母さんの服も全然おかしくない!」

 

「威厳を見せるのと肌を晒すのってどんな関係性が存在するのさ!? 十中八九本人の嗜好じゃんか!」

 

 

 カザリの言葉から察すると、フェイトの母親は結構過激な服装で仕事をしているようだ。

 

 だとすると、フェイトのバリアジャケットのデザインは母プレシアをモデルにしているようだが、カザリにここまで言わしめるとは……どんな格好なのかちょいと気になるが、今はカザリとフェイトの会話を聞いておこう。

 

 

「アルフは普段から薄着だし、唯一まともなのはリニスだけーーいや待てよ。そういえば彼女も胸元が開いた服を愛用していたし…………フェイト、君の家系は少しでも肌をさらけ出さなきゃ気が済まないのかい!?」

 

「誰がなんと言おうと! テスタロッサファミリーは露出狂なんかじゃありません!!」

 

 

 ……今思うと、これはなかなかシュールな光景ではなかろうか。

 

 美女と野獣ならぬ、美少女と怪人が言い争っているのだ。それも服装の事で。

 

 だからだろうか、映司達はフェイト達を敵とは思えなかったのだ……もちろん良い意味で。

 

 

「……ジュエルシードはどうするんだ?」

 

「「はっ!」」

 

 

 仕事に対して生真面目なのか、それとも2人の無益な応酬に痺れを切らしたのか、リクガメヤミーの至極真っ当なツッコミを受けてようやくフェイトもカザリも自分達本来の目的を思い出し、表情を引き締めて映司達に向き直る。

 

 全く締まらない展開だが。

 

 

「また会ったねオーズ。それに今回はお互いに初めて顔を合わせる子もいるみたいだ。改めて自己紹介をしようか、僕の名はカザリ」

 

「私はフェイト・テスタロッサといいます」

 

「リクガメヤミー……」

 

 

 ご丁寧なことにヤミーまでもが名を名乗ってきた。敵対しているとは言え、ここまでされたら映司達とて名乗らねば無礼というものだろう。

 

 

「僕は白野映司、映司が名前ね」

 

「私はなのは、高町なのはっていうの」

 

「陽輝でいい」

 

「アンナと呼べ」

 

「僕はユーノ」

 

 

 こうして両陣営の自己紹介は済み、カザリが口を開く。

 

 

「なんとなくそうなるだろうとは思ったけど、やっぱり鉢合わせになったね」

 

「どうやら我々とは会いたくなかったようだな。ならこの際だ、大人しく帰れ」

 

「お生憎、そんなんで帰るぐらいなら最初からここには来てないよ」

 

「ジュエルシードは危険な物なんだよ!? あれはイタズラに触れていい物なんかじゃない! なんの為に集めているのか知らないけれど、もうジュエルシードからは手を引いて下さい!」

 

「それは君が言える事じゃ無いだろ? 子供の君達が出る幕は無いんだよ。ジュエルシード集めは大人の僕達に任せて、君達は今まで通りの日常を過ごしていなさい」

 

 

 アンナとカザリの剣呑なやりとりが終わってすぐ、ユーノがジュエルシードとの関わりを絶つように頼むが、カザリのもっともらしい台詞に一蹴される。

 

 確かに、たとえ映司達がジュエルシード集めを中断したとしても、他に集めてくれる者達がいるならば、彼らに任せた方が得策とも言える。

 

 だがしかし……カザリは目の前の少年少女達を甘くみていた。

 

 

「でも……それで私達が何もしなかったら、たくさんの人達が大変な目に遭っちゃう……。そんなのはイヤだから、私達はジュエルシード集めも映司君を助けるのもやめないの!」

 

「大体ジュエルシードから手を引いても、アンタ達の方から俺達の日常をぶち壊そうとしてるんだから、どっちにしたって関わり合いにはなるよ」

 

「て言うか、この前だって美由希さんや雄也さん達が散々な目に遭わされたんだから。なんと言われようと、僕の手の届くところであなた達が悪さするっていうなら、何度でも立ちふさがりますよ!」

 

「…………」

 

 

 カザリの甘言に耳を貸すことなく、なのはを始めに陽輝、続いて映司までもが己の言葉ではねのける。

 

 これを受けてカザリはどこか、落胆したかのような雰囲気を醸し出しているが、その心中奥深くには別の想いも有った。

 

