仮面ライダーリリカルオーズ 世界を救う欲望   作:シラカンバⅡ

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今回は幕間的なお話となっており、次話への繋ぎという奴です。

話は変わりますが、いただいた感想を読んでみると、グリード達が良い奴らだという事への反響が多い……でもこういうのもアリですよね?

カウント・ザ・メダルズ!

今、オーズが使えるメダルは……。


タカ×2
クジャク×1
コンドル×1

クワガタ×1
カマキリ×1
バッタ×1

ライオン×1
トラ×1
チーター×1

サイ×1
ゴリラ×1

ウナギ×1
タコ×1


第18話 明日への軌跡

「映司君、もうこの辺でええよ」

 

「ん? まだ家に着いてないけど、どうかしたの?」

 

 

 楽しかったお茶会も終わりとなって、みんなそれぞれの家に帰る事となり、映司ははやてを彼女の家まで送っていこうしていた途中でそう言われ、理由を尋ねる。

 

 

「ちょっとスーパーに寄って食材の買い物がしたいんや。今日のお茶会を楽しみにしてたらうっかり忘れてもうて」

 

「ああ、そゆこと」

 

 

 忘れていた理由がちょっぴり恥ずかしいものだったからか、薄く頬を赤くしながら舌の先を出して、照れ笑いをしているはやてを見て納得する。

 

 

「僕も付き合うよ?」

 

「ええってええって。ここまで送って貰えれば後は自力でも余裕で帰れるし、映司君かてそろそろ家に帰ってお夕飯の準備せんとアカンのやろ?」

 

 

 それでも出来ればはやてを最後まで送っていきたかったのだが、そこまで言われると手間の掛かる一人と一匹の同居人を思い出されてしまう。

 

 アンナは桃子指導で料理修行中ではあるものの、彼女の過去の経験上食事は作ってもらう立場であった為、上達は(かんば)しくない。ユーノに関しては……言わずもがなであろう。なんせフェレットだし。

 

 お金なら映司の一生を費やしても使い切れないほどあるので、いざとなったら出前でも頼めばいいのだが、彼の料理の腕前がなまじプロ級なのが災い(?)して、アンナ達はなるべくなら映司の手料理が食べたいと駄々をこねているのだ。

 

 だから映司が早めに帰らなければその間アンナ達がひもじい思いをする事になるのだが、たまにはそれでも良いと思う。

 

 

「う~ん……それもそうなんだよね。じゃあ今日のところはこの辺で」

 

「うん♪ 今日はお茶会に連れていってくれてホンマにありがとう。ほな、サヨナラ」

 

 

 そうして映司とはやてはお互いに手を振り合いながら別れ、はやては買い物の為スーパーに(おもむ)くのだが……その足取りーーと言っても車椅子であるーーはお世辞にも思わしいとは言えなかった。

 

 

「結局……映司君から本当のこと聞き出せへんかったな……買い物を言い訳にしてもうたけど、ただ単に映司君と一緒に居るのがつらくなっただけやん……」

 

 

 はやてにとって、映司の事情を教えてもらえないという事は彼と共に居られなくなる程に重い事態なのである。それならばいっそのこと思い切って聞いてみるか、細かい事だと断じて気にしない方が彼女の精神的にも健全かもしれない。

 

 だがしかし、前者を選んだ結果により初めての友達と絶交するかもという、最悪な未来を迎えられても良いと言えるほど彼女は勇気も覚悟も持てず、かと言って後者を選ぶには、この胸に感じる孤独感に耐えられる自信が無かったのだ。

 

 

「ーーてっ、アカンアカン! そんな嫌な事ばっかり考えててもしゃーないやん、私らしくもあらへん。それよりも早く買い物に行かな」

 

 

 はやての心は厚い雲に覆われたかのような暗闇に取り込まれそうになり、それを払うかのように顔を横に振って気を改め、本来の目的を果たそうとする。

 

 