 

(やれやれ……こんな言葉で折れるようなら、最初から僕達に挑んだりはしないか。それにしても……本当にいい子達だな……)

 

 

 カザリは、子供である映司達を傷つけないようにする為にさっきの台詞が出てきたのだが、自分は彼らを見くびっていたことを痛感することになった。

 

 だがそれと同時に、映司達の心の強さの一端を垣間見たことにより、カザリはまるで輝かしいものを見ているかのような想いを感じていたのだ。

 

 カザリの思惑を読んでいたアンナは不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「残念だったなカザリ、コイツらはそんじょそこらのハナタレ共とはまずデキが違うのだ。本気で心を折るというなら、実力行使で来い」

 

「みたいだね。じゃあそろそろお喋りは止めにして、ちょっと遊ぼうか……」

 

「「「「ッ!」」」」

 

 

 カザリの言葉が引き金になったかのように場の空気が変わったのを感じた4人の少年少女達は、今すぐにでも始まろうとしている戦いに臨む為に身構え、映司達はそれぞれ戦闘準備を整える。

 

 

「「変身!」」

 

「タカ! トラ! バッタ! タ・ト・バ! タトバ、タ・ト・バ!」

 

 

 オーズに変身した映司、さらにバリアジャケットと赤い外套を身に纏って戦闘態勢をとったなのはと陽輝。

 

 

「あの子ーーなのはが持っているのは私のバルディッシュと同じタイプのデバイスだけど、エイジのあれは……バリアジャケットじゃない?」

 

 

 どうやらフェイトは映司の変わった姿に興味を持ったようだ。

 

 まあそれは無理もない。なにせ宙に投影されたメダルが胸に張り付いた直後、自分と同じくらいの背丈の少年が身長190cm以上の大男になった上に、全身は黒い装甲のような物に包まれ、顔は翼を大きく開いた鷹を模したマスクを装着し、胸には上から順に鷹と虎と飛蝗(バッタ)が収まったサークルが刻まれているのだから。

 

 フェイトだけでなく、なのはや陽輝も奇異な格好しているのは否めないが、コスプレだと思えばまだ納得できる。

 

 それらからすれば、オーズの姿はあまりにも異質である。

 

 それはそれとして、フェイトの映司の名前を呼ぶ際の発音がなのは達とは若干異なるが、日本人の名前を呼び慣れていないからだろう。

 

 

「《フェイト、君はなのはって子を相手するんだ。ヤミーは陽輝、僕は映ーーオーズを迎え撃つ》」

 

「《わかった、気をつけてね2人とも!》」

 

(俺は赤いヤツ……!)

 

 

 どうやらアンナと同じようにカザリも魔力を持っており、念話のやり方を覚えたようだ。

 

 ヤミーの場合は魔力を持ったグリードに生み出された際、ほんの僅かに魔力を宿したセルメダルを用いた為、念話を受信するぐらいは可能なようである。

 

 と言うことはつまり、ガメルも魔力を持っているということだ。

 

 また、カザリが1対1の戦いに持ち込もうとしている理由は、映司達が友人同士であることを生かしたコンビネーションで攻めてくるのを防ぐ為である。

 

 フェイトとアンナ以外のグリード達は仲良しだが、基本グリードに従属しているヤミーとフェイトではお互いをカバーしあう戦法はとれずーーフェイトがカバーしてもヤミーはそうしてくれないからーー、このまま3対3でやり合えばチームプレイに難があるカザリ達の方が不利だからだ。

 

 ついでに補足させていただくと、カザリが映司をあえてオーズと呼んだのは、この戦いの時だけは映司を子供と思わず、1人の戦士として認識し、己の甘さを捨てて非情に徹する為である。

 

 

「ハァッ!」

 

 

 カザリが自身の両手を打ち合わせると黄色い竜巻が作り出され、映司達の方にそれを放ってきた。

 

 

「おっと!」

 

「にゃっ!」

 

「ふっ!」

 

 

 向かってきた竜巻を3人は苦もなく避けるが、その際彼らは別々の方向に動いてしまい、アンナはカザリの思惑に嵌まってしまったことに気づいた。

 

 

「イカン! みんなバラバラになるな!」

 

「もう遅いよ!」

 

 

 アンナの警告もむなしく、分断された映司達にカザリ達は襲いかかった。

 