「そや! なのはちゃんの家って確か翠屋っていう喫茶店をやってるんて言うてたな。明日は日曜日やから映司君やなのはちゃん達も居るかもしれへんし、行ってみよ♪」

 

 

 明日の楽しみを見いだしたはやては空に浮かびそうな気分で買い物を手早く済ませて帰路に着く。しかし、家に入ろうとしたところで後ろから誰かに呼び止められ、振り向いてみると……。

 

 

「もしもし、ちょっとよろしいですかお嬢さん?」

 

「? はい、なんでーー」

 

 

 相手の姿を確認しようとしたら、顔が視界に入るギリギリのところで銀色の丸い何か(・・・・・・)を額に投げられて意識が一瞬失われる。

 

 

「ーーあれ? 私……何してたんやろ?」

 

 

 気がつくと声をかけてきた何者かは何処かへと消え去り、はやてもまたその前後の記憶を失っていたのだが、その異常性に対して何一つ疑問を持つことなく、彼女は声をかけられる直前にやろうとしていた事を思い出す。

 

 

「あー……せや! 早くお夕飯作らんと! そんで明日はなのはちゃんのお店に行くんや!」

 

 

 こうしてはやては家に入り、明日に待っている楽しい一時を夢見ながら今日という日を終える。

 

 ……しかし、その楽しみを上回るほどの驚愕の運命も待ち受けているなどとは、この時のはやてには知る由も無かった……。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 打って変わってここはグリード達の部屋。その中心に備えられた円卓を囲う四つのソファの一つに見知らぬ男が座っている。

 

 その者はおよそ二十歳くらいの年齢と思われ、短めの髪をオールバックにまとめつつ、緑色のジャンパーを着こなす優男風の整った顔を持つ青年であり、さらに部屋の出入り口からその青年へと近付いてくる者達が三人。

 

 一人は人間態となったガメルであることが分かるのだが、他の二人の男女には見覚えが無い。

 

 男性の方は銀に染まった髪の毛を肩に掛かるぐらいまで伸ばし、頭のキャップをトレードマークにした、緑ジャンパーの青年と同い年だと思われ、彼よりもやや幼げの顔をした、今時の若者そのものなファッションのイケメン。

 

 女性の方は黒いストレートの髪を腰までのばし、白いブラウスと深みのある青いミニスカートで着飾った、中学生ーーあるいは高校生になったばかりに見える美少女である。

 

 いったいこの三人は何者か? という謎は間もなく明かされる。

 

 

「お、戻ってきたかお前ら。プレシアの容態はどんな感じだ?」

 

「いつもより多くのセルメダルを使えたから、少し血色が良くなったよ。プレシアもなんとなく体が軽くなったように感じるって言ってたし、みんな喜んでたよ」

 

「お礼に今日の夕ご飯と食後のデザートは奮発するって~! プレシア達も嬉しそうだけど、俺達も嬉しい~♪」

 

「もう少しセルメダルが多ければ、もっと良くしてあげる事が出来たんだけどね」

 

「これ以上はさすがに欲張りすぎだろう。あんまり使いすぎるとプレシアの方がやめさせようしてくるしな」

 

 

 以上、上から緑ジャンパー・キャップ・ガメル・青いスカートの台詞でござんす。

 

 

『省略すんなっ!!』

 

 

 こりゃ失礼。

 

 すでにお気づきであろうが、緑ジャケットの青年がウヴァ、キャップの若者がカザリ、青いスカートの少女はメズールであり、全員それぞれの人間態を手に入れたという話。

 

 ウヴァ以外の三人はさっきまでフェイト達の住居にお邪魔させてもらっており、そこでプレシアの治療していたのである。ついでに言うと治療出来るのはメズールだけなので、他二人はただの付き添い。

 

 ちなみにウヴァは本日外出した時にこれと思った青年を、カザリはジュエルシードの回収から帰ってくる途中でたまたま見つけた若者を、メズールはウヴァに頼んで買ってきてもらった雑誌に載っていた中学生モデルを模写したのだ。

 

 

「改めてウヴァ、今日はコアメダルを貸してくれて本当にありがとう」

 

「んん? まあ……気にするな、俺は貸しただけだしな。それよりお前の方こそよくジュエルシードを持って帰ってきたもんだ」

 

「僕だけじゃとてもとても……フェイトが一生懸命彼らにお願いしてくれたからね」

 

「そう言えばカザリ、あなたオーズーーじゃなくて映司という子からコアメダルを返してもらったみたいだけど、これをあなたはどう見る?」

 

 

 メズールに問いかけられたカザリは何か思う所があるのか、数秒ほど考えた後に答えを返す。

 

 

「良く言えば任侠……悪く言えばお馬鹿ってところかな?」

 

「後半はあんまりじゃない?」

 

「やっぱり?」

 

 

 ガメルからのやんわりなツッコミに苦笑するカザリ。しかし、彼の感想はまだ終わりではない。

 

 

「少なくとも、僕達のことをただの化け物とは見ていないね。なんというかこう……敬意を表されたって感じかな?」

 

 

 カザリの率直な意見を一同は噛み締め、しばし沈黙の(とばり)が部屋に下ろされる。

 

 

「まあ、今はまだなんとも言えないよな。この事はとりあえず頭の片隅にでも置いておくぞ」

 

 

 実質この場のリーダーとも言えるウヴァの言葉を受けて、カザリ達は首を縦に振る。その直後、何かに気づいたウヴァがカザリに質問してきた。

 

 

「ところでカザリ、俺のコアメダルを取り込んだ時どんな変化が起こったのか聞きそびれていたんだが……?」

 

「あっとそうだった。えっとね……」

 

 

 カザリは映司との戦闘中に表れた自身の変化を説明していく。両手からオーズのカマキリソードに酷似した刃が出現し、さらに瞬発力をも上昇したと。

 

 大雑把に説明すればこんなもんだが、話を聞き終えたウヴァの態度がちょっと変。

 

 

「ふーん、そうか……じゃあ俺がやっても問題ないってことかなー……」

 

「?」

 

(まさか……)

 

 

 明後日の方を向いて独り言をつぶやくウヴァ。そんな彼の態度に疑問を持ったカザリは、ウヴァがそういう態度をとる理由を模索し、思い浮かんだいくつかの可能性を追求し、自分なりの答えに到達した。

 

 

「僕で試したねウヴァ……?」

 

「…………」

 

 

 カザリからジト目と共に放たれた疑問を喰らったウヴァは一瞬ギクッと体を震わせ、誰がどう見てもおかしいと思うほどの脂汗を流し出した。

 

 最早(もはや)語るまい……カザリは長年の友に悪意なき実験台にされたのだ。

それが分かったカザリは怪人態へと変身し、その身からどす黒い瘴気を噴き出しながら、ウヴァに一歩一歩ゆっくりと近づいていく。

 

 

「ウヴァ……ちょっと僕と……O☆HA☆NA☆SHI……しようか……?」

 

「ーーっ、スマン! 断るっ!」

 

「待てぇっ!!」

 

「何やってんのかしら……」

 

「アハハー、ウヴァもカザリも楽しそうだね~」

 

 

 感じていた恩義を帳消しにされるぐらいの裏切りに怒るカザリは、必死に逃げ回るウヴァを全力で追いかける。それをメズールは呆れ顔で見つめ、最後に無邪気なガメルの脳天気な笑い声が部屋に木霊(こだま)した。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「そう、新しい友達がそんなにたくさん出来たの?」

 

「良かったですねフェイト」

 

「フェイトの嬉しいって気持ち、アタシにも伝わってきたよ」

 

「うん♪ それにお茶会もスッゴく楽しかったんだよ♪」

 

 