 なお、先程放ったカザリの竜巻は、見た目が派手な上に攻撃の範囲も広いが、映司達をバラけさせる為だけを目的としているので、威力そのものはかなり抑えられており、全力を出せばこのあたり一帯の森の木を、文字通り根こそぎ吹き飛ばせるということをここに追記しておこう。

 

 

「この前の借りを返させて貰うよ、オーズ!」

 

「くっ、負けませんよ!」

 

「こういう事はあまりやりたくないけど、ごめんなさいなのは!」

 

「フェイトちゃん!」

 

「で、俺の相手はお前なワケね」

 

「オオ!」

 

 

 激突しあう6人。しかし、ここでユーノから全員に忠告が送られた。

 

 

「みんな! なるべくあの猫から離れて! 下手に刺激を加えたら暴走しちゃう!」

 

 

 6人全員、返事はせずともユーノの注意に従い、ジュエルシードと一体化した猫から距離をとり、ユーノは猫の見張り兼攻撃が及ばないようガードに、アンナは映司のサポートにまわった。

 

 

「フッ、ハッ!」

 

「くっ、トアッ!」

 

「フン!」

 

「ふっ!」

 

 

 まずはカザリの右手からの貫手(ぬきて)が映司の顔に迫るが、これは顔を右に動かすことでかわし、続く左手の爪撃(そうげき)はバックステップで避ける。

 

 映司はお返しとばかりに右正拳突きをカザリの顔面に見舞おうとするが、左手の裏拳で拳の軌道を顔の左側の空間に逸らされ、反撃の右ボディーブローを左手で受け止めた。

 

 次にカザリは追撃の為に両手を引っ込め、右・左とワンツーを打ち込んでくるが、映司はそれらを両手を使って逸らし、左中段突きをカザリの胸に喰らわせる。

 

 しかし与えたダメージは微々たるものであり、すぐさま返しの前蹴りが映司の腹に飛んできたが、映司は喰らう前に自ら後ろに跳ぶことで受けた衝撃を減らし、こちらもダメージは小さかった。

 

 

「フン!」

 

「ハッ!」

 

 

 映司は右ハイキックを当てようとするが、カザリも同じく右ハイキックで迎え撃ってきた。

 

 だがバッタレッグの優れた脚力はカザリのそれを上回り、力負けして体勢を崩したカザリに映司は、キックがぶつかり合った時の反動を利用して左足を軸に右回転し、右後ろ回し蹴りをカザリの腹に叩き込んだ。

 

 更に追い打ちを加えようと左ストレートを打ち込むものの、これはカザリの右の肘鉄に防がれ、逆に映司の左手が痛い目をみてしまった。

 

 それでも映司は負けじと右正拳突きを放ち、さっきと同じようにカザリはそれを左肘で防御しようとするが、その手を読んでいた映司は当たる寸前で右肘を関節の内側へと折り曲げーー

 

 

「破ァッ!!」

 

「ぐぅっ!?」

 

 

 ーー(あらかじ)め、正拳突きを打つと同時にバッタレッグの力を解放して、肘を相手の顔にロックオンしたまま前方に思いっきり踏み込み、映司の全体重に踏み込む際のスピードをも上乗せした肘撃(ちゅうげき)をカザリの顔面に打ち込んだのだが……。

 

 

「……ふう、今のは中々良かったよ。腕を上げたみたいだね」

 

「なんか変な手応えを感じたと思ったら、やっぱり防がれていたんですね」

 

 

 当のカザリはピンピンしている。

 

 実は命中する直前、危険を察したカザリは素早く両手の手の平を自分の顔に持っていき、それをクッション代わりにして受ける衝撃を減らしていたのだ。

 

 オマケに顔を横に向けて肘撃のヒットポイントをずらし、自ら後ろに飛び退いたことで衝撃を逃がした為、更にダメージが減ってしまったというわけだ。

 

 あの刹那の間にそれだけの防御術を……恐るべき反射神経である。

 

 

「でもオーズ、上達したのは良いんだけど、具合でも悪いのかい? 前に戦った時の方が……なんかこう強かったような気がするんだけど」

 

「……別になんともありませんし、僕は間違いなく全力を出してますよ」

 

 

 カザリのこの疑問には、映司も内心では不思議がっている。

 

 あの時は美由希達を守る為、後先の事を考えず、ただガムシャラに戦っていたのは映司も覚えている。

 