 一般家庭などでよく見られるリビングの風景が広がり、そこには長方形のテーブルの周りに置かれたソファに座りながら、四人の女性陣が楽しく談笑していた。

 

 まず、一人目の女性はこの中で最年長と思われ、足首ぐらいにまで伸びる艶やかな黒髪をウェーブがかったストレートにした妙齢の美女。熟れた女の色香ただよう、まさに傾国の美女と例えるにふさわしい。また髪の色こそ違えど、もしフェイトが髪をストレートに下ろせばこのご婦人そっくりな髪型になるであろう。

 

 二人目はおよそ二十代になったばかりに見える。茶色いショートヘアーに、頭髪と同色の毛に包まれた、先っぽが白くなっている耳が縦に伸びており、お尻のあたりからも猫のような尻尾が生えているが、それらも当人の魅力を引き立てる良き素材へと変えている、柔らかい微笑みが似合う美しい淑女。

 

 三人目は女子高生ぐらいの年齢で、やや赤みがかったオレンジーー(あかね)色の膝まで伸びる長髪をうなじのあたりで左右に分けた髪型にし、二人目と同じく頭髪と同じ色の耳と尻尾が生えているのだが、こちらは尻尾がフサフサとした犬っぽいものとなっている。

 

 オマケに額には赤い宝石がアクセサリーのように付いており、二人目の女性と同様ふつうの女性には見えないが、成熟前の女性特有の可愛らしさと艶っぽさを両立させた美貌から放たれる魅力の一つだと思える。

 

 ちなみに三人の服装はプレシアが薄い紫色のセーターに膝よりやや上のミニスカート。リニスは胸元が開いたビスチェ風のアウターキャミとシュラグに丈がふくらはぎの真ん中ほどのロングスカート。アルフは胸元だけでなくおへそも出したアウターキャミにホットパンツである。

 

 そして最後の四人目は、みんな大好きフェイトちゃん。

 

「私だけダントツに軽くない?」

 

 

 だってもう君の容姿説明は済んでるじゃん。今回は新しい容姿のキャラがいっぱい出演してくるから、その人達の容姿を書くのも大変なのよ。少しは息抜きさせて。

 

 

「まあ良いけど……」

 

「さっきから誰と話してんだいフェイト?」

 

 

 おっといつまでもキャラと話してちゃダメだ。そろそろ自分の仕事を全うしよう。

 

 ここはテスタロッサ家が暮らしている住居のリビングであり、黒髪の熟女がフェイトの母親たるプレシア・テスタロッサ。茶髪の淑女がリニス・テスタロッサ。そして茜色の娘がアルフ・テスタロッサと、テスタロッサファミリーここに集結となったのだ。

 

 フェイトは今日起こった出来事をみんなに身振り手振りを交えて話し、プレシア達もそれを楽しそうに聞いている。なのはに負けた際の話でアルフは最初は(いきどお)っていたのだが、その後キチンと謝って友達になりたいと言われた事を話した途端に機嫌が直っていった。

 

 それに、映司に手を引かれてお茶会に参加させてもらい、そこで多くの人達と友達になれた時の事になると、アルフばかりかプレシアもリニスも我が事のように嬉しそうな笑顔を見せている。

 

 

「フェイト、今日はお疲れ様。それと本当にありがとう、私の為に頑張ってくれて、とっても嬉しいわ」

 

「私だけじゃないよ、カザリなんて自分のコアメダルと交換してまでジュエルシードを手に入れてくれたんだもの」

 

「そのおかげでプレシアもいつもより大分楽になれましたし、約束通り彼らの今日のお夕飯は特別に腕を振るわないと」

 

「そうね、私も体が軽くなっているような気がするし、いつも以上に頑張れるわ」

 

「じゃあ頑張ってアタシのご飯も奮発して……」

 

『それは却下』

 

「ケチー!」

 

 

 どさくさに紛れて自分もおこぼれに与ろうとしていたアルフにプレシアとリニスからのキレの良いツッコミが入ると、リビングには四人分の大きな笑い声が響いた。

 

 やがて笑いすぎで涙が出てきたプレシアから、こんな話題が出てきた。

 

 

「ふう、こんなに思いっきり笑えるのも久しぶりだわ。それもフェイトやウヴァ達だけじゃなく、ジュエルシードを譲ってくれた子達のおかげよね。出来れば一言お礼を言っておきたいわ」

 

「あっ! それじゃあさ、明日にでもアタシが行ってくるよ! フェイトは今日の仕事で疲れてるだろうし、明日はプレシアと一緒にお留守番ってことで!」

 

「では私もアルフと一緒に行きましょう。主人であるプレシアの受けた恩は使い魔たる私の恩でもありますし、プレシアもまだ外を出歩くのはやめておいた方がいいですし、ここは私達二人が代表として行ってきます」

 

「うん、お願いリニス、アルフもよろしくね」

 

「任せとくれよ!」

 

 

 胸を片手でポンと叩いて頼れる女をアピールするアルフ。それを見てリニスはこの用事を達成する為に必要な事をフェイトに尋ねる。

 

 

「それでフェイト、その……エイジ君となのはさんという子のご自宅はどこなんですか?」

 

「………………聞くの忘れてた……」

 

『…………』

 

 

 なんてこったい、これじゃやる前から失敗しているようなものではないか。

 

 まあそれだけ楽しかったから、うっかり聞きそびれてしまったということなんだろうけども。

 

 せっかく良い話しでまとまろうとしていた一件が自分のおドジで台無しになりかけそうになっている空気に萎縮しているフェイトは、ちょっぴり天然が入っている脳をフル回転させて、ある一つの情報を思い出す。

 

 

「そうだ! なのはのお家は翠屋って名前のお店で、エイジもよくそこに行くって言ってたから、そこに行けばきっと!」

 

「ですがフェイト、そもそも住所が分からなければ探しようがありませんよ?」

 

「アタシもあの町の土地勘はまだ無いし、とりあえず道行く人達に聞いていくしかないよね……」

 

「うう……」

 

 

 名誉挽回と意気込んで提案するフェイトだが、続くリニスとアルフからの苦言にまたしても萎んでしまう。しかし店の名前を聞いたことにより、プレシアの頭の片隅に置かれていた一つの記憶が呼び覚まされた。

 

 

「ちょっと待って、確かこの前ガメルがお土産を買ってきてくれた時に言ってたのがそのお店だったはずよ。彼に聞けば分かるんじゃないかしら?」

 

「それでしたら、夕飯を持って行く時にでも聞いてみましょう。料理を始めるにもちょうどいい頃合いですし」

 

「それもそうね。そうと決まったら……フェイト、アルフ、あなた達も手伝って」

 

「はい!」

 

「はいよ!」

 

 

 意気揚々とプレシア達は夕飯の準備を始め、明日へと備える。彼女達の来訪がどのような結末を招くのかは、まだ誰も知らない……。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 三度(みたび)変わりてここはどこかの一室。執務用の机に備えられた椅子に座る男と、彼の目の前には二人のおよそ二十歳ぐらいの年頃の女性が立っていた。

 

 男の方はいかにも階級の高そうな制服に身を包んだ、白髪混じりの初老の男性。だが老いを感じさせても、衰えというものは全く感じられない。例えるなら、地中深くに根を張りつめ、長く長く樹齢を重ねた大木のような力強さといったところか……。

 

 次に女性達はそっくりな美しい顔立ちに全く同じ服装で、両者共に黒いチャイナ服に見えなくもないジャケットにタイトなミニスカートを履いている。

 

 けれど、一方の髪はもみあげが胸まで届き、腰ぐらいに伸ばしたロングのストレートヘアにして、もう一方は前髪を左右に分けたショートボブでまとめられ、髪型の違いのせいかロングの女性は落ち着いた雰囲気、ショートの女性は活発な印象を与えてくる。