 だが前回と比べると、なんて言うかこうテンションが上がらない。

 

 美由希を守りたいと想っていたあの時は、体の中からどんどん力が湧いてきたというのに、今回はそういった事もなく、我ながらなんなんだ? と、映司は思った。

 

 

(もしかして、彼の強さの本質は……)

 

 

 そこまで考えたところで、カザリは頭を左右に振って映司に対する考察をいったん頭から追い出し、気持ちを切り替えた。

 

 

「ま、今はどうでもいいか。さあ……続きだ!」

 

 

 カザリは猛スピードで接近して、右の爪撃で映司の胸を切り裂こうとするが、爪のリーチを把握していた映司は当たらないギリギリの所まで下がり、避ける際の隙を小さくして反撃を試みようとするがーー

 

 

「!? うあっ!?」

 

「アレ!?」

 

 

 ーー当たる直前、カザリの拳から緑色の鉤爪が飛び出し、仰天した映司はそれでもろに斬られてしまった。

 

 

(何コレ!? どうなってんの!?)

 

 

 しかし、驚いているのはカザリも同じであり、見れば左手からも鉤爪が生えており、彼はそれをまじまじと見つめていたが、間もなく己の身の変化の理由に気づいた。

 

 

(いや、そうか! ウヴァから借りて取り込んだコアメダルの影響が現れたんだ!)

 

 

 そう、今のカザリには朋友の力の一部である、カマキリコアが分けられているのだ。

 

 よく見ると鉤爪はウヴァの物と同じ位置から生えているし、色や形状はカマキリソードに似ている。

 

 長さはおよそ20cm程の鉤爪を見やり、カザリは心の中で改めてウヴァに感謝し、友人のくれた力を誇るかのように振りかざす。

 

 

「さあて、第2ラウンド開始だ!」

 

「くっ!」

 

 

 音速をも超えるスピードで駆け寄ったカザリは己の敵目掛けて斬りつける。

 

 映司はトラクローを展開し、鉤爪を防ごうとするが、カザリの攻撃速度はそれを許さなかった。

 

 

「ハアッ! イヤアッ! ハアッ!」

 

「うっ、うあっ!?」

 

 

 カザリはまず左の鉤爪で斬りかかり、映司は右爪で受け止め、左爪でカウンターを狙うが、それは右の鉤爪で弾かれ、腕の隙間を縫うかのような突きを喰らう。

 

 ダメージを物ともせず、映司は左右の爪で右・左・右と3連続の突きを放つが、上半身の動きだけでかわされ、それぞれの反対側の腰に構えられた左右の鉤爪が居合い斬りのように映司の胸を×の字に切り裂いた。

 

 さっきはまだ良い勝負ができていたが、カザリの変異をキッカケに映司は押されてしまっている。

 

 

(カザリの手に現れた鉤爪、あの瞬発力はまさか……!)

 

「《映司! 鷹の目で奴の中のコアメダルを見抜け!》」

 

「《は、ハイ!》」

 

 

 カザリの新たな力の秘密に気づいたアンナは確信を得る為、念話で映司に指示を飛ばす。

 

 タカヘッドは変身者に超視力をもたらすだけでなく、グリードの体内にあるコアメダルの位置を見通すことができるのだ。

 

 そうして意識を集中してカザリを凝視すると、彼の体を構成する無数のセルメダルの中心に合計7枚のコアメダルが有るのを見た映司は、本来ならば存在しないはずのカマキリコアを視認し、アンナに伝える。

 

 

「《アンナさん! カマキリのコアメダルがありました!》」

 

(チイッ! やはりか……ならば!)

 

 

 舌打ち混じりにアンナは自分の推測が当たっていたのを確かめ、現状での最善の手を打とうとする。

 

 数ある昆虫の中でもカマキリの瞬発力は群を抜いており、その力を取り込んだ今のカザリの動きに対抗するにあたって、虎の剛腕は意味を成さず、マッハの領域にまで至る走力に対してバッタは足が遅い。

 

 故に、アンナは懐からメダルケースを手に取り、そこから2枚のコアメダルを取り出した(のち)、再び映司に念話で指示を送る。

 

 

「《今からコアメダルを渡すが、そこではカザリに邪魔される。真上に向かって思い切り跳べ!》」

 

「《ハイ!》」

 

「トオッ!!」

 