 

 髪の色はどちらも灰色っぽい茶色なのだが、リニスと同様猫のような耳と尻尾が生えており、その色は黒が混じった灰色で、耳は先端部分が白くなっている。

 

 アルフ達といいこの二人といい、耳も尻尾も偽物とは到底思えないほどのリアリティを醸し出し、常識的に考えれば異様としか受け取れない要素も、彼女達の魅力を見事に高めるのだから、美人とはうらやましいものである。

 

 

「私達からの報告は以上となります」

 

「ふむ……」

 

 

 この様子からすると、二人の女性は男性に対して何らかの話をしていたようで、聞き終えた男性は両手を口元の前で組み、目を閉じてなにやら考え込んでいる。それを女性達は何を言うでもなく、自分達の報告を元にどのような指示が出されるのかを待ち続けていることから、彼らの強い信頼関係が分かるというもの。

 

 

「管理外世界に漂着したロストロギア、街で暴れる正体不明の怪物、そして……その怪物と戦う仮面の戦士、か……となれば……」

 

 

 口を開いて出てきたのは先程受けた報告の要点。だがこれは確認をとる為ではなく、思案した末の結論を実行するにあたっての、自身への最終確認。

 

 しかして、彼の下した決断や如何に?

 

 

「リーゼ、明日から君達は地球へと赴き、八神はやての監視を兼ねたボディーガードを頼みたい」

 

「私達二人で?」

 

「ずいぶん思い切ったねお父様。なんでまた?」

 

 

 受け取った指示が自分達の予想外だった為か、彼女達は男へと質問していく。

 

 

「ジュエルシードと呼ばれるロストロギアが地球に漂着してしまい、それの回収をスクライア族の者が依頼していたという報告は私も聞いてはいたのだが、もう一週間近く経つというのに未だこの件は手付かずなんだよ」

 

「なにそれ? 放っておいたらその世界が大変な事になるかもしれないっていうのに、上の連中なに考えてんのよ!」

 

「もしかして……私達が出るのはそのジュエルシード回収も兼ねて?」

 

「うむ」

 

 

 憤慨しているショートヘアの女性に構わず、ロングヘアの女性はさらに理由を尋ねていき、男の口から彼女達を送り出す理由が語られる。

 

 

「私も君達も前線に出ることはすっかり無くなっているから、他の局員に比べれば比較的動きやすい。ジュエルシード回収を怠って地球が滅びるような事態に陥るなど本末転倒だ。それに、ジュエルシードによって起こされた被害や怪物騒ぎで八神はやての身にもしもの事が有れば、今までの我々の苦労は全て水の泡だ」

 

「確かに……はやてが施設に入れられないよう認識阻害の魔法を使ってまで、彼女の居場所を確保した訳ですし」

 

「まあ……そのせいで、あの子には寂しい想いをさせちゃってるんだけどね……」

 

 

 ショートヘアの女性のつぶやきをきっかけに部屋は沈黙に包まれ、その空気を払うかのようにショートヘアの女性は謝りだした。

 

 

「ごめんなさい……」

 

「君が気にする事ではないよロッテ、全ての責任はこの私にこそある。ともかく、細かい手続き等は私に任せて、君達は明日の朝一番に地球に向かえるよう準備を整えてくれ」

 

『はい!』

 

 

 二人揃って返事をし、部屋から女性達が出て行くのを見届けたのちに、男は必要な手続きを始めた。

 

 ……なぜこの三人がはやての事をしっているのか、そもそもこの三人が何者なのかという疑問は絶えないが、そろそろ次の場面へと赴こう。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 広い会長室に二人の男性が居た。一人はこの部屋の主たる鴻上、もう一人は以前と変わらず二の腕にスキンヘッドで眉無の人形を乗せた真木。

 

 この二人、何か関係でもあるのだろうか?

 

 

「つまり会長、彼らは独自の研究のもと、新しい実験を行おうしているのですね?」

 

「と言うよりも既に始められているだろうね。向こうからすれば新たなビジネスになるのだから、なるべく早く結果を見てみたいんだろう」

 

「それで、会長はどうするのですか? 今まで通り黙認なさるおつもりで?」

 

「いや、今回はこちらも少し動こうと思っているよ。カンドロイドの実践テストを兼ね、完成したそれらを映司君にいくつか渡しておきたいんだ」

 

「ならば私が行ってきましょう」

 

「君がかね?」

 

 

 このやり取りから察すると、前にメダジャリバーをくれた時と同じように何かを渡そうしているようなのだが、真木自らが渡しに行くという発言が意外だったのか、鴻上は軽く目を丸くしていた。

 

 

「自分の手がけた物は出来れば自分で渡したいですし、映司君とはもう一度会っておきたいんです」

 

「そうか……ならばその件は君にお任せしよう。よろしく頼むよ、ドクター真木!」

 

「では、私は準備をしてきますので、この辺りで失礼させていただきます」

 

 

 真木が部屋を出て行くのを見届けたのち、誰に聞かせるでもなく一人つぶやく。

 

 

「まさかあのドクター真木が自分から行こうとするとはね……相手が映司君だからかな?」

 

 

 目を閉じて考え込んでいる鴻上。やがてその考えが固まったのか、彼はゆっくりとその目を開ける。

 

 

「なんにせよ、今後は今まで以上に目が離せない事が起こるだろうね。そして……それらの事象は全て、彼の成長の糧になるのだろう」

 

 

 今の鴻上の目はとある人物への期待感に溢れている。それはすなわち……。

 

 

「見せてもらうよ映司君、君が真の……オーズになれるかどうかを…………」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 ここは映司宅の彼の自室。その主が座り込みながら部屋の片隅でなにやら作業をしており、彼の後ろにはデジカメ構えたアンナと、歓喜やら期待やらで目をキラキラさせているユーノがいた。

 

 それから数分経ってその作業も終わり、映司はかいてもいない額の汗を拭って元気良く立ち上がる。

 

 

「ついに完成! これがユーノ君の為のユーノハウスです!」

 

「それじゃまずは外観を撮っていくか」

 

 

 そう言ってアンナは映司が作り上げた物をデジカメで撮影していく。

 

 彼が作っていたのはユーノの部屋となる、小学生がすっぽりと収まる大きさの小屋だ。

 

 じゃあなんでこんな物を作っていたのかを説明させていただくと、ユーノには部屋が無かったのを映司が不憫に思ったのが発端である。最初はユーノにも部屋をあてがおうとしたのだが、フェレットの彼には人間の部屋は大きすぎて逆に落ち着かなくなるから、映司の部屋に居させてくれればそれでいいと言った。

 

 しかし映司の部屋に居たってフェレットの体に対して大きすぎるのは一緒だし、いい加減まともな寝床を用意してあげたかったのもあって、色々と考えた映司は。

 

 

“ユーノ君の部屋が無いなら、僕があの子の部屋を作れば良いんだ!“

 

 

 という、世界史の授業で習いそうな名台詞(?)風の結論へと至った。ユーノ専用の部屋というか最早小屋……ユーノハウスはプラスチックを材料とし、それらを加工する工具等は忍から借り受け、デザインはなのは筆頭の三人娘が名乗り出てくれたのだ。

 

 毎日毎日、コツコツと製作を進めていき、今日になってようやく完成したユーノハウスは、デザイナー故にドールハウスをモチーフとした女の子っぽい外観となっており、最初はユーノが反対するんじゃないかと思って完成予想図を見てもらったところ、むしろ喜んでいたのはちょっとした不思議。

 