「逃がさないよ!」

 

 

 瞬時にバッタレッグを変形させてジャンプする映司を追いかけてカザリも跳ぶが、そのスピード・飛距離にはどうしても追い付けなかった。

 

 と言ってもバッタレッグは垂直で190m程のジャンプ力を持っており、100mにも満たないジャンプ力のカザリではついていけないのは当たり前だが。

 

 アンナは映司が跳ぶ前に行動を起こしており、自身の中にある魔力で筋力を強化して、コアメダルを跳んだ映司の到着点に目掛けーー

 

 

「受け取れ映司ィィィィッ!!」

 

 

 ーー綺麗なフォームで振りかぶり、野球で言うところのアンダースローで投げつけた。

 

 いくらコアメダルが軽いとはいえ、190mにまでーーしかも2枚揃って正確に到達させるのは普通では無理だが、生憎(あいにく)……アンナは並みじゃない。

 

 

「ん~~~~…………キャッチ!!」

 

「良し! 我ながらナイスコントロールだ!」

 

 

 寸分も狂うことなく、機械顔負けの精密さをもって投擲されたコアメダルは確かに映司の手に渡された。

 

 すかさず映司は受け取ったコアメダルを見ずに確認ーー指がメダルに触れた時の感触で分かるよう、アンナに仕込まれたーーして、トラとバッタのコアメダルをオーズドライバーから交換する。

 

 

「タカ! カマキリ! チーター!」

 

 

 カザリの動きを見切る為、頭部はそのままに胴体はカマキリボディ、下半身は黄色く、太ももやふくらはぎの裏に空洞のような窪みがあるチーターレッグで構成される亜種形態、タカキリーターに変わった。

 

 そして映司は自分に追いつくのに失敗し、落下途中のカザリを見下ろしながら体勢を整え、スカイフィールドで宙に足場を作った直後にふくらはぎの排熱機構、チーターラムジェットから排熱を伴う蒸気のジェット噴射で加速された走力をもって、カザリ目掛けて垂直に駆け下りた。

 

「ハアァァァァ! ハイハイハイハイィィィィッ!!」

 

「うおっ! くっ、うあっ!?」

 

 

 展開したカマキリソードで素早い連続斬撃をお見舞いする映司に対し、カザリも鉤爪で応戦するものの、落下の重力加速度と己に匹敵する走力を勢いに乗せた猛攻に押されてしまっている。

 

 あっという間に地面は近づいてくるのを確認したカザリは、映司の攻撃を防ぎながら隙をみて彼に両足蹴りを浴びせる。

 

 だがこれは攻撃の為ではなく、反動を利用して映司よりもいち早く地面に着地するのが目的だ。

 

 そうして着地成功したカザリは、上空から隕石のごとく自分に向かってくる映司を、ギリギリまで引き寄せてーー

 

 

「セイヤァァァァァァ!!」

 

「ふっ!」

 

 

 ーー掛け声と共に繰り出されたドロップキックを飛び退いてかわし、地面に激突した際の衝撃でもうもうと吹き上がる土煙の中にいる映司を探す。

 

 

(できれば気絶してくれてると嬉しいんだけどなあ)

 

 

 そんなカザリの希望もむなしく、次第に土煙が晴れていくことで見えてくるモノを見た時、彼はゲンナリすると同時に、そのモノに対する好感が上がっていくのを感じていた。

 

 

「とことんやる気かい? オーズ!」

 

 

 落下の衝撃なんぞ屁でもないと言いたげに、膝を曲げて着地していた映司はカマキリソードを陽光で煌めかせながら、気合いと共に言い放つ。

 

 

「さあ……第3ラウンド開始です!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




この作品における試作型メダジャリバーと原作のメダジャリバーの相違点。

形状・切れ味・耐久性等、基本的な性能はほぼ同等で、試作型の段階で必要最低限の性能を
有している。

しかし試作型メダジャリバーのカラーリングは、原作では黒かった部分が白っぽい灰色となっている。

最大の違いは必殺技。

試作型メダジャリバーの必殺技、オーズブレイクは光子の刃の長さが3m程度しかなく、オーズバッシュのように、遠距離の相手には使えない。

しかも威力も劣っている上に、技の特性上周囲に被害を与えてしまうのが難点。

だが、原作には無かったある機能が備わっており、これによって必殺技の威力を上げることが可能となっている。
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