 もちろん可愛いだけでなく、機能性・居住性共に考えられて設計され、内部は二階建て構造でスロープ状の階段を用意し、二階部分が寝床となり、一階部分はユーノ用のソファやテーブルを始めとする家具が置かれ、時々妖精フォームのアンナが遊びに来れたりもする。

 

 しかも中の照明はLEDの上に、小型のエアコンやテレビに換気装置も完備されているなど、世の中のフェレット達がユーノに抗議しそうな作りである。

 

 

「僕の為にこんな素敵な物を作ってくれるなんて嬉しいよ……ありがとう映司!」

 

「うんうん、気に入ってもらってえがったえがった」

 

 

 喜びのあまりに感極まって、映司の首元に涙目で顔を埋めてくるユーノの背中を撫でながら、得心したかのようにコクコク頷く。

 

 その後はアンナが窓から顔を出したユーノの写真を撮ったり、本物のドールハウスみたいに展開させたユーノハウスの内部を撮影していき、それを横目で眺めながら映司はメダジャリバーを磨いていた。

 

 実は以前鴻上がケーキを送ってくれた時、一緒にメダジャリバーを磨く為のお手入れセットも同封されていたのだ。

 

 自分の命を預けているという意味では、オーズドライバーと並ぶ相棒を大事にしていきたい映司なのである。

 

 

「ところで映司、私は明日出かけるからコアメダルを預けておくぞ」

 

「ああ、そう言えば明日がバイク免許の最終試験だったよね。ならセルメダルも何枚か置いていってください」

 

「ああ」

 

 

 明日アンナが家を空けると言ってきた理由を察した映司は、コアメダルの入ったケースと一緒にセルメダルも要望した。これはもちろんメダジャリバー用の物。

 

 しかしメダルケースを差し出されて受け取ろうとした際、アンナがケースを手離そうとしなかったので、疑問に思った映司は何故と問う。

 

 

「あの、どうしたんですか?」

 

「映司、くれぐれも気をつけて欲しいのだが、コンボは絶体絶命の時以外は使わないでくれよ。でなきゃ死ぬぞ」

 

「ーーっ!」

 

 

 コンボを使えば死ぬ……アンナの目を見てその言葉が偽りのものではないと悟った映司は二の句が告げなくなり、彼の反応を見やったアンナは話を続ける。

 

 

「私の目を見れば分かるだろうが、これは脅しじゃない。まだ未発達な体のお前ではどのコンボも負担が大きすぎるのだ。もしも自分の力だけではどうにもならないと思ったら、なのはや陽輝の力を借りるんだ。分かってくれるな?」

 

「…………」

 

 

 アンナの問いに沈黙を持って返すが、それは決して了承という意味ではない。つまらないプライドだと笑う者もいるかもしれないが、映司はなのは達に危険が及ばないようにしていきたい。だが自分の力だけでは解決できない問題は数多く、いざとなればコンボを使ってでもなのは達を守ろうと思っていた矢先にこの話。

 

 死ぬのは当然嫌だが、だからと言ってなのは達を自分の力で守りたいと思っている映司としては、首を縦にも横にも振れない。そしてそんな彼の心情を察したのか、アンナは静かに映司を抱きしめた。

 

 

「分かってくれ映司……お前が私達を守ろうとそてくれるのは嬉しい。だが、お前が無理し過ぎて私達の前から居なくなっては意味が無いんだ……頼むから、コンボだけは使わないでくれ…………」

 

 

 体温と共に伝わってくるアンナの映司への想いは、なのはやユーノ、士郎達とも同じもの。自分達を守る為に映司が命を落とすことになれば、みんなは光の無い暗闇の中を生きていくも同じく、話を聞いてそんな未来図を予想したユーノも縋りつくような視線を送ってくる。

 

 それぐらいは映司も理解はしており、彼女達の為にもコンボは使わないようにしておきたいのだが、やはりそれを約束することは出来なかった。

 

 こうしてそれぞれの運命は一つの未来へと収束され、今日という日は終わりを告げるのであった…………。

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